ナマクラ!Reviews

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第1回GA文庫大賞 優秀賞:這いよれ!ニャル子さん/逢空万太

這いよれ!ニャル子さん
1.序
2.第三種接近遭遇
3.幕間
4.未知なる学舎に夢を求めて(ロマン的な意味で)
5.幕間
6.地球の静止する日
etc...

answer.――― 60 点

出版物それ自体の数は伸びていても、売上に繋がっていない現在……衰退著しい出版業界において、堅調に売上を伸ばしているライトノベルという未開拓地は魅力的なのだろう。昨今、ライトノベル専門の新興レーベルの相次ぐ誕生が止まらない。インターネット事業、携帯電話事業において、業界の暗黙の了解を無視した0円攻勢で革命を起こし続けるソフトバンク。彼らが次に(中休み的に)目をつけたのは、出版事業だった。特段のコンセプトなく設立されたGA文庫。本作はそんなGA文庫主催の公募新人賞「GA文庫大賞」の第1回<優秀賞>受賞作品であり、『神曲奏界ポリフォニカ』と並ぶ、GA文庫の看板作品。その内容は、悪玉の宇宙人の誘拐ターゲットにされた主人公が善玉の美少女宇宙人に守られるというもの。ジャンルとしてはラブコメで、ストーリーの背景に「クトゥルー神話」をアクセントに置いているのが特徴。可愛い女の子が戦う、という昨今のライトノベラーの需要を満たすファーストフード的作風―――そのためにメディア展開も早く、また、それを見越しての編集部からの授賞が透けて見える。作品としては凡庸で、一巻の時点では決して面白いと云えるレベルではない。イラストで買った、という意見があれば説得力を持ってしまいそうな感じだ。意外なところに着目してみると、本作、終盤まで実質、主人公とヒロイン「だけ」しか登場しない。それに意味があるのかはともかく、あまり見たことのない展開に、素直に「……よく書けるなぁ」と感心してしまった。既刊で8巻。堅調な出版ペース。このあたりは、プロの仕事だね。

第1回GA文庫大賞 優秀賞:這いよれ!ニャル子さん/逢空万太

category: あ行の作家

tag: GA文庫大賞優秀賞 OPEN 60点 逢空万太

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第16回電撃小説大賞 大賞:幕末魔法士 -Mage Revolution-/田名部宗司

幕末
1.刻印の夜
2.赤眼の志士
3.攘夷の凶刃
4.幕末夢幻
5.夢うつつ

answer.――― 62 点

時は幕末、と紋切り型のその出だしだけで、さて、これはアタリかハズレか?と構えてしまうのは司馬遼太郎以来の功罪なんだろう。幕末とくれば、Mage(メイジ)―――開国と攘夷に揺れるその時、魔法が石炭、石油以上に求められる時代。大阪適塾に学ぶ若き蘭学者にして魔法士の久世伊織は、塾長の命を受け、一冊の魔道書を翻訳するために出雲国松前藩に赴く。実際の幕末期を下敷きにした世界に、魔法というファンタジーを溶け込ませた、Oneアイディア・ファンタジーの本作。坂本龍馬に当たる登場人物をパートナーに物語は進むのだが、前半、この坂本龍馬役が予想外に良かった。というのも、別に著者の力量云々とは別に、坂本龍馬―――という予備知識の元に読めるために、それらしい行動を取られると条件反射的に良く映ってしまう。この辺は作者も上手いことその恩恵を生かしているな、と思っていると、やはり幕末とファンタジー(魔法)の相性の悪さか。魔法が前面に出てくると、格好良い「侍」が誰もいなくなってしまった。こうなると、幕末と耳にして心揺さぶられる日本人は白けてしまうだろう。歴史を含めた世界観をきっちり描きたいためか、説明が多いのもマイナス。アタリかハズレか?との答えで言えば、ハズレの幕末モノだろう。ただ、キャラクターたちの台詞回しがこなれているので、著者には次回作に期待。

第16回電撃小説大賞 大賞:幕末魔法士 -Mage Revolution-/田名部宗司

category: た行の作家

tag: 電撃小説大賞大賞 OPEN 60点 田名部宗司

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第16回電撃小説大賞 金賞:ヴァンダル画廊街の奇跡/美奈川護

