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2015年6月のレヴュー更新(まとめ)

先々月に続いて、そこそこに更新している感じだが、今度からは「まとめて更新しよう!」というスタイルになったので、定期訪問して頂いている方には大概が無駄足となってしまい、誠に申し訳ございません。とりあえず、山本周五郎賞を消化したいので、来月も―――と予定はしているものの、若干「飽きてきた」ので、ライトノベルを数作レヴューしてから再開するかも。もしくは、音楽のレヴューで気分転換を図りたい。ちなみに、今月のレヴューしたなかでのオススメは『第11回山本周五郎賞 受賞作:血と骨/梁石日』。もう10年以上も前の作品なので埋もれていると思いますが、とんでもねえアンチヒーローがいたもんです。手持無沙汰なら読んでみても良いと思います。

●山本周五郎賞●
第15回山本周五郎賞 受賞作:泳ぐのに、安全でも適切でもありません/江國香織
第15回山本周五郎賞 受賞作:パレード/吉田修一
第14回山本周五郎賞 受賞作:白い薔薇の淵まで/中山可穂
第14回山本周五郎賞 受賞作:五年の梅/乙川優三郎
第13回山本周五郎賞 受賞作:ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子
第12回山本周五郎賞 受賞作:エイジ/重松清
第11回山本周五郎賞 受賞作:血と骨/梁石日
第10回山本周五郎賞 受賞作:ゴサインタン -神の座-/篠田節子
第10回山本周五郎賞 受賞作:奪取/真保裕一
第9回山本周五郎賞 受賞作:家族狩り/天童荒太
第8回山本周五郎賞 受賞作:閉鎖病棟/帚木蓬生
第7回山本周五郎賞 受賞作:一九三四年冬 - 乱歩/久世光彦
第6回山本周五郎賞 受賞作:火車/宮部みゆき

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category: 更新情報

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電撃文庫:ミナミノミナミノ/秋山瑞人

ミナミノミナミノ
(あらすじ)
「ものすごく環境のいいところだから勉強をするにはもってこいだ」 そんな誘い文句に騙されて夏休みをとある小さな島で過ごすことになった武田正時……が来て早々、どうもこの島はとてつもなく奇妙なところがある!と気づかされることになり、一方で「友達になってくれないか」と頼まれた相手は不思議な感じの、だがとてもかわいい子で―――。

