ナマクラ!Reviews

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2015年4月のレヴュー更新(まとめ)

第12回の本屋大賞が発表された瞬間、俺の心に火が点いた!ファイヤー!という訳ではないのだが、ここ数年で指折りの数の記事を更新しました。誉めてください、ブログを運営してらっしゃる方なら解かると思いますが、なかなか出来るもんじゃないですよ?更新数の分、若干ライトに書いた気もしないでもないが、違いなんて本人以外は分からないだろうし、その辺は気付いてもスルーして頂戴。更新情報には自分の思い出に【今月のパワープレイ】項目を付けていたのですが、見事に書き留めていたデータが飛んだのを機会に切り上げました。また復活することを(俺の記憶のために)願っております。さて、来月はどれくらい更新する気が起こるかしら?

●本屋大賞●
第5回本屋大賞 5位:映画篇/金城一紀
第5回本屋大賞 6位:八日目の蝉/角田光代
第11回本屋大賞 6位:教場/長岡弘樹
第11回本屋大賞 10位:去年の冬、きみと別れ/中村文則
第6回本屋大賞 10位:モダンタイムス/伊坂幸太郎
第6回本屋大賞 7位:出星前夜/飯嶋和一
第9回本屋大賞 4位:くちびるに歌を/中田永一
第9回本屋大賞 3位:ピエタ /大島真寿美
第9回本屋大賞 6位:ユリゴコロ/沼田まほかる
第9回本屋大賞 1位:舟を編む/三浦しをん
第9回本屋大賞 5位:人質の朗読会/小川洋子
第9回本屋大賞 7位:誰かが足りない/宮下奈都
第9回本屋大賞 10位:プリズム/百田尚樹
第1回本屋大賞 5位:重力ピエロ/伊坂幸太郎
第10回本屋大賞 4位:きみはいい子/中脇初枝
第11回本屋大賞 4位:さようなら、オレンジ/岩城けい
第8回本屋大賞 1位:謎解きはディナーのあとで/東川篤哉
第10回本屋大賞 8位:世界から猫が消えたなら/川村元気

●山本周五郎賞●
第25回山本周五郎賞 受賞作:楽園のカンヴァス/原田マハ

●アーティスト一覧●
Standing on the Shoulder of Giants/Oasis (2000)
Be Here Now/Oasis (1997)
(What's the Story) Morning Glory?/Oasis (1995)
Definitely Maybe/Oasis (1994)

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category: 更新情報

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第5回本屋大賞 5位:映画篇/金城一紀

映画篇
1.太陽がいっぱい
2.ドラゴン怒りの鉄拳
3.恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス
4.ペイルライダー
5.愛の泉

answer.――― 73 点
「従来の在日文学では自分のアイデンティティの危機は救われなかった」と語り、00年に半自伝的小説『GO』で直木賞を受賞!数多の先達を差し置き、―――在日韓国・朝鮮人作家と云えば、俺でしょ?というポジションを確保した金城一紀。本作は、そんな彼の、《映画を観ること》を題材にした連作風味の短編集。視点人物異なりながらもどこかしらで繋がっている5つの短編が収められているわけだが、1章「太陽がいっぱい」で在日コリアンをさっそく起用し、己のアイデンティティにブレのないことを表明。2章からは在日コリアン色は省くが、この一章は主人公が朝鮮学校から日本の普通校へ進むエピソードなど『GO』と似た自伝の色彩を持つ短編で、同じ境遇の龍一との友情を偲ぶ好作となっている。1章「太陽がいっぱい」、そして、総括する5章「愛の泉」が本作の目玉的短編でお薦め出来るが、それ以外は「まあ、つまらなくはないけど……」な数合わせなクオリティ。つまらなくはない、しかし著者の在日コリアンなアイデンティティを省くと、「それなりに刺激的で、それでいて、不幸過ぎることはない」石田衣良の作品を連想させるだけに、読み手にとっての「旬」な時期を逃すと、「金城一紀」を読む理由が無くなる気もする。何にせよ、つまらなくはない。

