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電撃文庫:プシュケの涙/柴村仁

プシュケの涙
翅を片方失った蝶は
地に堕ちるしかない
涙を流す理由も分からない私は
失った半身を求めて彷徨うだけ

answer.――― 75 点

ハッピーエンドとバッドエンド―――物語の造りを大別するならこの二つになると思うが、私個人の捉え方で云えば四つある。すなわち、ハッピーエンドのハッピーエンド、ハッピーエンドのバッドエンド、バッドエンドのハッピーエンド、バッドエンドのバッドエンドだ。本作は、著者のデビュー作である『我が家のお稲荷さま。』シリーズがPush!されている割にイマイチ伸びに欠けるなかでの起死回生の一作であり、上記の私の個人的な捉え方で云えば、バッドエンドのバッドエンドという極めて珍しい造りを持つ作品。物語は二部構成となっており、夏休み、一人の少女が校舎の四階から飛び降り自殺することから始まる。バッドエンドのバッドエンドという救いのない造りの割に読後に陰射す爽やかさえ感じられるのは前後半、この分けられた二部構成ゆえ。前半の挿絵を絡めた自殺の真相を探る探偵モノの雰囲気は、読み進めていくうちにあくまでオプションであることが分かる。デビュー作より一つ抜けた文章力を持っていた著者だが、(本人が望む望まないは別として)ファンタジーを排した背伸びしない題材を経て、結実した感がある。電撃文庫から出版されながら、間もなく新設のメディアワークス文庫に移されているように、ライトノベルらしからぬストーリーは大衆小説と括っても何ら問題ない。電撃文庫というと、有川浩がライトノベルと大衆小説のクロスオーバーの第一人者となっているが、個人的にはこの柴村仁のほうを推したい。というより事実、作家としての実力は「上」だと思う。幻想的な表紙は読後に「明確な」意味を与えてくれる絶品の出来。本作の大好評からキーキャラクターである由良が登場する「ハイドラの告白」、「セイジャの式日」が編まれ、本作を含めた<由良三部作>として親しまれている。しかしながら、美しい、せつない、とは思うものの、それ以上の「メッセージ」が無いのは勿体無い。そういう意味では、表紙に救われている部分があるのも追記しておく。

電撃文庫:プシュケの涙/柴村仁 (2009)

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 柴村仁

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