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徳間文庫:楽園まで/張間ミカ

楽園まで
(あらすじ)
雪が降り続ける世界。普通の人と目の色が異なるオッド・アイの少女ハルカと弟のユキジは、異能を持つために悪魔と呼ばれ、教会に追われていた。ハルカは心を失った双子の弟ユキジの手を引いて「楽園」を探す。旅の最中に出会った青年ウォーテンは二人が悪魔であることを知っても態度を変えなかった……一方、悪魔を狩る役目を担う「狩人」の青年ルギは、教会に疑問を抱き始めていた。ハルカとユキジは、「楽園」の在り処を知るが、「狩人」たちに追い詰められて……。

answer.――― 63 点

第5回トクマ・ノベルズEdge新人賞受賞作―――と耳にして、ピン!と耳を立てた貴方、人間のフリをしたウサギか、あるいは、余程のライトノベル好きと見た!などと早々に自己擁護のための布石を打つ私、Medeski。今回はaskさんより持ち込まれた企画から本作をレヴューすることに。とりあえず、浅く狭くの浅学な私はトクマ・ノベルズEdgeの存在に「えっ、そんな文庫あんの!?」と驚きました……なんて余談はここまでに、さっそくレヴューをば。あらすじの通り、双子の姉弟による<楽園>を目指す逃避行モノ。本作のセールスポイントに挙げられる仄かに薫る死や絶望的な雰囲気は、降り止まない雪という設定をアクセントに全編で機能。壊れた弟を連れ、<楽園>という言葉に縋り続ける少女の様が何とも哀しい。ただ、上記のように絶望の雰囲気が作中を通して機能しているのは良いが、ストーリーに起伏が乏しいのが最大の問題点。狩人側への視点切り替えなどがあっても、彼らに魅力が皆無のため、右から左への<横滑り>とも云える頁のめくり方をしてしまう。この手の問題の解決策としては、主人公に異端の「力」ではなく、音楽や絵画への「技能」、「才能」を持たせるべきだと思う。そうすることで、セールスポイントである<雰囲気>を損なうことなく、ストーリーに変化を与えられる筈だ。また、教会による支配、旅をする、異端者……という要素から、本作は電撃文庫の『キーリ』を想起させる。私は『キーリ』に対してやや厳しい見方をしてしまったが、それは読んだときの年齢に関係しているとも思う。まだ10代、ティーンズスピリットを持つ方には『キーリ』、そして、本作のか弱くも力強い逃避行は心に残るものになるかもしれない。とりあえず、世界観の演出に関しては二重丸の出来な作品。誰もいない、静かなところで読むことをお薦めします。

徳間文庫:楽園まで/張間ミカ (2009)

category: は行の作家

tag: トクマ・ノベルズEdge新人賞 OPEN 60点 張間ミカ

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集英社文庫:毒笑小説/東野圭吾

毒笑
1.誘拐天国
2.エンジェル
3.手作りマダム
4.マニュアル警察
5.ホームアローンじいさん
6.花婿人形
7.女流作家
8.殺意取扱説明書
 etc...

answer.――― 63 点

さすが東野圭吾~。と心の内でつぶやいてしまった短編作品集。ポイントは、この語尾を伸ばした「~。」の部分。本作、さすが東野圭吾!とアテンションマークを点ける程の面白さはない。「エンジェル」「ホームアローンじいさん」「殺意取扱説明書」「つぐない」、この辺りは素直に楽しめた……が、全体的に痒いところに手が微妙に届かないのはオチに意外性が無いからか。出だしの期待感が勿体無い。しかしエンターテイメントの面では、晩年の《ショートショートの広場》よりは上。冒頭の「さすが東野圭吾~。」の「さすが」はそれと比較して出てきたワケです。付け加えるなら「エンジェル」のグロテスクは社会性もあり、興味深い出来映え。

集英社文庫:毒笑小説/東野圭吾  (1996)

category: は行の作家

tag: OPEN 60点 東野圭吾

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第23回ファンタジア大賞 大賞:ライジン×ライジン RISING×RYDEEN/初美陽一

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(あらすじ)
「ふっ……見せてやるぜ。風よ、吹き荒れろっ!!」「―――で、これかい?君の『異能』というのは……」下野根隆良、16歳♂。『異能』を持つストレンジャーに憧れ続けていた彼が、アリアと名乗る謎の爆乳美女に導かれて手に入れた能力は最低ランクの残念異能だった!?そんな隆良が通う学校に『最強異能』の金髪少女・雷轟魅神が転校してくる。彼女は言い放つ。「アナタは私の下僕です。拒否権はありません」「―――ふ、ふざけんなよっ!」。

answer.――― 62 点

現代の流行り病と云える中二病を患う人物を主人公&ヒロインにおく小説は、ライトノベルではもはやスタンダードと化しているが、個人的にどこか「踏み」止まっている感がどの作品にもあった。それは当然で、読み手はどう歌舞いても主人公に同化/同調するのだから、最終的には落ち着くところに落ち着く―――モテたり、格好良くなったりしてもらわなければならない。本作もまた、一応はその体ではあるがしかし、酷い。あらすじにあるように、リアル中二病の主人公はとうとう念願的宿命の『異能』が開花するのだが、それは火を出したり、電撃を放つようなものではなく、ザーメン(のようなゲル状の物)を身体より飛ばすという『残念』な能力だった、と。そんな冒頭はF1のグランプリでブルドーザーがピットインしてくるかのようなデカダンスで、これは振り切ってるわ、と普通に笑ってしまった。瞬間的面白さはまさに<大賞>級である。ただ、トータルで見れば、本作の大賞受賞はこれまた「ヤラカシ」編集部の失態だろう。ファンタジア文庫の凋落はやはり編集部にあると弾劾されても仕方ない。ザーメンを飛ばして結局、何が面白いかという話だ。著者にも問題があり、勢いある絶品最低の冒頭を過ぎると、文章を含め作りが雑になる。<お約束>の消化に努めている感があり、女性キャラクターの扱いに慣れていないようにも感じた。さすがにメインヒロインはそれなりに立ててくるが、この作品中のヒロインたちと比して立っているだけで、クオリティとしては並みだ。大声で誤魔化すノリツッコミが多く、頼みの下ネタを取っ払うとすぐに底が見えてしまう。それでも、出来にムラはあるものの主人公はザーメン異能もありやはり強力に映る。後の祭りだが、著者にアドバイスを送るなら、自己否定と自己肯定―――中二病の醍醐味はそこにあるので、もっと主人公にザーメンを肯定させる葛藤を描けば良かったね。冒頭の異能の開花、ザーメン発射の描写は秀逸なのでそこは一読の価値がある。

第23回ファンタジア大賞 大賞:ライジン×ライジン RISING×RYDEEN/初美陽一

category: は行の作家

tag: ファンタジア大賞大賞 OPEN 60点 初美陽一

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