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2012年03月のレヴュー更新(まとめ)

今月のコンセプトは、有名な<受賞作以外のライトノベル>―――という方針で考えていたものの、早々に息切れ。ノスタルG(ジー)掛かるレヴューはそこそこ気合を入れたくなるために、シンプルを徹底出来なかったのが悔やまれる。それでも、『リアルバウトハイスクール』の記事に関しては、当事者しか書けない時代背景を記載出来たので満足の出来。貴志祐介は『悪の経典』を友人より借りられたので、他の作品もついでにレヴューしてみた。来月は、本屋大賞を埋める作業といきたい。でもでも、読んであるのが5冊しかない。

●スニーカー大賞●
第9回スニーカー大賞 優秀賞:タマラセ 彼女はキュートな撲殺魔/六塚光
第15回スニーカー大賞 ザ・スニーカー賞:ヒマツリ ガール・ミーツ・火猿/春日部タケル

●ファンタジア大賞●
第22回ファンタジア大賞 金賞:カナクのキセキ 1/上総朋大

●えんため大賞●
第4回えんため大賞 佳作:狂乱家族日記 壱さつめ/日日日

●MF文庫Jライトノベル新人賞●
第7回MF文庫Jライトノベル新人賞 佳作:オーバーイメージ 金色反鏡/遊佐真弘

●本屋大賞●
第8回本屋大賞 7位:悪の教典/貴志祐介

●受賞作以外のライトノベル●
電撃文庫:アリソン/時雨沢恵一
富士見ファンタジア文庫:召喚教師 リアルバウトハイスクール 1/雑賀礼史
講談社BOX:DDD (1)/奈須きのこ
富士見ファンタジア文庫:フルメタル・パニック! 戦うボーイ・ミーツ・ガール/賀東招二 
富士見ファンタジア文庫:魔術士オーフェン(はぐれ旅) 我が呼び声に応えよ獣/秋田禎信

●受賞作以外の大衆小説●
角川ホラー文庫:クリムゾンの迷宮/貴志祐介
角川ホラー文庫:黒い家/貴志祐介

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category: 更新情報

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第1回ラノベ好き書店員大賞 2位:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている
1.とにかく比企谷八幡はくさっている。
2.いつでも雪ノ下雪乃はつらぬいている。
3.つねに由比ヶ浜結衣はきょろきょろしている。
4.つまり材木座義輝はズレている。
5.それでもクラスはうまくやっている。
6.けれど戸塚彩加はついている。
7.たまにラブコメの神様はいいことをする。
8.そして比企谷八幡はかんがえる。

answer.――― 79 点
Twitterにて《最近のライトノベル》を叩いてたり、それを叩いてたりするのを時たま見掛けるが、その度に《最近のライトノベル》が結局、何の作品を指すのか期待を込めて眺めていると、……残念ながら挙がることはない。《最近のライトノベル》とは何か?2015年(理想は2014年)現在、私の考える《最近のライトノベル》が本作『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』。中二病を罹患していた男子が高校進学を機に心機一転を図るものの、……というストーリーラインだが、内容についての言及はさて置いて、私が何を以って本作を《最近のライトノベル》と指定したのかと云えば、―――《文章》である。《リズムの踏襲》。様ざまな文章論において、「描写」「構成」「巧拙」が説かれるが、概して曖昧に、あるいは、読み手が首をひねる形で取り上げられるのが《リズム》についてである。小説における文章のリズム、それは俳句の「五七五」のような字数からの定型、語感揃えた韻踏み、お笑いにおける「天丼」のような繰り返し(and more!)を採用することで生ずるのかといえば、必ずしもそうとは言い切れない。何より、それらは書き手が《リズム》の生成を意図したならばもはや「技」であって、読み手が暗に求めている、本来的な《リズム》ではないのだ。では、本来的な《リズム》とは何なのか?

