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2015年5月のレヴュー更新(まとめ)

レヴュー自体の数はこの通りだが、しかし今月はカテゴリ整理をひたすらしていた。我ながら頑張った。本当に頑張った。むしろ、どうして最初からこの形を思いつかなかったのかと反省している。ただ、たとえば秋山瑞人だったりの受賞作を持たない作家のレヴューはなかなか見つからない難点があるのだが、これの解決策をパッと思いつかない。まあ、点数一覧に辿り着いて頂ければ、点数の高いのと低いのを適当にクリックしてくれると思うし、そもそも訪問者が少ないし、俺個人の気分を無視すれば全く問題ないだろう。あ、いつも訪問して頂いている方々、有難うございます!とりあえず、せっかく全部読破したんだし、山本周五郎賞の受賞作のレヴューを全部終わらせたい。順番通りにレヴュー出来るのがやりがいを感じている。来月中に終わらせたいよね。

●本屋大賞●
第12回本屋大賞 6位:怒り/吉田修一
第9回本屋大賞 2位:ジェノサイド/高野和明

●山本周五郎賞●
第5回山本周五郎賞 受賞作:砂のクロニクル/船戸与一
第4回山本周五郎賞 受賞作:ダック・コール/稲見一良
第3回山本周五郎賞 受賞作:エトロフ発緊急電/佐々木譲
第2回山本周五郎賞 受賞作:TUGUMI/吉本ばなな
第1回山本周五郎賞 受賞作:異人たちの夏/山田太一

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category: 更新情報

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第5回山本周五郎賞 受賞作:砂のクロニクル/船戸与一

砂のクロニクル (202x290)
(あらすじ)
それは現代史大逆転の、最後の賭け。二万挺の自動小銃に託された壮大なるロマン。ロンドンからモスクワへ、そして戒厳令下のイランへ。日本人武器商人はひた走る。歴史の隠された真実を明かしながら。煮えたぎる情念をまき散らしながら。物語作家としての天才と、メッセージのすべてを叩き込んだ未曽有の巨編。

answer.――― 83 点
先日、訃報が流れた船戸与一による80年代末期のイランを舞台にした大作。いわゆる“死の商人”である二人の日本人「ハジ」を軸主人公に起用し、イランより独立を目指すクルド人ゲリラへの武器手配、その顛末を濃厚なSex & Violenceを押し出しながら描いていく群像劇。ほとんどの人にとって教科書に記載されている程度の見聞だろう「イラン革命」の理想とその《腐敗》を革命隊の末端である「サミル」から目の当たりに出来る点、たとえばゾロアスター教徒が革命へ憎悪を抱く理由など「イラン革命」にまつわる《知識》が挿される点は、本作ならではのセールスポイントに挙げられるだろう。手抜き知らず……と、たじたじに評したくなる著者の筆圧を含め、読了する頃にはしっかりと頭(と時間)が困憊していることを《お約束》出来る仕上がりとなっている。エンターテイメント満載の内容ながら、上述の通り、さして効果を発揮していない同名の軸主人公の採用、それ以外にも視点人物が何度も切り替わるのは集中力を強いる大きなマイナス要因で、これが原因でGive Up!してしまう読者も少なくないことが予想されるので、個人的には構成に「難有り」と思う次第。各章のメインキャラクターを示すために、西暦、ペルシア暦、イスラム暦と前置いているが、それで「整理」出来るほど、「ハジ」は書き分けられていない。登場人物で云えば作中、もっとも魅力的に映ったのはグルジアの武器密売業者ゴラガジビリ。金こそ全て!の二枚舌、女垂らしの下衆というキャラクターは、堅苦しい展開のなかで一種の清涼剤とさえなり、その「最期」は、群像劇ならではの《意外な視点人物》として栄誉の抜粋。女に溺れた男らしく、散るその時まで楽しませてくれました。

