ナマクラ!Reviews

11/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31./01

2015年12月のレヴュー更新(まとめ)

ずいぶん前に読了済みだったものの、気分が乗らずにレヴューを後回しにしていたが、……今年は何も残してねえな!レガシー(遺産)作りするしかねえだろ、この数日で!とバラク・オバマばりに気合が入り、【この受賞作を読め!】シリーズに小説新潮長編小説新人賞を加えられたのが自己満足度の高いところ。その勢いで山本周五郎賞メフィスト賞も消化したかったが―――その辺は来年に持ち越しということで。今年は本当に書きかけのレヴューが多かったなぁ。色々と消化していきたい。ではでは、今年も訪問、有難うございました!来年も宜しくお願い致します!

●この受賞作を読め!●
この受賞作を読め! 【小説新潮長編小説新人賞:All Time Best!!】

●スーパーダッシュ小説新人賞●
第12回スーパーダッシュ小説新人賞 優秀賞:代償のギルタオン/神高槍矢
第12回スーパーダッシュ小説新人賞 優秀賞:つくも神は青春をもてなさんと欲す/慶野由志
第11回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:暗号少女が解読できない/新保静波

●小説新潮長編小説新人賞●
第9回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:マイ・スウィート・ホーム/富谷千夏
第9回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:石鹸オペラ/清野かほり
第8回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾

ライトノベルの点数一覧は⇒こちらへ!
大衆小説の点数一覧は⇒こちらへ!
アーティストの点数一覧は⇒こちらへ!

category: 更新情報

[edit]

page top

この受賞作を読め! 【小説新潮長編小説新人賞:All Time Best!!】

すでに閉幕している小説新潮長編小説新人賞(その後継には新潮エンターテインメント大賞が設置されるも、こちらも閉幕の模様)。その全12作の受賞作のなかから、「これは読んでおこうや!この新人、期待出来るよ!」発表後10年以上過ぎているので、作家が今「現役」かどうかでその結果は解かってしまうが、何にせよ、この受賞作を読め!の始まり始まり~。

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

歓喜有り、悲哀有り、恋愛有り、喧嘩有り!の端的に言ってしまうと、関西版『池袋ウエストゲートパーク』しかし、どこか上からのお洒落さが鼻につく本家と違い、こちらは「マルショウ解体」という汗水垂らす現場が舞台のため、男性読者により共感を呼び込む豪快な抗争展開が魅力。喧嘩師カンの脇役からの実質の主人公交代劇は痛快極まりない。そんな汗臭い作中においても、女性キャラクターがしっかり存在感を放っているのも嬉しいところ。スロースタートな序盤に難があるものの、間違いなく小説新潮長編小説新人賞の受賞作においてNo.1のエンターテイメント作品。読むならまず本作からでしょう。千葉近辺の書店員と出版社営業が設けた販促賞「酒飲み書店員大賞」でも、見事ランクインしていた模様。青春小説としてもお薦め出来ます。

レヴューを読み返してみたら、《本屋大賞で紹介すべき「埋もれている」作家の一人、米村圭伍のデビュー作。》なんて書いていたが、実際、いぶし銀のポップを堪能出来る作家だと思う。本作でも、のほほんとした気の良い武士(童貞)を駆使して間抜けとも云える騒動を解決していく。下品ではないエロが散りばめられ、ストーリーが見えなかった展開にも「予告」通り、さらりとストーリーを持ち込んでくるのは、ちょっとした匠の技。良作、というレッテルを貼りたくなる作品。

女優/演出家が本職と云える前川麻子のデビュー作。主人公が著者と同名という仕掛けが最大のセールスポイント。これで本作は自伝ないし半自伝として読めるため、読み手は「文学」の領域に踏み込んでいる作品と錯覚出来る。実話、として捉えてしまえば、日常場面も退屈には映らない。鬱病に罹ってしまったユキとの電話のやり取りは創作(?)とは思えない迫力があり、本作のハイライトに挙げたくなる場面。ただ、終盤の〆め方は賛否分かれるところ。構造的な凝り方は要らなかったと思う。

