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第5回MF文庫Jライトノベル新人賞 佳作:ラグナ・クラウン/三門鉄狼

ラグナ・クラウン
1.薔薇世紀0093
2.『セントラル』発進
3.そして戦いのとき
4.騎士の告白
5.薔薇の牙城

answer.――― 58 点

“薔薇の悪魔”と呼ばれる生物に、人類が大地を追われて一世紀弱。浮遊都市に逃れた人々は、“薔薇の悪魔”より学んだ超常の力“薔薇術”を操りながら、いまだ長き戦いを続けていた―――なんて設定の本作だが、今風に置き換えるなら、突如出現した“天敵”巨人に、人類が大地を追われて早一世紀。三重に築かれた「ウォール・マリア」「ウォール・ローゼ」「ウォール・シーナ」という巨大な城壁の内側に逃れた人々は、巨人に対抗すべく開発された“立体機動装置”を操りながら、いまだ長き戦いを続けていた。……となるように本作、漫画『進撃の巨人』と設定がなかなか見事にかぶる。そして、この“薔薇の悪魔”が宇宙人ということが解れば、つまり、巨人の正体は……!と適当なことを並べても良いが、時間の無駄なので―――本作を読むなら、素直に『進撃の巨人』を読もう!と。ただ、『進撃の巨人』は面白く感じて、何故に似た設定を持つ本作はそうでもないのか?なんてことは考察してみても良いかも知れない。城が動いたり、の要所でのダイナミックな演出は〇。

第5回MF文庫Jライトノベル新人賞 佳作:ラグナ・クラウン/三門鉄狼

category: ま行の作家

tag: MF文庫Jライトノベル新人賞佳作 OPEN 50点 三門鉄狼

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第21回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:月桃夜/遠田潤子

月桃夜
1.海のはなし 1
2.島のはなし 1
3.海のはなし 2
4.島のはなし 2
5.海のはなし 3
6.島のはなし 3
7.海のはなし 4

answer.――― 78 点

遭難するカヤックに降りてきた鷲が語る物語。その舞台は、薩摩に支配された奄美―――そこでは砂糖がすべてであり、砂糖を産み出すための徹底した階級社会が成り立っていた。ドストエフスキー、森鴎外の作品の「理不尽な何か」に惹かれたという著者らしく、何ともサディスティックなシチュエーション。そして、そんな過酷な環境下でボーイ・ミーツ・ガールを果たす主人公とヒロインはともに両親を亡くした農奴の上、齢は順に七と五と、設定それ自体からも世に見捨てられた存在。<健気>という言葉はメリケンが訳せば<BRAVE>となるのは有名な話だが、本作は「メリケンよ、これが<健気>というものだ!」と涙を流して説きたくなる悲運のファンタジー。幼少の頃に誓った義兄妹の契り、そして、山の神への願いがどこまでも二人を苦しめる。絶対に逃れられない運命に抗うべく、主人公がわずかな希望を託し研鑽し続けた囲碁が、薩摩からやってきた侍の目に留まった……なんて宣伝文句のような言葉を並べてしまったが、本作には期待してしまう展開、そして、鷲が語っている事実から察せられる受け入れ難い予感が交錯する。ただ、物語の終着地点での読後感は人それぞれと予想は出来つつも、それが是でも非でもBoo!垂れることはないクオリティに仕上がっているとは思う。何にせよ、<健気>な一作。序盤早々、二人が義兄妹となるシーンは涙腺が決壊すること必至の名場面。ライトノベラーで『ミミズクと夜の王』に胸を打たれた人なら本作でも確実に打たれるので、……大人の階段(ファンタジー)を登りたくなったらどうぞ。

第21回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:月桃夜/遠田潤子

category: た行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 70点 遠田潤子

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第21回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:増大派に告ぐ/小田雅久仁

増大派に告ぐ
(あらすじ)
親に虐待される14歳、誇大妄想に囚われるホームレス。うらさびしい巨大な団地で孤独な魂がこすれ合い、喜びと憎しみの火花を散らす。男がつぶやく「増大派」とは、いったい誰のことなのか? じわじわと厭な気持ちになるのに、ページをめくる手が止まらない! 狂気に憧れたことのあるすべての人へ贈る挑戦状的作品。