かの“世界の”村上春樹は『小澤征爾さんと、音楽について話をする』にてこんな指摘をしている。

新しい書き手が出てきて、この人は残るか、あるいは遠からず消えていくかというのは、その人の書く文章にリズム感があるかどうかで、大体見分けられます。でも、多くの文芸評論家は、ボクの見るところ、そういう部分にあまり目をやりません。文章の精緻さとか、言葉の新しさとか、物語の方向とか、テーマの質とか、手法の面白さなんかを主に取り上げます。でもリズムのない文章を書く人には、文章家としての資質はあまりないと思う。もちろん、ボクはそう思う、ということですが。

ここで指摘される《リズム》こそ《リズム》である。すなわち、今までの対人関係、そして、(主に思春期に)読書を通して培った語彙を駆使した文章、書き手にとってごく《自然》に浮かんでくる言葉故の「間」を持った文章である。考え、筆を「止めた」文章には理が宿ったとしても、《リズム》は自ずと狂い、果ては失われる。それが作品(中の文章)の色を褪せ、輪郭を消し、単なる文字の連なりとなって結局、退屈と成る。《リズム》とは、無形の文章の「型」なのである。そして、その「型」は書き手から書き手へ知らず《踏襲》され続けている。年を経ればノスタルジーを抱くようになる「お気に入り」の作品より、また、己の嗜好からでなく筆を執るときに「参考」に手を伸ばした作品より。私にとって、小説に関しての《最近》とは後者を汲み、そのジャンルにおいて知名度高く、それでいて技巧を称えられる―――読み手が書き手に回った際に最も「参考に手に取る」だろう作品のなかで、一番《新しい》作品が世に出た頃を指す。その観点から考えて《最近のライトノベル》と云えば、このマニアックなラノベ好き書店員大賞のランクインもさることながら、読み手が決める体の事実上の最高の販促賞「このライトノベルがすごい!」にて2013年度で6位、2014年度の1位、そして、直近の2015年度でも1位を獲り続けた本作になるかな、と。どこかの黒ヒゲではないが、「人の夢は!!!終わらねェ!!!!」と吠えるオジサン、どこかのキッドではないが、「始まるんだよォ!!!誰も見た事のねェ“新しい時代”が!!!」と猛る若人が、多かれ少なかれ《リズム》に影響を被りそうだな、と。具体的に言うと、「もちろん違うよね。知ってました。」などの「消しても通る」追尾な文章を中心にした、「そもそもお前の慎ましすぎる胸元なんか見てねえよ。……いや、ほんとだよ?ほんとほんと、マジで見てない」からの「ちょっと視界に入って一瞬気を取られただけ。」などの前振りを執拗に重箱にしての《吐露》である。この徹底した(《吐露》で斬る)「重箱」具合は圧巻で、故にその《リズムの踏襲》も図られてしまいそう。が、大前提で比企谷八幡という卑屈なキャラクターと合致して歓迎される文体なので、そこを咀嚼しないと、リズムを拗らせるだけの結果に終わるだろう。ナンヤカンヤと書いたが、要約すれば、ライトノベルというジャンルにおけるトレンドな《リズム》がここにある。そんな《流行りもの》な意味合いでも、本作に手を出して損と言うことはないでしょう。大衆小説に寄らず、「ライトノベル」を突き詰めたライトノベル。Very good!な快作です。

第1回ラノベ好き書店員大賞 2位:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 渡航 ラノベ好き書店員大賞 このライトノベルがすごい!

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第1回ラノベ好き書店員大賞 4位:東雲侑子は短編小説をあいしている/森橋ビンゴ

東雲侑子は短編
(あらすじ)
何事にも無気力、無関心な毎日を過ごす高校生、三並英太。楽そうだからという理由だけで図書委員になった彼は、ともに委員を務める東雲侑子の熱のない静けさに、自分の空虚さに似たものを感じていた。しかし偶然彼女の秘密を知ってしまったことから、自分との違いを思い知らされる英太。だが、その秘密のために、彼女と距離を縮めることとなり、失ったはずの感情に胸を締めつけられていく……。

