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第9回電撃小説大賞 大賞:キーリ 死者たちは荒野に眠る/壁井ユカコ

キーリ
1.ルームメイト
2.切符を拝見いたします
3.血まみれピエロに喝采を
4.“I’m home”
5.死者たちは荒野に眠る
6.光の路標へあと何歩

answer.――― 64 点

閉鎖的な教会で育った孤児、幽霊を視えてしまう少女キーリが一週間の鉄道旅行へ旅立つ……お伴には初めて出会えた、自分と同じ、幽霊が視えてしまう不死者ハーヴェイを連れて。本作には全部で六話が収められているが、正直な話、印象に残っているのは一章【ルームメイト】くらいしかない。というのも、話(ゲストキャラクター)に工夫らしい工夫があるのが一章しかないからだ。以降の話には仮に工夫があったとしてもそのパターンは一章と同じで、しばらく日を置くとゲストキャラが思い出せず、それによってストーリーも思い出せないという悪循環に陥る。友人たちに訊いてみてもまったく同じ反応だったので、これは間違いない―――皆、俺と同じで途中読み飛ばしたな?重厚なんて飾った言葉を使わなければ、単純に書き過ぎな本作。台詞と台詞の間に必ず一動作を入れて、こっちの読書のリズムを悪くしてくれる。それで台詞回しにも特に機微がないもんだから、長編にあってはならない読み辛さが大回転の大車輪。結果、読み飛ばして話が印象に残らない。厳しめなレビューになっているが、本作、見るべきところもある。レヴューサイトを廻ってみると、女性ウケが良いのが分かる。この辺、感情の起伏少ない人造人間ハーヴェイ君にあるんだろう。男にはその価値を見い出し辛いが、お人形遊びは女性の専売特許。実際には描かれていない、人造人間の「心」の動きを評価出来るはずだ。個人的にはハーヴェイの付属品である、ラジオに宿っている兵長(幽霊)が良い。早熟な少女であるキーリと保守的なこの兵長だけの旅が読みたかった。

第9回電撃小説大賞 大賞:キーリ 死者たちは荒野に眠る/壁井ユカコ

category: か行の作家

tag: 電撃小説大賞大賞 OPEN 60点 壁井ユカコ

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第9回電撃小説大賞 金賞:七姫物語/高野和

七姫
1.空澄 七月
2.雪終 二月  息吹月 三月
3.高夏 八月
4.早風 九月
5.名無月 十月
6.雪祭 十一月
7.終月 十二月

answer.――― 70 点

取捨選択を貫いたような背伸びしない文章は、著者が何を書きたいのかがハッキリと伝わってくる。二人の若き嘘つき、武人テン・フオウと軍師トエル・タウに「お前、お姫様やれ」とよくも分からず拾われ、楽しげに担がれた孤児カラスミ(当時9歳)。三人で立てた「天下取り」の約束が物語の始まりとなる本作。どこがどうと挙げにくい面白さが続刊を望まれ続ける根強い人気こそあれ、爆発的な売り上げに繋がらないのだろうが、雅な大陸風の世界観は近くて遠い異国情緒の溢れるもので、詔の節回しにせよ、鼻につかない本格風味。電撃大賞、その選考委員一の良識派である安田均(すでに勇退)が推すようにヒロインをはじめとした、登場人物たちのポジティヴなキャラクターにセンスを感じる。賛否分かれそうな後半の俯瞰的な語り口は「戦争なんだからもっと描いてくれ!」と熱心なファンからすれば望むところなんだろうが、特に思い入れのない自分とすると、スムースなカタルシスを得られたので満足の仕上がり。自分の実力を計算・相談した上で、描いただろう作品のため、作品そのものよりも、著者に対して拍手を送りたくなる。イラストもGJ!で、世界観にマッチしている。良作です。

第9回電撃小説大賞 金賞:七姫物語/高野和

category: た行の作家

tag: 電撃小説大賞金賞 OPEN 70点 高野和

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第9回電撃小説大賞 金賞:バッカーノ! The Rolling Bootlegs/成田良悟