第5回山本周五郎賞 受賞作:砂のクロニクル/船戸与一

category: は行の作家

tag: OPEN 80点 船戸与一 山本周五郎賞

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第4回山本周五郎賞 受賞作:ダック・コール/稲見一良

ダックコール (202x290)
1.望遠
2.パッセンジャー
3.密猟志願
4.ホイッパーウィル
5.波の枕
6.デコイとブンタ

answer.――― 81 点
石に鳥の絵を描く男に出会った青年は、河原で微睡むうちに鳥にまつわる六つの夢を見る―――というレイ・ブラッドベリの『刺青の男』をモチーフにした短編集。「希に見る美しい小説」とは選考委員を務めた藤沢周平の評だが、その言葉も決して大袈裟に聞こえない、出逢ってしまえば感情揺さぶられる《数瞬》を、確かなインテリが手掛けた翻訳小説を思わせる剛健な筆で描いている。それらは冒頭の二編、己の職を失ってまで手に入れた奇跡「望遠」、リョコウバトの恐怖「パッセンジャー」が端的に象徴するところだと思うが、個人的には「希に見る美しい小説」というよりも、「野に遺賢あり」という藤沢周平以外の選考委員の評のほうが的を射ている、玄人(書き手)好みな作品の印象。女を排して男の匂いを立ち込める作中もっとも頁を費やした中編「ホイッパーウィル」は、著者のハードボイルドな本質が現れている一編だろう。先の「希に見る美しい小説」から文章の面からも耽美的な、《繊細》な文章をイメージしていたが、その真逆の、《題材》それ自体の美しさを真正面から彫り込む力強さには面食らった。奇をてらった表現、(似た言葉を重ねる)感覚任せな描写が少ないのは、文学の衰退とともに軽量化を是とする時流を逆行するストロングスタイルと云える。詰まる/詰まらないで語る類いの作品ではないものの、地味なことは否めず、その意味で読み手を選ぶ一作には違いない。が、短編好きを標榜するならば、〆めの第六話「デコイとブンタ」は必読の一編。「ハードボイルド・ポップ」とでも命名したくなるこの沈黙の一編は、シーズンオフ間近の遊園地の観覧車と風船の《邂逅》により、ついにデコイを空へ飛ばす。その爽快感たるや圧巻で、「デコイ、お前は最高だっ!」と膝を打つこと必至。前の五編で著者と噛み合わなくても、お薦め出来る逸品です。

第4回山本周五郎賞 受賞作:ダック・コール/稲見一良

category: あ行の作家

tag: OPEN 80点 稲見一良 山本周五郎賞

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第3回山本周五郎賞 受賞作:エトロフ発緊急電/佐々木譲

エトロフ発緊急電 (204x290)
(あらすじ)
第二次世界大戦前夜、日本海軍の動向を探るため、憲兵に追われながらも単身日本に潜入した日系アメリカ人スパイと、それとは知らずに恋に落ちる薄幸な女。そして彼らを取り巻く、様々な思いを抱く人々。戦争に翻弄される人々の過酷な運命を描く。

answer.――― 71 点
佐々木譲の『ベルリン飛行指令』に続く第二次大戦三部作の第二作にして、第43回日本推理作家協会賞、第8回日本冒険小説協会大賞、そして、この第3回山本周五郎賞と複数の販促賞を掻っ攫った本作『エトロフ発緊急電』。その概要は、正義に冷めた日系人ケニー・サイトウが依頼された大日本帝国の動向―――《真珠湾攻撃》間際を下敷きにしたスパイ絵巻。舞台をアメリカから日本、そうして、表題である択捉まで移すダイナミックなスパイ活動は、その距離に比例したわけではないだろうが、読む前から思わず怯んでしまう文庫本で六〇〇頁を超える圧倒のボリューム。しかし上述の通りの「賞」が保証してくれる後押しもあり、意気軒昂に頁をめくってみれば……結論から言ってしまうと、「無駄」な登場人物、演出が目につく残念な出来となっている。スパイが題材、スパイが主役となれば、味方に、敵に、第三国に女!と騙し騙され、唆し唆された上の多方面の《知識》を絡めた諜報合戦を期待すると思うが、本作ではそれらは押さえてこそあるものの、ヒロイン・岡谷ゆきを始めとした「脇役」にまで華を持たせたい著者のエゴにより、遅々とした進行が読み手には厳しい。この手の重厚な作品がメインストリートから外れている昨今の潮流を考えてみても、出版当時だから評価された《過去の作品》として映ってしまうだろう。今やナイーブな問題と化している南京大虐殺を扱っているのも頂けない。そんな「重い」足枷を嵌めている本作ではあるが、個人的なハイライトとして米軍によるケニー・サイトウへのスパイとしてのスカウト場面を推したい。矢継ぎ早に繰り出される生い立ちへの質問に、無機的に答えるケニーの姿はまさしく―――This is the Outlaw Star!超級の主人公を体現している。ナンヤカンヤと文句を並べてはいるが、《第二次世界大戦が好き》などの補正が働けば絶賛も伊達ではないと感じられる大作には違いない。

