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第10回電撃小説大賞 大賞:塩の街 wish on my precious/有川浩

塩の街
Scene – 1.
街中に立ち並び風化していく塩の柱は、もはや何の変哲もないただの景色だ。
Scene – 2.
それでやり直させてやるって言ったんじゃねえのかよ。
Scene – 3.
この世に生きる喜び そして悲しみのことを

answer.――― 69 点

ライトノベル業界からの一般書籍への刺客として、天誅!天誅!!天誅!!!とまさに人斬り抜刀斎なご活躍をなされている有川浩のデビュー作。塩が世界を埋め尽くす、いわゆる終末モノにカテゴライズされる本作だが、そのストーリーラインは大きく<前半>と<後半>、二つに分けられる。そして、世間評として高いものが前半部分であり、「おろ~浩殿~おろ~(×▽×)」と目を×にして困りたくなるのが後半部分だ。前半は塩害という理不尽な現象を用いて丁寧に「終末」を演出出来ている。ゲストキャラクターの死に際、死に様、ヒロインのレイプ未遂体験の回想なんかは終末だからこその説得力があり、テーマの消化具合に受賞作らしいポテンシャルを感じられた―――が、後半は一転、完全な恋愛モノになったのには驚いた。その後半からは評価の分かれ目。主人公とヒロイン、二人の恋愛を楽しみたかったのかどうかで良し悪しが決まる。文章は総じて手堅い印象。ただ、ミリタリーへの造詣披露になると、しつこい部分が目立つ。作りとしては粗い出来だと思うが、一章、二章と続く「終末」の感覚が残っていれば名作に数えたくなる作品だろう。ただ、やはり、後半の恋愛モノへのシフトチェンジがどうも首を傾げたくなる。

第10回電撃小説大賞 大賞:塩の街 wish on my precious/有川浩

category: あ行の作家

tag: 電撃小説大賞大賞 OPEN 60点 有川浩

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第10回電撃小説大賞 金賞:我が家のお稲荷さま。/ 柴村仁

我が家
(あらすじ)
一匹の大霊狐が三槌家の守り神に祀りあげられた。名を空幻といい、ありとあらゆる術を自在に操る、たいへんに賢しい狐であったが同時に、騒動が大好きでもあった。いたずらと呼ぶには悪辣すぎる所業を繰り返す空幻に業を煮やした三槌の司祭は、七昼七晩かけて空幻を裏山の祠に封印したのだった。そして現在、未知の妖怪に狙われた三槌家の末裔・高上透を護るため、ついに空幻が祠から解封された…のだが、その物腰は畏怖された伝説とは裏腹に軽薄そのもの。イマドキの少年である透からは『クーちゃん』と呼ばれる程で……。

answer.――― 72 点

狐が可愛い、―――という選考委員たちの主だった選評や各所のレヴューサイトの言及に特段異論があるわけではないが、個人的に本作は用意した登場人物たちの処理、さかのぼれば一章から敷かれていた一巻きのストーリーがとても自然に描かれていたのが印象的だった。過程を経て結果に至る、そんな当たり前のことを<流れ>のなかで出来ている……まあ、何が言いたいかと云えば、本作はライトノベル特有のキャラクターが物語を引っ張っていく作品というよりも、<物語>があって<キャラクター>がいる、そんな大衆小説的なアプローチがあるように感じた作品だった。日常パートの作りが上手いからキャラクターに評価の声が集まるんだろうが、透、空幻、ついでに恵比寿様の思惑やらを小綺麗に解決している点に満足度が高い。一巻が気に入れば、次巻以降も安心して読めそうだが、実際はどうなんだろう?とりあえず、大賞でも違和感を感じない出来栄えで、始まりから終わりまで素直に楽しめました。ところで、本作のイラストの人選が正解だったのか否か、未だに分からない。表紙で手に取るとキャラクターものとしては実は弱い作品だから、その辺を考えれば人選ミスの気がしないでもない。ただ、じゃあ、どんなイラストが合うのかと訊かれると答えに詰まるのよね。もちろん、悪くはないんだけど。

