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第14回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:世界の果ての庭 ショート・ストーリーズ/西崎憲

世界の果て
(あらすじ)
イギリスの庭園と江戸の辻斬りと脱走兵と若くなる病気にかかった母と大人の恋と謎の言葉。前代未聞の仕掛けに、選考委員の椎名誠氏は「ハメラレタ」と、小谷真理氏は「アヴァンポップでお洒落な現代小説の誕生」と絶讃。幻想怪奇小説の翻訳・紹介で知られる著者の満を持しての創作デビュー!

answer.――― 45 点

女性作家リコと文学者スマイスの出会い―――で始まり、若くなる病気にかかった母親、江戸の詩人、イギリスの庭園、辻斬り、脱走兵、……と「ショート・ストーリーズ」という副題の通り、そこから幾つかの物語が短く展開される。その数、なんと五十と五章。数の上からショートショートのようにも思えるが、その幾つかの物語を裁断し、ショートショートとしている試みが本作のセールスポイント。さて、先に断っておこう―――本作に、エンターテイメントは無い。これは第9回の大賞受賞作「ベイスボイル・ブック」同様の物語無き物語で、「ハメラレタ」だの、「アヴァンポップ」だのの選考委員たちの讃辞は、それを信じて金をレジへと放り投げる読み手の投資を無視した冒涜の類。ショートショートに求められるのは分かり易さ、何より「転」と「結」を1センテンスで同時に成立させるところに作家の職人芸を見るものだが、本作に収められた55章でそれに適うものは見当たらない。55章は繋がっているようで繋がっておらず、結局、裁断されたストーリーは漂うままに閉じてしまう。本作はいわゆる空間を楽しむ小説であり、しかし、それはアマチュアでのみ許される実験である。裁断され、ショートショートとなった短編が一つに収束し、何らかの物語を形成する……バーコードをつける書物ならば、これは最低限の《お約束》だ。「仮に」、リコの冒頭の謳いを倒錯的に表現したとしても、「仮に」、漂う先に庭を設けたとしても、読み手は素人なのだから売り物であるかぎりは《お約束》は守らなければいけない。まあ、個人的に「庭」を用意する発想には感銘を受けた。一つの手法として、覚えておきたい。

第14回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:世界の果ての庭 ショート・ストーリーズ/西崎憲

category: な行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 40点 西崎憲

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第14回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:戒/小山歩

戒
第一部 小屋に住む戒
第二部 宮殿に住む戒

answer.――― 84 点

死後にまで主君に仇なした不義不忠の大逆臣・延戒の墓が見つかった―――冒頭の数頁で、これでもか!と現代人たちより唾棄、怨嗟の対象として描かれる、存在さえ疑われた歴史上の人物・延戒の(本当は……)な読み手だけへ贈られる真相解明がストーリーラインの本作。「戒より始めよ」というパロディなリード文にこそ辟易させられるものの、いざ過去への幕が上がれば、幼少期に母より与えられたトラウマにより、己を偽り続ける当代最高の才人の悲劇は胸躍らずにはいられない。共に育てられた王子より常に一歩遅れを取らねばならぬ枷、隠し切れぬ才能をその溢れる才能をもって見事に隠し通し、将来を、恋さえ諦め、舞舞いという宮中のピエロとして生きる様、あまつさえ凡才である王子を遊戯を通して名君へと育てようと試み、臣民に演出し、取巻きから嫉妬を受ければ、その相手さえ立てつつ、―――と、やること為すことウルトラGの戒の主人公っぷりは悲劇に辿り着くと理解していても心地良い。前半のハイライトに挙げられるだろう敵国への単独(?)侵入劇は、―――俺(=戒=読み手)という超天才がガキに負けたよ―――と誇り高き遺児たちの決意を正面から受け止められる珠玉の場面。これだけで本作は「買える」だろう。そうして、第二部は、いよいよ「戒より始めよ」が実践に移され、まさかの異人との結婚、国に集まる才人たちより注がれる敬意、報われ始めた己に相応しい宰相としての人生。―――しかし、再びトラウマが運命を狂わせる。本作に対する選考委員の評は悪辣だが、これはもはや難癖に近く、後の第20回の『彼女の知らない彼女』に贈ったあの気持ち悪いまでの激賞を考えれば、読んでうっかり楽しんでしまった自分を戒める発言のように解釈出来る。そう、本作はインテリを自認する者にとっては認めてはいけない中途半端なインテリジェンスを感じさせるファンタジー。しかしながら、各場面における演出はどれも目を惹くのも事実。母へのトラウマに固執する不要なファンタジーのために荒削りという結論は否めないが、……要はNirvanaの1stアルバムみたいなもんだ。次は「Nevermind」、気にすんな。『ロードス島伝説』が好きなライトノベラーならば、本作の戒にナシェルを重ねることでしょう―――W La TENSAI!悲劇が好きな方は是非、御一読を。

