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第8回スーパーダッシュ小説新人賞 佳作:逆理の魔女/雪野静

逆理の魔女
1.魔女の秘密
2.歌姫の暴走
3.間奏
4.逆理の理(前)
5.逆理の理(後)
6.エピローグ

answer.――― 52 点

スーパーダッシュ小説新人賞らしい残念な受賞作。表紙の眼帯をつけた娘が本作のヒロインなわけだが、……とりあえず、作家の手腕を試される第一関門「ボーイ・ミーツ・ガール」。主人公とヒロインの《出会い》の場面にて、著者はさっそく己の底を見せて―――失敬、魅せてくれた。ときにライトノベルにおける各レーベルの公募賞において、ボーイ・ミーツ・ガールと云えば「パンツ」、あるいは「タッチ」、もしくは「全裸」の披露がワシントン条約に比肩する《お約束》となっている。上述の作家の手腕云々は《お約束》だけに金太郎飴となっている演出を如何に料理出来るかが、同じ穴のムジナだった下読み先生たちの査定ポイントとなるわけだが、あくまで《お約束》は守られていれば良いものであることを確認しておきたい。ハチ公前ならハチ公前、東口の交番前なら東口の交番前で良いのである。ところが著者、お上りさんだったらしく「やらかした」。俺はその辺のとは違うぜ?とワナビ特有のワナビっぷりを発揮した。著者はこの第一関門で「パンツ」を選択したわけだが、とにかく見せ方が凄酷い。屋上でヒロインがスカートで逆立ちしているところをバッタリ、ボーイ・ミーツ・ガールである。あまりに必然性を感じない演出にバッタリ直後は、……こんな本を買ってしまった自分にガックリである。内容はこの逆立ちヒロインのお手伝いに必然性も無く巻き込まれるパータン。流石にヒロインに魅力が無さ過ぎるので読書を早々に放棄しかけるとは思うが、絶世の歌姫と設定される主人公の姉のブラコン、そして、ジャイアンっぷりが本作の数少ない救いとなっている。せめて、このお姉さんを主人公にしよう(b゚Д゚)ネッ♪

第8回スーパーダッシュ小説新人賞 佳作:逆理の魔女/雪野静

category: や行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞優秀賞(佳作) OPEN 50点 雪野静

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第5回本屋大賞 2位:サクリファイス/近藤史恵

サクリファイス
1.チーム・オッジ
2.ツール・ド・ジャポン
3.南信州
4.富士山
5.伊豆
6.リエージュ
7.リエージュ・ルクセンブルク
8.惨劇
9.喪失
10.サクリファイス

answer.――― 82 点

《自転車ロードレース》を題材とした実(げ)に珍しいスポーツ小説の上に、―――ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと、なんて紛うことなき「脇役」を主役に配すアウトローな出だしから面食らうだろう本作。しかしながら、読み進めていくとこの「型」が実に腑に落ちる。マイナー競技を扱う際、まず気を配るのはその競技の説明だと思うが、そこからエンターテイメントとして成立させるために重要なのは、その担い手たちにつける優劣―――つまりは《何が凄いのか》を伝えることだろう。その観点からすれば、作中、主人公が練習で山を登る場面が著者の施した本作最大の演出場面。《何が凄いのか》の前段階、(読み手自身が)《出来るか否か》を一考させてくれるこのシーンが有るのと無いのとでは作品のその後の印象がガラリと変わるはずだ。マイナー競技をしっかりと宣伝出来ている。さて、そんな形で本作は、序盤、中盤と脇役の主人公を通して「脇役」を必要とする《自転車ロードレース》を不足なく紹介するが、終盤に「転」的アクシデントを起こして推理小説に着地する変則的な構成も見物。残り頁数的にやや唐突にも映るが、お買い得なサプライズには違いない。エンターテイメント作品として「整った」好作。楽しめました。ところで、私はなかなかにBitchと縁があるらしく若干の女性不信の気が元よりあるのですが、本作のヒロインも(……ロクでもねえな)と心から思い、さらに女性不信が深まりましたことをここに付け加えさせて頂きます。

