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第15回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:太陽の塔/森見登美彦

太陽の塔
(あらすじ)
京大5回生の森本は「研究」と称して自分を振った女の子の後を日々つけ回していた。男臭い妄想の世界にどっぷりとつかった彼は、カップルを憎悪する女っ気のない友人たちとクリスマス打倒を目指しておかしな計画を立てるのだが…。

answer.――― 75 点

森見登美彦のデビュー作。京都を舞台に「ええじゃないか」騒動を起こすストーリー。ストーカー臭漂わす主人公が作者自身を投影しているように思えて、何とも言えないまま終盤まで読み進めてしまったが、ラストの「ええじゃないか」の展開は素直に感心した。大衆小説と文学のボーダーラインを行き来しながら作品を出し続け、ついに自ら「森見文学」と謳った著者の実力は、ぃよう~!と打ち囃子が聴こえてきそうなバブリーな文体に支えられている。そして、それはこのデビュー作から発揮されているのが分かる。氏の作品は多くが<京都>を舞台にしているのも特色。そこそこに楽しめる内容だが、彼の人気を支えているのは女性読者ということに注意して購入してください。

第15回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:太陽の塔/森見登美彦

category: ま行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 70点 OPEN 森見登美彦

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第15回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:象の棲む街/渡辺球

象の棲む街
1.地見屋襲撃の夜
2.饅頭と女と子守歌
3.狩人の眼
4.老年期の終わり
5.木偶興行
6.飢餓封鎖
7.鼠のように
8.象宮殿

answer.――― 81 点

アメリカと中国に統治&隔離され、荒廃する東京を舞台に、ドブネズミの如く這い回る日本人たちの終末を描いた全8章からなる連作短篇。章ごとに「上質」の視点切り替えを行いながら、(ホモによるアナル)強姦、毒饅頭の販売、臓器販売、過疎地での孤独死、身代り詐欺、スカトロ、児童買春、生体改造……このようなショッキングな題材を核にして、スマートなバッドエンドを迎えていく。視点切り替えを「上質」と飾ったのは、それぞれ視点を任される登場人物たちは何かしらで前章に関わっており、そうと分かると、ある種の偶然を作中で体験出来るからだ。例えば、二章の視点人物は一章で強姦された被害者であり、三章の視点人物は一章の視点人物のアパートの同僚といった具合である。どれも意外性があり、著者のセンスが光る。各章、どれも劣らずクオリティは高いが、敢えて取り上げるとするならば、空腹を満たす魔法の粉「ゴールデンパワー」が配給される、衝撃の第6章【飢餓封鎖】を挙げたい。作中、食糧不足が起こり、暴動の様相を呈するのだが、これを解決すべくアメリカより「ゴールデンパワー」、中国より「黄金粉」と呼ばれる粉末状の食糧が配給される。これが腹は不思議と満たされるものの、臭くて嚥下にも一苦労する代物だった。しかし、ある日、一人の配給者が叫んだ一言によって人間としての尊厳が試される―――お前ら、悔しくないのか!?俺らはコイツらの人糞を食わされているんだぞ!!……いや、終末である。空腹に勝てず、聞かなかったことにして食べる日本人の痛ましい姿よ。このように本作、どれも救いのない内容ながら、心地良ささえ感じるのは登場人物が絶望の中にあっても生きる意志を捨てていないためである。陰鬱なときに読めば、セラピーの効能もあるんじゃないだろうか?特異な快作、【推薦】させて頂きます。余談だが、本作では赤坂にいる(らしい)「象」という象徴を用いて、天皇制を肯定的に描いています。

第15回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:象の棲む街/渡辺球  【推薦】

category: わ行&数字の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 80点 渡辺球 推薦

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第5回えんため大賞 大賞:吉永さん家のガーゴイル/田口仙年堂

吉永さん家のガーゴイル
1.吉永さん家の厄介者
2.吉永さん家の朝昼晩
3.佐々尾さん家のおばあちゃん
4.小野寺さん家の名番犬
5.東宮さん家の事情
6.吉永さん家のガーゴイル

answer.――― 73 点

田口仙年堂のデビュー作にして、全15巻+外伝と見事にシリーズらしいシリーズとなった『吉永さん家のガーゴイル』の第1巻。概要としては出版社より「ご町内ハートフルコメディ」と喧伝されたように、元気いっぱいの吉永家の長女・双葉が福引で当てた喋る犬の石像「ガーゴイル」が門番として吉永家、そして、御色町の人々と心を通わせながら守る、というもの。章タイトルからも察せられる連作の造りで、スロースタート、パッとは目を惹けない《いぶし銀》なエピソードに難こそあれ、人の情緒を理解し切れないガーゴイルが真摯に“良心”宿す登場人物たちの意を汲もうとする様が何とも心が温まる。とりわけ盲導犬エイバリー少尉のジレンマを描いた4章【小野寺さん家の名番犬】は、……これぞ、田口仙年堂!と著者の名刺代わりに出来る章。時折り、ライトノベルで身体障害者を投下するエピソードを見掛けるが、そこにはただの物珍しさ、著者の独り善がりの仕掛けのための安易さが目立つ。が、しっかりと「現実(弱さ)」を打ち出し、それらの作家との意識の違いを見せつける。誰も悪くない、は人の心に残る一条件。華は無くても、……と良作の典型をなぞる一作です。

第4回えんため大賞 大賞:吉永さん家のガーゴイル/田口仙年堂

category: た行の作家

tag: えんため大賞最優秀賞(大賞) OPEN 70点 田口仙年堂

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