第5回本屋大賞 5位:映画篇/金城一紀

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 金城一紀

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第5回本屋大賞 6位:八日目の蝉/角田光代

八日目の蝉 (202x290)
(あらすじ)
逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか……。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。

answer.――― 72 点
不倫相手の赤子を誘拐した女による三年半の逃亡&育成劇の第1章、その誘拐の被害者である子供の大人になったその後のプライベートを含めた葛藤を描いた第2章からなる本作。「母性」をテーマにした作品とのことだが、見所は一章を通しての誘拐された赤子の成長具合だろう。誘拐というショッキングな出来事から物語の幕が上がるが、誘拐→友人宅へ寄生→見知らぬ老婆宅へ居候→宗教(的)団体に駆け込む→……!という、文字に起こしていると実に派手な逃亡劇なのだが、実際に読んでみると、誘拐犯の誘拐に至る過去を交えた心情が綴られる<文学>色こそ本作のセールスポイントなのが解かる。それだけに、本屋大賞のランクイン作品として―――エンターテイメントとして読もうとすると齟齬が生まれ、放り投げてしまう可能性も無きにしも非ず。極論、「女性」受けしそうな題材で、♂を持つMaleには何かと長々しく女々しく、頁をめくるのが億劫になる印象。しかしながら、上述の通り、赤子が幼児へと成長する過程、特に女性しかいない、貨幣概念の無い環境で育った故の行動/反応はVividで面白く映る。2章は運命の皮肉か、誘拐犯と同じく不倫に陥ってしまう被害者の心境を覗く形。サスペンスと捉えず、<文学>として手に取れば相応に楽しめる一作。

第5回本屋大賞 6位:八日目の蝉/角田光代

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 角田光代

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第11回本屋大賞 6位:教場/長岡弘樹

教場
1.職質
2.牢門
3.蟻穴
4.調達
5.異物
6.背水

answer.――― 83 点
警察小説は数あれど、鶏が先か、卵が先か―――ではないが、その隙間を突いてくるまさかの《警察学校》を舞台にした異色の警察小説が本作『教場』。「警察学校は、優秀な警察官を育てるための機関ではなく、適性のない人間をふるい落とす場である」と煽るように、職質、取り調べ、スピードの取り締まり、変わったところで、医療&生物関連などの豆を含めた《知識》を交えながら、あの手この手の演出でSURVIVEする者、脱落していく者を描いていく。リアリティが在るのか無いのか、登場する教官&警察官候補生たちはもはや犯罪者予備軍のような底意地の悪さを強く押し出され、「……日本、大丈夫か?」と若干の失笑を禁じ得ないが、これに関してはいい年したヒヨっ子たちの失敗をそのまま描いても「つまらない」ことを著者は知っているということだろう。全話通して登場するのは「教官」風間だが、各話の視点人物はそれぞれ「癖」のある候補生たち。一部の例外を除き、警察学校という設定上、彼ら候補生は無知な「凡人」のために感情移入は捗らず、故に欺き、蹴落とす怨恨込みの脱落劇に著者は活路を見い出したのだろう。こうありたい俺!な感情移入が出来ないのはマイナスだが、各話で用意されている見知らぬ常識な《知識》はやはりスパイシーで、「読んで得をする」作品に仕上がっている。「教官」風間を主役にした続編が出ているようだが、個人的には本作でSURVIVE出来た視点人物たちが主役の作品を出すべきだと思うんだが、……話題待ちでもしているんだろうか?第三話「蟻穴」が幕の切り方を含め一番気に入りました。

第11回本屋大賞 6位:教場/長岡弘樹

category: な行の作家

tag: OPEN 80点 長岡弘樹

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第11回本屋大賞 10位:去年の冬、きみと別れ/中村文則

去年の冬、きみと別れ
(あらすじ)
ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けていた。調べを進めるほど、事件の異様さにのみ込まれていく「僕」。そもそも、彼はなぜ事件を起こしたのか?それは本当に殺人だったのか?何かを隠し続ける被告、男の人生を破滅に導いてしまう被告の姉、大切な誰かを失くした人たちが群がる人形師。それぞれの狂気が暴走し、真相は迷宮入りするかに思われた。だが……!

