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2015年8月のレヴュー更新(まとめ)

8月下旬の予定としてはファンタジア大賞の受賞作群のレヴューを一気に仕上げる予定でしたが、……いやいやいや、見事なまでに更新をサボってしまいましたわ。まだまだ立て込んでいるので9月の更新もこのペースになってしまうやもしれませんが、宜しくお願い致します!

●ファンタジア大賞●
第6回ファンタジア大賞 佳作:海賊船ガルフストリーム/なつみどり
第5回ファンタジア大賞 準入選:銃と魔法/川崎康宏

●山本周五郎賞●
第23回山本周五郎賞 受賞作:後悔と真実の色/貫井徳郎
第23回山本周五郎賞 受賞作:光媒の花/道尾秀介

●受賞作以外のライトノベル●
富士見ファンタジア文庫:漆黒の守護天使 - 天征伝/護矢真

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category: 更新情報

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富士見ファンタジア文庫:漆黒の守護天使 - 天征伝/護矢真 (1995)

漆黒の守護天使 (204x290)
1.修学旅行は危険な出会い
2.あずさの受難
3.清水寺の死闘
4.光の守護者きたりて
5.真夜中に竜と踊れ
6.斑鳩に待つもの
7.兇神、復活!
8.光と闇の契約

answer.――― 61 点
「あたしは漫画家になって、平凡だけど幸せな結婚する」のが夢のJKヒロインを、不敵な俺TUEEEE!主人公レン(表紙で正体がネタバレ気味)が拳を振るって守る!という、第4回ファンタジア大賞《準入選》受賞作『翡翠の魔身変 妖魔アモル』を想起させる、……今日もどこかでデビルマン!なライトノベル。同作との違いは舞台が現代NIPPON、出てくる悪魔が東洋ベースなところ。ピンチもピンチと思わせない典型的な俺TUEEEE!作品だが、俺TUEEEE!エンターテイメントを成立させるためには、相応の噛ませ犬を用意しなければならない。その点、本作は冒頭より中ボス格の4人(羅仙、蠎、嵬山、翠宝花)を提示し、そこに内部対立の気配を匂わせているあたりは仕事点が高い。その討伐場面も一気に二人葬るなど出し惜しみない。戦闘場面豊富(観光名所を大破壊!)で、テンポ良く「読める」。しかし、だからといって「面白い」と唸れるかどうかはまた別のお話。本作と上述の『翡翠の魔身変 妖魔アモル』を天秤に掛けるならば、「見た夢を書き起こした」なるエピソードも納得の描写を持つ後者に軍配を上げたい。もっとも、両方とも「旧い」から、積極的に読む意味は無いと思うけどね。

富士見ファンタジア文庫:漆黒の守護天使 - 天征伝/護矢真 (1995)

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 護矢真 受賞作以外のライトノベル

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第6回ファンタジア大賞 佳作:海賊船ガルフストリーム/なつみどり

海賊船ガルフストリーム (205x290)

answer.――― 60 点
小説家、漫画原作者のみならず、一社会人としても活躍中!?である夏緑の原点、「なつみどり」名義のデビュー作が本作『海賊船ガルフストリーム』。その概要は、美しき女戦士シグル―ンが魔物乗り込む海賊船ガルフストリームと出くわし、成敗するも、彼らは実は良い奴らで……!といった、強いヒロインが陽性に大活躍するライトノベルらしいライトノベル。目新しいところは、やはり“僕らの”『ONE PIECE』がROMANCE DAWNする以前より、海賊―――ヴァイキングを題材にしているところだろうが、個人的にはヒロインであるシグル―ンが尋常ならざる怪力を頼りに無双する点を挙げたい。今現在、《ヒロインが強い》ことはエンターテイメントとして半ば《お約束》のように確立しているが、しかし「怪力」というともすれば敵キャラ、引き立ての仇役の専売特許を行使する様は未だ珍しいの一言に尽きる。見る人が見れば、そこにキャラクターメイクのある種のフロンティアが映るのではないだろうか。ライトノベル黎明期の作品のため、王子様への片思い、側近の陰謀、チャンチャン♪なエンディングなど、盛り沢山なイベントをライトに処理する「旧さ」は否めないが、その「旧さ」が新鮮に映る場合も(あるいは)あるかもしれない。ジャンルとして洗練される前のライトノベルな一作。4章「賞金首シグルーン」の愛を説くオカマの海賊ウーサーへ「あんたはいい女ね」と微笑むシグル―ンの台詞〆めなんてのは、お洒落よね。