answer.――― 69 点

『イリヤの空 UFOの夏』の焼き直し、本作のレヴューはこの一言で事足りる。すべての作家並びに作家志望、そして、多くの読み手に対して伝えたいことは《作家は万能ではない》ということだ。どんな文章技巧を修めようとも、その事実は決して変わらない。多くの作家は自身のことを把握しないままに筆を執り、奔らせる。それで成功を収めれば自我は肥大化し、万能感に酔いしれ、いつしか堕ち、潔く朽ちもせずに「居座る」。挫折を重ねれば筆は迷い、乱れ、眼は濁り、やがては他者に縋り、ついには「砕ける」。作家を志したその時、何よりも優先して取り掛からねばならないことは《自身を知ること》に他ならない。自分がどういう作家で、どんな筆なのか―――それを把握することに努めることが、語彙を増やすことよりも、文章技巧を修めることよりも、まず重要なのだ。「巧くなる」ことはその後でも十分間に合う。『イリヤの空 UFOの夏』の発表以来、未だライトノベル界のJOKERであり続ける秋山瑞人、その遅筆を嘆く者は後を絶たない。早く(続刊を)書いてくれ、と誰もが願っている。しかし、それは酷というものだ。彼は書かないのではない、―――「書けない」のだ。彼は己の内に物語をひとつしか持たない作家であり、それに気づいてしまったが故に、続刊を書くことを拒んでいる。物語がひとつしかないということは、正解がひとつしかないということと同義だ。何度推敲しようとも、同じ「答え(形)」に辿り着く。本作末にて続刊を告げながら未だ音沙汰がないのも、直後のあとがきにて記されている『イリヤ』っぽい話をもう一度……という痛々しい制作背景を知れば、自ずと腑に落ちる。物語をひとつしか持たない作家の苦しみは、物語をひとつしか持たない作家にしか分からない。イリヤっぽいモノを創っていたはずだったのに、イリヤになっていく恐怖。まして己の文章に絶対の矜持を持っているだろう男が、自作のコピーを「知らず」行っていたことを悟ったとき、尋常ならざる苦痛がその筆を止めたことは想像に難くない。筆力とストーリーメイクはまったく別の才能だ。筆力とは物語の飾りであり、作中の停滞(退屈)を紛らわす、誤魔化すための技巧に過ぎない。如何に文章技巧を修めたところで、己の内に与えられた物語を増やすことにはならないのだ。秋山瑞人にとって初のオリジナル作品だった『猫の地球儀』は、果たして本当にオリジナルだっただろうか?原作付きだった『鉄コミュニケーション』と何が違うのか?秋山瑞人には、「違う」物語を創るための原作者が必要なのだ。秋山瑞人だけではない、「場面」から物語を創る乙一も、「ええじゃないか」しか出来ない森見登美彦も、天賦に任せて一構成しか修得せず勝負を賭けて「砕けた」片山憲太郎、その他、数多の作家たちは自分を知らず、筆を執り、ある日、唐突に自分を知り、―――筆が止まる。《作家は万能ではない》のだ。……なんてほとんど「作家」考なレヴューになってしまったので止めるが、これは「どういう作家」、ストーリーメイクからの切り口で、作家のもう一つの要素「どんな筆」については触れていません。本作で「筆」について触れるなら、やはり「宴会」場面の描写を取り上げざるを得ないでしょう。秋山瑞人は自分の筆に関してはよく知っている。ビール瓶を蹴らしたのは唸らせられたワ。そんなこんなで、プロもワナビも自分の筆についても理解してないとあかんで?「作家」を志すならな!ではでは、いつ出るやもしれぬ、苦心の『イリヤの空 UFOの夏』の姉妹作♪な本作の続刊を待ちましょう!

電撃文庫:ミナミノミナミノ/秋山瑞人 (2005)

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 秋山瑞人

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電撃文庫:イリヤの空、UFOの夏/秋山瑞人

イリヤの空
1.その1
2.その2
3.その3
4.その4

answer.――― 92 点

ナマクラ!Reviewsを定期的に訪問して頂いている方はもうお察しのことでしょうが、……私はライトノベルが嫌いだ。それは主に読者の可能性を閉ざすことに起因する。本来なら文学、古典に流れるはずの層に、Showbizに根ざした「オモシロイ/ツマラナイ」のみの二元的価値基準を植え付け、<興味深い>という<面白い>の亜種とも云える感性の発芽を阻害する。つまらないけど、面白い―――転じて、興味深い。これがエンターテイメントの発達著しい現代における「文学」の正しい位置のハズだが、文学を読んで<興味深い>とならず「ツマラナイ」と切って捨てるのは、ライトノベルを含めた現代Showbizの汚染の結果である。しかし、年齢を重ねれば「オモシロイ/ツマラナイ」だけで世の中が廻らないことに気づくのも事実。それでも、そろそろ古典、文学に―――とならず、あくまでライトノベルに拘る理由は何なのか?それは、奈須きのこ乙一西尾維新……ライトノベル界の三大犯罪者。並びに本作の著者、ライトノベル界の“JOKER”こと秋山瑞人の存在故である。文学とは、文章の機微……程度に思う人にとって、彼らは各々の持つその尖鋭的な表現力、構成力、実験性を以って、神に弓引き、打ち勝ちさえする巨人だった。中でも、秋山瑞人―――文章力という観点において、彼が<ベスト>だ。ライトノベルというフォーマットで、本作以上の筆力で書かれた作品を私は読んだことがない。いや、大衆小説を含めても、だ。ファンのなかには前作『猫の地球儀』を著者の代表作に挙げる輩もいるが、馬鹿を言っちゃいけない。本作は著者自身が間違いなく「代表作」として仕上げに来ている。ROLLする言葉が絨毯爆撃のように頁を埋め、「This is the light novel! This is the new literature! ……Fuck? Hahaha!」と嘲笑うかのように読者を始めとした、関係者を屈服させる圧倒的筆力。頁を開けば、そこには夏があった。学園祭があった。―――ビビりの主人公が、掃射銃ぶっ放しながら告白していた!重箱の隅をつつけば、類を見ない、百花繚乱のフレーズが弾幕となって誤魔化されるが、本作、オリジナリティは無いかもしれない。それぞれの印象的な場面は(アレンジこそされているが)既視感がつきまとい、安易なオマージュにも映る。だが、誠に残念ながら、ここまでキャッチー且つ技巧的な文体で綴られると、「……面白ぇよ」としかつぶやけない。カッタ―を首に当てて、延々と躊躇する思考の描写になれば、当たり前のように書き口を変更。……何様のつもりだ、畜生め!!とワナビーはおろか、ライトノベルを低俗と蔑む文学至上主義者は頭を掻き毟るだろう。普遍性はないかもしれない、しかし仮に一過性のものだとしても、「現代」最高峰の文体がここにある。そんな文章、または、まぶしいくらいの夏を体験したい方はどうぞ。全4巻、合わせてのレヴューです。