answer.――― 76 点
“そんな平和を訴えたいなら日本じゃなくて中国でしてこい!!”大江健三郎が自身の作家生活50周年と講談社創業100周年を記念して創設した大江健三郎賞。その栄えある第4回の受賞作『掏摸<スリ>』が特典として英訳され、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で、2012年のベスト10小説に選ばれ、次作『悪と仮面のルール』も同誌で2013年のベストミステリーの10作品に選ばれ、―――このビッグウェーブを俺は逃さない!とばかりに、主要登場人物をすべて倒錯者にした著者の意気込みを感じる本作。手記を交えた、“信頼できない語り手”風味の進行で、その都度、登場人物の《異常》な「(性)癖」が披露されていく。著者が文学畑の出自もあり、《人》というよりも《人間》を描くアプローチを取っている印象。それが個性的と云えば個性的なのだが、……ミステリじゃないわな。仕掛けそのものを楽しむというよりも、登場人物たちの道から逸れた嗜好を「―――狂気!」と受け取って楽しめるかが評価の分かれ目だろう。著者の考える《売れ線》を文学鍋で煮込んだ一作。個人的には、序盤に披露される蝶の写真の評と殺人を犯した写真家の憐れな"WANT TO BE"っぷりが気に入りました。

第11回本屋大賞 10位:去年の冬、きみと別れ/中村文則

category: な行の作家

tag: OPEN 70点 中村文則

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第6回本屋大賞 10位:モダンタイムス/伊坂幸太郎

モダンタイムス (206x300)
(あらすじ)
29歳の会社員となった渡辺拓海の前で、見知らぬ男が「勇気はあるか?」と訊いてきた。「実家に」と言いかけたが、言葉を止めた。拷問を受けた翌日、拓海は失踪した五反田正臣の代わりに、「ゴッシュ」という会社から依頼されたシステム改良の仕事を引き継ぐことになる。

answer.――― 69 点
本作の見所を挙げるなら、……拷問場面だろうか。ドSな妻に浮気を疑われ、実際、本当に浮気をしているSEな主人公が巻き込まれたのは、国家的陰謀!と風呂敷はデカいものの、市井の者が出来る程度のアクションで幕を閉じられる本作。制作時期を共にしていたらしい前年の本屋大賞第1位の『ゴールデンスランバー』と同じ“小市民の反抗”な作風で、その意味でも兄弟作と云えるものだが、……いつも通り台詞こそ小気味良いものの、だらだらだらだらだらだらと続く頁に「とりあえず、長い。そして、やっぱり長い」と思わずクレームまで繰り返したくなる。こうなると1位から10位への大幅なランクダウンも、伊坂幸太郎という作家が迎えた賞味期限を象徴しているように思えてしまった。伊坂好太郎と言えば……!の十八番《日常》は、現代よりおよそ50年後の近未来にもかかわらず、さした技術革新も起こらず「変わっていない」としている設定。徴兵制が敷かれているのがミソだが、そこは押し出されず、単なるファッションと化している。要するに、著者にとっては労せず現代を演出出来る有用なアイディアだが、読み手には特に還元されないサボタージュなアイディア。まだ伊坂作品を手に取ったことのない新規の読み手へ向けた“野心”を感じられない仕上がりとなっている。それでも、懲罰な拷問を受けながらも善性に満ちた伊坂好太郎節は健在だし、『魔王』(未読)とも世界観を共有しているようなので、ファンならば満足出来るのではないでしょうか。ただ、やっぱり長過ぎるとは思う。ドS妻・佳代子がいなかったら、個人的に「……Give up!」していた“見限り”な一作でした。

第6回本屋大賞 10位:モダンタイムス/伊坂幸太郎

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 伊坂幸太郎 本屋大賞

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第6回本屋大賞 7位:出星前夜/飯嶋和一

出星前夜
(あらすじ)
寛永十四年、突如として島原を襲った伝染病が一帯の小児らの命を次々に奪い始めた。有家村の庄屋・鬼塚甚右衛門は旧知の医師・外崎恵舟を長崎から呼ぶが、代官所はあろうことかこの医師を追放。これに抗議して少年ら数十名が村外れの教会堂跡に集結した。折しも代官所で火事が発生し、代官所はこれを彼らの仕業と決めつけ討伐に向かうが、逆に少年らの銃撃に遭って九人が死亡、四人が重傷を負う。松倉家入封以来二十年、無抵抗をつらぬいてきた旧キリシタンの土地で起こった、それは初めての武装蜂起だった…。

