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第16回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:ラス・マンチャス通信/平山瑞穂

ラス・マンチャス (2)
1.畳の兄
2.混血劇場
3.次の奴が棲む町
4.鬼たちの黄昏
5.無毛の覇者

answer.――― 70 点

二章にて脈絡なく登場する表題「ラス・マンチャス」という単語に、一章より続く出口の見えない物語の行方を見い出したつもりになれば、スペイン語で「染み」「汚れ」を意味する「ラ・マンチャ」から「ラス・マンチャス」になるまでの寓話だった事実に、本作の物語としての期待は無くなることだろう。―――僕は常に正しく行動している。姉を犯そうとした「アレ」は始末されるべきだし、頭の足りない無礼なヤンキーが不幸になるのは当然だ。僕のせいではない。でも、なぜか人は僕を遠巻きにする。薄気味悪い虫を見るように……実に上手く本作の魅力を抽出した「BOOK」データベースに、まず称賛を。春樹、龍のW村上の処女作との出会いで開花したという平山瑞穂。その処女作となる本作「ラス・マンチャス通信」は、倫理の外れた世界が広がる。壊れた日常を淡々と描き、上述の「アレ」などに見られるように抽象的にストーリーを進める。見所は、主人公が童貞を喪う三章。ただの童貞喪失話でも面白いのに、本作の場合は同僚の恋人であり、上司の性奴隷を葛藤の末に抱くという展開。童貞本来の葛藤と違うところで葛藤する点が分かり易く本作を象徴している場面と云える。本作はいわゆる連作短篇の形を取っているが、章分けには時系列上の意味があるだけで、一作品としての<短篇>ではない。また、ストーリーではなく、著者が描く作品の雰囲気(倫理の外れた世界)を楽しむのが本作の常道。これを見誤ると、私のように歯がゆい思いをすることとなるので注意して下さい。

第16回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:ラス・マンチャス通信/平山瑞穂

category: は行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 70点 平山瑞穂

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第16回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:ボーナス・トラック/越谷オサム

ボーナストラック
(あらすじ)
雨降る深夜の仕事からの帰り道、草野哲也は轢き逃げ事故を目撃する。雨にさらされ、濡れた服のまま警察からの事情聴取を受けた草野は風邪をひき、熱まで出てきた。事故で死んだ青年の姿が見えるなんて、かなりの重症だ……。幽霊との凸凹コンビでひき逃げ犯を追う主人公の姿をユーモアたっぷりの筆致で描く、越谷オサムのデビュー作。

answer.――― 75 点

「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」と謳った書店のパネルが話題を呼び、発刊から2年の月日を経て、ついに累計発行部数100万部を突破した『陽だまりの彼女』の著者・越谷オサムのすっかり忘れ去られていたデビュー作が本作「ボーナス・トラック」。あらすじの通り、ストーリーは某大手ハンバーガー店に勤める生真面目な草野哲也(25)と交通事故死して幽霊となった横井亮太(19)の二人を主人公に配し、―――と意外や意外なのは、本作は終盤までまともにストーリーが無いこと。漠然と(……自分を轢き殺した相手を見つけて成仏するんだろうな)とは思うものの、なかなかそのフラグが現れず、幽霊なのに無駄にひょうきん族な横井亮太が真面目過ぎて損している草野哲也に話し掛け、草野勤める店でアルバイトしているしょうちゃん(高2)にピュアに恋したりして日々を過ごす。(……なんだこりゃ?)と思いつつ、しばし頁をめくっていくと、これまた店でアルバイトしているしょうちゃんの兄こと巨漢の南(大学生)が霊感持ちと分かってから、―――何とまあ!なハートフル路線に出発進行し、草野の人間関係を円滑にしたり、交通事故の犯人捜しにドライブしつつ、寄り道気味に他の幽霊を除霊していく。打ち解けた南が向かった先のパチンコ店駐車場で起こる救出劇は(*´σω・、)ホロリ確定の社会派場面。著者が時事ネタ取り込む生モノ作家である片鱗が覗ける。表題通りのオマケな感じで成仏する様も含め読後感は圧巻なまでに爽やかで、序盤のあまりにあまりなスロースタートが勿体無く感じる一作となる。というか、序盤と中盤以降は制作期間が別なのかと勘繰りたくなるほど、別物に映る。何にせよ、私と年の近い人は読後、思わず車中であのCDを掛けたくなるはずだ―――It's time to party, Let's party!Hang out with yourself and have a crazy party!Hey you, let's party!Have a killer party and Party!思い出補正無しで、パーティー、パーティーって煩いわ(笑)

第16回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:ボーナス・トラック/越谷オサム

category: か行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 70点 越谷オサム

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第6回えんため大賞 優秀賞:カエルと殿下と森の魔女-緑竜亭繁盛記/橘柑子