ヴァンダル
1.序章  俵屋宗達『風神雷神図』/京都国立博物館
2.第一章 グスタフ・クリムト『接吻』/オーストリア絵画館
3.第二章 フィンセント・ファン・ゴッホ『ひまわり』/フィラデルフィア美術館
4.第三章 ウジェーヌ・ドラクロア『民衆を導く自由の女神』/ルーヴル美術館
5.第四章 パブロ・ピカソ『ゲルニカ』/ソフィア王妃芸術センター
6.第五章 レナード・ウィンズベル『ノートルダムの凱旋』/所蔵不明
7.終章 作者不詳『恵奈』/個人展
8.断章 ヨハネス・フェメール『真珠の耳飾りの少女』/マウリッツハイツ美術館

answer.――― 58 点

―――芸術に、その自由を!決め台詞のように放たれるこの一文が作品の四隅が狭いことを象徴するメッセージとなっていることは、読了した方ならばご承知の通り。<自由>をテーマに掲げながら、実に窮屈な本作。あらすじとしては、あらゆるプロパガンダが禁止された世界で、アート・テロリスト「ヴァンダル」が旧世代のプロパガンダとして扱われる絵画を解放するというもの。芸術を題材に選ぶ場合、注意しなければならないのは<お喋り>にならないことだと思う。知識を披露することは良い。例えば、ダ・ヴィンチは膨大な素描、スケッチを残しながら、完成品を作れない<アマチュア>的画家だった……など、否定的な面を披露するような展開があったとすれば、さして芸術に興味のない読み手には新鮮に響くと思う。ただ、ファンタジーな世界に現実の作品、その知識を織り交ぜるとどうなるか?窮屈、とそれを表現させてもらう。本作は語彙豊富な作家が陥りがちな、書き過ぎな作品。それでいて題材に作者のセンスが追いつかなかった印象が強い。余白の多い文章で本作が書かれれば、また印象が変わると思う。一時期、ジョークのように持て囃された『しにがみのバラッド。』は稚拙な文章ながら、芸術(or芸術家)のソレっぽさを表現出来ていた。書けば良い、というものではないのだ。また、ヒロイン・エナの常にイーゼルを背負うデザインはアクセントとしては良いかもしれないが、日常風景の上ではどうなんだろうね?選考委員も指摘する‘追い手’ゲティスバーグ側からのストーリーが読みたかったな、と。

第16回電撃小説大賞 金賞:ヴァンダル画廊街の奇跡/美奈川護

category: ま行の作家

tag: 電撃小説大賞金賞 OPEN 50点 美奈川護

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第16回電撃小説大賞 銀賞:ご主人さん&メイドさま ―父さん母さん、ウチのメイドは頭が高いと怒ります/榎木津無代

ご主人さんメイドさま (203x290)
(あらすじ)
高校生の五秋陣が帰宅すると、メイド服を着た少女が待ち構えていた。メイドさまと名乗ったその少女は、10年前に五秋にメイドとして仕えるという約束をしており、それを果たすために五秋の家に現れた。メイド大好きオタク高校生と、傲岸不遜な金髪美少女との主従逆転ドタバタラブコメディ!

answer.――― 40 点
久方振りに頁を捲り続けて、―――……(: ゚Д゚)ポカーンとなったものの、考えてみれば、ライトノベルってそもそもはこんなものだったよな。と、教室の片隅でグフフフ(΄◞ิ౪◟ิ‵)グフフフとライトノベルを読んでいたサードチルドレンを思い出し、いやいや、あれこそ迫害を恐れないヲタクの中のヲタクの姿だった!と改めて昨今のヲタクぶった一般人に反吐が出る思いを抱いた私は、そんなサードチルドレンと同一視されることを恐れ、「俺はヲタクじゃない!ヲタクじゃない!」と実際に声にしてさえ主張していた世間的にヲタクと見做されていた者です。なんて余談はさて置き、本作は『ご主人さん&メイドさま』という逆転している敬称の表題からも察せられるように、台詞の勢いとメイドなヴィジュアル、ちょいエロで攻め立てるラブコメディ。隙間産業と云えた《ライトノベル》というジャンルも、製品ライフサイクルで云えば成長期からいよいよ成熟期に差し掛かり、担い手(作家)それ自体が新人でも相応の才能、方法論を携えて投稿、デビューを果たす現在、「護種神力」「命努力」「豪崩死」といったダジャレ全開のセンスは―――……(: ゚Д゚)ポカーン必至で、読みやすさを重視しました!という主張もあるだろうが、バーコードを曲がりなりにも付けるんだからさ……。と窘めたくなる勢い任せなギャグ&文章を含め、選考、何よりその過程に疑問を投げ掛けたくなるクオリティ。それでも、序盤の山場「――お風呂でも沸かしましょうか」からの勃起即「死」!な件は上々なので、そこは立ち読んでも良いと思う。読んでしまった人を「……残念」にしてしまう詐欺な受賞作。

第16回電撃小説大賞 銀賞:ご主人さん&メイドさま ―父さん母さん、ウチのメイドは頭が高いと怒ります/榎木津無代

category: あ行の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 40点 榎木津無代

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第16回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:蒼空時雨/綾崎隼

