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第3回MF文庫Jライトノベル新人賞 優秀賞:アストロノト!/赤松中学

アストロノト!
(あらすじ)
魔法と科学が調和した不思議な世界。働き者で運動神経の良さだけが取り柄の少年ノトは、幼なじみにして魔法陣師の肩書きを持つ女の子、レンビアに好きいう気持ちをずっと言い出せない日々を送っていた。そんなある日、ノトはなぜか突然「月に行く」ことを決意する。

answer.――― 62 点

08年の「M-1グランプリ」にて放たれた、笑い飯・西田のあの名言を思い出して欲しい……おや、思い出せない?それならば、今やMF文庫Jのパチンコ台『緋弾のアリア』を読んだ上で、その著者である赤松中学のMF文庫Jでのデビュー作、この『アストロノト!』を読んで頂きたい。そうして、頁をぺらりぺらりとめくって内容を把握したら後は一言、さあ、息を吸い込んで―――「思ってたんと違ぁぁーうぅ!」。笑い飯・西田のあの名言、思い出して頂けましたでしょうか?『IS<インフィニット・ストラトス>』、『緋弾のアリア』とアニメ化作品を立て続けに読んだこともあって、(―――マジ、もきゅもきゅ!マジ、もきゅもきゅ文庫!)と元よりの偏見と相俟って辟易し、さかのぼって本作を読むのも億劫になっていたが、いやはや驚いた。表題から察せられる通り、魔法が蔓延るファンタジーな世界でごくごく平凡な少年ノトが突如、宇宙飛行士を目指す、という概要。すぐにパンツにブラジャー、あるいは、オッパイがぷるるん!するんだろうと思いきや、パンツはお披露目されるものの、「軽く」、それでいて、想定外に「丁寧に」主人公の日常を描いていき、―――「月に行かなくちゃ!」と主人公が吠える1章の〆め方は大胆不敵で、著者が単なるもきゅもきゅ作家ではないと見直す事態に。しかし、そこからの「場面」処理はマッハGoGoGoな拙速で、一巻でまとめ切れる話ではない、という巷の評通りなのだが、……何にせよ、あまりに脈絡のない「月に行かなくちゃ!」という主人公ノトの《意志》は謎に満ちていて面白い。何かを得ようと思えば、何かは得られる作品。

第3回MF文庫Jライトノベル新人賞 優秀賞:アストロノト!/赤松中学

category: あ行の作家

tag: MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞 OPEN 60点 赤松中学

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第19回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:厭犬伝/弘也英明

厭犬伝
1.岳稜警
2.厭太郎
3.仇討ち
4.犬千代
5.皇木族
6.汚花林
7.大風洞
8.他人力
9.合前夜
10.帰着点
11.後の事

answer.――― 77 点

―――【仏】、GETだぜーッ!ヾ(ヽ・∀・)パッパッパラッパパパラパヾ(ヽ・∀・)パッパッパラッパパパラパ-!! …………たとえ火の中、水の中、草の中、森の中!土の中、雲の中、幼馴染みのスカートの中!―――eeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeekkkk!なかなか、なかなか、なかなか、なかなか大変だけど!必ずGETだぜ!【仏】、GETだぜ!Yeah、Oh、Ahhh、Oh!Yeah、Yeah、Yeah!東都(イーストタウン)にさよならバイバイ!オレはコイツと旅に出る (力士~!)!鍛えた技で勝ちまくり、仲間を増やしてまた東都へ!いつもいつでもうまく行くなんて保証はどこにもないけど―――そりゃそうじゃ!なんて、100万枚のセールスを上げそうなOPはそこそこに、本作は人間の骸から生えた「汚木」を基に操り人形の「仏」を作り、仏同士を戦わせる「合」という風習がある異世界を舞台にしたファンタジー。何と言っても本作のセールスポイントは、ポケットモンスターを想起させるおどろおどろしい人形格闘「合」だろう。そこに主人公の一流半の実力、彼が扱う曰くつきの【力士】、それが傷つく度に異形の姿に朽ちていく様、対する天才な相手、それを倒すために修行に出掛けた先で出会う未知なる強豪!転じて、師!仲間!(悪)友情!努力!勝利!と出てくる要素を並べてみれば、本作が難しく考えず、……の娯楽ファンタジーであることを理解して頂けるだろう。冒頭はややとっつきにくい、古めかしい書き口だが、選考委員たちからも評価高い「造語」での世界観の演出は実際、○を打てる出来。戦闘描写に力点を置き過ぎて、肝心のドラマが展開し切れていないのが残念だが、中盤での和気藹々と「合」に明け暮れる修行場面など、ライトノベル仕様と云えるキャッチーな場面造りは上々なので、それこそライトノベルレーベルでリリースすればどんな反応になったのか興味深い。イケてない表題「厭犬伝」は主人公・厭太郎と敵対ヒロイン・犬千代の名前の頭文字を拝借した模様。この辺も詰めが甘い。