第5回本屋大賞 2位:サクリファイス/近藤史恵

category: か行の作家

tag: OPEN 80点 近藤史恵

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第5回本屋大賞 3位:有頂天家族/森見登美彦

有頂天家族
1.納涼床の女神
2.母と雷神様
3.大文字納涼船合戦
4.金曜倶楽部
5.父の発つ日
6.夷川早雲の暗躍
7.有頂天家族

answer.――― 83 点

京都を舞台に様ざまな“ええじゃないか”騒動を起こし、読者を新規開拓していく森見登美彦。本作においても、天狗に狸、そして、人間という何とも間の抜けたトライアングルを形成&採用し、化かして、吹かして、しんみり、ホロリ……そぉーれ、ええじゃないか!ええじゃないか!とやはり、やっぱりの尻上がりの大騒動を起こす。愛すべきは下鴨4兄弟、憎むべきは夷川早雲―――!といった口三味線、ベンベン!な人情馬鹿騒ぎの主役は、狸は下鴨家三男。面白く生きることを信条とし、ひたすら頑張らずに世間を渡る。初恋の相手は森見文学に付きもののマドンナ、人間は弁天。ある日、天狗にさらわれ、その天狗の地位から財宝、心まですべて奪った豪胆な女。もっとも、マドンナと云っても、著者の出世作『夜は短し歩けよ乙女』における緋鯉を背負うス―パーヒロイン・黒髪の乙女と比すれば、その存在感は譲るところ。あくまで主役は下鴨家の狸たちの人情劇であり、彼女はトリックスター的立ち位置に過ぎない。また、その魅力がイマイチなのは、さらった天狗・赤玉先生のせいもあるだろう。この赤玉先生もまた、森見文学に付きものの駄目男ながら、これがげにつまらない。冒頭、三男と天狗の寂びたやり取りが続くが、お陰さまで森見登美彦、初の失敗作!と早々に本作を認定したくなった。本当、最初から最後までつまらない天狗だった。本作は各キャラクターに張った伏線が堂に入っているのも特徴。森見登美彦というと、自慢の筆力で「ええじゃないか!」する1パターン作家の印象があったが、キャラクターの特性を活かしてきたあたりは作家としての引出しを増やしてきた感じだ。狸が主人公ということでファンタジー色が強く、冒頭の寂ビ寂ビで忌避反応を示したくなるのも十分理解出来るが、それを乗り越えられれば、伏線活かした“ええじゃないか”騒動に快哉を上げたくもなる。―――化けよ蛙、挿せよ末っ子!有頂天家族よ、永遠に!

第5回本屋大賞 3位:有頂天家族/森見登美彦

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 森見登美彦

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第5回本屋大賞 7位:赤朽葉家の伝説/桜庭一樹

赤朽葉家
1.最後の神話の時代 一九五三年~一九七五年 赤朽葉万葉
2.巨と虚の時代 一九七九年~一九九八年 赤朽葉毛毬
3.殺人者 二〇〇〇年~未来 赤朽葉瞳子

answer.――― 79 点

読書中とその読了後に印象が全く変わる作品がある。『GOSICK』で一躍名を馳せた桜庭一樹、<ヴィクトリカちゃんブヒィィ>とその人気に気押されるように、相次いで各権威が「……受賞させちゃう?」と慄いたのが本作「赤朽葉家の伝説」。文学というジャンルにおいて評価されやすい事象のひとつに<時間の経過>を描くことが挙げられるが、本作では旧家である赤朽葉家を中心に戦後から現代までの五〇年余りを三部構成で描いている。作家にとって作中で時間を流すことは存外難しいもので、それが五〇年ともなると当たり前のように間延びしたり、ともすると逆に展開に突飛な印象を与えてしまうため、適当なバランス感覚―――割り切りを求められるのだが、そこは桜庭一樹。自慢の筆力で見事に対応している。しかしながら、その筆力で強引に「読まされた」のも事実。各所で諸手を挙げて礼賛される第一部に比べ、残りの二部は出てきたモグラを叩くように、手厳しい評価が並ぶ。それというのも、本作のエンターテイメント性が赤朽葉家同様、第一部からのヒロイン<赤朽葉‘未来が視える’万葉>に支えられているからだ。故に、赤朽葉万葉がフェードアウトしていくと、何を楽しんで読んでいたのか読者自身、見失ってしまう。ただ、桜庭一樹の筆力が高いために「何となく」読めてしまうのだ。この「何となく」の正体こそ<時間の経過>で、作中で時間が流れていると、読者は知らず読めてしまうのですよ、と。そうして、勢い込んで本を閉じると「……ん?第一部以外、あんま面白くなかったような?」という真実に気づく訳です。読了してみれば画竜点睛欠くものの、出来は十分。文学賞に受賞ないしノミネートされた事実についても考察出来る一冊。