蒼空
1.ヤコブの梯子で雨宿り
2.雨、ときどき嘘
3.哀しい雨には濡れないで
4.日の照りながら雨の降る
5.君の隣なら雨宿り
6.君がくれたもの

answer.――― 74 点

紛うことなき大衆小説―――読了と言わず、おそらく数頁とめくって下される読者の本作に対する結論だろう。ライトノベルの最大手、電撃文庫。現在のライトノベルのファースト・インプレッションとも云える「萌え」を開拓、拡張し続けた功績を持つこの文庫は、「萌え」に代わる新たな路線として、大衆小説との融合、ボーダーレス化を選択したのは巷で知られるところ。その専門レーベルとして設けられたメディアワークス文庫(以下、MW文庫)は未だ試験的な位置から抜け出ていないと思うが、―――まあ、本来なら大衆小説の書き手になっただろう作家が現在、ライトノベルの読者なんだろうからね。必然的にMW文庫の書き手は集まるわけなんだから、あとは旗手待ちといったところなんでしょう。戻って、本作。レヴュー冒頭に書いたように、完全な「大衆小説」となっている。ライトノベル特有のキャラクター性、台詞回しは希薄で、オープニングこそ渋面を作りたくなるご都合が発動するものの、そこからは正統派な青春小説。読者というよりも、登場人物たちへ始終に張り巡らされた<嘘>が見所で各章、それぞれの登場人物からの視点で作られ、(やや力業に映るものの)一纏めな相関関係を成立させる。終盤のごった煮感は、メインヒロインの三角関係清算劇を見事にアシスト。……もう、誰でもええから選べや!と恋人選択への不快感を打ち消す、読者への適当なストレスの掛け方が技巧的だ。選考委員も指摘している通り、場面が浮かばない描写的な難こそあれ、一人称は非常に読みやすい。ただ、読了後、おそらくほとんどの読者が手放しで誉めたくないのは、本作に<ライトノベル>の強味が無いからだろう。本作が大衆小説として出版された場合、また評価が変わる気がする。ちなみに、私の場合、70点を点けると思う。<ライトノベル>という隠れ蓑で、本作は評価が上がっている。選考委員奨励賞に留まっている理由はその辺が関係しているのかな、と。その点で、この第16回でメディアワークス文庫賞を受賞している『〔映〕アムリタ』は紛うことなきライトノベル。MW文庫の進路をしっかりと示している。

第16回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:蒼空時雨/綾崎隼

category: あ行の作家

tag: 電撃小説大賞選考委員奨励賞 OPEN 70点 綾崎隼

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第16回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:空の彼方/菱田愛日

空の彼方
(あらすじ)
王都レーギスの中心部からはずれた路地に、隠れるようにある防具屋[シャイニーテラス]。陽の光が差し込まない店内に佇むのは女主人ソラ。彼女の店には、訪れる客と必ずある約束をかわすルールがある。 それは生きて帰り、旅の出来事を彼女に語るというもの。店から出ることのできないソラは、旅人の帰りを待つことで彼らと共に世界を旅し、戻らぬ幼なじみを捜していた。ある日、一風変わった傭兵アルが店を訪れる。彼との出会いが、止まっていたソラの時間を動かすことになり――。

answer.――― 65 点

ずっと面白い小説を読み続けたい大人たちへ―――をキャッチコピーにしている、メディアワークス文庫(以下、MW文庫)。その役割はライトノベルを卒業した読者の再獲得、一般文芸の読者の取り込み、という野心的なモノ。第16回では『〔映〕アムリタ』『蒼空時雨』、そして、本作『空の彼方』がその尖兵としてドロップされた。さて、読了して分かることはこの三作、新興レーベルにありがちな文庫のコンセプトに<幅>を持たせたる作品となっている。一例として挙げるなら同じ選考委員奨励賞を受賞した『蒼空時雨』が完全な大衆小説に対し、本作は完全なライトノベル。敢えてMW文庫から出版することに意味は無いだろう。それでも、あらすじから予想される通りの事後談、内省的な話に派手さは無く、全七章を通じて、数奇な巡り合わせで女主人ソラの止まった時が動くまでを楽しむには、読み手に最後まで「読み待つ」、大人な態度が望まれる。そういう点で、MW文庫っぽさはある。とどのつまり、非常に地味な話!と切り捨てて構わないほど地味な作品なのだが、ソラの幼馴染みが還ってくるシーンはお約束とは云え、心に染みる。選考委員が指摘するように登場人物の書き分けがイマイチ。また、その出てくる登場人物たちに飛び抜けた魅力が無いのが残念だが、未だ晴れないファンタジー不況のなか、魔物闊歩するド真ん中のファンタジーを書いてきた著者にはミドルネームに<ラッキー>を与えたい。

第16回電撃小説大賞 選考委員奨励賞:空の彼方/菱田‘ラッキー’愛日

category: は行の作家

tag: 電撃小説大賞選考委員奨励賞 OPEN 60点 菱田愛日

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