電撃文庫:イリヤの空、UFOの夏/秋山瑞人 (2001~2003)

category: あ行の作家

tag: OPEN 90点 秋山瑞人

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電撃文庫:猫の地球儀/秋山瑞人

猫の地球儀
1.焔の章
2.幽の章

answer.――― 76 点

国宝『鳥獣人物戯画』に代表されるように、登場人物の擬人化は古来よりそれだけで楽しませる術として知られる。一般文芸に引け目を感じるライトノベラーにとっての切り札、まさにJOKER的存在とも云える秋山瑞人。本作は彼の初のオリジナル作品であり、タイトルからも察せられる通り、猫の世界を舞台にした物語。猫、ライトノベラーにとってこの<記号>は三度の飯と並ぶ大好物。それは、ファンと自称する者が総じて「本作こそ秋山瑞人の本当の代表作……!」と鼻息荒くするところからも証明出来るだろう。そう、本作の(オ)カルト的支持の源泉は、登場人物が「猫」であることに他ならない。「犬」でも、「鳥」でもダメなのだ―――「猫」でなくては。しかし、仮に「猫」以外の地球儀であったとしても、本作は一作品として○をつけられる出来ではある。巷のSF作品と比しても遜色ない作り込んだ世界観、舞台設定はライトノベルとしては異例の、第32回星雲賞の最終候補作にノミネート(このあたりもまた、秋山瑞人が崇拝される理由のひとつだ)。そんな評価を受ける設定を無視しても、2巻の終盤、時間軸をズラして演出される悲劇の書き口は妙がある。特筆すべき点としては、人が猫に抱く<孤独>のイメージを完遂させたことを挙げておきたい。本作の主要登場人物たちは、すべて<独り>になる。本作のテーマらしい「夢の実現には時として犠牲が伴う(Wikipedia参照)」というさもありなんなものよりも、「猫の世界(地球儀)に群れは存在しないのです」と言いたいかのような著者の演出に個人的に何よりもセンスを感じました。全2巻、合わせてのレヴューです。

電撃文庫:猫の地球儀/秋山瑞人 (2000)