answer.――― 70 点
第2回の『黄金旅風』でも言及したが、本作もまた著者の十八番、綿密な取材により成立させる<時代考証>それ自体をセールスポイントに置く一作。気になる題材は、江戸時代初期の大乱「島原の乱」だが、この乱が単純な宗教的情熱などではなく、止むに止まれぬ事情―――理不尽な為政者に対して起こった必然的な反乱として描くため、下準備に当時の風邪の診断の仕方から治療法、その他の含蓄を事細かに綴っていく。これを是とするか非とするかはまさしく読み手次第で、僭越ながらいわゆる「大衆」の代表としてその是非の内訳を予想させて頂くと、「非」の判断が大勢を占めるかな、と。現在は地獄で家庭内暴力についての反省文をしたためているだろう井上ひさし御大ですら絶賛し、ファンには「飯嶋和一にハズレなし」と謳われているように、著者はプライドを持って「調べ」、作品を書き上げているのだと思う。その《仕事》っぷりには教科書程度の知識では疑問を挟む余地は無い。だが、遅々とした展開、何より「物語」を通しているものの、資料を読むかの如き錯覚を覚える文字量は酷だ。本作を読んで「楽しい」「面白い」という感覚を得るには、相応の《知識》が要る。飯嶋和一という作家は、インテリゲンチャ御用達の作家と捉えていいと思う。それだけに、我こそは……!という方は手を伸ばしてみてください。選民的エンターテイメントがここに御座います。

第6回本屋大賞 7位:出星前夜/飯嶋和一

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 飯嶋和一

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第9回本屋大賞 4位:くちびるに歌を/中田永一

くちびるに歌を (199x290)
(あらすじ)
長崎県・五島列島のとある島の中学校。合唱部顧問の松山ハルコは産休に入るため、代わって松山の中学時代の同級生、「元神童で自称ニート」の臨時教員・柏木ユリに、1年間の期限付きで合唱部の指導を依頼する。

answer.――― 70 点
00年代前半の主役の一人、ライトノベル界の三大犯罪者「この名前は捨てたんだ……」乙一による、中田永一名義の青春小説。離島を舞台に、いざ征かん!NHK全国学校音楽コンクール!!というライトノベル畑で生まれ育った著者らしい隙間を突いてくる題材だが、いざ読んでみれば「合唱コンクール」自体はあくまで添え物な青春小説らしい惚れた腫れたが中心のストーリー。あらすじや内容紹介で謳われる、新たに赴任してくる「元神童で自称ニート」の臨時教員・柏木ユリの存在感は希薄で、本作の事実上の主人公は例によって内向的な性格で、これまた例によって自閉症の兄を持つという世間にひた隠す《ハンデ》持ちの桑原サトル。彼のコミカルで、時にセンチメンタルな心持ち、塞翁が馬なアクシデントを「外」から眺めるのが本作のエンターテイメントとなっている。正味な話、世に溢れ返る作品のなかで本作をあえて薦めたくなる突き抜けた面白味は皆無だが、それでも、作中のハイライトに挙げられるだろう合唱コンクール直前の抜け出し、名誉の負傷の件は序盤&中盤の平坦な展開を盛り返しにかかるベテラン作家としての手腕。兄への《合唱》を含め読後感は悪くない。ただ、期待し過ぎれば肩透かし、新人作家の作品ならばお先が知れる平均的な作品には違いない。