answer.――― 72 点

小説家のみならず、ゲームシナリオライター、漫画原作者と多角に創作活動を展開する森橋ビンゴ。本作は2013年度の「このライトノベルがすごい!」において第8位にランクインされたように、名実ともに森橋ビンゴの代表作となった「東雲侑子」シリーズ、第一弾。その概要は、少し冷めた高校生・三並英太が、感情表現乏しいクラスメイト・東雲侑子が作家と知ったことから始まる「擬似」恋愛劇―――と並べずとも、本作は作中のたった一文で表せる―――《俺は、東雲侑子の事が好きなのだ。》。「東雲侑子」シリーズは言うなれば、ライトノベルではなかなかお目に掛かれない、作中の一文を長編にする(創作するスタイルの)作品で、続刊、『東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる』では《本当に俺は東雲が好きなのか?》、『東雲侑子は全ての小説をあいしつづける』では《少なくとも俺は、東雲の事を心から好きだと言える。純粋に。》、とまとめられる。この手の「一文で表せる」作品は著者自身がテーマを完璧に把握出来るため、ブレずに描ける半面、拡がりに欠けるデメリットを負う。本作でも、ラブホテルに入る、というライトノベルだからこそ映えるサプライズが一点あるのみで、それ以外は《俺は、東雲侑子の事が好きなのだ。》に辿り着くまでの何てことはない、平坦な過程が描かれるのみとなっている。しかしながら、それがライトノベラーの心を打つのは「作中の一文を長編にする」作品を読んだことが無いからだ。この手の創作スタイルは、概して大衆小説で採られるのである。「面白い」イヴェントは少ないものの、本作は「創作手法」の面からライトノベルと大衆小説のクロスオーバーを試みた良質の一作。良いんじゃないでしょうか。ちなみに、あとがきとか読むと一文デ表セルッテ…( ´,_ゝ`)プッ!後付けワロス!と思うかも知れんが、これ、そういう作品だから。著者がシリーズの表題に自画フムフムしている時点で、発想が《言葉》から始まってる(囚われてる)じゃん。まあ、分からねえ奴には分かんねえだろうけど、そういう奴はそういう作品創っちゃうんだよーん。

第1回ラノベ好き書店員大賞 4位:東雲侑子は短編小説をあいしている/森橋ビンゴ

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 森橋ビンゴ 「東雲侑子」シリーズ ラノベ好き書店員大賞

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第1回ラノベ好き書店員大賞 6位:問題児たちが異世界から来るそうですよ? YES! ウサギが呼びました!/竜ノ湖太郎

問題児たちが異世界から来るそうですよ?
(あらすじ)
世界に飽きていた逆廻十六夜に届いた一通の招待状。『全てを捨て、“箱庭”に来られたし』と書かれた手紙を読んだ瞬間……完全無欠な異世界にいました!そこには猫を連れた無口な少女と高飛車なお嬢さま、そして彼らを呼んだ張本人の黒ウサギ。ウサギが箱庭世界のルールを説明しているさなか「魔王を倒そうぜ!」と十六夜が言いだして!?そんなこと黒ウサギは頼んでいないのですがっ!!超問題児3人と黒ウサギの明日はどっちだ。

