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第15回メフィスト賞 受賞作:真っ暗な夜明け/氷川透

真っ暗な夜明け
(あらすじ)
推理小説家志望の氷川透は久々にバンド仲間と再会した。が、散会後に外で別れたはずのリーダーが地下鉄の駅構内で撲殺された。現場/人の出入りなしの閉鎖空間。容疑者/メンバー全員。新展開/仲間の自殺!?非情の論理が唸りをあげ華麗な捻り技が立て続けに炸裂する。

answer.――― 65 点
当たり前だが、このブログでレヴューしている作品だけが私の読書歴ではない。いずれレヴューする予定の作品もあるし、諸々の事情であえてレヴューしない作品もある。その前者に属する作品には私のなかで乙一の上位互換作家・道尾“乙一さん、ちぃーす!”秀介が著した『ラットマン』なるミステリ小説があるのだが、同作と本作を読んで確信したことがある―――何をどうやっても、《売れないバンド》の殺人事件は「つまらない」。瞬間、瞬間を《面白げ》にすることは出来るかもしれないが、読み終わってしまえば、いつの間にか「つまらない」というか、「どうでも良かった」印象に落ち着いてしまう。《売れないバンド》という設定は読み損に陥る類の題材なのだと思う。《売れないバンド》ではなく、《売れない作曲家》ならば、おそらく「話」が違ってくる。可能性を残せるからだ。だが、《売れないバンド》―――個人に事実上帰結出来ないこの登場人物たちには未来が、「先」が無い。殺人事件が終われば逃れ切れない凡庸な日常に沈む。それだから「つまらない」、読後、すぐさまどうでも良くなってしまう。《売れないバンド》とは、殺人と絡んでしまえば「つまらない」と直結してしまう構造的な欠陥を内包している設定題材なのだ。なんてある種の真理を確認出来る意味では個人的に興味深く楽しめたが、そんな楽しみ方はゲスの極み乙女。である。とりあえず、ボリューム過多な頁数ではあるものの、本作のそこそこに起伏に富んだ展開、何よりそこそこに歪げな人間関係に興味が湧くと思われるので、読み詰まったら大胆に飛ばせば読み損にならない程度には楽しめる。時間を食わずに読む、というのが楽しむためのキーワードになる作品。

第15回メフィスト賞 受賞作:真っ暗な夜明け/氷川透

category: メフィスト賞

tag: OPEN 60点 氷川透

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第14回メフィスト賞 受賞作:UNKNOWN/古処誠二

UNKNOWN アンノン
(あらすじ)
侵入不可能なはずの部屋の中に何故か盗聴器が仕掛けられた。密室の謎に挑むのは防諜のエキスパート・防衛部調査班の朝香二尉。犯人の残した微かな痕跡から、朝香は事件の全容を描き出す。完璧に張り巡らされた伏線!重厚なテーマ性!リアリティ溢れる描写力!!

answer.――― 64 点
派手さはないが、淡々とした静謐な語り口、簡潔な文体、誠実な筆致を用いて、人間ドラマに主眼を置き、戦争を真摯に描き続ける異色の作家である。―――とは、Wikipediaに載る評だが、端的に云えば、本作は真面目で地味な筆で綴られた丁寧なデビュー作。概要は、盗聴器の発見から自衛隊内の背徳者を探すというものだが、一読しての印象は、コントロールの良い最速138km/hのストレートを投げる高校球児(2年)といった感じで、今すぐ契約したいとは思わない―――転じて、金を払ってまで読むものでもない一作。ただ、次作が気になる作家というのが青田買いが好きな読書家には誰しも心のうちにいると思うが、そこに気負わずに推薦したくなる「ほぼ」完成された作家(筆)であることは魅力的で、実際、「候補」止まりながら、著者の後の作品は山本周五郎賞、直木三十五賞といった著名な販促賞に一度ならず挙げられている。そんなこんなで、本作を読むなら著者の後発の作品を読むのがベターかな、と。私も未読なので、ファンの方がいましたらオススメを教えて頂ければ之、幸い。「UNKNOWN!」って言いたかっただけなんじゃねえか?と勘繰りたくなる平坦な本作で著者の作家としての可能性の結論を出しちゃいかんわな。余談ですが、完成された作家(筆)とは、漫画家で例えるなら「あだち充」を指します。デビュー初期から変わらないでしょ?そして、別に変えなくても良いでしょ?完成されている、とはそういうことです。

