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2012年07月のレヴュー更新(まとめ)

企画記事「文章力ランキング」が俺に、火を点けた!というよりも、自らガソリンをぶっ掛けてしまった展開でただ今、猛烈な勢いで読書期間に突入しております。ライトノベルを引退していた時期もあり、……あれ?これは知らないぞ?な作品が多く、穴埋めに必死です。特に新興レーベルのライトノベルは見事に読んでいないので、「巧い」と思われる作家がおりましたらコメント欄などでお知らせ頂ければ幸いです。大衆小説の文章力ランキングもやりたかったのですが、とりあえず、ライトノベルを終わらせないことに始められない……。

●本屋大賞●
第7回本屋大賞 1位:天地明察/冲方丁
第8回本屋大賞 8位:神様のカルテ2/夏川草介

●受賞作以外のライトノベル●
電撃文庫:プシュケの涙/柴村仁
電撃文庫:ロミオの災難/来楽零
電撃文庫:ある日、爆弾がおちてきて/古橋秀之
SD文庫:All You Need Is Kill/桜坂洋
角川スニーカー文庫:ムシウタ 01.夢みる蛍/岩井恭平
電撃文庫:Missing 神隠しの物語/甲田学人
電撃文庫:紫のクオリア/うえお久光
角川スニーカー文庫:サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY/河野裕

●受賞作以外の大衆小説●
ハヤカワ文庫JA:スワロウテイル人工少女販売処/籘真千歳
中公文庫:これは王国のかぎ/荻原規子

●メフィスト賞●
第23回メフィスト賞 受賞作:クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言使い/西尾維新

●アーティスト一覧●
Tori Amos

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category: 更新情報

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第24回ファンタジア大賞(前期) 大賞:再生のパラダイムシフト リ・ユニオン/武葉コウ

再生のパラダイムシフト
(あらすじ)
未曾有の大災害によって一度、崩壊した世界。大陸は海に沈み、人類は潜水都市で暮らし、残留体という謎の敵の脅威にさらされながらも生き延びていた。過去の事件によって、通の高校生として当たり前の日常を過ごすことを拒絶する少年、風峰橙矢。想像を現実のものとする奇跡の力―――思考昇華を振るい、残留体との戦いに救いを見いだそうとする。「あたしを拾ってくれてありがとう」そして、記憶喪失の無垢な少女。二人の出会いが世界を再生させる!

answer.――― 43 点

あとがきを信じるならば、帰国子女らしい著者に訊いてみたいのは、小説とヴィジュアルノベル(なんてオブラートを突き破れば、18禁ゲーム。俗称エロゲー)、どちらに影響を受けましたか?と。本作は後手に廻り続けていた富士見ファンタジア文庫が、かつての栄光を忘れ、形(なり)振り構わぬ覚悟で自前の公募賞を「前期」と「後期」という二部制へ移行しての「前期」、その第一弾な《大賞》受賞作。しかしながら、投稿者を確保するための施策とはいえ、集まってくる質が上がるわけはなく、新興レーベルの乱立による青田買いをさらに助長する展開に。そうして、本作は「敢えて敷居を低くした!」と言わんばかりの様ざまな面でレベルが一段「低い」作品。とりわけ、目に余る拙さは「描写」にある。冒頭二頁で出し惜しみなくまとめて告げる終末世界観はなかなかにあざとく、期待膨らむものの、……はて?と早々に眉をひそめたくなる人物描写。描写が始まると無駄にべったり必要以上に描く。かと思えば台詞は軽く、一転、動き(の描写)は重く、展開は起伏があるというよりも唐突で、その都度、主人公の持って回った因縁めいた説明が入る―――本作は、小説としてあまりにアンバランスだ。ただ、元はヴィジュアルノベルと言われれば、その不自然さも腑に落ちる。ヴィジュアルノベルに人物描写は無い。仮にあっても読み手は実質、読み込まない。イラストが常にあるからだ。展開が唐突なのも当然で、小説に場面の小休止である選択肢、あるいは移動マップは無い。キャラクターの表情、姿勢の変化で省かれる感情の機微は小説ではさりげなく挿し込まねばならない。著者は、本作を執筆するにあたってこのような微細を身につけていないのは何故なのか?それが本稿冒頭の問い掛けに繋がる。もちろん、一定の語彙はあるようだから小説は読んでいるだろう。それでも、「間」はヴィジュアルノベルでは培うことは出来ない。外国でエロゲーばっかしちゃあかんで(もう面倒臭いから断定!)、坊ちゃん!前述したように、冒頭二頁はコンパクトなカタルシスを与えてくれるので、そこは読んで損は無い。それ以降は、パルプンテ!敵は全滅した!彼女は復活した!というストーリーなので、読みたい人はどうぞ。

