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第13回電撃小説大賞 大賞:ミミズクと夜の王/紅玉いづき

ミミズク
1.死にたがりやのミミズクと人間嫌いの夜の王
2.幸福への閾値
3.煉獄の花
4.救出
5.優しい忘却
6.夜の王の刻印
etc…

answer.――― 76 点

森に住まう魔王の下へ、「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」と願う奴隷の少女―――あらすじと、著者がうら若い女性(←当時、大々的にアピールされていた)ということもあって、ソフトな語り口の児童文学的作品かと思いきや、ソフトを磨いてピュアにまで昇華させた佳作だった。白痴を思わせるミミズクの言動と行動には、ただソレが描かれるだけで胸を〆つけられるものがある。女性作家ならでは、とも云える書き口で、現実と照らし合わせて不必要に冷めることもなく、どっぷりと本作招く《夜の森》へトリップさせてくれる。途中、ミミズクの性格が変わるが、この辺は『アルジャーノンに花束を』と同じ手法を垣間見る。挿絵を排除するなど、有川浩へ続け!と出版側の意図が透けて見えるが、そうしたくなるのも分かる大衆小説的な現実観と、ライトノベル的ファンタジー観を兼ね備えた作品。ただ、大衆小説とライトノベルのボーダーレス化を図るなら物語としての締め方にもう少し工夫が必要なのでは?王子の扱いに、所詮、ライトノベル。と見下される典型が見えてしまう。まあ、著者にはそんな大人の事情は関係ないことだし、その典型のお陰で、続刊する『毒吐姫と星の石』を読者的には読みたくなるわけだし。何にせよ、ピュアを描けている点を何よりも推したい暗く麗らかなライトノベル。


第13回電撃小説大賞 大賞:ミミズクと夜の王/紅玉いづき

category: か行の作家

tag: 電撃小説大賞大賞 70点 OPEN 紅玉いづき 人喰い三部作

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第13回電撃小説大賞 金賞:世界平和は一家団欒のあとに/橋本和也

世界平和は一家団欒のあとに
(あらすじ)
星弓家の兄弟姉妹はみんな特殊なチカラを持っている。長女は「災魔」、魔法を自在に操る。次女は「超越」、宇宙スケールで戦うスーパーウーマン。長男は「冒涜」、生命の流れを思いのままにする。三女は「創生」、生命を創りだす力を持っていた。四女は「祝福」、回復魔法の使い手。次男は「破壊」、優しいけれど怪力の正義漢。彼らは世界の危機をめぐる事件に巻き込まれ、否応なくそれを解決しなければならない<運命>にあった―――。

answer.――― 72 点

終わり良ければすべて良し!ならぬ、出だし良ければすべて良し!なんて格言があれば、ライトノベルという隙間大産業には多くの該当作が見受けられると思うが、本作もその一派に属する作品。少し違うのは中盤まで「大当たり!」感を漂わせ、読了前ながらも続編を希望したくなる点にある。事実、改善の要望こそ付けたくなるものの、読了後も続編希望!のスタンスは変わらなかった。そんな積極的評価をさせてくれるのは、家族全員が世界の危機を救うスーパーヒーローでありながら、ごく普通(?)に日常生活を送っている―――なんてデカダン極まりない設定を<破綻なく>描けている点にある。これは巧い!の一言に尽きる。ともすれば白けるギャンブルな設定/世界観には違いないのだが、見事にセンスの良いコメディに仕上げている。兄弟喧嘩で心が躍るなんてそうそうない展開だ。このまま駆け抜けるか!?と期待したところで、終盤のシリアスなストーリーがそれまでの展開を考えると重過ぎた。ヒロイン格の登場人物が予想外に役割を果たせなかったのも問題。点数で満足ラインの<75点>以上を打てなかったのも、この土壇場での展開のアヤにある。ただ、全10巻としっかりシリーズ化したように非常に面白かった。トンデモ設定についていく追っかけ的エンターテイメント溢れる一作。続編を読みたいと思わせるコメディ小説は貴重です。