第14回メフィスト賞 受賞作:UNKNOWN/古処誠二

category: メフィスト賞

tag: OPEN 60点 古処誠二

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第13回メフィスト賞 受賞作:ハサミ男/殊能将之

ハサミ男
チョキ、チョキ、チョキとハサミ男が行く
悪い子たちの遊びをやめさせるんだ
チョキ、チョキ、チョキとハサミ男が行く
きみも彼の名簿に載ってるかもしれないよ
きみも彼の名簿に載ってるかもしれないよ
―――XTC<シザー・マン>

answer.――― 82 点
『クロックタワー』なるゲームの存在を知ったのは高校一年、もしくは、高校二年の年末だったと思う。友人宅でヲタクによるヲタクなアニメ『トップをねらえ!』のフルコース鑑賞の後、ああ、お腹いっぱい!さて、帰るか!―――はい、雑煮!とばかりに、ダン・バロウズ@『クロックタワー2』がハサミを鳴らしながら追ってくる様には(……いや、今日はもう勘弁してくれ)と思春期だけにメモリーが足りず、もはや笑えばいいのか、怖がればいいのか判別付かないまま、外が白けるまでクリアを目指し画面に釘づけになったのを現在でも強烈に覚えているが、さて、そんな「ハサミ」繋がりで紹介させて頂く本作『ハサミ男』は、今は亡き覆面作家・殊能将之のデビュー作。「面白ければ何でもあり」と謳うメフィスト賞だが、本作はこれぞメフィスト賞!と同賞のマイルストーンの一作として扱いたくなるグロウルなキャラクター推理小説となっている。物語は喉にハサミを突き刺された女子高生が相次ぐ猟奇殺人事件を軸に進むが、見所はその猟奇殺人鬼「ハサミ男」の視点があるところ―――そして、「ハサミ男」が自らの事件に巻き込まれて混乱する様だろう。殺人鬼(視点)を描け、と課せられた場合、難しいのは《理知的でありながら狂っている》という相反する奇怪な思考を披露し、読み手にそれを共感させるでなく、(出来れば生理的に)嫌悪させることだと思うが、本作はそれを前半/後半で仕掛けを変えて成立させてくるのが素晴らしい。生まれついての殺人鬼も、人であるかぎり「普通」を宿している。故に殺人鬼が起こす結果は恐ろしくても、そこに到る過程―――特にその準備段階は、きっとファニーであるはずなのだ。著者は「ハサミ男」の日常をグロテスクに、それでいてどこかユーモラスに飛躍を伴なわず描けている。『クロックタワー』のダン・バロウズを目にしたとき、(……お前、そんなデッカいハサミを持ってナニを考えてる!?)と私は言葉に出来ない衝撃を受けたが、殺人鬼(の視点)を描くときにはそんな当人には疑問さえ湧かない(読み手しか気づかない)デカダンを組み込めるかでリアリティが決まると思う。やや時代を感じる作風なものの、「ハサミ男」のデザインから【推薦】させて頂きます。

第13回メフィスト賞 受賞作:ハサミ男/殊能将之  【推薦】

category: メフィスト賞

tag: OPEN 80点 殊能将之 推薦

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第12回メフィスト賞 受賞作:ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ/ 霧舎巧

