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第14回ファンタジア大賞 大賞:12月のベロニカ/貴子潤一郎

12月のベロニカ
1.氷雨の季節
2.眠り姫の頃
3.時の轍
4.愚か者の涙
5.約束
6.旅立ちの日
7.祝福の日

answer.――― 70 点

背に腹は代えられず……近年こそ大賞を乱発し始めたファンタジア大賞だが、本作以前にその栄えある大賞を受賞した作品を知ろうと思うと、この第14回から遡りに遡って、第6回にまで時計の針を戻さねばならない。ファンタジア大賞に、……ついに《大賞》作が!!と、あとがきで自虐ネタのようにヤラカシ(編集部)も言及している通り、手前味噌ながらも受賞は快挙には違いない。自作ブランドを使用してきたとも云える。さて、その肝心の内容は《萌え》及び《学園》蔓延り始めた、個人主義万歳!が主流の21世紀作品とは思えない王道のファンタジー。冒頭、早々に演出される大ピンチに現れる隻腕の騎士。如何にも怪しいコイツは一体!?正体を探りながら因縁めいた運命を描いていく。ここであとがきを再び引用させて頂くが、編集部は本作を読み直したら涙を流したらしい。そう、本作は二度目のほうが確実に感動するトリックがある。しかし一度目は(意図的な可能性もあるが)そのトリックにまず誰もが途中で気づいてしまい、やや興醒めたまま読み進めることになる。熱心に読める=面白い、が読み手の常識のように、冷めてしまえば面白さも半減だ。滅多に出ない大賞作というハードルもあって、このトリックが幼稚と賛否を招いてしまった。しかしながら本作、私は楽しめた。というのも、登場人物の一人が自らバッドエンドを選択し、また、自らの非とも云えない非を認めたからだ。どんなつまらない設定、ストーリーでも、登場人物に意志を宿らせれば面白くなる。意志とはすなわち、「雨が降っているので、傘を《差さない》」といった逆の行動を取ることだ。著者はこれに数十年に及ぶ時間経過を施して、決断を誰が読んでも重く取れるように配慮している点が素晴らしい。最終選考程度にすれば逆に話題になったんじゃないかな?ただ如何せん、旧式の設定なのが残念。トリックのネタバレ……問題無さそうだし、伏字にして書いておこう。過去と現在の登場人物の名前が同じです。故に、読み直すとどれも必然的に熱い台詞になります。

第14回ファンタジア大賞 大賞:12月のベロニカ/貴子潤一郎

category: た行の作家

tag: ファンタジア大賞大賞 OPEN 70点 貴子潤一郎

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