第13回電撃小説大賞 金賞:世界平和は一家団欒のあとに/橋本和也

category: は行の作家

tag: 電撃小説大賞金賞 OPEN 70点 橋本和也

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第13回電撃小説大賞 金賞:扉の外/土橋真二郎

扉の外
(あらすじ)
千葉紀之が目を覚ませば、そこは密室で、しかもクラス全員が同じ場所に閉じ込められていた。呆然とする一行の前に、“人工知能ソフィア”を名乗る存在が現れる。ソフィアが示したのは唯一絶対のルール“ソフィアに従うこと”、そして、“従っていれば生命は保証されること”。だが、紀之は瞬間的な嫌悪感からソフィアからの庇護と呪縛を拒否してしまう。紀之以外のクラスメイトはその“ルール”を受け入れ、“ルール”が支配する奇妙な日常が始まった……。

answer.――― 69 点

読む時期によって評価が変わりそうな典型的作品。その内容は映画『キューブ』、あるいは漫画『GANTZ』を想起させる密室(限定的空間)を舞台にした理不尽ゲームに強制参加させられるストーリー。読者は頁をめくれば登場人物たちと同じように、唐突にゲームを人工知能<ソフィア>より説明され、状況を把握出来ないまま読み進めることになる。批評精神が育っていると、この冒頭で拒否反応が少なからず出てしまうだろう。指示待ち人間が多いとされる日本人、その高校生たちと云えども、さすがにここまでの現実逃避(ソフィアを受け入れること)はしないからだ。この悪い意味でのリアリティーの無さは、反骨の相を持つ主人公の堂に入った人間観察でも相殺出来ない。ただ、「自我」をテーマに置く本作は、他のライトノベル作品とは一線を画しているのは間違いない。物語を「投げる」ラストシーンにしても、純文学の型をなぞっている。集団心理の扱いが秀逸で、ゲームの設定と合わせて「優」をつけたい。しかし前述の通り、おそらく作者自身も承知の上で、登場人物たちに現実逃避させているので、所々に冷める要素がある。やはり、本に慣れていないだろう中学生時に読むのがベストだ。タイミングが合えば、自分探しのキッカケとなるボクorワタシの名作になるクオリティがある。本作を気に入ったなら、村上‘ノーベル’春樹作品に流れても良いかもしれない。そんなリトマス紙的意味合いも含め、ナマクラ!Reviewsの推薦図書としておきます。注意点として、本作の主人公は草食系のライトノベル読者が苦手とする中途半端な不良です。

第13回電撃小説大賞 金賞:扉の外/土橋真二郎  【推薦】

category: た行の作家

tag: 電撃小説大賞金賞 OPEN 60点 土橋真二郎 推薦

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第13回電撃小説大賞 銀賞:なつき☆フルスイング! ケツバット女、笑う夏希。/樹戸英斗

ナツキ
1.プロローグ
2.真昼に見る夢×ユメの末路
3.バレエ×バイオリン
4.ケツバット女×天使舞う空
5.エピローグ

answer.――― 63 点

選考当時よりの物議を醸しただろう「ケツバット女、笑う夏希。」のタイトル、出版に際しての改題も結局残される「ケツバット」フレーズ、そして、これでもか!とたわわに膨らませたオッパイな表紙―――手に取る前から色モノと決めつけられること必至な本作だが、驚くなかれ。その中身は「古き良き」を真正面から実践する青春Reスタート小説。肩を壊した高校球児から始まる三章仕立ての物語は夢魔というファンタジー要素こそあれ、基本的にはどれもオフザケ無しの<挫折>がストーリーのキーワードとなっている。これだけでもケツバットから想像出来なかったのに、さらに<挫折>を<挫折>としてちゃんと描けているのだから驚きだ。こうなると、何故にケツバットを主軸にしてしまったのかが大いに疑問だが、近年のライトノベルのキャラクター重視の傾向を踏まえての作者なりの工夫なんだろう。本作の最大の欠点は温故知新、温故はあっても知新が見られないこと。話としての面白みはあるけど、ケツバットを含め設定の工夫が古い。バットが武器なんて読者にはギャグにもならないことを気づくべきだった。三五〇頁というボリュームも読者へのサービスというより、作者の都合があるように思える。「俺なら読ませられる」と自分の筆力に自信を持ち過ぎだ。しかしラストの「プールの空」を作れるなら、大衆小説書けるんじゃないかな?ライトノベルに拘らなくても、……と思わないでもない作家性有り。

第13回電撃小説大賞 銀賞:なつき☆フルスイング! ケツバット女、笑う夏希。/樹戸英斗

category: か行の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 60点 樹戸英斗

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