第3回山本周五郎賞 受賞作:エトロフ発緊急電/佐々木譲

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 佐々木譲 山本周五郎賞

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第2回山本周五郎賞 受賞作:TUGUMI/吉本ばなな

TUGUMI (200x290)
(あらすじ)
病弱で生意気な美少女つぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会った。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。

answer.――― 80 点
ばななは『キッチン』さえ読んでおけばいい!というネガティヴ・キャンペーンな持論の発端は、著者がメディアその他の性悪な露出によって、作中で《吉本ばなな》が見えてしまうからなのだが、それでも『キッチン』以外でもう一作、あえて挙げるならば、やはりこの第2回山本周五郎賞受賞、海外でも支持高い(らしい)本作『TUGUMI』になるのだろうか。おっとりとした「私」の従妹「つぐみ」は美しく病弱で、それでいて、じゃじゃ馬だった―――帰省した大学一年の夏、「つぐみ」との強烈な日々を振り返りながら、現在を描く青春譚の本作。百葉箱を用いた「お化けポストごっこ」、そこからの友情の分岐点となった悪戯など、読み手が暗黙の了解として求める登場人物たちの《過去》を振り返る形で惜しげもなく披露していく作風は、「死」を抜け目なく挿し込んでくるセンスを含め、ある種の天性を感じざるを得ない。自由気ままに書いていただろう文章も、数作を経て洗練されたのも好印象。表題になってさえいる「ヒロイン」つぐみは、出版から四半世紀過ぎた現在でもVividで、第1級のヒロイン格を保てている。ラストの手紙も素敵な演出だ。本作が著者の代表作、名作に挙げられるのも頷ける。にしても、……である。作中、私が顔をしかめたのは、例によって、ズイッ……と吉本ばなな@居酒屋事件で検索!が出てきたからだ。「お前のことを好きになった」とは、出会って間もないイケメンにつぐみが放った肉食極まりない言葉だが、私はこの台詞に(……お前、ばななだな?)と著者を見た。つぐみは、男には素を隠すという設定はどこへ行った?一目惚れなら、ここはつぐみならたとえば苛つくところなんじゃねえか?どんな言葉を並べても、作家と登場人物は切り離すことは出来ない。 だからこそ、作家は己を「隠す」技巧を修めるべきだ。それが出来ないなら、作家は「表」舞台に出てくるべきではないと思う。もっとも、「お前のことを好きになった」以外は特に気にもならなかったので、大衆小説として◎を打てる一作。楽しめました。

第2回山本周五郎賞 受賞作:TUGUMI/吉本ばなな

category: や行の作家

tag: OPEN 80点 よしもとばなな 山本周五郎賞

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第1回山本周五郎賞 受賞作:異人たちの夏/山田太一

異人たちとの夏 (206x290)
(あらすじ)
妻子と別れ、孤独な日々を送るシナリオライターは、幼い頃死別した父母とそっくりな夫婦に出逢った。こみあげてくる懐かしさ。心安らぐ不思議な団欒。しかし、年若い恋人は「もう決して彼らと逢わないで」と懇願した……。