answer.――― 68 点
様ざまな賞で選考委員を務めた“ヴァイオレンス”井上ひさし御大はとある文学賞の選考評にてこう仰った、―――作家志望たちはいつまで“自分探し”をしているつもりだ?もっと視野を広く持って、社会に向けた作品を書け!(要約)と。そして、そんな書評を読んだ俺はこう思った、―――いや、お前が“自分探し”読むの飽きただけだろ。(要約)と。さてさて誰が言ったか、―――俺TUEEEE!創作物においていつの時代にもあり、実のところ、常に求められている設定要素ながら、久々に目にした累計発行部数1,000万部突破!の『ソード・アート・オンライン』を筆頭とする《強くてニューゲーム》な作品の氾濫により、食傷をきたした読み手は、これ以上の供給を望まず、「俺TUEEEE。俺TUEEEE」と竹一@『人間失格』よろしくチラシの裏、あるいは便所の壁へと落書きして自重するように求めた。しかしそんな要請なんてどこ吹く風、本作はまさに俺TUEEEE!を体現せしめる一作。その極めたアレンジは、流石の竹一@『人間失格』も「俺TUEEEE。俺TUEEEE……俺TUEEEE。お、俺TUEEEE……!―――俺、TUEEEEEE!俺って、TUEEEEEEEE!!」と目をぐるぐる回して余裕を失ってしまう、驚愕の俺TUEEEE!主人公(格)を三者配する力業。特にメイン主人公である逆廻十六夜の理由無き破天荒さは圧巻だ。ここまで解かり易い「俺TUEEEEEE!」主人公の場合は、敵役を如何に卑怯姑息に、そして、スカした仮面を剥いでから慌てふためかせられるかで出来が決まると思うが、著者は如才なく処理出来ているため、……はいはい、俺TUEEEE。×2と安易に見限られることもない。主人公に弱小コミュニティに所属させるというハンデを付けて、風呂敷を広げていこうとする展開も刊行ペースの早い《ライトノベル》ならではの造り。―――俺、お金を稼ぎたいんです!と表明しているような作品ではあるが、そういう打算から読み手のニーズに応えようとしている工夫は見て取れるので、俺TUEEEE!好きな方には安心の一作です。

第1回ラノベ好き書店員大賞 6位:問題児たちが異世界から来るそうですよ? YES! ウサギが呼びました!/竜ノ湖太郎

category: た行の作家

tag: OPEN 60点 竜ノ湖太郎 ラノベ好き書店員大賞

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第1回ラノベ好き書店員大賞 7位:アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1/榊一郎

アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者
序章 ブレイクスルー
第1章 気が付けば異世界
第2章 皇帝陛下パンチ
第3章 自由と平等と博愛と
第4章 汝の名は侵略者

answer.――― 67 点
自ら《軽小説屋》と称する榊一郎の同時進行出来るフットワークの軽さは現在進行形で確認出来ると思うが、近年は『棺姫のチャイカ』と本作『アウトブレイクカンパニー』、この両作が氏の執筆活動の「柱」だろう。前者が活劇に重きを置く「動」的作品とすれば、本作は文化を照らした「静」的作品で、多作作家ならではの自己管理、バランス感覚には感心させられる。また、どちらの作品世界でも序盤から「国家」規模の問題(視点)を提示するのは流行り廃りの業界でSURVIVE(1997)@B`zし続ける榊一郎クオリティー。―――無駄なく効率的に!そんな読み手を楽しませる省エネな術をこの作家は知っている。さて、ヲタクな自宅警備員が渋々職を求めれば何の因果か異世界に派遣され、ファンタジーな原住民たちに「萌え」を教授する、というストーリーラインの本作。いつぞやの『破壊の宴』を想起させる《リーマン》ものだが、頁を開いてまず面食らったのが、……お前は本当に榊一郎か?と首を傾げたくなるダダ書き具合。さかのぼれば学生時代に何気なく手に取った『神曲奏界ポリフォニカ』を(……ド下手だな)と見下した第一印象も、このブログを始めてから読んだデビュー作『ドラゴンズ・ウィル』、『棺姫のチャイカ』での軽妙でスケールを含んだ効率的な文章に(……ああ、こっちが素か)と感心し、評価を改めたが、本作では見下げた第一印象が鮮やかにフラッシュバック。3章「自由と平等と博愛と」でようやく(本人的に)「整えた」らしく人心地をつけるが、エンターテイメントが溢れる昨今ならそれこそこの3章から始めても良かったと思う。ファンでもないかぎり、ここまで「待っていられない」。「萌え」という時流を溶かす作風は説教臭いなる言及を目にしたが、それも否定出来ず、ファンミーティングな「内輪」作品にも映る。……が、実際説教臭くても、《ライトノベル》で「文化浸透が侵略の一手になり得る」って提示するのは流石さね(そもそも、本作を説教臭いって思う人はもうラノベ読む年齢じゃねえんだから拗らせてないで卒業しろよ)。余談だが、女性の社会進出が無駄に叫ばれている昨今ですが、本当に社会進出させたいならまず髪型を規制して、スカートを禁止すれば良いと思う。個人的に、「服」が一番世界(社会)を変えると思っている。

