ナマクラ!Reviews

06/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31./08

第22回ファンタジア大賞 金賞:カナクのキセキ 1/上総朋大

カナクのキセキ
(あらすじ)
千年前、マールと呼ばれる深紅の髪の魔女がいた。マールは、世界を放浪しながら“魔法”を人々に授けた尊き女性だ。魔法学校を卒業した僕は、ある目的を胸に秘め、彼女が大陸各地に遺した石碑を独りで巡ることを決意した、のだけど……。「私はあなたの石碑巡りについて行くって決めたの!」学校一の魔法の天才にして美少女ユーリエが、なぜだか突然ブチ切れ、僕の旅に同行することに。それは甘く切ない恋の道のり、そして、思いがけない真実へと至る不思議な旅の始まりだった。

answer.――― 68 点

ライトノベルにかぎらず、剣と魔法の出てくるファンタジーに付き物なモノとは何だろうか?答えは、<説明>。そして、字数を相当数要することとなるソレは、ライトノベルというジャンルが確立した現在、忌避される要素でもある。仮にファンタジーをテーマに投稿作を制作するならば、如何に<説明>を省き、読者を己の創造するファンタジー世界へと誘うかが課題となるだろう。<説明>を省くことは、一定以上の技量が必要なのである。上記のあらすじ通り、日本ファルコムの誇る人気ゲーム『英雄伝説』シリーズの第三作『英雄伝説III 白き魔女』とストーリーが似過ぎ……と、騒がれた本作『カナクのキセキ』。そんな疑惑はさて置くとして、冒頭から学校卒業までの展開は、簡素ながらも十二分に世界観を伝えてくれる書き口で、モダン・ファンタジー!と称えたくなるクオリティ。簡素な文章を用いたファンタジーというと、ライトノベルでは電撃文庫の『七姫物語』が思い浮かぶが、学校から舞台をスタートしている点で本作のほうがより身近に感じられるだろう。これは『狼と香辛料』以来のファンタジー作品のヒットが生まれたか!?と期待に胸を膨らませると、前半の途中で己の完全な勇み足だと気づく。本作、著者が狙って簡素に仕上げてきたのではなく、むしろ結果的に簡素になっているだけの力量不足のファンタジー。読みやすいには違いないのだが、場面(イヴェント)の「厚み」が足りず、作品世界に踏み込もうとすると、すぐに次の場面に移ってしまうパターンが頻出。名作の盗作云々と騒がれているように、ストーリーは涙そうそうの出来なので、それだけに勿体無い。あとがきを読むかぎり、著者は自信家のようなので、ここは一度謙虚になって作家としての土台を叩き直して欲しい。構成自体は、石碑の謎かけを含めても上手い部類に入ると思う……なんてやんわりとした発言で分かるかもしれませんが、ええ、私、件の『英雄伝説III 白き魔女』をプレイしたことがございませんので、パクり云々は度外視して評価しております。

第22回ファンタジア大賞 金賞:カナクのキセキ 1/上総朋大

category: か行の作家

tag: ファンタジア大賞準入選(金賞) OPEN 60点 上総朋大

[edit]

page top