第6回ファンタジア大賞 佳作:海賊船ガルフストリーム/なつみどり

category: な行の作家

tag: ファンタジア大賞佳作 OPEN 60点 夏緑

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第5回ファンタジア大賞 準入選:銃と魔法/川崎康宏

銃と魔法 (205x290)

answer.――― 62 点
ファンタジーが好きなら、あるいは、警察小説やテレビの洋モノ警察ドラマが好きなら、いや、それでなくても、本書はオススメです!とは、富士見ファンタジア文庫編集部の解説でのお墨付きだが、本作は老成したエルフとドワーフをコンビに、逃げ続けるストリートギャングの摘発、その顛末を描く。一読しての印象は、ライトノベルらしきもの。なんてその辺のバールで名状しがたく叩いて出来上がったような作品で、とりあえず、ヒロインがいないのは今現在を知るライトノベラーにとっては(苦笑)となるところだろう。そう、本作に出てくるのは、男、男、男―――もといオッサン、オッサン、オッサンである。むさ苦しいことこの上ない配役ながら、上述で編集部が《洋モノ警察ドラマ》と引いてきたのは口笛吹きたくなる気の利いた台詞のやり取りから。「お前もロマンより将来のこと考えたほうがいいぜ。いい年なんだからよ」「俺の場合いい年ってのが何十年も続くんだよ」と一度始まれば、小気味良く続く。中盤半ばで亜人権反対運動などといった作品世界の紹介を唐突に放り込んでくるが、これをストーリーに着地させる辺りも巧みだ。がしかし、「誰に読ませたいのか解らない」ライトノベルらしきもの。のため、著者の手腕に感心する部分はあれど、現在のライトノベラーにはまず《面白い》とは薦められないでしょう。

第5回ファンタジア大賞 準入選:銃と魔法/川崎康宏

category: か行の作家

tag: ファンタジア大賞準入選(金賞) OPEN 60点 川崎康宏

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第25回山本周五郎賞 受賞作:楽園のカンヴァス/原田マハ

楽園のカンヴァス
(あらすじ)
ティム・ブラウンはニューヨーク近代美術館のキュレーター。ある日、スイスの大邸宅に招かれれば、そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは……!

answer.――― 73 点
多くの人にとって敷居の高い《ART》だが、だからこそ触れてみたいと思うのが人間の性……がしかし、いざ臨もうとしたときに気後れしてしまうのはその作家&作品について《知らない》、《解からない》ことだと思う。《Classic》もそうだが、時間の精査に耐え得る作品を理解出来ない自分は受け入れ難いものだ。それを緩和するために《解からない》までも、その作家&作品への《知識》を得るのが手っ取り早い自衛の手段になるわけだが、さて、本作は《キュレーター》なんて肩書きを持つ原田マハがその肩書きを存分に活かして送る、アンリ・ルソーの最後の作品「夢」を題材に《真贋の駆け引き》を施したミステリ。本作を読めば来たるべきアンリ・ルソーとその「夢」について気後れしない鑑賞、その予習が出来る代物なわけだが、率直な感想を先に吐かさせてもらえば、連作短編にするべきだったと思う。過去に「天才」と謳われた元研究者のヒロイン、名前違いから招聘された、実力はあるものの燻っているキュレーターという主要登場人物の《設定》は魅力的ではあるが、「1」作家、事実上の「1」絵画についてのエピソードを交えた考察は冗長に映る。その観点に立てば、―――これ、ノンフィクション!とホラ貝吹いた上で相次ぐ殺人を起こした『ダヴィンチ・コード』のほうが段の違う匠(たくみ)な一作だろう。作中の唯一のゴシップ、明かされていくヒロインのプライベート(過去)は読み手を惹きつける深みは無い。何にせよ、起こるイベントの弱さは感じるものの、《知識》の享受、終盤の《真贋の駆け引き》による盛り返しもあり、読了後には一定の満足感は得られる。ちなみに、漫画『ギャラリーフェイク』を未読な方には、そちらをまずお薦めする。私の上述の連作短編を希望する意図が解かると思う。