第24回ファンタジア大賞(前期) 大賞:再生のパラダイムシフト リ・ユニオン/武葉コウ

category: た行の作家

tag: ファンタジア大賞大賞 OPEN 40点 武葉コウ

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第24回ファンタジア大賞(前期) 金賞:勇者リンの伝説 Lv.1 この夏休みの宿題が終わったら、俺も、勇者になるんだ。/琴平稜

勇者リンの伝説 Lv.1
(夏休みの友)
1.仲間を集めよう!
2.伝説の武器を手に入れよう!
3.囚われの娘たちを救おう!
4.洞窟の隠されたお宝を探せ!
5.魔物を五体以上倒そう!

answer.――― 66 点

頁をめくるうちに、……拝啓と綴って、敬具で〆ようか?なんて本作に対するレヴューの概観を考えた。宛て先は他でもない、ライトノベル界を代表するお花畑作家・深沢美潮女史その人である。ライトノベルとは何か?という考察は、近年のセールスの拡大によっていよいよ「研究」課題として認識されてきたが、不真面目に一言でまとめれば、「隙間を突く」ジャンルだと思っている。「隙間を突く」ためのキーワードは例えば、らしくない、である。一見、コメディにもなる設定を扱う。本作の主人公リンは勇者らしくない勇者、ライトノベルではもはやありふれたはずのそんな勇者を、あざとく現代社会に置き換えることなくストレートにファンタジー世界を舞台に、且つLv.1から始める原点回帰の超「王道」ライトノベル。懐かしい、しかし、……新しい!のは、ハリー・ポッターの設定をパロったところから夏休みの宿題を達成する目的のため、勇者、伝記士、遊び人(NEET)、召喚士というフザけたパーティーを編成する等、現代社会を取り入れる姿勢。中盤早々、馬では不可能な行程を自動車を召喚して成立させるウルトラCは、なかなかにダイナミックだ。台詞が頁を占め、(ああ、このパターンね……)と侮っていると、ヘッポコ勇者リンが夜な夜な一人で行動していたことにちゃんと意味があったサプライズ構成も買える。ライトノベルってこんなモンなんだって!と再意識させてくれる温故知新の一冊。俺は好きなんだけどね、と笑って流せるのが「ボクら」のライトノベルだべな。文学やら大衆小説やらと並ぶ「格」を求めてどうする?皮肉無く、本嫌いな中学生にまずは本慣れの一冊としてお薦め出来る作品。良作です。さて、と。

拝啓 深沢美潮様―――
貴方様の後継者が見つかりました。いい加減、引退してください。 敬具

第24回ファンタジア大賞(前期) 金賞:勇者リンの伝説 Lv.1 この夏休みの宿題が終わったら、俺も、勇者になるんだ。/琴平稜

category: か行の作家

tag: ファンタジア大賞準入選(金賞) OPEN 60点 琴平稜

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中公文庫:これは王国のかぎ/荻原規子

これは王国のかぎ
1.前奏
2.海とシンドバッドの船
3.カランダール王子の物語
4.若い王子と王女
5.バグダードの祭り

answer.――― 66 点

こういうある種、正統派な作品を読んでしまうと、『ハリー・ポッター』シリーズが如何にファンタジーとして優れているのか改めて確認出来てしまう。勾玉三部作、『西の善き魔女』シリーズで著名な荻原規子。本作はピエロな失恋をした女子中学生が、泣き果てて目覚めれば周りは砂漠、目の前にはターバンを巻いた青年……そして、自分は人あらざる魔神ジンとなって旅をするストーリーライン。導入が唐突で、ヒロイン自身も「これ、夢だわ」認識でストーリーが進み、故に緊迫感はほぼ無縁の状態が最後まで続く。ただ、冒頭に出会った青年と別れる「転」を挟んでの「運命」展開からは、王家の相続争いというイベントをキーワードにそこそこに読ませる。しかし、よくある話の中でも<ド>が付く真ん中を走る作品には違いなく、漫画などでエンターテイメント慣れした読者は読み方を工夫しないと厳しい感想になるのは必然の流れ。そこで提案したいのが、これはヒロインの現実の恋愛を物語に置き換えた、という解釈。つまり、ハールーン=宮城、ラシード=リコ、ミリアム=ヒロイン、ジン=ヒロイン、という図式。なんて意見は実は私のモノではなく、ネットサーフィンしている最中に見つけたブロガーさんの「邪推」。ながら、ファンタジーにはそういう仕掛けがあって「名作」認定されるのは古今東西に根づいているので、乗っかる分には間違えていないと思う。実際、本作はそういう読み方が出来れば十分に「面白い」。アラビアンナイトを下敷きにしている点が物珍しいっちゃ物珍しい。事実上の続編に『樹上のゆりかご』がある模様。興味のある方はどうぞ。

中公文庫:これは王国のかぎ/荻原規子 (1993)

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 荻原規子

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