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第18回ファンタジア大賞 大賞:戦鬼 ―イクサオニ―/川口士

戦鬼
(あらすじ)
白みはじめた空に咆哮が響き渡る。突如として邑を襲った狗の群れは、一匹の犬の妖に統率されていた。彼らの狙いは神器と呼ばれる神々の宝具。巫女の梓も狗の牙にかかろうとしていたが、間一髪で彼女を助けたのは、処刑されるために邑に囚われていた鬼・温羅だった。「―――お前、あのときの犬か?」その妖は、仇の片割れ。家族や、仲間、穏やかで平和な日々を一夜にして崩壊させたあの男の従者。温羅は地を蹴って、妖に襲いかかった。

answer.――― 67 点

富士見ファンタジア文庫の作品には作者による<あとがき>の後ろに、<解説>という編集部より誰へ宛てたサービスか分からない口上が付いてくる。本作をレヴューするにあたって、今回はその<解説>中の言葉を少し引用させて貰おうと思う。「オニ、読んだ?」「オニ、どうだった?」「オニが面白かった」「今年は大賞が出るかも!?」―――さて、ここまでざわついて、この表紙。―――お前ら、売る気ねえだろ!?とは作者に代わる弁である。特に意味もなく<大賞>を出さないファンタジア大賞において、珍しくも<大賞>の冠を戴いた本作「戦鬼 ―イクサオニ―」。表紙も表紙なら、タイトルもまた大いに残念なライトノベルだが、ストーリーのモチーフとなっているのも我が国が誇る昔話『桃太郎』とあってはもはや閉口するしかない……のだが、なるほど、大賞作だけあって意外なまでに読ませてくれる。主人公を<鬼>、その行動目的を<復讐>とした設定。要は既存の話の善玉悪玉を逆さまに、単純明快なテーマでゴリ押すだけなのだが、これがこちらの想定以上に新鮮に読めてしまう。もちろん、犬→猿→雉→桃太郎と逆退治の運びに飽きも入る。それでも、善悪が逆になっていると、その事情(ex.桃太郎が鬼退治後、人間を虐殺していく)に対してやはり興味が出てしまう。著者もこの辺を分かっていて第三者たちの思惑も絡め、小出しにその事情を明かしていくのが上手い。上述したように吉備団子軍団との戦闘がイチイチ本格的で辟易したが、こんなつまらなそうな設定で「読ませた」著者の力量は確か。コンスタントに作品を出しているようなので、<代表作>を読んでみたいね。

第18回ファンタジア大賞 大賞:戦鬼 ―イクサオニ―/川口士

category: か行の作家

tag: ファンタジア大賞大賞 OPEN 60点 川口士

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第18回ファンタジア大賞 佳作:黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで/細音啓

黄昏色
1.虹と夜の交叉 ――始まりの、そのさらに前―― 
2.赤と夜の練習歌
3.集まる者の交声曲
4.風が呼ぶ、枯れ草色の思い出を
5.始まりと約束のオペラ
6.誓者が歌う、世界よ黄昏に染まれ
7.君の望みの喜びを ――イヴは夜明けに微笑んで――
8.夜明け色の詠使い

answer.――― 72 点

特定(の色)の触媒と詩を用い、任意の物体や生物を呼び出す<名詠式>と呼ばれる召喚魔法が存在する世界を舞台にしたハイ・ファンタジーな本作。時代の潮流もあり、ファンタジー小説が芽吹くことが難しい現状において、<名詠式>なる魔法体系を全面に押し出すスタイルは読者にちょっとしたタイムスリップ、時代錯誤な感覚に陥らせてくれる。それでも、本作がレトロと揶揄されないのは作者のセンスの賜物。特定(の色)の触媒と詩を用い、……という<名詠式>それ自体はオーソドックスな魔法体系ながら、それ故の普遍性がある。これは新しい!と鼻息荒くなる要素こそないが、ファンタジーとして色褪せない、普遍性の高い設定をチョイス出来ているのが素晴らしい。本作を読んでいて想起されるのは『ハリー・ポッター』シリーズ。魔法学校に通う卵たち、という点もさることながら、「展開」に類似点を見る。それはストーリー的な意味ではなく、日常パートで魅せてからの難敵大暴走といった序破急の構成。本作が型として現代ファンタジーの「王道」を歩んでいることが分かる。簡易な文章は電撃文庫の『七姫物語』を思わせる。読みやすさを追求した部分があるのだろうが、ところどころイメージが湧かない状態になることもあり、その辺はもう少し挿し絵でカバーして欲しかったかな、と。本作の最大の見せ場は、時を超えた約束が続いているシーン。主人公がその約束(ストーリー)のために存在する「脇役」なのが実験的で面白い。作者はコントロール・フリークだね。本作はまた、このライトノベルがすごい!(2010年度)にも第6位にランクイン。ここ数年見掛けられなかった、往年の富士見ファンタジア文庫「らしい」良心的ファンタジー作品。

第18回ファンタジア大賞 佳作:黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで/細音啓

category: さ行の作家

tag: ファンタジア大賞佳作 70点 OPEN 細音啓 このライトノベルがすごい!

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