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2013年4月のレヴュー更新(まとめ)

最近のレヴューは長過ぎる、と痛感する今日この頃。皆さまの調子は如何でしょうか?今月は先月からの予定通り、村上春樹筒井康隆を中心にレヴュー。村上春樹は本屋大賞関連で『1Q84』を読書中、筒井康隆は書こうと思えば、あと三作品はレヴュー出来るのですが、流石に飽きちゃいましたワ。来月は基本に戻って《受賞作》、それと気分転換の「BUMP OF CHICKEN」のCDレヴューでもしようかしらん?とりあえず、短く!シンプルに!を御旗にレヴューをしたいな、と。来月も宜しくお願い致します!

●受賞作以外の大衆小説●
星海社FICTIONS:ビアンカ・オーバースタディ/筒井康隆 (2012)
文春文庫:わたしのグランパ/筒井康隆 (1999)
新潮文庫:エディプスの恋人/筒井康隆 (1977)
新潮文庫:七瀬ふたたび/筒井康隆 (1975)
新潮文庫:家族八景/筒井康隆 (1972)
角川文庫:時をかける少女/筒井康隆 (1967)

●受賞作以外の文学作品●
新潮社:小澤征爾さんと、音楽について話をする/村上春樹 (2011)
海辺のカフカ(上巻/下巻)/村上春樹 (2002)
新潮文庫:ねじまき鳥クロニクル/村上春樹 (1995)
講談社文庫:ノルウェイの森/村上春樹 (1987)
新潮文庫:世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド/村上春樹 (1985)

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category: 更新情報

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文春文庫:インシテミル/米澤穂信

インシテミル
警告
この先では、不穏当かつ非論理的な出来事が発生し得ます。それでも良いという方のみ、この先にお進みください。

answer.――― 74 点

六十余年生きている母にはミステリードラマに関する「残り三十分から見れば良い」なる人生訓がある。その心は、……トリックも5分くらいでまとめてくれるし、殺した動機を教えてくれるから!という身も蓋もないものなのだが、これを耳にして当時思ったのは結局、ミステリーに求めるのは<殺した動機>=<ドラマ>であり、トリックはあくまでオマケだという事実だった。主演に藤原竜也を招いて映画化もされ、セールス的には著者の作品中随一と予想される本作「インシテミル」。時給11万2000円の触れ込みに釣られた者たちが閉鎖空間で殺し合う、いわゆるクローズドサークルを題材に取り上げ、著者自ら「自分なりにとことんミステリを追究した」とホラ吹く力作だが、母の人生訓から<殺した動機>もとい<ドラマ>を読めば、その読み応えは┓(;´_`)┏の出来。ドラマ無く人が殺され、各個人が抱えるドラマはそれぞれ一頁で消化or消化不良のまま強引に幕を引く。ラストだけでストーリーを理解してみれば、本作が拙く「面白くない」作品であることが分かる。ただ、クローズドサークルは結果ではなく、過程こそピークの構成を持つ題材だ。本作も著者の端正な文体に支えられ、その過程では不条理な設定が魅せてくれる。著者ホラ吹く「とことんミステリ」は、有名作の引用であり、そこを楽しむ体もあるようだ。本作は著者の作風である青春ミステリ、『日常』を描いてきた延長上での産物だとも思われるので、派手な<ドラマ>を求めるのは野暮なのかも。しかし個人的には、見栄えが良い設定が並んで中身が伴っていない凡作の印象。

文春文庫:インシテミル/米澤穂信 (2007)