第1回ラノベ好き書店員大賞 7位:アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1/榊一郎

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 榊一郎 ラノベ好き書店員大賞

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第1回ラノベ好き書店員大賞 8位:"葵" ヒカルが地球にいたころ……①/野村美月

葵~ヒカルが地球にいたころ~
1.お前、死んでんだろ
2.皇子様は、女の子がお好きなようで
3.恋愛の達人と呼ばれているけど……
4.人は死んだら、どこへ行くのか
5.彼女の嘘と本当
6.あの星が、微笑みかけてくれたなら
7.あのとき、地球で、君と会えたこと
8.幼年期の終わりに、きみがぼくが願ったこと

answer.――― 72 点
耳を塞ぎたくなるドナドナの惨劇な超駄作『卓球場』シリーズからまさかの反転攻勢、ライトノベルによる文学Hip-Hop!『文学少女』シリーズをリリースして、一角以上のライトノベル作家として名を挙げた野村美月が新たなシリーズの幕開けとして送り出した本作は、日本が誇るヤリチンによるマザコン&ロリコン、そして、因果応報な寝取られエンターテイメント古典『源氏物語』を下敷きにした恋愛ミステリー。その概要は、不良と勘違いされ、高校デビューに失敗した少年が出会って間もなく死んだ優男なヤリチン・帝門ヒカルに憑りつかれ、彼の心残りである女性たちの心を解いていく、というもの。決して筆力の高くない野村美月は本作でも外見描写でその拙さを露呈してしまっているが、……いやいや、そんな些細な欠点さえ目をつむれば、もはや一端の情緒ライトノベル。主人公を含めたどの登場人物も感情、あるいは思惑をひた隠し、故に誤解と嫌疑が交錯する様は、ベタと云えどもベタに面白く、そんな展開だからこそヒカルご執心のメインヒロイン・葵の幼い一途さが立っていく。意図不明な行動を取る主人公に苛つきながら解けていく葵の感情は(強引な)イベントの数を含めても丁寧な運び。何故、ヒカルは……?のミステリー部分を続刊に託しているのは、シリーズ慣れした著者の貫録漂うあざといところだ。本当、公共の場でマスターベーションを披露したが如き上述の問題デビュー作と同じ著者とは思えないね。『文学少女』における《知識》な要素さえ求めなければ、期待を裏切ることなく野村美月なストーリーが展開されています。もう駄作を書くことはないと予感させる安定感に好感を抱きました。……ナイス・「ライトノベル」!

第1回ラノベ好き書店員大賞 8位:"葵" ヒカルが地球にいたころ……①/野村美月

category: な行の作家

tag: OPEN 70点 野村美月 ラノベ好き書店員大賞

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講談社BOX:DDD (1)/奈須きのこ


1.J the E.
2.Hands.(R)
3.Hands.(L)
4.formal hunt.