answer.――― 78 点
今や裏・直木三十五賞とも云える、Nextな新進作家、あるいはブレイク間近の中堅作家による良質なエンターテイメント作品を紹介する山本周五郎賞。本作は、その栄えある第1回の受賞作。その概要は、離婚した四十路過ぎのシナリオライターが独身女性ケイと出会い、ほぼ時を同じく死別したはずの両親を浅草で見掛け、接していくうちに自覚なく痩せ細っていく真夏のホラーなのだが、……“すき焼き小説”。本作に目を通せば、そんなレッテル張りもまさしく「腑」に落ちる落涙必至の団欒場面があり、その“すき焼き”場面こそが読み手の記憶に長く刻まれるだろう本作のメインディッシュ。きっと、この場面があるからこそ本作をお薦めする方もいらっしゃることだろう。個人的に食事場面というと、“俺は女を解かっている”渡辺淳一のベストセラー『失楽園』が韓国で映画リメイクされるとき、不倫相手との出会いの店を「しゃぶしゃぶ(?)」店から「焼肉」店へと変更されたことを<お国柄で情緒が違う>と半ば嘆いていたコラムを思い出すのだが、その観点から考えてみても、家族の団欒を表現する場面として日本人には<鍋を囲む>ことが相応しいように思える。そんな隙のない“すき焼き”場面を置いても、自覚なく痩せ細っていくホラーもまた、ベタながらも実に興味をそそる演出。気負いのないリーダビリティに優れた文章、さらっと読める頁数を含め、現在でも十分に通じるエンターテイメント作品。ピックアップとして序盤、主人公が何気なく自分のマンションを見上げたとき、明かりが一つしかない無い……なんてお手本のような描写は、親指を突き立てたくなるベテランの味。良作です。

第1回山本周五郎賞 受賞作:異人たちの夏/山田太一

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 山田太一 山本周五郎賞

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第12回本屋大賞 6位:怒り/吉田修一

怒り (206x290)
(あらすじ)
殺人現場には、血文字「怒」が残されていた。事件から1年後の夏、物語は始まる。逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?

answer.――― 75 点
血文字で「怒」と残された未解決の殺人事件から1年―――漁港に暮らす親娘、ゲイの会社員、米兵によるレイプ未遂の体験を持つ少女とその少女に好意を持つ少年が、それぞれ目の前に現れた前歴不詳の男を信頼しつつも疑念を抱いていく様を、読み手は「誰が犯人なのか?」と合わせて楽しむ構図の本作。読売新聞に連載された背景も重なって、『悪人』@朝日新聞連載を連想してしまうが、実際、「登場人物を増やした」だけの兄弟作と云えるだろう。音楽のコード進行ではないが、いわゆる《構成》は雑多に見えても正しく機能する「数」は限られている。そのため一度「(己の)造り」を確立出来てしまえば、たとえ白紙の上に放り出されても、感覚という記憶を頼りに辿り着けてしまう。そうして、安定したエンターテイメントが成り立つが、その代償に(己のなかで)マンネリを招くのが《お約束》だ。勿論、書き手がマンネリを感じるならば、読み手も当然、「感じる」もの。文学畑の出自を持つ著者だけに、昨今の主流である《キャラクター》でも、《人》でもなく、《人間》で魅せてこそいるが、もう一度、この「信頼してるけど……」という疑念持つ《人間》観察&犯人捜しのセットで攻めるのは厳しい気がする。その意味で、終盤、犯人への「怒り」がブスッ……!と執り行われる場面は、手に入れた己の《構成》へさよならbyebyeしている感も。『悪人』Part 2を望む人にはその期待には応えられる出来です。ちなみに本作、お金儲けのためにわざわざ上下巻に分けられておりますので御注意を。

第12回本屋大賞 6位:怒り/吉田修一

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 吉田修一 本屋大賞

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第7回本屋大賞 3位: 横道世之介/吉田修一

横道世之介
1.四月 桜
2.五月 ゴールデンウィーク
3.六月 梅雨
4.七月 海水浴
5.八月 帰省
6.九月 新学期
7.十月 十九歳
8.十一月 学祭
etc...