第10回電撃小説大賞 金賞:我が家のお稲荷さま。/柴村仁

category: さ行の作家

tag: 電撃小説大賞金賞 OPEN 70点 柴村仁

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第10回電撃小説大賞 銀賞:先輩とぼく/沖田雅

先輩とぼく
1.第三種接近遭遇とぼく
2.つばさ先輩とぼく
3.家族とぼく
4.クラスメイトとぼく
5.金髪美人とぼく
6.ナルシストとぼく
etc…

answer.――― 62 点

宇宙人に連れ去られ、先輩とぼくが入れ替わっちゃった!という王道ラブコメ。やはり期待してしまうのは、下(シモ)事情。前半はそこを踏み外すことなく、直球で放り込んでくる。思わずニヤけるお約束な展開だが、となると、後半の尻すぼみもお約束なのか。ストーリーには期待していない分、最後まで助平なネタを仕込んでいて欲しかった。途中、読み飛ばしたくなったのは得てして冗長なセリフ。練りが甘いぜ。説明文が少なかったのは好感。

第10回電撃小説大賞 銀賞:先輩とぼく/沖田雅

category: あ行の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 60点 沖田雅

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第10回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:結界師のフーガ/水瀬葉月

結界師
1.プロローグ 三ヶ月前
2.一日目 種村舞
3.二日目 神凪
4.三日目 御風呼び
5.四日目 水断
6.五日目 彩味
7.六日目 月読
etc...

answer.――― 63 点

隻眼、隻腕……欠けた部分を埋めようとするのは人の性。読者の目を惹く工夫として、主人公を隻腕にした点はナンダカンダで「あら、珍しい……」と評価出来る。概要としては、閉鎖された環境下にある少女を救うストーリーライン。閉鎖されている環境とは化生集う<村>であり、主人公たちの到着時よりすでにカウントダウンし始めている謎の祭が読者の関心の肝となる。選考委員より冗長と指摘される祭の準備期間は実際、その通り。ただ、祭の全容が分からない状態で「御風呼び」、「水断」とカウントダウンされていく状況は面白かった。マンネリ気味の作家陣には<状況の工夫>の一例として挙げても良いかもしれない。残念なのはサプライズ要素が希薄なこと。サプライズが平均点では読者は満足してくれない。作品に探偵要素があるので、ライトノベルらしい「軽い」会話も賛否分かれるだろう。突き抜けるものがないものの、ライトノベルとして無難にまとまっている―――という意味で、まさに選考委員奨励賞の受賞作として<適当>な作品。〆に作者に一言……本作で主人公を含めた登場人物中、一番魅力があったのは神楽冬春だったので、オチにはその辺を汲んで欲しかったな、と。

第10回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:結界師のフーガ/水瀬葉月

category: ま行の作家

tag: 電撃小説大賞選考委員奨励賞 OPEN 60点 水瀬葉月

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第10回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:シュプルのおはなし Grandpa's Treasure Box/雨宮諒

シュプル
1.雪と弾丸
2.夢を掘る人
3.愛の言葉
4.我が愛しきギャング・スター

answer.――― 50 点

出版社側の狙いとしては第2の『キノの旅』といったところなんだろうが、これは厳しい作品。病弱な少年シュプルが祖父に物語を聞かせる、という祖父と孫の関係、そのセオリーの逆を行くスタイルで綴られた本作。短篇形式の物語に求められるのは一話の質の高さと読みやすさだと思うが、本作は前者に不満が残る。かろうじて童話『マッチ売りの少女』と映画『卒業』を合わせた【三章】がバッドエンドかもしれない不安がスパイスとなってそこそこに読めたが、それも作者への信頼の無さ故とも云える。短篇の質は決して高くない。そもそもの根本的な問題として、孫の創作を聞く祖父の図―――本作の目新しさはここなのだが、創作の主人公の名は皆「シュプル」であり、要は少年の妄想に付き合っている形になる。祖父が話を聞かせるなら、本当にあったかもしれない……となる話が、少年が語ると、単に薄っぺらい話に終わってしまう。完全に構造的欠陥だ。よって、本作を「買う」要素が無い。<おはなし>だけでどこまで楽しめるか?ということになる。

第10回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:シュプルのおはなし Grandpa's Treasure Box/雨宮諒

category: あ行の作家

tag: 電撃小説大賞選考委員奨励賞 OPEN 50点 雨宮諒

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