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 秋山瑞人

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電撃文庫:鉄コミュニケイション/秋山瑞人

鉄コミュニケイション
1.ハルカとイーヴァ
2.チェスゲーム

answer.――― 76 点

未だ続刊(というか、完結)を熱く望まれる『E.G.コンバット』の次作にして、著者にとって初めての完結シリーズとなった本作は、現在に続く秋山瑞人イズム溢れる一作……と言っても、原作のクレジットがあるように、本当のオリジナル作品は次作『猫の地球儀』まで待たなければならない。それを踏まえて言うならば、本作はその『猫の地球儀』を描くための試作品、兄弟作と云える内容。ストーリーラインは文明崩壊後の地球を舞台に、人類最後の生き残り(?)の少女ハルカが気のいいロボットたちと暮らす平穏な日々に突然現れた新しい仲間、漂い始めた不穏な空気、そうして、数奇な巡り合わせが事件を起こす―――といったもの。序盤は「終末」という世界観に頼った遅々とした展開で、これぞ秋山瑞人!と唸る文章も少なく、間延びした退屈ささえ覚える。それでも、ハルカと瓜二つな顔を持つイーヴァが合流し、実質的な主役となって堕ちていく様はスロウな序盤を帳消す圧巻の一言。思春期に読めば、イーヴァの心打たれる醜い行動、醜い感情に、大人への階段をひとつと言わず、ふたつ、みっつと上げてくれるはずだ。本作における秋山瑞人の表現技巧は戦闘描写に見られる程度で、後の傑作『イリヤの空 UFOの夏』のような凄味は無いが、読み手に一つの感情をひたすらクローズアップさせていく演出は他作家も見習うべきところだろう。ややご都合な巡り合わせによる内ゲバなため、伏線が出揃ってくると、感心するよりもフッ……と素に戻ってしまう難こそあれ、ライトノベルというフォーマットの許すかぎりのビター・ハッピー&マイルド・バッドな秀作。付け足しのエンディングは時を遡っての一幕。これがあるから本作が記憶に残るのを付け加えておく。全2巻、合わせてのレヴューです。

電撃文庫:鉄コミュニケイション/秋山瑞人 (1998~1999)

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 秋山瑞人

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第15回山本周五郎賞 受賞作:泳ぐのに、安全でも適切でもありません/江國香織

泳ぐのに、安全でも適切でもありません
(あらすじ)
いろんな生活、いろんな人生、いろんな人々。とりどりで、不可解で。江国香織初の書き下ろし短編小説。

answer.――― 60 点
女性支持高い作家、江國香織の10編の短編集。正直、「合わない」に尽きるので、レヴューの代わりに、私の好きなAV作品について書こうと思う。私の好きなAV作品、それは一つに絞り切れないが、敢えて挙げるなら『竹内あいファン感謝祭 素人男性16人ハメまくり大乱交ツアー』だろうか。お笑い芸人・今田耕司はAVを「ファンタジー」と喩えたが、実際、その通りだと思う。AVで行われていることを現実で行おうものなら(カノジョ、奥さんに許可を取ろうものなら)、人格を疑われる。信じられないくらいに疑われる。もはやその辺は「えっ何で!?」とこっちが逆に訊きたくなるくらいの事案である。SEXにレジャー感覚は禁物。好きだの、愛してるだのの一言を適宜添えるのがマナーである。「フザけんな、AVでそんなことは言わねえんだよ!言ってるの見たことあるか!?んな台詞を男優が言ってみろ、冷めるだろーが!!」とは日頃の私の主張なのだが、好きだの愛してるだの、女優に言ってもOK!大いにOK!むしろ推奨!なのが『ファン感謝祭』シリーズである。男優も紛れ込んでいることが多々あるものの、素人がチ♂コしごきながら、AV女優を囲む画はまさしくファンタジー。実に楽しそうで「いやー混ざりたくなるわー」と友人連中に言ったら若干と言わず驚かれたので、SEXに対するスタンスが人によって違うことを俺はこの『ファン感謝祭』シリーズで学んだ。俺は楽しければいい。だから、楽しそうにAV女優(と男優)がSEXしている作品に惹かれる。『竹内あいファン感謝祭 素人男性16人ハメまくり大乱交ツアー』は、とにかく「面白い」に尽きる一作。竹内あいが嫌な顔一つとせず、隙あらば乳をまさぐり、ハメればキスをねだり、しかし結局、中折れて射精に至らない―――これぞ素人!という参加者たちに戸惑いつつももてなし、乱交状態のなかで「皆、正常位でいいの?バックでも何でもいいよ?いいの?」など作品を成立させようと健気に奮闘する様は必見である。主役はもちろん、竹内あいには違いないが、視聴済みの方ならば100人が100人言及せざるを得ない、どんな場面でもカメラインしてくる参加者リサイクル。彼の全力で感謝祭に臨む姿勢は賛否両論を招いているが、個人的には「あいちゃ~ん、あいちゃ~ん!」と強引にカメラインしてくる度にキャッキャヾ(*´∀`*)ノキャッキャと楽しんでおりました。第2弾『帰ってきた竹内あいファン感謝祭 素人男性増員21名!420分拡大版!夢の大乱交ツアー』も制作されたように好評を博した本作。オススメです!……きらきらひかる(愛液)!←元は江國香織の作品のレヴューと言うことで、物は試しに置いてみた。