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 米澤穂信

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創元推理文庫:さよなら妖精/米澤穂信

さよなら妖精
1.仮面と道標
2.キメラの死
3.美しく燃える街

answer.――― 71 点

米澤穂信の名を広めた出世作とされる一作。その内容は、何の変哲もない高校生たちと異邦人マーヤとの邂逅、別離、そして、もの哀しい捜索の物語。本作の出版には今でこそ知られる“古典部”シリーズの売り上げ不振により作家に成って早々、作家として崖っぷちに立たされた著者が気まぐれに垂らされたか細い蜘蛛の糸を見事に掴んで、……の1チャンスをものにした背景があるらしい。しかしながら、それで驚くのはあくまで『日常』を取り扱う点。追い込まれて尚、作風を変えないのはまさしく信念である。本作の肝は、「わたし、気になります」の“古典部”シリーズ同様、異邦人マーヤが「面白いです」と日本の文化&習慣を学んでいく過程―――そこに著者の十八番(の送りバント)「日常ミステリ」を挟むのがセールスポイントだ。日本人ながらに自国文化へのカルチャーショックも受ける瞬間もあり、題材の選定も含め、なかなか興味深い出来栄えとなっている。淡々としながら、味のある登場人物たちは上等な「何の変哲もなさ」でなるほど、「日常」を楽しませてくれる。事実上の本編となる三章「美しく燃える街」では、マーヤの故郷ユーゴスラヴィアについての垂れ流しに近い説明が入るが、縁薄い国家だけに知識欲で読めなくもない。あとは漠たる予感へ一直線。正味な話、エンターテイメント性には欠ける。ただ、表題通り、「さよなら」の余韻が本作を良作としているのは理解出来る。

創元推理文庫:さよなら妖精/米澤穂信 (2004)

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 米澤穂信

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角川文庫:氷菓/米澤穂信

氷菓
(あらすじ)
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。

answer.――― 63 点

青春ミステリにカテゴライズされる米澤穂信のデビュー作であり、代表シリーズ作でもある通称“古典部”シリーズの第一作。一読しての感想は、地味の一言。ミステリとしての魅力は皆無に等しく、それを期待すると、だらだらと続く謎とも云えない謎に付き合わされる感覚に陥る。実際、読んでいて満足感に浸れる瞬間は無かった。ただ、これを自分が思春期に読んだと仮定してみると感想も一転、―――興味深いものに。思春期の己に本作がもたらすのはズバリ、ありそうでありそうな日常。そこに見出すは、作品世界への親近感だ。日常とはとかく退屈なもので驚きは減り、その分だけ時間の流れも早まる。しかしそれを断ち切るヒロイン・千反田えるの「わたし、気になります」は、目の前の日常がその一言で簡単に変えられることを教えてくれる。キャラクターの造詣に特化している点は、桜庭一樹の『GOSICK -ゴシック-』シリーズを思わせる……が、ミステリのクオリティこそ優劣付け難いものの、<ヴィクトリカちゃんブヒィィ>には流石に本作の時点ではまったく対抗出来ない。本作はあくまでシリーズの第一巻、長い目で見守れなければ切り捨てるレベルの作品。一応、メインディッシュとも云える表題の謎は副題「You can't escape」を含め、機知に富んでいるので、その辺は著者の現在の活躍の片鱗を覗かせているかな。

角川文庫:氷菓/米澤穂信 (2001)

category: や行の作家

tag: OPEN 60点 米澤穂信

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新潮文庫:エディプスの恋人/筒井康隆

エディプスの恋人
(あらすじ)
「彼」の意識の存在に気づいた七瀬。ある日グランドでボールが割れた。それが異常の始まりだった。強い「意志」の力によって守られた「彼」の本当の正体と何故「彼」が七瀬の意識に影響を与えているのかを探ろうとする。そして、七瀬は「彼女」の存在を知ることとなる。