answer.――― 69 点

イングヴェイ・マルムスティーンというギタリストがいる。ロック界におけるギター奏法の革命児で、ヴァン・ヘイレンのライトハンド奏法同様、曲中で繰り出す彼の高速のスウィープピッキングは、すべてのギタリストの鼓膜に「速さこそただ唯一の正義だ!」「速けりゃいいんだよクソッタレ!」「速いだろ!最高だろ!女はコレで濡れるんだよ!」的驚天動地の衝撃をまさしく天啓として届けた。そして、ブルース?何ソレ?俺がヤリたいのは女と、ロックンロールだ!!と、間違いなくロックスターたちの音楽的センスを悪くした。しかしイングヴェイの本当に凄いところはその圧倒的なテクニックに留まらず、メロディメイカーとしても卓越した素養を兼ね備えていたことにあった。それは話題を呼んだAlcatrazzの1stからソロ名義の『Trilogy』までの初期作品群で確認出来るだろう。さて、<インプロビゼーション>という言葉がある。その意味は即興演奏、確かなセンスとテクニックが無ければ成り立たない表現方法だ。クラシックではカデンツァの指示のとき、ジャズでは常時採られるが、ロックの世界でもギターソロなどの間奏時に採用される。イングヴェイは中期以降の作品ではギターソロに関して作曲することを完全に止め、この<インプロビゼーション>にて録音している。しかし、即興とはどんな天才でも簡単に底を見せてしまうもので、正真正銘の天才イングヴェイとてその例に漏れない。神とまで崇められた彼のギターソロはもはや「手癖」の産物で、全部「同じ」に聴こえてしまうのであった。「手癖」「同じ」……長らく余談が続いたが、これらキーワードが出たところでいよいよレヴューに突入しようと思う。ライトノベル界の三大犯罪者・奈須きのこの実質、初の商業作品『DDD』。本作はまさしく著者の「手癖」で書かれた作品だ。この人物は誰なのか?どっちなのか?死んだはず?実は死んでない?……そんな懐疑を挟む一人称、いわゆる信頼できない語り手(Unreliable narrator)であることを意図的に強調する作風は、読者に不快感を与える。その原因は明らかで、それに必然性を感じないからだ。作品のためではなく、作者が書きやすいために採用されているのが分かってしまうのだ。一日で記憶がリセットされてしまう設定、頻発する怪死、何よりも「信頼できない語り手」を用いて導き出すオチ……そのどれもが噛み合っておらず、腑に落ちない。シナリオライター出身の作家特有の挿し絵に頼った書き方も頂けない。時間軸を定めず、切り貼りのように場面を挟し込んでいるのも拙い構成と言わざるを得ない。設定も展開も既視感がつきまとう。要は、非常に雑なのだこの作品。それでも、第三章における久織家の騒動は流石の及第点。筆と設定がしっかり噛み合っている。ただ、それ以外は信者ぐらいしかまともに評価出来るところがない。著者の天稟が計れるという意味では、格好の参考資料ではある。ちなみに本シリーズは全4巻とのことだが、著者自身、己のブランド価値を下げる作品と気づいたため、いつまで経っても続編が刊行されていない。

講談社BOX:DDD (1)/奈須きのこ (2007)

category: な行の作家

tag: OPEN 60点 奈須きのこ 三大犯罪者

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第15回スニーカー大賞 大賞:子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき/玩具堂

子ひつじは迷わない
1.第一話.VS ラブレター
2.第二話.VS 三国志
3.第三話.VS 宇宙怪獣
4.第四話.VS バース・デイ

answer.――― 65 点

なかなかの酷評を集めている第15回スニーカー大賞、栄えある<大賞>受賞作。本作の評価を徹底的に下げてしまった原因は<視点>にある。各所で言及されている<注釈がウザい>というのは事実あると思うが、その非難の火に根本的な油を注いでいるのが本作のKEYキャラクター・仙波明希から送られる、主人公(=読者)への冷めた視線である。彼女の<視点>は真実の視点であり、それ故に、彼女の非難はすべて事実として形成される。だから、主人公は勘違い野郎だ、と断言されると主人公(=読者)の男前の行動の数々は<勘違い>行為となってしまう。それこそ、オーソドックスに主人公の主観で語られたならカタルシスさえ呼び込むかもしれない行動も、主人公へ生理的嫌悪感さえ抱いている仙波明希からの<視点>で語られてしまえば、自己中による単に結果オーライな行動になる。本作の評価が低いのは物語の内容以前に、この<視点>の欠陥にあるのだ……が実はこの<視点>欠陥、逆手に取れば、凄い有用になるのだが、作者、気づいてくれないかな?例えば、主人公とオッパイ大きい設定のここの生徒会長が一夜の過ちを犯した嫌疑が掛かったとして、仙波明希の視点で分析していくとどうだろう?超エロそうで面白くね?……え?ダメ?じゃあ、俺、次の巻買いませーん!巷で期待されている佐々原さん、こちらに期待が集まるのも、仙波<視点>で好意的に捉えられているからだろう。読者が<視点>について考えるテキストとしては好サンプルだと思います。