ブギーポップ
1.エピローグ……1
2.プロローグ
3.1日目
4.夜
5.2日目
6.エピローグ……2

answer.――― 69 点

銃弾、脅迫、マフィアが我が物顔でまかり通る1930年―――禁酒法の時代のアメリカで不死の酒を巡るバッカーノ(馬鹿騒ぎ)!今やライトノベル界のアウトレイジ、成田‘何だ、バカヤロー!’良悟のデビュー作。映画的な台詞回しと、動的アクション。息を呑むような緊迫感こそ希薄だが、冒頭を飾るマルティージョ・ファミリー最年少幹部フィーロの吹っ掛けられた喧嘩の処理、ガンドール・ファミリーの三兄弟の恫喝トランプで醸し出す雰囲気、振る舞いなんてのは、ライトノベルらしからぬMovieでCoolな出来栄えで、かと思えば、アイザック&ミリアの凸凹コンビのようなライトノベルど真ん中のトリックスターもしっかり用意している。これは期待出来る!となること請け合いの展開が続いてくれるが、さて、それなら結末は……と安易に期待を膨らませていると、‘何だ、バカヤロー!’と成田先生の登場である。肝心の不死の酒が物語に関わって来た終盤、明らかに首をひねりたくなるストーリーとなって、思わず、このバカヤロー!と掴み掛かりたくなる《オッパッピーエンド》に巻き込んでくれた。え、一回死んだ?そんなの関係ねえ!そんなの関係ねえ!といきなり言われてもだな……(ネタバレ)。本作は長らく続刊する人気シリーズとなるが、本当に面白くなるのはキャラクターを受け入れた二巻以降から。個人的に、この巻で期待してしまったものは、成田先生にすべて奪われてしまった感がある。さすが、アウトレイジ=極悪非道!萌えとはまた一線を画す、ある種、硬派なキャラクター先行の物語。我ながら的を射た表現だと思う《オッパッピーエンド》、皆さんも是非体験して頂きたい。

第9回電撃小説大賞 金賞:バッカーノ! The Rolling Bootlegs/成田良悟

category: な行の作家

tag: 電撃小説大賞金賞 OPEN 60点 成田良悟

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第9回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:シルフィ・ナイト/神野淳一

シルフィナイト
(あらすじ)
「帝国」の夜間爆撃機を迎え撃つため、夜間戦闘機隊への転向を命じられたジーン少尉は、新兵の少女ライム軍曹とペアを組むことになった。妖精族の生き残りであるライムは夜目が利き、夜間戦闘に於いてその才能を開花させてゆく。ジーンはライムと過ごす時間の中で、戦友を喪った心の傷を癒し、ライムもまたジーンの包容力にやすらぎを見いだしてゆく。だが帝国の侵攻作戦は次第に激しさを増してゆき……。

answer.――― 56 点

私のレヴューにおいて、ライトノベル黎明期の作品に<旧時代的>とバッサリ!なレッテルを貼りつけることが間々あるが、第9回といよいよ現在に通じるライトノベルへと変貌を遂げ始めた過渡期に出版された本作は、にもかかわらずの、完璧なまでの<旧時代的>作品。ストーリーの概要としては、バトル・オブ・ブリテン……史実を下敷きに、そこに妖精やらのファンタジー要素を放り込み、戦争という極限下でのラヴストーリーを展開するものだが、それを綴る文章はガッツリ説明系で、次の頁へと進みたい読者の意欲を削いでくれる。いつもはあらぬコメントを出す選考委員・深沢美潮の「読者は、辛抱してくれないものです」という割と言わず的を射たコメントが象徴的だ。ただ、同時に力作とも評せられているように、空戦と終盤の大団円は違和感なくまとまっている印象。作品それ自体の出来はともかくとして、自分の書きたいものを書ける才能は買える。という訳なのかは定かではないが、著者は現在、ガンダム関連の書籍を手掛けている模様。説明も好まれる<原作>付き作家とは適材適所、仕事を紹介した編集者に拍手を送りたい。

第9回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:シルフィ・ナイト/神野淳一

category: さ行の作家

tag: 電撃小説大賞選考委員奨励賞 OPEN 50点 神野淳一

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第9回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:シャープ・エッジ stand on the edge/坂入慎一

シャープエッジ
1.六年前
2.ハインツ
3.シモンズ
4.ビッグ・ライン
5.ステラ
6.魔女
7.月と夜
etc...

answer.――― 64 点

読了直後の感想を書き起こせば、何も残らない作品―――と書かざるを得ないが、その事実に特段不快感を覚えるわけではない。<復讐>という小細工無しの、単純明快なストーリーライン。章仕立てこそ散文的でアマチュア臭を残しているが、選考委員たちより<クール>と評される著者の文章は、感情の起伏の無い暗殺者というヒロインの設定に相応しく、作品としての「格」を一段上げることに貢献している。事実、この<クール>な文章が無いと受賞は出来なかっただろう。それほど致命的に本作はストーリーが無い。登場人物たちに、心の揺れ動きが無い。本作において読者は物語の当事者ではなく、傍観者としての参加しか許されていないわけだ。感情移入を阻まれると、あとは登場人物たちの<動き>のみで読者は作品の是非を決めることになる―――ズバリ、戦闘だ。その戦闘描写が、まさに<クール>!戦闘に不可欠なスパイスである‘焦燥’を始めとした感情の起伏が無いハンデを補う、洗練された動きを見せてくれる。<動き>だけなら一等品だ。無駄に崇められているどこかの作家と違い、語彙を見せびらかすような描写ではないだけに余計に好感を抱いた。ただ、前述の通り、淡々と‘復讐’しているだけのストーリーは如何ともし難い。クールなだけでは人の心はつかめないのよね。

第9回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:シャープ・エッジ stand on the edge/坂入慎一

category: さ行の作家

tag: 電撃小説大賞選考委員奨励賞 OPEN 60点 坂入慎一

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