answer.――― 77 点

「ボマー」筒井康隆が贈る七瀬三部作、その最後を飾る本作は前二作で頑なまでに処女を貫き通した僕らの火田七瀬がついに……!という、まさに「ボマー」の本領を発揮した自爆作。筒井康隆を知る者ならば、彼がもはや己の創作スタイルとして自作を「壊す」ことを受け入れていることだろう。それは賛否を呼び、個人的にも雑とも思えるエンディングに直結するので否定したいところだが、……まあ、スタイルと主張するならば仕方がない。前作「七瀬ふたたび」にて絶望的な幕が下りたにも関わらず、本作の火田七瀬はそんなことは無かったこととして、これまたいつの間にか年齢を重ね、学校の事務員として平穏に日常生活を営んでいる。そんな日々に突如として起こる「不可解」、そして、それを追ううちに唐突に芽生えた「恋」―――シリーズを通して他人の醜い心を覗いてきた七瀬が本作では淫らで浅ましい、それこそ自己嫌悪に陥る想いを抱く。また、随所に心理学の知識が挿し込まれるのが特徴で、それは時にくどくも映るが、実は表題を成立させるため―――この支持高いシリーズに相応しい幕を下ろすため、途絶えたはずの前作と結びつけ、壮大に「壊す」ための仕掛けなのだから、読み手は目を瞑る他ない。そんな「どうにもならない」ストーリー展開を象徴する場面もまた、僕らの火田七瀬がついに……!の場面なのだから筒井康隆も罪深い。思わず唖然とするその喪失場面は、しかし、意外なまでに嫌悪感が湧かないのが素晴らしい。筒井康隆イスムが貫かれた一作。文章は視覚に訴える試みがあるが、まあ、取り立てて注目すべきところでもない。それよりも、七瀬三部作はとにかく「壊し方」に注目して欲しいシリーズ。本作のラストもラスト、火田七瀬自身に作中世界を「否定」させるなんて流石です。

新潮文庫:エディプスの恋人/筒井康隆 (1977)

category: た行の作家

tag: OPEN 70点 筒井康隆 七瀬三部作

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新潮文庫:七瀬ふたたび/筒井康隆

七瀬ふたたび
1.邂逅
2.邪悪の視線
3.七瀬 時をのぼる
4.ヘニーデ姫
5.七瀬 森を走る

answer.――― 82 点

あの火田七瀬が少女から道を歩けば誰もが振り返る淑女となって戻ってきた!早い話(現代っ子には逆に遠回りな話かもしれないが)、市原悦子主演のドラマ「家政婦は見た!」の超能力少女版としても紹介出来る連作短編の秀作「家族八景」に続く七瀬三部作、その第二弾。冒頭、さっそく七瀬が貞操の危機を迎える《お約束》からして読ませてくれる……が、おや?と気づく文体の変化。そして、「1話」が終わり、それが「1章」なのだと気づく事実。心理ドラマの連作短編だった前作から様変わりし、本作は一巻を通した超能力サスペンスとなっている。筒井康隆の、七瀬三部作の凄味はここにある。前作と同一の登場人物を採用しながら、文章を含めたすべてが「違う」のだ。その試みは次作『エディプスの恋人』においても継続されるが、両作に挟まれる本作が一番顕著にソレが表れていると云えるだろう。前作では単独行動だった七瀬は、本作では「仲間」を迎え、貞操と命の危機に遭い続けるストーリー展開。特に四章「ヘニーデ姫」からの謎の組織による怒涛の追い込みは、望む望まないは置いておいても、読者的にはサプライズと云う他ない。次作へ繋ぐのか判別しにくい思わず舌打つオチの付け方と良い、とにかく読み手の予想を裏切ることに力を注いだ一作。前作で見られた一話一話を楽しむ硬質な文章から一転、一作をトータルで楽しむために「雑」化―――軽量化した文章は見事な筆の使い分け。個人的にはヘニーデ姫がその思考演出も含め、唸りたくなるキャラクターデザインだった。この辺、例えば入間人間の悪ふざけな電波女とは格が違う印象。「壊す」にしても読ませてナンボ、文章なんだから読めないんじゃ意味がないよね。

