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第21回ファンタジア大賞 大賞:神さまのいない日曜日/入江君人

神様のいない日曜日
神様は月曜に世界を作った。
神様は火曜に整頓と混沌を極めた。
神様は水曜に細々とした数値をいじくった。
神様は木曜に時間が流れるのを許した。
神様は金曜に世の隅々まで見た。
神様は土曜に休んだ。
そして神様は日曜に――

answer.――― 64 点

Boom[búːm]―――辞書に[急騰した]、[にわか景気]とあるように、ブームとは実体のないモノorコトに追随すること意味している。ライトノベル界隈で一時期ささやかれた<ゾンビ>ブーム、その噂を皆さんはご存じだろうか? 2008年から2011年に掛けて、各レーベル自前の公募賞に紛れ込むゾンビを扱う受賞作たち。『シロクロネクロ』『シュガーダーク』『これはゾンビですか?』、そして、本稿で紹介させて頂く第20回ファンタジア大賞大賞作『神様のいない日曜日』……出版年度は前後こそすれ、電撃、スニーカー、富士見の三大レーベルだけで「わぁ、ゾンビさんがこぉーんなに、たっくさん♪」である。しかし、このブーム、あまりに実態が無さ過ぎてライトノベルを愛して病んでいるピーターパンたちも乗るに乗れなかった。そもそもの話である。ゾンビで反応する人を私はシネフィルくらいしか知らない。……ブームを作りたいならもう少し考えようぜ? と。本作は神様がいなくなり、人が生まれず、死者は死ななくなった世界の物語。主人公は死者を眠らせられる“墓守”として、幼い頃より死者である村人たちに愛されながら、彼らのための墓を掘っていた。自分へ何かを秘されていることを分かりつつ、追求しない、気づかない子どものふりをし続ける主人公。途中まで電撃文庫の『ミミズクと夜の王』を思わせる主人公の白痴っぷりに期待感もあったが、盛り上がりどころを戦闘に置いてしまったのが残念。展開が凸凹しているため、……これ、プロットあんのか?と首を傾げたが、あとがきに「無茶苦茶なハッピーエンドが書きたかった」とあるので、それは実行出来ている作品。ゾンビブームを頭から切り離して選考させたら、編集部は果たして授賞させていたかしらん?

第21回ファンタジア大賞 大賞:神さまのいない日曜日/入江君人

category: あ行の作家

tag: ファンタジア大賞大賞 OPEN 60点 入江君人

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第21回ファンタジア大賞 金賞:中の下! ランク1.中の下と言われたオレ/長岡マキ子

中の下
1.中の下と言われたオレ
2.憎める顔と言われたオレ
3.頑張り屋と言われたオレ
4.ジェイソンと言われたオレ
5.「イヤだな……」と言われたオレ
etc...

answer.――― 71 点

ファンタジア大賞金賞受賞ということで、賞の品格を汚した!と各所でシュプレヒコールを浴びた本作。その内容は、裏表紙に書いてあるあらすじの通り、勘違い主人公・瀬木成道が、己のランクは「中の下!」と指摘されてから男を上げるため―――モテるために四苦百苦する王道のストーリー。この手の「ブックカバーお願いします」な作品は主人公を受け入れられるかどうかが肝だが、主人公が<勘違い>している設定が実に人を選びそう。やや過剰とも思えるシュプレヒコールも、その辺と無関係ではないだろう。ただ、そこさえ受け入れてしまえば、中の下!と下された現実に自信喪失した主人公が、偶然のデートの約束を取りつけ(、実はモテ)、ダメながら無い頭で一生懸命作戦を練り(、何かモテ)、時に運を味方に校内のアイドルと宿願の誕生日会を催し、事故という形でオッパイを揉み(、やっぱりモテ)、終盤に待つピンチに陥ったヒロインのため、知らず男前の行動を取り、陰でモテモテ―――となる、読者との暗黙のお約束をしっかりと果たしていく公約実行型の作りには、サプライズこそ無いものの、満足度が高い。フェミ男からラブ・ジェイソン、と女子間の陰口が今後どうなるのかも作者の腕の見せ所。一人称によるテンポの良い文章と、自己肯定と自己否定に苛む主人公の可愛げのある葛藤が良い味を出している。ところで巨乳の真弓先生は本作をR-15禁に追い込むくらい、もっと直接的にエロくて良いと思う。パパパ、パイズリくらいしちゃいな(´∀`σ)σ YO!

第21回ファンタジア大賞 金賞:中の下! ランク1.中の下と言われたオレ/長岡マキ子

category: な行の作家

tag: ファンタジア大賞準入選(金賞) OPEN 70点 長岡マキ子

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電撃文庫:紫のクオリア/うえお久光

紫のクオリア
1.毬井についてのエトセトラ
2.1/1,000,000,000のキス
3.If
4.設定&おまけ4コマ

answer.――― 77 点

拙いな、という印象を飛び越えての「ライトノベル」的名作。「ライトノベル」的名作なる呼称を定義させてもらうと、文章が拙かったり、設定に矛盾があったり、不明な点が目立つために真面目に読もうとすると、……?となる作品ながら、批評眼が育っていない、自我芽生え始めた思春期に読むと、―――これは文学に比肩するんじゃないか!?と真剣に勘違いしてしまうライトノベルを指す。とどのつまり、「ライトノベル」的名作とは拙いながらも<文学>の要素を含んだ性質の悪いライトノベルである。そして、本作はまさにソレに該当する逸品。物語は「人間がロボットに見える」という少女・毬井ゆかりをキーパーソンに、その友人である波濤学(♀)を語り部として短編、SF界隈、ダ・ヴィンチ他の各雑誌で高評価を受けた中編、そして、その後日談的短編で構成されている。兎にも角にもクローズアップしたくなるのはやはり、中編「1/1,000,000,000のキス」だろう。親友である毬井ゆかりを襲う悲劇を回避する世界を求め、前章で手に入れた能力を駆使して、幾度となく、―――それこそ無限の選択肢をトライ&エラー、試していく学。この選択し、リセットしていく学の行動はまさしく<文学>で、読み手は粗い設定、粗い文章ながらに謎の深淵に引き込まれていく。<文学>とは人間を描くことであり、登場人物を介して己を見る行為だ。この作品は様ざまな観点で本当に<拙い>のだが、学を介して強制的に何度も人生を繰り返している点がダイナマイト級の仕掛け。端的に云えばこの中編を読むことで、読者は何度も「誤った」人生を追体験出来るのだ。そして、元の世界―――現実に戻れる。文学作品と言われるモノは総じてこの作品と同じ効果があるのだが、残念ながらエンターテイメント性が薄く、読み手にセンス、相応の経験が求められてしまう。本作では人間がロボットに見えたり、殺人鬼が現れたり、謎の組織に誘拐されたり、並行世界を行き来出来たり、……まあ、曖昧な<文学>なるものをうっすら理解出来るという意味で【推薦】しておきます。しかし、中高生に読ませると、本当にライトノベルばっか読む言い訳を与えさせる作品だな……。

電撃文庫:紫のクオリア/うえお久光 (2009) 【推薦】

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 うえお久光 推薦

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