answer.――― 83 点

冒頭からしばし続くあまりにリアリティ溢れる上京してきた新大学生の「しょうもない」日常に、―――大学生必読の一冊!という謳い文句が脳内にこだましたが、途中、唐突に挟まれる謎の視点に「……邪魔するなよ!」と思ったのは私だけではあるまい。その謎の視点の正体は平凡極まりない主人公と関わった友人、知人たちの二十年後であり、そこで彼らの現在と、主人公への幾ばくかの当時の印象が添えられる。この辺りは文学畑出身である著者らしい構成で、同じ<人間>に対する評価の変遷―――つまりは時間軸を変えることで、登場人物自身の価値観の変遷を描きたかったのが伺える(そして価値観が変わっても、主人公は二人といない良い奴だったな、……という演出)。もっとも、文学のような<人間>への追究性は薄く、あくまで味付け程度の処理なために「それなら結局、……邪魔するなよ!」とも思ったのだが、とある登場人物の登場によってそんないつものイチャモンは彼方へと消えた。―――与謝野祥子、ここ一年読んできた二百冊近い本のヒロインのなかで彼女はBESTだ。マジで萌えた。表題をそれこそ「横道世之介」ではなく、「与謝野祥子」に改題すべきだとさえ思った。ついでに、彼女の視点で物語を編んでくれ!と未だ願って止まない。登場当初は侮蔑さえしていたのにいつの間にか惚れてしまっていた主人公のように、本作が本屋大賞にランクイン出来たのは間違いなく書店員もまた彼女にFalling In Loveしたからである。彼女の魅力については多く語るまい。読めば分かる、そして、シルヴィ・ヴァルタン宜しくIrrésistiblement(あなたのとりこ)だ。冒頭にも書いたが、主人公の時間の過ごし方は現在の大学生の生活そのまま。こうならないためにも、大学生は一度読んでおいて損は無いだろう。しかし兎にも角にも、本作の主役は―――与謝野祥子。きっと、読めば貴方も萌えられる。ちなみに、主人公の名前の由来は江戸時代の名作『好色一代男』からとのこと。己の無知をまた知りました。

第7回本屋大賞 3位: 横道世之介/吉田修一

category: や行の作家

tag: OPEN 80点 吉田修一 本屋大賞

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第5回本屋大賞 4位:悪人/吉田修一

悪人
(あらすじ)
保険外交員女性・石橋佳乃が土木作業員・清水祐一に殺された。清水は別の女性・馬込光代を連れ、逃避行をする。なぜ、事件が起きたのか?事件当初、容疑者は裕福な大学生・増尾圭吾だったが、拘束された増尾の供述と新たな証言者から、容疑の焦点は清水に絞られる事になる。

answer.――― 77 点

02年に『パレード』で第15回山本周五郎賞を受賞、同年に続く『パーク・ライフ』で第127回芥川賞を受賞といった「文学」出自の作家として離れ業とも云える華々しい受賞歴を持つ吉田修一が手掛けた本作「悪人」は朝日新聞で連載された長編作品。物語は、保険外交員の絞殺事件の犯人捜し、そして、その犯人の逃避行を軸に、《人間》を描いていく群像劇。一日一節を求められる新聞連載という形式から、etc...に数えられるような人物が視点人物になったりの忙しい視点切り替えに集中力を切らす難こそあれ、そんな群像劇故に文学作品特有の「1」対「1」の小さな世界で終わらないのが本作の魅力だ。この本屋大賞に選ばれたように、被害者、そして、容疑者が日常で装っていた「嘘」を描いていく展開は、誰が殺したのか?(実は……!)なミスリードを提示されているような錯覚に陥り、思わぬエンターテイメント感覚を得られる。しかし、そういう意味では【そんな彼を殺人に走らせたものは、一体何か―――。】という本作の紹介文は頂けないミスらしいミスと云えるだろう。ながらに、ともかくの《悪人》である。―――何が悪人なのか。―――誰が悪人なのか。本作は九州の地方都市を舞台に、市井の、実は多くがそうである、ワーキングプアを真摯に描いている。そして、抜け出せない現実に目を背ける登場人物たちが作る「嘘」を剥いでいく。その中で殺人が起こり、庇い、庇われ、好かれ、蔑まされ、騙され―――殴られ、裏切られる。殺人は衝動で起こり、その事件には必ず背景があることを本作は教えてくれる。個人的には、陰の主役とも云える被害者・石橋佳乃の振る舞い、周囲の言及に興味を惹かれたが、この辺は私が男だからかね?とりあえず、「文学」にノミネートされる作品ながら、大衆に支持される吉田修一に「天晴れ」。上下巻、合わせてのレヴューです。

