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第14回電撃小説大賞 大賞:ほうかご百物語/峰守ひろかず

ブギーポップ
1.美術室殺人事件(未遂)―――或いは、鼬の事
2.ようこそ弱小美術部―――或いは、のびあがりの事
3.美しき闖入者―――或いは、狐の事
etc...

answer.――― 35 点

プロとアマチュア、無いようで確かに存在するその垣根―――ライトノベル界では大人も黙る最大手・電撃文庫、その大賞を戴いた本作。電撃文庫にとってはこの年の≪看板≫を意味する大賞、その受賞作だが、正直、久しぶりに「?」と首を傾げてしまう作品だった。提示されていくキャラクター、山なのか谷なのかを経て、流れていく展開。そこを泳いでいく己の目。本なのに、まるでその辺で見掛けるネット小説を読んでいるかのような錯覚。ライトノベルとしての体裁だけを整えていく本作は、読者に「プロ」らしい仕事を感じさせてくれない、結論として非常に「アマチュア」的な作品だった。レヴューを書くため、とでも思わないと、途中で文字通り放り投げる形でGiveUpしていたかもしれない。プロとアマチュア、その垣根を探るべく、本作と比較する材料として、スーパーダッシュ文庫の『りっぱな部員になる方法。』を挙げておきたい。両作とも似た構成を持ち、見栄えのしないよくある「ふつう」のストーリーなのだが、決定的に違うのは登場人物たちの交わす《会話》の練度。『りっぱな部員になる方法。』には玉露園というプロフェッショナルなキャラクターをアクセントにした会話のリズムがある。ここには泳ぐ目も必ず留まるし、興味も惹かれる。事実上のワンマン小説には違いないが、それでも、アマチュアには描けないSomethingがある。本作にはそのSomethingが無い、あるいは、居ないのだ。著者である峰守ひろかずの刊行ペースはやたら早い。しかし、そんなところでプロになる前に、作家としてまずアマチュアの垣根を越えて欲しい。唯一、妖怪をテーマにしているだけに、そこについての知識の挟み方は良い。

第14回電撃小説大賞 大賞:ほうかご百物語/峰守ひろかず

category: ま行の作家

tag: 電撃小説大賞大賞 OPEN 30点 峰守ひろかず

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第14回電撃小説大賞 金賞:君のための物語/水鏡希人

君のための物語
(あらすじ)
華やかさとも成功とも無縁で、幸福や繁栄は手に入らない対岸のもののように感じられる、そんなひとりぼっちの冬の寒い夜。ひょんなことから死にそうな目に遭った私を救ったのは、奇妙で不思議で美しい「彼」ことレーイだった。出会いと喪失を運んだ不思議な力、老婦人の昔日の想いが込められた手鏡と櫛、天使をも魅了する声を持つ女帝とも称された歌姫、そして「彼」を追う魔術師―私は彼にまつわる不思議な事件に巻き込まれ、そして―――「彼」と「私」をめぐる数奇な運命を綴った物語。

answer.――― 75 点

第14回電撃小説大賞の<本当の大賞>とささやかれている本作『君のための物語』。選考委員の間では、シャーロック・ホームズが引き合いに出されているが、個人的にはフィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を彷彿させた。謎の麗人である「彼」を眺める「私」……といったやや俯瞰的な書き口が主たる要因だが、ホームズにせよ、ギャツビーにせよ、読み手に海外の作品を想起させることが、本作の異色性の現れだろう。さて、本作は【第一章】ですべてが物語れる。形式的には、ひとつの物語を短篇形式で紡いでいく―――ひとつの物語に帰結させる作品だが、【第一章】に入る前の何のことはない挿し絵にまで工夫があると誰が予想出来ただろう?作者か、イラストレーターか、はたまた、編集者か。良い仕事をしていると思う。【第二章】以降は、事実として【第一章】で迎えたクライマックスの余韻に過ぎない。それぞれ粒揃いの話だけに、逆に【第一章】、その完成度の高さに凄味を感じる。本作が大賞を受賞出来なかったのは終盤の必要性を感じない戦闘描写にもあるだろうが、一番の理由は文庫の方向性が変わりかねない可能性があったからじゃないだろうか?この方向に定めたとして、続く作家が現れないのでは意味が無い。実際、本作はやはり偶然の産物のようで、本作以降の作者の作品はどれもあらすじ、レビューを読むかぎり驚くほど迷走気味だ。それだけに、本作は一読の価値があると思う。10年後に本作が何と言われるのか。公式的にはさしてプッシュされていないが、ライトノベルの各レヴューサイトでは推されているので<隠れた名作>扱いされるんだろうね。という訳で、例に漏れず、ナマクラ!Reviewsでもお薦めです。