第14回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:戒/小山歩

category: あ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 80点 小山歩

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第4回えんため大賞 優秀賞:リアルライフ この時代に生きることを/坂本和也

リアルライフ
(あらすじ)
県立花野高校演劇部に所属する骨竜七郎は同じ演劇部の響奈々子の容赦ないつっこみを受けつつも、飄々と毎日を過ごしていた。そんな日常の中、響は人気のない駐車場で、手から火の玉をだす男と骨竜が闘っている所を目撃する。問いつめる響に骨竜が語る「試合」の真実とは……。

answer.――― 56 点

『ファイアスノーの風』という漫画を御存知だろうか?20年近く前、週刊少年ジャンプで連載され、およそ三ヶ月で打ち切られたファンタジー作品である。連載された全11回は単行本に半ば無理やり一冊にまとめられ、他のジャンプコミックには見られない厚みがもの哀しくもある。打ち切られるくらいだから、大多数の人にとって大変<つまらない>作品だ―――がしかし、連載当時、小学生の私にとってこの漫画は非常に<面白い>ものとして映った。その理由を挙げようと思えば挙げられるのだが、挙げたからと云って、つまらないと切り捨てられる大多数の意見を変えることは出来ないだろう。大事なのは、人には誰しもそういう作品がある、ということだ。第4回えんため大賞にて<優秀賞>を受賞した本作は、私の学生時代の先輩にとってのそんなマスターピース。何度となく、それも十を超えて読み返したとのことだが、―――この事実、もはや<文学>である。是非、皆さんにも一読して頂きたい。他人の深淵が見られる。ここに描かれているものは何なのか?ストーリーそれ自体はオーソドックスなもので、現代を舞台にごく平凡な高校生である主人公が携帯に届くメールに従い、トーナメント形式のストリートファイトを繰り返す、というもの。背伸びしない文章、崩れないキャラクターなど、作家のそつのない地力は伺える作品だが、掴んで離さない魅力の有無というとどうだろう。有る、と断言するのは難しいだろう。にもかかわらず、何故に先輩は惹きつけられるのか?結論を云えば、おそらく、この作品に「先輩」がいるのである。先輩自身さえ知らない、己の本質が描かれているのである。内容も多少は関係しているかもしれないが、個人的には作品総てを通してだろう。繰り返してしまうが、これは先輩なのだ。そして、先輩にとって最も美しい価値観が本作に託されているのだ。自分探しをするなら、まず理解出来ない(自分ではない)他人の存在を知らなければならない。そういう意味で、本作は是非とも一度手に取って頂きたい。共感するためではない、共感出来ないことを知るためだ。自分以外の存在があることを知り、その存在を認め、知ろうとする。それこそが「理解」なのである。本作、推薦させて頂きます。本作を何度も読む人がいる、繰り返しますが、この事実は文学に値します。

第4回えんため大賞 優秀賞:リアルライフ この時代に生きることを/坂本和也  【推薦】

category: さ行の作家

tag: えんため大賞優秀賞 OPEN 50点 坂本和也 推薦

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