第5回本屋大賞 4位:悪人/吉田修一

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 吉田修一 本屋大賞

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GA文庫大賞受賞作一覧


▼ 第6回 (2013年) ▼

GA文庫大賞6

優秀賞:路地裏バトルプリンセス/空上タツタ
優秀賞:神楽剣舞のエアリアル/千羽十訊
優秀賞:ガンソード.EXE -異能の騎士と忘却の少女-/北川まんた
優秀賞:少年給魔師と恋する乙女 /スタジオぽこたん
奨励賞:クロスワールド・スクランブル/雪川轍
奨励賞:未来/珈琲 彼女の恋。/千歳綾
奨励賞:魔王子グレイの勇者生活(チートライフ)/広岡威吹
奨励賞:異世界ラ皇の探求者/西表洋

▼ 第5回 (2012年) ▼

GA文庫大賞5

優秀賞:装甲少女はお好きですか?そうです!フォルムとか最高です!/有賀一善
優秀賞:ジンクスゲーム/アダチアタル
奨励賞:ごはん食べたい! -なんでもしますから?-/天乃聖樹
奨励賞:マネー&ウィズダム -美少女商会の異邦人-/稲波翔
奨励賞:聖人君子のラブコメディ/数原文
奨励賞:神託学園の超越者/秋堂カオル
奨励賞:魔王と姫と卑猥図書/おつかい

▼ 第4回 (2011年) ▼

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

大賞:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ
優秀賞:うちの居候が世界を掌握している!/七条剛
奨励賞:木崎くんと呼ばないで!/長物守
奨励賞:空に欠けた旋律<メロディ>/葉月双
奨励賞:しきもんつかいはヒミツの柊さん/桂木たづみ
奨励賞:男子高校生のハレルヤ!/一之瀬六樹
奨励賞:あの旗を立てるのは貴方/啓都正光
期待賞:B'st/浅城爪牙

▼ 第3回 (2010年) ▼

Happy Death Day

奨励賞:あやかしマニアックス!/夏希のたね
奨励賞:おとーさんといっしょ! 少女とメガネとハイペリオン/中谷栄太
期待賞:声優のたまごが、俺の彼女だったようです。 ~ぱんつの中身は大事です!~/花花まろん
期待賞:赤い髪のエデンと暗闇のルー・ヴァルハラ/すーた
期待賞:異郷のおまえら/九守紳次

優秀賞:Happy Death Day/望公太
奨励賞:彼と人喰いの日常/火海坂猫
奨励賞:ブラパン!/笠原曠野
奨励賞:優等生以上、フリョー未満な俺ら。/初美陽一
奨励賞:双子と幼なじみの四人殺し/森田陽一
期待賞:俺はまだ恋に落ちていない/高木幸一

▼ 第2回 (2009年) ▼

GA文庫大賞2

優秀賞:踊る星降るレネシクル/裕時悠示
奨励賞:ふぁみまっ!/九辺ケンジ

優秀賞:断罪のイクシード -白き魔女は放課後とともに-/海空りく
奨励賞:かんなぎ家へようこそ!/冬木冬樹

▼ 第1回 (2008年) ▼

GA文庫大賞1

優秀賞:這いよれ!ニャル子さん/逢空万太
優秀賞:Re:SET 想いと願いのカナタ /月島雅也
奨励賞:魔法の材料ございます ドーク魔法材店三代目仕入れ苦労譚 葵東
奨励賞:無限のリンケージ ―デュアルナイト―/あわむら赤光
奨励賞:ノブレス・オブリージュ ~茅森楠葉の覚悟~/小松遊木
奨励賞:オルキヌス 稲朽深弦の調停生活/鳥羽徹
奨励賞:純愛を探せ!/速水秋水

奨励賞:月見月理解の探偵殺人/明月千里
奨励賞:理の守護神さま。 一.黒使の少女・龍方時雨/十目一八
奨励賞:ゆうれいなんか見えない!/むらさきゆきや
編集部特別賞:りーち☆えんげーじ! -子孫繁栄!国立栄華学園中等部-/海堂崇

category: GA文庫大賞

tag: OPEN 受賞作List GA文庫大賞大賞 GA文庫大賞優秀賞 GA文庫大賞奨励賞

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