answer.――― 75 点

誇大妄想にとりつかれたホームレス、どうしようもなく狂気に惹かれる14歳の少年の二人の視点で描く「人の底」な物語。本作にいわゆるファンタジーらしいファンタジーは無く、「壊れた」大人と「壊れかけ」の少年のひたすら陰鬱な言葉が連ねられていく。双方に共通するのは父から端を発した転落で、救いのない展開、思考の変遷など、選考委員が著者へ純文学の転向を期待、促すなりの説得力のあるものとなっている。もっとも、回想を除けば、「壊れた」大人の増大派が云々という思考吐露は排便を垂れ流すような嫌悪感の演出でしかなく、それがセールスポイントであるとはいえ、如何せん、思考それ自体に意味が無いので読み続けるのは苦痛だ。となると、やはり、本作のメインは「壊れかけ」の少年パート。自分のこれから先―――辿り着く先が、世間が倦んでいる「壊れた」大人である予感、そして、それを回避することが難しい絶望を、小便と来たら大便と繋げるリミッターを外したどす黒い語彙で紡いでいく。少年の顔の傷痕、いつしか離れた悪友、己を虐待する父の悪事など、少年が抱え込んでいる《事情》は終盤に全て明かされる。この辺が純文学特有の秘すれば、……とは一線を画す造り方で、お高く止まらずの歓迎したい著者のエンターテイナーぶり。個人的ハイライトは、少年が父親の怒りを買い、ガラスに頭を突っ込みながらも狂ったように嗤った《事情》。まさかの救いの演出とは思わなんだ。とりあえず、(―――俺は気狂い!このどす黒い想いをどうすりゃいいんだ!?)という自負を抱えて悩める中二病罹患者は、そのどす黒い想いのままに筆を執ればこれくらいの文章が書けるはずなので、いっそどす黒い作家になってみたら如何でしょうか。

第21回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:増大派に告ぐ/小田雅久仁

category: あ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 70点 小田雅久仁

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第11回えんため大賞 優秀賞:空色パンデミック1/本田誠

空色パンデミック
1.見知らぬ彼女の敵討ち
2.キス騒動
3.女装のススメ
4.躍る舞台と君の本音
5.夏の終わり、別離は唐突に
6.セカイを敵にまわす時

answer.――― 74 点

中二病を題材にする作品は多々あるが、その際の作品への落とし込め方は、キャラクターへ病的、狂信的に反映させて、作品をある種のホラーテイストに染める仕掛けとして扱うか、あるいはその真逆、《イタい》を軸に主観&客観を交えてのコメディとして扱うか、の二つに大別出来ると思うが、本作は中二病を「空想病」なる文明危機招くアラートな病として昇華させたインテリジェントな一作。物語はボーイ・ミーツ・ガール。何の変哲もない草食系男子高校生が「空想病」罹患者のヒロインと出会い、言葉でしか知らなかった「空想病」とそれを政府レベルで管理する現実を目の当たりにしながら、自らも「空想病」に携わる「キャスト」の一人として巻き込まれていく、という流れ。全体的な雑感を先に述べれば、とにかくこの作家、分かってるな、……と。各場面、展開が理詰めで演出されている。「流行り」の中二病と「定着」したセカイ系をリンクさせた世界で、Teenが「普遍」的に求め続けるボーイ・ミーツ・ガールで始まり、あたかも目の前に在るような「風変わり」な日常を描く。―――ここまではその辺の作家でもセンス一本で出来てしまうことも多いのだが、そんなセンスに頼んで創っていると盲点となるのが、自作への「否定」の選択肢が消えてしまうことだ。作品の中に出てくる作品、いわゆる「作中作」は多くの作家が踏み外す分の悪い仕掛けのひとつ。出来の不出来にかかわらず、「作中作」は前提、読み手の読書を妨げる演出(理由は推して知るべし)で、入れざる得ない場合、相応の工夫が求められる。《演じる》というキーワードを基に編まれただろう本作でも、「作中作」は当然のように挿し込まれ、案の定の読み手の集中力を削ぐ水差し場面となったが、そこから文字通りの《アドリブ》で「作中作」を自発的に壊してくれた。その他にも、サブヒロインの性別、息づく360°な「転」展開、雪だるま式の被害拡張といちいち演出に理が根づく。題材的にコメディ要素も兼ねている弊害で、どうしてもシリアスに捉えきれない難があるが、タイプミスとさえ錯覚させる残り一頁で「この話はセカイ系です(笑)」と告げる著者の遊び心が憎らしい。ややいぶし銀の作風ながら、ライトノベルの典型的良作。この作家は続刊させて伸びるタイプじゃないから、編集部は単発モノで「代表作」を創らせなさいな。

第11回えんため大賞 優秀賞:空色パンデミック1/本田誠

category: は行の作家

tag: えんため大賞優秀賞 OPEN 70点 本田誠

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