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第18回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:僕僕先生/仁木英之

僕僕先生
(あらすじ)
唐代、父の財産に寄りかかり安逸を貪っていた王弁は、ひょんなことから地元の里山に住む仙人に弟子入りすることになってしまった。僕僕と名乗るその仙人、しかし容姿は少女の形で……まだ生きる意味を知らないニート青年が、英雄豪傑や魔物と交わりながら人智の及ばない世界に触れる旅を描いた、大型新人の超快作!

answer.――― 83 点

最早、当代を生きる人々にとって聖典とも云えるWikipediaの言葉を借りるなら、幻想文学、あるいはマジックリアリズム的作風を採る傾向にある日本ファンタジーノベル大賞受賞作において、キャラクターが先行するライトノベル風のファンタジーを展開する異色の大賞作『僕僕先生』。あらすじの通り、主人公は父の財産に寄りかかるやる気皆無の道楽息子=ニートであり、ドングリの背の分だけ利発な野比のび太(22才)といった風体。そんな彼が少女の姿をした仙人・僕僕に惹かれ、単なるニートから一念発起、仙人と旅に出るニートとなるストーリー。本作を楽しむ上での助言として、「喜怒哀楽」がテーマとなっていることを明言したい。喜ぶこと、怒ること、哀しむこと、そして、楽しむこと……僕僕に惹かれ、お子様ちっくに嫉妬したりする様はまさに幼年期の初恋を甦らせ、読み手の感情まで豊かにしてくれる。欲情して押し倒すも「君が望むことをボクにしたとしても、ボクは拒まない。天地陰陽の理は、それを濫用するのではない限り推奨されるべきものだ」「……やっぱ、やめます」とすごすご立ち去るヘタレっぷりも見逃せない。本作は、ただ、のんべんだらりと生きていた主人公に喜怒哀楽を芽生えさせた<初恋>の物語。恋する、という行為が何故、人間にとって必要なのかを教えてくれる作品だ。表紙イラストのファンインプレー(雲を引っ張っている男が主人公。コイツが欲情する)も必見。じわじわ笑えてくる。成功作らしくシリーズ化し、現在も刊行中。

第18回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:僕僕先生/仁木英之

category: な行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 80点 仁木英之

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第18回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:闇鏡/堀川アサコ

闇鏡
1.五条河原
2.凶兆
3.寒露九ツ
4.交叉
5.闇の鏡
6.うわなり打ち
7.拾遺

answer.――― 73 点

選考委員が総じて著者の知識のバックボーンを称えた第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した本作「闇鏡」は、現代の警察業務を司る検非違使の物語。疫病に罹った(いや、何者かに毒を盛られ続けた)遊女が出奔した夫を見つけるも、隣には女が……そうして、朽ちる冒頭はおどろおどろしく、室町な時代背景、また、日本ファンタジーノベル大賞の受賞作という先入観もあり、……恨みつらみのホラーファンタジーかな?と読み進めれば、まさかのファンタジー無きミステリー小説だった展開には驚いた。その是非はともかく、やはり本作のセールスポイントを挙げるならば、南北朝の対立が終わった直後を物語の舞台にした一点に尽きるだろう。「鎌倉幕府」発の侍所に業務を奪われ、もはや名ばかりの存在になっていた検非違使を主人公に持ってくるあたりは、大胆を通り越して挑発的でさえある。物語は上述した遊女が朽ちて、葬られた冒頭を無視するように再登場し、腕っ節はあっても肝が小さい検非違使・龍雪に、夫を探してくれるように依頼することから始まる。幽霊、陰陽師、奇怪な殺人事件、侍所との対立、……と読み手にファンタジーと錯誤させ、終盤に「何の不思議もございません!」と種を明かす作風を思い返して感じるのが、著者がその発想に囚われてしまったこと。大前提として、読み手はファンタジーでないことを望んでいるわけではない事実。物語の核には、女の嫉妬が絡んでくる。ミステリー小説の醍醐味はトリックではなく、犯人の動機だ。著者は己のアイディアを際立たせるのを優先してしまったため、クライマックスである女の嫉妬が発露する場面がオマケのように感じられるのが最大の誤算だ。ただ、龍雪など、著者のキャラクターメイキングにはポップなモノを感じたので、次回作に期待したくはなった。

第18回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:闇鏡/堀川アサコ

category: は行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 70点 堀川アサコ

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