第9回本屋大賞 4位:くちびるに歌を/中田永一

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 三大犯罪者 乙一 本屋大賞

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第9回本屋大賞 3位:ピエタ/大島真寿美

ピエタ
18世紀、爛熟の時を迎えた水の都ヴェネツィア。作曲家ヴィヴァルディは、孤児たちを養育するピエタ慈善院で“合奏・合唱の娘たち”を指導していた。ある日、教え子のエミーリアのもとに、恩師の訃報が届く。一枚の楽譜の謎に導かれ、物語の扉が開かれる。今最も注目すべき書き手が、史実を基に豊かに紡ぎだした傑作長編。

answer.――― 79 点
ヴィヴァルディ、アンナ・マリーア、ピエタ慈善院、“合奏・合唱の娘たち”など、18世紀のヴェネツィアを舞台に実在する人物、建造物、団体を基に制作された本作『ピエタ』。史実に基づいて……なる文句は、ともすると想像を縛る堅苦しさに敬遠されてしまう場合もあるとは思うが、上述の通り、18世紀のヴェネツィアとなると日常から縁遠く、また、主役がヴィヴァルディなのかと思えば、そのシスターな教え子たちなので、地図にない新世界に臨む気持ちで頁をめくれる。物語は慈善院の苦しい懐事情からの寄付金募り―――ヴィヴァルディの楽譜探しを中心に進む。なかなか魅力的なリードで幸先は良いのだが、そこからは特段の才気の無い女性ばかりの登場人物たちということもあり、何も解決せずの遅々とした温(ぬる)い展開が読み手には厳しいところ。状況が変わるのは中盤、諦観のヒロイン、気まぐれなパトロン嬢ヴェロニカ、そして、教養高い高級娼婦クラウディアの邂逅場面から。非公式な一期一会に相応しく過去のわだかまりを解き、後の散財な展開も納得出来る幻想的な一夜となっている。本作の文体は時折り、台詞が「」を通さず地の文に溶け込むのだが、ここではそれが見事にハマる「話を逸らす」という演出があり、その意味でも個人的に印象的な場面となった。以降は、楽譜探しを片手間にした、ヴェロニカ&クラウディアの「人」騒動。受けた恩は返すもの!と犠牲をいとわぬハートフルな滑走路を突き進み、ラストの「歌」でホロリと涙を流す仕掛けとなっている。牛歩な前半に難こそあれ、しっかりと胸を打ってくれる作品。女性の方は特に気に入るのではないでしょうか。

第9回本屋大賞 3位:ピエタ/大島真寿美

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 大島真寿美

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第9回本屋大賞 6位:ユリゴコロ/沼田まほかる

ユリゴコロ
(あらすじ)
暗黒の欲望にとり憑かれ、さまよう魂。運命は、たったひとつの愛と出会わせた。沼田まほかるの小説は、身も心もからめとる―。おそるべき筆力で描ききった衝撃の恋愛ミステリー。

answer.――― 77 点
父の癌、母の交通事故死―――立て続く不幸に気落ちしていた主人公がある日、実家より「ユリゴコロ」と名付けられたノートを見つければ、そこには猟奇殺人の告白が……。幼き日の記憶と疑問が交錯し、主人公は《真実》を探る!というストーリーラインの本作。いつぞやのレヴューで言及したように、Sex, Drugs & Violence!ついでに、For love or money×money ×money!と、これらの要素を並べてみれば、誰がこねくり回してもエンターテイメントは薫るものだが、本作はそこからDrugを抜いた猟奇な一作。たとえば乙一や道尾秀介といった作家の作品を読んでいる方ならば、取り立てて珍しくもないオーソドックスな作風ではあるが、ユリゴコロとは何ぞや?と前のめさせてくれるノート―――「欠けている」感性による告白は、「らしい」堂に入ったもので、その殺し方を含めて雰囲気を漂わせてくれる。作品の構造としては、「ノート」パートとその真偽を探る「現実」パートがほぼ交互に配されるわけだが、中盤以降はギアを切り替えるように《For love》を押し出してくる意外性が構成として面白い。着地してみれば成る程、恋愛ミステリー。前半を〆めた機械仕掛けなSex, Violence!の不穏な余韻残さぬ、爽やか読後感を味わえる。上述の通り、目新しさが無いのが玉に瑕だが、それだけに著者の地力の高さを伺わせるアピール度の高い一作。個人的に、「楽しい」を理解したときの表現が気に入りました。第14回大藪春彦賞受賞作。

第9回本屋大賞 6位:ユリゴコロ/沼田まほかる

category: な行の作家

tag: OPEN 70点 沼田まほかる 大藪春彦賞

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