カエルと殿下と森の魔女
1.はじまりの夜のはじまり
2.王子の大いなるあやまち
3.しきりなおしで日は暮れて
4.気づいてみれば一件落着

answer.――― 67 点

闇の森のほとりにある「緑竜亭」。そこは美味い料理に誘われて人間はもちろん人外も訪れ、喧嘩にトラブル、何でもござれ!とかしましい繁盛店。今日もまた店内は破壊され、戦う看板娘リュンは頭を悩ます。そんな時にやってきたのは身なり整った某国の王子、その懐には一匹のヒキガエルが……、なストーリーライン。深沢美潮が先頭に立ち、90年代後半には方法論を含めて確立された「よくある」コミカル・ファンタジーな本作。およそ目新しい要素は無く、中盤まではたらたらと丁寧なまでの無個性が展開し、刺激に欠けるものの、「殿下殿下、これあたしの友達」と飛竜にまたがってからのダイナミックなドタバタ劇は一転、本作が「よくある」のなかでも上質な作品であることを証明する。「転」を推し進める三章「しきりなおしで日は暮れて」での王子の許嫁ミランダ姫の存在感は一角の主人公並みで、国家論ずる台詞回しは二重丸を打てる出来。スロースタートでこそあったが、見事に挽回した印象だ。90年代前半に出版されていれば大いに将来を嘱望されただろうが、如何せん、出版されたのは2005年。著者は出版されたこと自体を喜ぶべきだろう。文章は丁寧で、一人称も堂に入っている。ライトノベルが好きな人が書いた典型的なライトノベル。そこに好感を持つ人も多いはず。例えば『七人の武器屋』シリーズが好きな人は物は試しに手にとってみても十分楽しめるだろう。

第6回えんため大賞 優秀賞:カエルと殿下と森の魔女-緑竜亭繁盛記/橘柑子

category: た行の作家

tag: えんため大賞優秀賞 OPEN 60点 橘柑子

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第6回えんため大賞 佳作:狂乱家族日記 壱さつめ/日日日

狂乱家族日記
1.陰謀結婚
2.七不思議家族全員集合
3.空に太陽。鬼に口紅。
4.約束
5.笑撃の茶番劇
6.狂乱家族、鬼ト宴ス
7.宴のあと

answer.――― 64 点

私の記憶のかぎり、著者近影、メディアへのインタヴューなどライトノベル界で一、二を争う勢いで自己プロデュースに失敗した男ヒヒヒと書いて日日日(あきら)。高校生ながらに恋愛小説コンテストラブストーリー大賞、新風舎文庫大賞など新興の公募賞を片っ端から相次いで受賞する様は、漫画『ONE PIECE』で云うところ大型新人“ハイエナのベラミー”もかくやといったインパクトがあった。実際、17歳での複数作の受賞―――消費者へのその訴求力は抜群で、デビュー作である『ちーちゃんは悠久の向こう』は後にはその発行部数とマーケット戦略が絡み合って見事、映画化もされた。同時受賞が出来た一番の要因は、日日日が<速筆>だからだ。この辺はまさしく天賦の才で、現在を以って同時刊行出来ていることを鑑みても(ゴーストの可能性も否定出来ないが……)、やはり本物なのだろう。さて、本作はその天才の代表作に挙げられる人気シリーズの第一巻。ストーリーは猫耳娘、特殊部隊の青年、イジメられっ娘、オカマ、ロボット、ライオン、そして、海月が疑似家族となって過ごすというもの。それぞれのキャラクターにはコンプレックスがあり、本作では長女であるイジメられっ娘に焦点が当てられている。イジメ、虐待―――これが描かれているわけだが、ここからも察せられるように日日日は実のところ、作家としての素養はライトノベルに向いていない。鮮烈な登場から七年過ぎた今、彼の作品群を振り返ってみれば、それがよく分かる。たとえば本作の場合、上記の家族構成は確かにライトノベルならではの揃え方ではある。中心キャラクターである猫耳娘の性格も出版当時、ライトノベル界を席捲していた涼宮ハルヒを模したものだろう。しかし、……中身はどうだろうか?本作中で印象に残る場面は、長女のイジメについての回想、葛藤、その心内描写だろう。それ以外の場面はどうかというと、取り立てて思い浮かぶシーンが無い。各所で持ち上げられている、著者独特の<節回しが楽しい!>といった読み方は本来ライトノベル「らしく」ない楽しみ方だ。本作ではビルを倒壊させてオチをつける。しかし、そこに面白味を見い出すことは難しいだろう……ライトノベルなのに、である。ライトノベルの外装、それを外して初めて本作の本当の姿が見えると思う。結局、何が言いたいかって、日日日の作品はあんまり面白くないですよ。ってことなんだけどね。念のため、追記。本作での長女は次巻以降は次女となります。

第6回えんため大賞 佳作:狂乱家族日記 壱さつめ/日日日

category: あ行の作家

tag: えんため大賞佳作 OPEN 60点 日日日

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