第15回山本周五郎賞 受賞作:泳ぐのに、安全でも適切でもありません/江國香織

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 江國香織 山本周五郎賞

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第15回山本周五郎賞 受賞作:パレード/吉田修一

パレード
(あらすじ)
都内の2LDKマンションに暮らは男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め……。

answer.――― 75 点
例によって吉田修一を認知したのは芥川賞受賞作『パーク・ライフ』からだったが、その前に書き下ろした本作がトントン拍子な「流れ」を呼び込んだと見るべきなのだろうから、著者にとって「最初」のブレイク・スルー的作品と云えるだろう。気になるその題材は、今や若者文化の象徴となっている「ルームシェア」。血の繋がりもない「5人」の若者の共同生活に潜む、《暗黙》の歪みを覗く形。先に部屋をシェアしていた「4人」に自称18歳の「5」人目(♂)が紛れ込んでくる序盤、そこから少年の正体を怪しみつつ、部屋に引きこもり続けるニートな美女を中心とした面々の「現在」な中盤は、丁寧に描いているだけに「……まさに」と頁をめくるのも億劫になる惰性な日常。視点切り替えの度、それぞれがそれぞれに対する言葉にしない《思い》を覗くのが醍醐味とはいえ、いささか停滞気味で、そのまま現在を伝える(残す)《純文学》の範疇の作品に終わるかと思えば、―――賛否両論となる終盤の着地は「……まさしく」エンターテイメント。吉田修一が「一」文学作家に終わらないクオリティを目撃することになる。個人的には、「ボルヴィック」という単語を日常で挿してきたところが流行的に映った。これは次作『パーク・ライフ』で「スターバックス」を取り扱った点と同じで、《若者文化》をドキュメントしている。文学作家の一つの「仕事(義務)」よね。

第15回山本周五郎賞 受賞作:パレード/吉田修一

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 吉田修一 山本周五郎賞

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第14回山本周五郎賞 受賞作:白い薔薇の淵まで/中山可穂

白い薔薇の淵まで
(あらすじ)
ジャン・ジュネの再来とまで呼ばれる新人女性作家・塁と、平凡なOLの「わたし」はある雨の夜、書店で出会い、恋に落ちた。彼女との甘美で破滅的な性愛に溺れていく「わたし」。幾度も修羅場を繰り返し、別れてはまた求め合う二人だったが……。

answer.――― 66 点
荒木飛呂彦は代表作『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ、その作中にて「スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う」と御無体な設定を放言してくれたが、何の因果か、私は大学進学以降、メンヘラとよく知り合う。ついでに、そこそこに接触を図られる。理由は定かではない―――と言いたいが、流石に何度となく出遭っていくうちに気づいたのだが、彼女たちのプライドを知らず刺激していたのだと思われる。「大丈夫!」「死にたいなら手首じゃなくて首でしょ?」「俺、リスカするヤツ嫌いなんだわ」etc......と、本人の目の前で笑いながらdisるからだと思う(また、それはそれとして、別途「能力」について称賛していることも関係していると推測される)。公然とdisるこの男を「落としたい」―――そんな胸くそ悪い思考が働いて、何だったら股を開いて挑発してくるのである。くたばれ、Bitch!さて、本作は百合界隈では御用達の作家として名を馳せる中山可穂の例によってなビアンな逸品。平凡なOLが若き天才「女性」作家・塁と百合って別れて、旧知の男と結婚するもすれ違い、やっぱ百合しかねえわ!インドネシアへGo!Go!Heaven!というストーリーライン。塁を「猫」と重ね合わせる文学な手法もあるが、百合へ禁忌も感じなければ目新しさも感じない―――百合への《適性》が無い者からすると、メンヘラがメンヘラっている恋愛劇にしか読めない。たとえば、「わたしは彼のやさしさが少々物足りなかった。キスしたければ、すればいいのに。欲しければ塁のように、がむしゃらに血を流してでも奪えばいいのに」……この手の言及、ある種の「汚されたい」欲求を描いているのがリアリティーとして支持を集めるところなんだろうか?百合好きな方に、こんこんと本作の真髄を語られたい次第。