第14回電撃小説大賞 金賞:君のための物語/水鏡希人  【推薦】

category: ま行の作家

tag: 電撃小説大賞金賞 OPEN 70点 水鏡希人 推薦

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第14回電撃小説大賞 銀賞:under 異界ノスタルジア/瀬那和章

under.jpg
1.コノ世ノ理、知ルベカラズ
2.悪夢ノ招キ、応ジルナカレ
3.魔女ノ宴
4.愚者ノ裁キ、童話ノゴトク
5.人ノ業、ナント罪深キナカナ

answer.――― 67 点

どんなに大好物でも、それが朝昼晩と云わずとも、毎日続けば飽きも来る。読む前から股が濡れそうな英字文句、その横に物憂げなゴシックロリータな少女がルービックキューブを手にした表紙デザイン。正直、……マタコレ系?と食傷気味にため息を吐きたくなるのは一人二人の感想ではないだろう。副題にある通りの<異界>に関わるストーリーラインに、是といった目新しい要素は無い。しかし、ホラーならホラー、バトルならバトル……そんな場面場面の、作者の描いたモノと読者が読んだモノを一致させる高い筆力に支えられた本作は、王道の一作と謳えるなかなかの出来栄え。オリジナリティの観点から、選考委員たちは総じて誉めながらも煮え切らない態度を取って<銀賞>に落ち着けているが、「初めて」このジャンルに触れる読者には<銀賞>以上の高い満足を与えられると思う。と書きつつ、本作ではやはり大勢の食傷に当たったようで、作者は早々に見切りをつけて(つけられて?)次作『レンタル・フルムーン』を上梓。こちらではきっちり好評を得ている。描写など、ライトノベル作家としての潜在能力が高そうなので今後のご活躍も期待しております。

第14回電撃小説大賞 銀賞:under 異界ノスタルジア/瀬那和章

category: さ行の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 60点 瀬那和章

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第14回電撃小説大賞 銀賞:藤堂家はカミガカリ/高遠豹介

藤堂家
1.刀かブラシか 
2.剣士か僧侶か 
3.医者か帝王か 
4.罪か罰か 
5.甘くか辛口か
6.今日か明日か
7.二人か四人か

answer.――― 39 点

ペラペラとめくられる頁から気づくのは、抜きん出たテンポの良さ。選考委員が押し並べて絶賛しているように、その文章力は新人らしからぬものがある。文章が巧いといってもいわゆる語彙が多いとか、起承転結に始まる構成が巧みといったものではなく、右から左へ目を移らせる台詞を中心としたリズム感。まさにトントン拍子と云った感じで、この疾走感は天性のものを感じる。ただ、「買える」のはそれだけだった。早く読める=楽しい、というのはそれこそ天動説だと思う。シリアス(のような展開)のなか、モップで敵を殺す話にはどうにもついていけませんでした。完全なコメディならまだしもね、……ノー「39」ということで( ´,_ゝ`)クスッ

第14回電撃小説大賞 銀賞:藤堂家はカミガカリ/高遠豹介

category: た行の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 30点 高遠豹介

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第14回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:葉桜が来た夏/夏海公司

葉桜
(あらすじ)
アポストリ……身体能力と科学技術に優れた、女性だけで構成される異星人。目が赤い他は、外見的特徴は人間と変わらない者たち。琵琶湖周辺は彼らと人間が共存する居留区となっていた。高校二年の南方学は過去に起きた出来事からアポストリを憎んでいた。ところが、“共棲”と呼ばれる居留区のシステムに則り、一人のアポストリと同居することになる。彼女の名は、葉桜。評議長の姪でもある美しい少女だった。二人は激しくぶつかり合うが、その共棲にはある意図が隠されていて―――。

answer.――― 64 点

おそらく一点の欠点を除けば、本作が良作に数えられる質を備えているのは間違いない。しかし、それだけにその欠点が物語の都合上見過ごせないのが何とも残念な作品。あらすじにあるように、宇宙人(♀)と共棲(≠同棲)することが物語の中核となるストーリーライン。読んで早々に評価したくなるのは、文章力。居留区なんて閉鎖的な場所を用意すると、どうしても<説明>が多くなるものだが、あまりストレスを感じることもなく読み進められる。登場人物の描写も過不足なく、構成でも序盤のうちに設定への疑問、進行する謎を用意して、小出しに解決しながら、読者の注意を引いている。視点の切り替え、回想の入れ方も良い。問題は、作中での時間経過。主人公が数年来抱え込んでいたスモウレスラー級の怨恨が、二日、三日の♀との共棲で「……フン(俺、お前らのこと嫌いじゃないぜ?)」とあっさりと手の平を返す作者との八百長は目に余りある。序盤から恨みつらみが演出出来ていただけに見過ごせない。一巻でオチをつけなければならない投稿作と云えども、展開的には主人公は本作の時点では最後までアポストリへの怨恨を消さなくて良かったと思う。シリーズ全5巻という適度に続刊する事実が示すように、そこそこに楽しめるものではある。とどのつまり、勿体無い作品だ。

第14回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:葉桜が来た夏/夏海公司

category: な行の作家

tag: 電撃小説大賞選考委員奨励賞 OPEN 60点 夏海公司

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