第25回山本周五郎賞 受賞作:楽園のカンヴァス/原田マハ

category: は行の作家

tag: OPEN 70点 原田マハ 本屋大賞 山本周五郎賞

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第24回山本周五郎賞 受賞作:ふがいない僕は空を見た/窪美澄

ふがいない僕は空を見た
1.ミクマリ
2.世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸
3.2035年のオーガズム
4.セイタカアワダチソウの空
5.花粉・受粉

answer.――― 81 点

1章「ミクマリ」が《女による女のための》と謳うR-18文学賞の受賞作という事実からも察せられる通り、Sex,Drugs,& Violence!のエンターテイメントの金科玉条【禁忌編】の第1条を担うSEXを明け透けに施した窪美澄のデビュー作。小説の型としては書き手に優しく、読み手にも優しいwin-winな連作短編で、上述の「ミクマリ」で早々に披露される高校生と主婦によるだらしないコスプレセックスを筆頭に、捻りの利いたスキャンダラスなVivid Entertainmentが展開されている。しかしながら、Sex,Drugs,& Violence!の金科玉条は守れば守るほど、エンターテイメントの純度は増すものの、その反動でともすれば陳腐化するものだが、著者はその辺を理解していて、前提の「セックス」の上にしっかりとスキャンダラスな「転」開を仕込んでいるのが素晴らしい。各短編の登場人物たちは「セックス」によって誰もがホロ苦く傷つくのである。1章「ミクマリ」の主人公・卓巳は若気の至りから初恋と気づいてスキャンダル「性(Say!)」、2章は卓巳を落とした主婦・里美の人生がスキャンダル「性(Say!)」、3章は卓巳にほの字の同級生・七奈が自暴自棄になってスキャンダル未遂「性(Say!)」、4章はそれまでとは角度を変えて卓巳の友人・良太がFuck!My Life!と中指突き立てて、しかし結局、スキャンダル「性(Say!)」、そこから〆に5章では卓巳の母親が自ら運営する助産院でアクシデント「生(Say!)」―――と、辿り着けば本作が「性」と「生」を交錯させた物語だと解る。堅実な文章で綴られた一本「筋」の通ったエンターテイメントで、読後感は良い。ストーリーの流れと配置的に4章「セイタカアワダチソウの空」がベストに挙げられるのは当然ながら、ややくどいものの、2章「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はちょっとしたお奨め短編。いわゆるBitch!を描いているが、この手のBitch!に視点を与えているのは物珍しく、それでセックスを気持ち良いものとして捉えていないのがまた適当に感じる(*゚∀゚*)イイネ!!

第24回山本周五郎賞 受賞作:ふがいない僕は空を見た/窪美澄

category: か行の作家

tag: OPEN 80点 窪美澄 本屋大賞 山本周五郎賞

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第23回山本周五郎賞 受賞作:後悔と真実の色/貫井徳郎

後悔と真実の色
(あらすじ)
“悪”を秘めた女は駆除する。若い女性を殺し、人差し指を切り取る「指蒐集家」が社会を震撼させていた。捜査一課のエース西條輝司は、捜査に没頭するあまり一線を越え、窮地に立たされる。これは罠なのか?男たちの嫉妬と裏切りが、殺人鬼を駆り立てる。挑発する犯人と刑事の執念。熾烈な攻防は驚愕の結末へ。