第14回山本周五郎賞 受賞作:白い薔薇の淵まで/中山可穂

category: な行の作家

tag: OPEN 60点 中山可穂 山本周五郎賞

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第14回山本周五郎賞 受賞作:五年の梅/乙川優三郎

五年の梅 (205x290)
1.後瀬の花
2.行き道
3.小田原鰹
4.蟹
5.五年の梅

answer.――― 78 点
山本周五郎賞、「初」の時代小説の受賞作が本作『五年の梅』。表題作を含めた五つの短編で、いずれも男女の仲を描いた短編集。冒頭を飾る『後瀬の花』は仕掛けに工夫あれども何とも渋く我慢を強いられるが、続く忍び難きを忍ぶことを迷いながらも選ぶ『行き道』、《時》とどこからか届く謎の鰹が最低男の性格を変えていく『小田原鰹』からは“裏・直木十五賞” たる山本周五郎賞受賞も納得の佳作が並ぶ。時代小説ながら登場人物の決意、行動を「変えていく」文学的アプローチは物珍しく、《時》を仕掛けの軸にしているのも本格的。そんな粒揃いのなか、個人的ベストには第4話『蟹』を挙げたい。家の都合で離縁を繰り返した女が辿り着いたのは、腕は立つが貧しい武士。ようやく「幸せ」を掴んだ女だったが、昔、自棄になって情事を重ねた男たちの魔の手が迫る!裏切りたくない、でも仕方がない。女の哀しみ溢れたところに……!思わず「あと少しだ、負けんな!」と声を掛けたくなるまばゆいばかりにいぶし銀のラストが秀逸だ。勿論、その『蟹』と甲乙つけがたい表題作、一途な男が漢を見せる『五年の梅』も素晴らしい。月に叢雲、それを払う強い風!といった風流な短編集。

第14回山本周五郎賞 受賞作:五年の梅/乙川優三郎

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 乙川優三郎 山本周五郎賞

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第13回山本周五郎賞 受賞作:ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子

ぼっけえ、きょうてえ
1.ぼっけえ、きょうてえ
2.密告函
3.あまぞわい
4.依って件の如し

answer.――― 74 点
今や作家としてよりも、タレントとしての知名度のほうが高い「夜の外交官」岩井志麻子。本作は岡山の方言である表題作を含んだ四作の短編集で、第6回日本ホラー小説大賞、そして、この第13回山本周五郎賞を受賞し、ライトノベル作家としては鳴かず飛ばずだった著者の転機となった出世作。四つの短編の傾向として挙げられるのが、俗に言うエログロな作風……土着気質の物語と登場人物たちの倫理感が乱れているところか。雑感としては総じて物語の着地に妙があり、恐怖演出よりも登場する《人間》の疚しさ、浅ましさを描くところに魅力を感じた。オススメはコレラの流行を扱った第2話「密告函」。匿名を良いことに私怨をぶつけた投書が溢れる様、箱の管理人である主人公が不貞を働いた末、妻が出す冷えた食事に意趣を見い出す着地は「筋」通った良質な一編。サプライズ要素こそ少ないが、特段の不満を感じることもないだろう。「和」モノが好きな方は暇つぶしにどうぞ。

第13回山本周五郎賞 受賞作:ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 岩井志麻子 山本周五郎賞

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