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ガガガ文庫:とある飛空士への追憶/犬村小六

とある飛空士への追憶
「貴様にひとつ、重大な任務を託したい」
「次期皇妃を水上偵察機の後席に乗せ、中央海を単機敵中翔破せよ」

answer.――― 77 点

本作の登場は、センセーショナルだった……それは1つに限らず、幾つもの要因が挙げられるのだが、個人的に一番衝撃を受けたのはAmazon運営推しという、例えるなら東西冷戦真っ只中のベルリンの壁に神風が吹きつけて文字通りの風穴を空け、あまつさえ東ドイツに好景気をもたらしたが如き出来事だ。神風が吹いたのだから当然、売れた―――そして、そこからさらに売れた。そう、本作、本当に面白かったのが読者の南極大陸が消滅したが如きセカンド・インパクトだった。『温故知新』、本作が掲げた旗に書いてある言葉である。温故とはファンタジーであり、知新とは空を駆る飛空機である。空を舞台にしたファンタジーで本作ほどの成功を収めたライトノベルを私は知らない。物語は、貧民出身の傭兵飛空士シャルルが軍より密命を受け、次期皇妃フアナを敵が支配する制空圏を潜り抜け、皇子カルロの元へ届けるというもの。前半の作中世界の地理語り、歴史語りは羅列に近くアマチュア的で、製本されている事実がなければ読む気もしないだろうが、姫を後ろに乗せた後半からはめくるめく逃『飛』行。絶対劣勢の展開、スピード感溢れた描写が秀逸だ。ラストシーンはホロリと苦みを利かせたハッピーエンドで、愛に生きる主人公が傭兵の『すべて』を捨てて行うアクロバット飛行を堪能出来る。前半のスロースタートを見事に忘却する大団円―――ガガガ文庫のエース、その誕生の瞬間だった。ファンタジー好きを標榜するライトノベラーは必読の一冊。

ガガガ文庫:とある飛空士への追憶/犬村小六 (2008)

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 犬村小六

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