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第2回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:銀盤カレイドスコープ vol.1&vol.2/海原零

銀盤カレイドスコープ
1.ショート・プログラム:Road to dream
2.フリー・プログラム:Winner takes all?

answer.――― 78 点

第2回スーパーダッシュ小説新人賞《大賞》受賞作ながら、「vol.1」「vol.2」と2冊に分けて刊行された本作『銀盤カレイドスコープ』はフィギュアスケートを題材にした物珍しい逸品。今でこそ冬の風物詩として定着した感のあるフィギィアスケートだが、出版年の03年頃はまだまだメディアも積極的に取り上げる競技では無かっただけに、時流に先駆けた題材と云え、現在でさえおいそれと見掛けないことを鑑みても、当時は増し増しで「マニアック」な作品だったと云えるだろう。しかしながら、シリーズ全10巻という事実が示すように、その初出となる本作のクオリティは時間の浸食を許さない確かな出来で一言、素晴らしい、に尽きる。物語の概要は、日本屈指の実力を持つ現役女子高生のフィギュアスケーター・桜野タズサ(16)が五輪選考会を前にカナダ人の少年の幽霊に憑依され、苛立ち戸惑いつつも、いつしか……というもの。兎にも角にも、まず称えたくなるのはヒロイン、桜野タズサの「高飛車」「毒舌」と作中でも評される一人称。「怒」を中心とした表題通りの万華鏡に違わぬ様ざまな顔を魅せてくれる。勝ち気なヒロインの一人称、―――これこそライトノベルにとっての白銀比とも云える愛すべき文体だが、「vol.1」に関して云えば「上手い」ながらも故に「旧さ」も目立ち、現代っ子にはともすると「下手」にさえ映るかもしれない。がしかし、「vol.2」における語彙を途端に増やし、表現力のギアを上げての「上手い」から「巧い」へ転じる瞠目の変化には舌を巻くだろう。フィギュアスケートを題材にしていると云うことで、個人的に「SP」と「FS」で被るであろうフレーズの使い分けをどうするのか留意して読んでいたが、―――まさか、「変えてくる」とはね!アイディアに満ちた解決方法に著者へ拍手を送りたくなる。語彙の引き出しから(……本当に1人で書いたのか?)と疑いもしたが、2冊で1冊、この「vol.2」のために抑制していた、なんて背景のあるほうが作品への浪漫がある。注文をつければ、クライマックス場面では創作上の人物ではなく、実在の人物に変えるべきだっただろう。そのほうが知識面でも魅せられ、より楽しめたと思う。過去作故に、現在の採点方式と違う(6.0満点方式)のは致し方ないところ。それを補って余りあるドラマが本作にはある。Teenが読むに相応しいライトノベルらしいライトノベル。「vol.1」から「Vo.2」へのビルドアップは必見!の一人称の快作だ。【推薦】させて頂きます。「vol.1」&「vol.2」、合わせてのレヴューです。

第2回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:銀盤カレイドスコープ vol.1&vol.2/海原零  【推薦】

category: か行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞大賞 OPEN 70点 海原零

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第2回スーパーダッシュ小説新人賞 佳作:ネザーワールド ‐カナリア‐/東佐紀

ネザーワールド
1.青空と大道芸人
2.ヴァイオリンとカナリア
3.ウサギと赤髭
4.プリンセスとヘルメス
5.火葬棟とワタリガラス
6.女王と地下迷宮
7.壊れた空と道化師

answer.――― 62 点

著者のあとがきによれば、ドタバタのコメディを志して始めたものの、出来上がってみれば、近未来SFファンタジー!という本作『ネザーワールド -カナリヤ-』。その概要は、将来を羨望される音楽家・直樹が意識を失った育ての親を救うため、地位も名誉も金も捨てて、謎の昏睡の鍵を握る少女カナリヤを追って地下へと潜る!というもの。投稿時の表題が『地下鉄クイーン』だったように《世界は地下で繋がった》という独特な世界観の上で、主人公が音楽家という設定からほぼ全編においてクラシックが雅に奏でられる演出が、著者のまずアピールしたい本作のセールスポイントだろう。実際、いわゆるライトノベルとは違う趣きのアーバンなファンタジーで、著者が培ってきた語彙など筆の面からもライトノベル外の気配が漂う。なかなかのオリジナリティ薫る作品だが、飾りである「音楽」をゴリ推して、肝心のストーリーの魅せ方を失念してしまった前半は目に余るマイナス項目。相手が大御所でもないかぎり、読み手は「待ってはくれない」。それだから、散文調で飾ったところで「読んでもくれない」。起承転結の金科玉条を鵜呑みにして、新人がのんびり「起」を「起」として演出してはいけないのだ。そんな冒頭でしばし注意散漫となるなか、ようやく訪れる「動」的展開―――助っ人・赤髭とのバシャバシャと水音を立てながらの地下逃亡劇は親指立てたくなるGoodな場面演出。これを如何に早く持って来れるかが大事なのよね。一作品としてのクオリティは高いとは言えないものの、個人的にはところどころで関心引く物珍しい演出に著者の可能性と作品への勿体無さを感じました。

第2回スーパーダッシュ小説新人賞 佳作:ネザーワールド ‐カナリア‐/東佐紀

category: あ行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞優秀賞(佳作) OPEN 60点 東佐紀

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