answer.――― 59 点
本作はデビュー以来、無冠のままキャリアを築いてきた貫井徳郎の悲願の山本周五郎賞“受賞”作。元は日本推理作家協会賞の“受賞”を「狙って」制作された背景を持っていたようだが、先に出版した『乱反射』が同賞を受賞(受賞理由:作家としての技量やミステリ界に対する貢献などが加味された。Wikipedia参照)したことで、棚ぼた式に山本周五郎賞を“受賞”出来たのは、著者にとっては嬉しい誤算だっただろう。がしかし、販促賞が作家の知名度を高めるためのツールであることを考慮してみると、本作の“受賞”は失敗だったと思う―――著者の他の本を読みたいと思わせられない故に。女性を殺し、人差し指を切り取る「指蒐集家」の捜査が混迷するなか、主人公の不倫が暴露され……というスキャンダラスなストーリーライン。“受賞”を「狙って」制作されただけあって、男の嫉妬やらの《人間》を描くことに力を注いでいる印象を受けるが、序盤より愛人とパコっているエリートらしい主人公のナルシーな間抜け具合が披露されるように、何を「面白い」、誰を「格好良い」と見定めれば良いのか判断が付けられず、読み手は迷走。そんな迷走をほぼ放置されたまま、主人公は何者かに不倫を暴かれて、同僚、世間に軽蔑され、でも俺は正義を捨てられねえ!あっやべっ、愛人死んでもうた!事件は会議室で起こっているんじゃない!俺の周りで起こっているみたいだ!と、ホームレスになってまで事件解決に勤しむ。……とネタバレ気味に書いてしまったが、要するに、―――「長い」。出来事と受賞「狙い」の《人間》模様が重なり、著者のスペックを超える処理量になっている。何を一番《後悔》しているのか、突き詰めれば、読み手は主人公を通して何を《後悔》するべきだったのか。ご大層な表題『後悔と真実の色』が読書中は勿論、読了してみても霞んだまま。「すでに」不倫しているのではなく、「途中で」不倫を始めたほうが良かったのでは?もっとも、それくらいのアレンジじゃ望むレベルでシンプルにならないが。著者にとって悲願の“受賞”作のひとつなわけですが、間違いなく著者の“代表作”ではないでしょう。

第23回山本周五郎賞 受賞作:後悔と真実の色/貫井徳郎

category: な行の作家

tag: OPEN 50点 貫井徳郎 山本周五郎賞

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第23回山本周五郎賞 受賞作:光媒の花/道尾秀介

光媒の花
1.隠れ鬼
2.虫送り
3.冬の蝶
4.春の蝶
5.風媒花
6.遠い光

answer.――― 85 点
乙一がせっせと隙間を突き、手懐けたライトノベラーなファンたちへ、大胆不敵にも「乙一さん?知り合い!知り合い!」と咲かない向日葵を携えて営業を仕掛けてきた道尾秀介。本作は、ミステリー・ランキングを荒らし、着々とセールス実績を築いて、いよいよ本丸「直木十五賞」にロック・オン!そうして、前哨戦「山本周五郎賞」を受賞した連作短編集。6つの短編の各視点人物は前編の登場人物と繋がりを持たせ、その誰にも仄暗いエピソードを付けて、ラストで光を灯して浄化していく構図。先に個人的なハイライトを挙げさせてもらえば、1章「隠れ鬼」における竹林での口淫場面を推したい。《ジュブナイル》《ミステリー》《ファンタジー》といった要素を絡めた作風に共通点を持つ乙一と道尾秀介だが、その二人の違いを端的に挙げるなら《文章力》に尽きる。ライトノベルで培った乙一のシンプルを是とする文章はリーダビリティの観点からも若年層に歓迎されたと思うが、道尾秀介は乙一のフォロワー、そして、本家「乙一」と一線を画すべく、語彙、表現に力を注いでいる。上記の口淫場面は著者のキャリアにおいてもおそらく指折りの筆力を用いた幻想的な場面で、読み手の向こう、選考委員たちへのアピールさえ透けて見える。もっとも、文章力はあくまでオプションであり、氏の人気を支えているのは《ミステリー》を基本としたダークな人間模様だろう。本作は既存のファンの期待に十二分に応える出来で、殺人起こるバッドエンド風味の前半、そこから半(≠反)転、仄かに光が射してくる後半と、陰陽のバランスを感じさせる作品構成が素晴らしい。5章「風媒花」は“らしくない”ハッピーエンドで、作品に拡がりを与えている。1章の視点人物へ「返す」物語となる〆めの6章「遠い光」が前に配される5つの短編と比するとやや「格」落ちの感は否めないが、それでも、“裏・直木三十五賞”たる山本周五郎賞受賞も納得のクオリティーの連作短編。道尾秀介の作品のなかでも、特にミステリー読者を対象とせずに制作された印象もあり、その意味で著者にとって異色な一作と云えるかもしれない。

第23回山本周五郎賞 受賞作:光媒の花/道尾秀介

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 道尾秀介 山本周五郎賞

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