第5回本屋大賞 7位:赤朽葉家の伝説/桜庭一樹

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 桜庭一樹

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第5回本屋大賞 8位:鹿男あをによし/万城目学

鹿男
1.葉月(8月)
2.長月(9月)
3.神無月(10月)
4.霜月 (11月)

answer.――― 83 点

この文体、どこかで見たことがある……と記憶の糸を手繰り寄せていると、思いもよらぬところと繋がった―――『坊ちゃん』、そう、“巨人”夏目漱石の青春小説である。私は『坊ちゃん』の文体が大好きで、―――というよりも、「〇〇した。してやった。」という一文がある種の天啓にも似た響きに感じ、人には見せられない私の日記に同じパターンの文章が「。」に代わり、アテンションマーク(!)となって度々登場している。一例を挙げるならば、酔っていた俺はファスナーを下ろし、ベンチに○×した!してやった!とか。そんな雑談はさて置き、オレ様、千秋さまこと玉木宏を迎え、ドラマ化もされた「鹿男あをによし」。上述のように特徴的な文体に気づけば、本作が『坊ちゃん』のパロディということが分かる。もちろん、ストーリーそれ自体は違う。だが、別になりたくもない教師となって派遣される等、諸々の展開が『坊ちゃん』を下敷きにしているのは明らかだ。作中でも、さりげなく『坊ちゃん』という単語を挟んできたりと、ニヤリ嫌らしいアピールもある。肝心の中身だが、文体から来る面白み以外にも、白熱する剣道の試合の描写など、著者の物真似に終わらない高い文章力が跳梁跋扈。話の着地点はパロディと気づけば大体想像ついてしまうのだが、しっかりお約束通りのもうひと山「転」もあるわけだし、そこは楽しんだ!楽しんでやった!となるのではないだろうか?万城目学の作品はこれが初物ながら、とりあえず、他の作品にも手を出してみようかな……と思わせる出来。作家としては、器用そうなところが良いね。

第5回本屋大賞 8位:鹿男あをによし/万城目学

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 万城目学

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第5回本屋大賞 9位:私の男/桜庭一樹

私の男
1.2008年6月 花と、ふるいカメラ
2.2005年11月 美郎と、古い死体
3.2000年7月 淳悟と、あたらしい死体
4.2000年1月 花と、あたらしいカメラ
5.1996年3月 小町と、凪
6.1993年7月 花と、嵐 

answer.――― 73 点

諸々のレヴューサイトにて、「……気持ち悪い」と、かの海を前にしたラストシーン、惣流・アスカ・ラングレーばりの感想が並ぶ第138回直木賞受賞作「私の男」。その構成は章タイトルからも察せられる通り、各登場人物の視点に切り替わりながら現在から過去へと遡っていくもの。さて、本作はストーリーそれ自体を楽しもうとするよりも、ある種の耐性テストを受けるつもりで臨んだほうが良いかもしれない。なるほど、確かに気持ち悪い―――読んでいる最中、気持ち悪さが過(よ)ぎる。個人差はもちろんあるだろうが、この<気持ち悪さ>は本能に訴えてくるものだ。ここを興味深く(自身で)捉えるのが本作の醍醐味なのだと思う。逆に云えば、自身の反応に対して興味を持たないとやや平坦な展開で、凡庸な作品として片付けられてしまう。そんなテストな面を除いて、一小説として個人的に一番楽しめたのは、完全にエトセトラAで数えていた女が<視点>を携えて再登場した第5章。サプライズ的で、―――ぃよっ、待ってました!と心が湧いた。そう、実は本作、主要登場人物の視点よりも脇役、それもエトセトラな登場人物の視点から描かれるべきだったと思う。そっちのほうが「男」をより興味深く読者に捉えさせられたはずだ。ちなみに、禁忌を扱っている本作だが、目を背けたくなるような過激な描写は少ない、あるいは、無いので逆にご注意を。

第5回本屋大賞 9位:私の男/桜庭一樹

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 桜庭一樹

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