第19回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:厭犬伝/弘也英明

category: は行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 70点 弘也英明

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第19回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:ブラック・ジャック・キッド/久保寺健彦

ブラックジャックキッド
1.患者はどこだ!
2.VS.ブラック・クィーン
3.遡る日
4.死神と一緒
5.トリオで妄想
6.さらば、B・J

answer.――― 76 点

漫画の神様・手塚治の晩年の代表作として知られる『ブラック・ジャック』。その名は、現代の日本においてはおそらく同名のカードゲームよりも有名で、葉に衣着せたい漫画界のビッグマウス・ラウドこと佐藤秀峰は『ブラックジャックによろしく』なんて見事なサンプリングを行い、読む前から内容以上の衝撃を読者に与えたものだが、本作の表題『ブラック・ジャック・キッド』もそんな成功例に倣った命名だろう。もっとも、その看板だけを拝借して『ブラック・ジャック』と何ら関係のないストーリーが展開する同作と違い、間黒男からピノコ、キリコにブラック・クィーン、メス投げ、黒コート、「南無三!」に始まる台詞、各エピソード紹介―――と、本作はブラック・ジャック(そのもの)になりたい中2病全開の小学生・和也によるイタくてほろ苦い、前提「ブラック・ジャックは読んだことありますよね?」なハートフル・ファンタジーが展開される。「シャーシャーシャ」、―――この台詞が出てくる度に私の胸は高鳴った。というか、マジで爆笑した。「シャーシャーシャ」とは、移動線の効果音である。ブラック・ジャックがピンチなりで走るとき、シャーシャー流れるシャープな移動線、それをイメージして主人公が口にするとき、学校一の快速になる。そして、メス投げはメスが無いとのことで、ドライバーを投げる。全然刺さらなかったが、努力の末、射程距離5~6メートルというスター・プラチナを超える射程距離を手に入れる。2章【VS.ブラック・クィーン】では、小4にしてクラス一の美少女を相手にSEXと知らずSEXに挑む。しかし、そんなコミカルでイタい調子が続くのかと思えば、3章を境に将来の夢はブラック・ジャック(そのもの)!なんて戯言は哀しい現実を前に語れなくなり、4章ではブラック・ジャックからキリコとなって孤独に陥る。しかし、そんな境遇の中、(『ブラック・ジャック』以外の)ファンタジーと親友たちとの出会いに救われ、また「シャーシャーシャ」で〆るドラマはほろ苦くも爽やかの一言に尽きる。『ブラック・ジャック』の既読前提、投げ終わりなラストは明確な欠陥と云えるが、読みやすさとノスタルジー、何より馬鹿なことでも続けるとスーパーマンな結果が出てしまう事実を描いた点が素晴らしい一作。ただ、小学生時点で〆ず、大人になるまで描いて欲しかった、というのが読み手の正直な感想だろう。手間を考えて省いたのか、そもそも思いつかなかったのか。その辺は勿体無く感じるが、個人的には大いに楽しめました。

第19回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:ブラック・ジャック・キッド/久保寺健彦

category: か行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 70点 久保寺健彦

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