ドッペルゲンガー宮《あかずの扉》研究会 流氷館へ
(あらすじ)
ゴシック様式の尖塔が天空を貫き屹立する「流氷館」。いわくつきのこの館を学生サークル『あかずの扉』研究会のメンバー6人が訪れたとき、満天驚異の現象と共に悲劇は発動した!20世紀最後の新本格派・霧舎巧が島田荘司氏の推薦を受けて放つミステリフェロモン100%のデビュー作。

answer.――― 65 点
何事にも「適性」と云うものがあると思う。それはジャンルという大枠から一場面の一演出、登場人物の「でも、〇×△□……」といった台詞の語尾につく三点リーダーのような(意図せずの偶然も含む)著者が施した微細に及ぶ。「適性」がそこに描かれているものを、そこに描かれている以上のものを「読み取らせる」。本作は霧舎巧のデビュー作であり、《あかずの扉》研究会シリーズの第一弾。≪20世紀最後の新本格派≫なんて大仰なキャッチの通り、あくまで本作は推理がメインの、そして、いわゆる《館モノ》に軒を連ねる作品。物語は、『あかずの扉』研究会が流水館に訪れれば、そこで相次ぐ殺人事件……なのだが、ミステリというと俗な私が求めるのは暴かれる痴情、事件の【動機】だが、この辺がどうにも希薄で目が滑ったまま、淡々と館の形が出来上がっていく。それだから【館】のダイナミックなデザインに感嘆すべきところで、残念ながら、ほう、の一つも出ず。私自身に元よりミステリへの「適性」がない分を差し引いても、頁数、文字数、ご覧の通り!の詰め込み過ぎな印象を拭えない。いきなりの一目ツン惚れ、内側と外側に配される二人の探偵など、キャラクター小説風の工夫も見られるが、実際にそう捉えるには弱いし、何より人が死んでも、そこに恐怖が無いのが厳しい。―――いやいや、どんな作品もこんなもの!と抗する方もいらっしゃると思うが、その「どんな作品」もこんな頁数を費やして書きはしない。本作は【館】を中心に描かれ、【館】を主役に描いている。それだから、「適性」がない人にとって、種明かしのその時まで何を楽しめばいいのか解らないのが作品構造上の問題だと思う。なんて私はこの通りダメでしたが、ミステリ愛好家には好評な模様。……何事にも「適性」というモノがあるのです。

第12回メフィスト賞 受賞作:ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ/ 霧舎巧

category: メフィスト賞

tag: OPEN 60点 霧舎巧

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第11回メフィスト賞 受賞作:銀の檻を溶かして/高里椎奈

銀の檻を溶かして
第一部 察-scrutiny-
第二部 明-insight-

answer.――― 62 点
持ち込まれる怪異を解決する寂れた薬屋「深山木薬店」を舞台にした本作は、今や「薬屋探偵妖綺談」として知られるシリーズの事実上の第一作目であり、著者である高里椎奈のデビュー作。誰しも一読して印象に残るのは現在まで続く《メフィスト賞》受賞作としては異彩と云える、非常に《ライトノベル》的な造りだろう。こんな風に書けば、……《ライトノベル》的な造り?と面倒臭く訊かれそうだが、それに関しては「イラストが付いたほうが面白そうなもの」なんてその場かぎりの無責任な答えで返させてもらう。主要登場人物は美少年、好青年、幼さ残る少年の妖怪&妖精の3人で、ストーリー的には探偵、推理の体は取るものの、この各登場人物にポッとし、惹かれ、愛でるのが作品の醍醐味。端的に言ってストーリーよりもキャラクターで魅せる作品で、少年が事件に頭を突っ込み、じたばたと巻き込まれている状況/場面が一番のエンターテイメントとなるため、事件の本質に迫るほどに盛り下がるジレンマがある。この手の少年モノなら、ギャップにちょいとアダルトな魅せ場を設けるとより序盤、中盤が映えると思うが、その辺の工夫が弱いのが残念。冒頭の通り、可もなく不可もなく、……のライトノベルといった印象で、それだけに《ライトノベル》専門のレーベルからリリースしての反響を個人的に見てみたかった。果たして、ここまでシリーズ化出来たのかな、と。

第11回メフィスト賞 受賞作:銀の檻を溶かして/高里椎奈

category: メフィスト賞

tag: OPEN 60点 高里椎奈

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