第15回スニーカー大賞 大賞:子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき/玩具堂

category: か行の作家

tag: スニーカー大賞大賞 OPEN 60点 玩具堂

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第15回スニーカー大賞 優秀賞:丘ルトロジック 沈丁花桜のカンタータ/耳目口司

丘
1.学校生活『丘研』
2.都市伝説『飛び降り男』
3.都市伝説『ツチノコ』
4.都市伝説『切り裂きジャック』
5.世界征服『おお、運命の女神よ』
6.学校生活『風景男』

answer.――― 67 点

掲示板に貼ってあった「丘研」の入部案内……風景を盲目に愛する主人公・咲丘はそこに己の青春を見い出し、一直線にそのドアを叩くも、その実は「オカルト研究会」だった。一言で云えば、本作は部員紹介の物語。不死者、ツチノコ、殺人鬼。そんな都市伝説ごとに章構成しているが、話の核はそれぞれの部員の持つ異常性の紹介だ。また、本作は00年冒頭からの新伝綺ブーム(講談社が社を挙げて興したキャンペーン。結果、小失敗)より、萌芽したChildrenの手によるものと考えてくれて良い。豊富な語彙、登場人物の言葉に代えて、クラシック、写真、PC等の知識を披露する部分に、作者の(なんちゃって!)インテリゲンチャを垣間見る。ライトノベルとしては《デュラララ!!》《涼宮ハルヒ》、この両系統を継いだハイブリット作。オチまで同じなのはデビュー作だから大目に見て(推進の意)。時に冗長な文章を助けるべく、下ネタをダンサブルにパンパン放り込んでくるところがあざとい。

第15回スニーカー大賞 優秀賞:丘ルトロジック 沈丁花桜のカンタータ/耳目口司

category: な行の作家

tag: スニーカー大賞優秀賞 OPEN 60点 耳目口司

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第15回スニーカー大賞 ザ・スニーカー賞:ヒマツリ ガール・ミーツ・火猿/春日部タケル

ヒマツリ
1.プロローグ
2.猿、憑く
3.猿、猛る
4.猿、消える
5.猿、還る
6.エピローグ

answer.――― 58 点

天然ドジっ娘をヒロインに据えた、巷に氾濫する『とある魔術の禁書目録』のフォロワー―――なんてあっさり括ってしまうと、著者近辺は遺憾の意を表明してくるのだろうか? それでも、よくある<異能力バトルもの>には違いなく、作品のセールスポイントはやはり異能同士の戦闘シーンに比重を置く捉え方で良いだろう。その戦闘シーンは構成上の配置は上々的確ながら、その他大勢の囲みを突き抜けず……な印象。やはり、この手の作品は質の高低に関わらず、ライトノベルにおいてはもう事実上の「飽和」の域に達している。こうなってくると、同系統の作品を推してきたところでセールスは緩やかでも確実に下がるので、各出版レーベルは新ジャンルの確立にスクラムを組んで対応して欲しい!と目糞鼻糞的エールを送ると、<ゾンビブーム>なんて起こしてポシャッてくれるので、未だ地に伏している新人作家さんに期待だ。本作の独自色は、表題にもあるように<火猿>と呼ばれるマスコット。おそらく中国の古典『西遊記』は孫悟空をベースにしたと思われるキャラクターで、バッドボーイ風の愛嬌のある口の悪さがなかなかにチャーミングだ。キャラクター作りはそこそこにセンスを感じるので、本作をシリーズにすることに拘らず、著者には次回作で弾けて欲しい。点数はフォロワーが氾濫している分を差し引き。作品的には、「ザ・普通」の仕上がり具合。

第15回スニーカー大賞 ザ・スニーカー賞:ヒマツリ ガール・ミーツ・火猿/春日部タケル

category: か行の作家

tag: スニーカー大賞奨励賞 OPEN 50点 春日部タケル

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