新潮文庫:七瀬ふたたび/筒井康隆 (1975)

category: た行の作家

tag: OPEN 80点 筒井康隆 七瀬三部作

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新潮文庫:家族八景/筒井康隆

家族八景
1.無風地帯
2.澱の呪縛
3.青春讃歌
4.水蜜桃
5.紅蓮菩薩
6.芝生は緑
7.日曜画家
8.亡母信仰

answer.――― 86 点

筒井康隆の、筒井康隆による、筒井康隆と読者のための七瀬三部作、その第一弾。筒井康隆はプロとアマ、両面の資質が混在する希有な作家だが、80年代以降の作品群は概して「文学」を旗印としたアマチュア的資質を爆発させたものが占め、それらに対する「傑作」「代表作」「新境地」といった無責任な触れ込みを信じて手に取ってしまうと、筒井康隆という作家像を見誤ってしまう恐れがある。筒井康隆を読むならば、知名度高い『時をかける少女』でも、悪質なまでにアマチュアリズムを結晶化した『虚人たち』でも、ましてや筒井流のライトノベル『ビアンカ・オーバースタディ』でもなく、人の心を読めてしまう「テレパス」火田七瀬を主人公とした七瀬三部作から始めることを強く推奨する。中でも連作短編という形を採用する本作は読みやすく、その内容も勧善懲悪にも似た因果応報、概して業火に焼かれる登場人物たちの様に暗い満足感を得る仕上がりとなっている。シリーズ第一弾ということを抜きにしても、一番大衆受けしやすい作品だろう。表題に「八景」とあるように、概要としてはテレパスの少女・火田七瀬が住み込みの家政婦として八つの家庭を覗いていくというもの。頁をめくる求心力は、基本的にエロティックなこと。作中の登場人物(♂)、ほぼすべてが七瀬を手篭めにしようと心中で画策、妄想している。そして、このもはや「雄」とも云える男たちの短絡的な心理描写、何気に的確である。これらは誇張ですらない。男の頭の中は本当にこんなものなので、男の本音を知りたいJC(女子中学生)、JK(女子高生)、JD(女子大学生)は保健体育の教科書として採用するのも良いだろう。男連中はハラハラ(……ウヒヒヒ)!と喉を渇かせ(舌舐めずりし)、七瀬が犯されそうになる場面を素直に楽しみましょう。臭いを扱った「澱の呪縛」など、エロとセットの、筒井康隆と云えば、―――なグロも各話もちろん注入済み。プロフェッショナルなエンターテイメント性と「―――」を用いた文章へのアマチュア的実験性を兼ね合わせた秀作。あえてベストを挙げるなら、第四話「水蜜桃」かな?文章的にその時には盛り過ぎに感じても、結局、時間経過で薄れる記憶には過剰なくらいの方がよく残るのよね。

新潮文庫:家族八景/筒井康隆 (1972)

category: た行の作家

tag: OPEN 80点 筒井康隆 七瀬三部作

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角川文庫:時をかける少女/筒井康隆

時をかける少女
1.時をかける少女
2.悪夢の真相
3.果てしなき多元宇宙

answer.――― 63 点

SF御三家が一角、筒井康隆の代表作!というのが世間一般の認識だが、本人が眉間に皺を寄せて否定しているように、「質」という面では決して高くはない、場繋ぎ/間に合わせの一作。しかしながら数多の作品でサンプリングされ、もはや「スタンダード」として定着してしまっている事実を鑑みれば、書き手にとっても読み手にとっても必読の一冊に数えざるを得ない珍しい作品。表題通り、タイム・リープが題材に扱われ、ラベンダーの匂いを嗅いで、……という現在でさえ鮮度を保つその発動条件に、筒井康隆の着眼点の面白さが読んで取れる。もっとも、後の作品で散見される心理学等の含蓄は見当たらず、「らしさ」の希薄は、終盤の展開をそのままご都合に思わせてしまうのが残念。著者の他作品―――例えば「七瀬三部作」を既読済みならば、パッと開いてすぐに分かってしまう投げやりな文章にも苦笑してしまうことだろう。何にせよ、古典としての価値がある。読書家を名乗るならば一読を。表題作以外に二編を収録。「悪夢の真相」はこれまた小粒ながら展開に起伏があるのが良いかな?

角川文庫:時をかける少女/筒井康隆 (1967)

category: た行の作家

tag: OPEN 60点 筒井康隆

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