おそらく小説新潮長編小説新人賞の受賞作において、選考委員たちにもっとも激賞されたのが本作『俺はどしゃぶり』だろう。何せ、「稀にみる快作」「ビールで乾杯したくなる」である。他の新人対象の公募賞でもなかなかお目に掛かれない激賞具合で、思わず手に取りたくなる。……ものの、いざ読んでみると肩透かしと言わないまでも、眉根を寄せてしまうのはもはや仕様か。弱小アメリカンフットボール同好会の顛末なわけだが、それをコンセプト通りに描き切ったところは確かに唸らせられるが、……。選考委員評と自分の読了後の感想の差を楽しむ作品として捉えるのが一興かと。

☆☆  総評  ★★

新たな娯楽小説の輩出を目的とした小説新潮長編小説新人賞。その全12作の受賞作からの1位から3位+次点の4作を選んでみたが、今回は物の見事にレヴューでの配点通りの順になったのが個人的に驚いた。がしかし、自分で言うのもなんだが、小説新潮長編小説新人賞の受賞作の中から4作選べ!というお題が出れば、順番はともかくとして、ほとんどの人も上記のランクイン作品を選ぶのじゃなかろうか。特に、第1位に選んだ『太陽がイッパイいっぱい』はもはや不動の印象。他の三作のランクイン作品も良作には違いなく、読んで損と云うことはない―――が、とりあえず読むなら、と同作はまず薦めたくなる。今現在における作品、著者自身の知名度の低さも信じられないくらいのギラギラした娯楽&青春小説だ。ランクイン作品以外だと、出版当時の流行りだったキャバクラ題材の『調子のいい女』は、ヒロインの男あしらいのテクニックが実践的で面白い。文章的な観点からならば、錦絵と称えられたり、駄文と貶されたり、と選考委員で評価の別れた『決闘ワルツ』も、書き手には反面教師的な意味合いで一読の価値はありそう。小説新潮長編小説新人賞における随一のゴシップ作品としては、『手紙 The Song is Over』も忘れてはいけない。17歳の女子高生がデビュー!と「最年少デビュー」ブームのある種の先駆け的作品である。選んだ責任を放り投げて、選考委員(主に井上ひさし御大)がボロカスに貶しているのが面白酷いとしか言いようがない。公募最初期は娯楽小説を募集していながら文学崩れの小説ばかりで、真っ当な娯楽小説が集まらなかったようだが、第5回のW受賞作(『風流冷飯伝』&『俺はどしゃぶり』)を境に好転。良作の輩出は新たな良作を呼び込むことを証明したように思う。終わってしまった公募賞の受賞作品というのは、なかなか再発掘される機会がないと思うが、ここでランクインしている作品はいぶし銀のクオリティを持った確かな作品なので、気になった方は手に取って読んでみてくださいな。ではでは!

以下に小説新潮長編小説新人賞の受賞作のみの【点数一覧】を付け足しておきます。相対評価なので、ちょいちょい点数は前後しますのでご了承下さい。

☆ 受賞作:点数一覧 ★



81  太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾  【第1位】

80

79

78  風流冷飯伝/米村圭伍  【第2位】

77

76  鞄屋の娘/前川麻子  【第3位】

75  俺はどしゃぶり/須藤靖貴  【次点】

☝  満足  ☟  普通


74  調子のいい女/宇佐美游

73

72

71  

70  石鹸オペラ/清野かほり

69  ノーティアーズ/渡辺由佳里

68  居酒屋野郎ナニワブシ/秋山鉄

67  

66  マイ・スウィート・ホーム/富谷千夏

65  

60  決闘ワルツ/秋月煌

☝  普通  ☟  不満


58  あなたへの贈り物/和泉ひろみ

☝  不満  ☟  アマチュア


30  手紙 The Song is Over/佐浦文香

現在、2015年12月27日/修正

小説新潮長編小説新人賞受賞作一覧は⇒こちらへ!

category: この受賞作を読め!

tag: OPEN 小説新潮長編小説新人賞

[edit]

page top

第9回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:マイ・スウィート・ホーム/富谷千夏

マイスウィートホーム
(あらすじ)
どうして私はこの人と暮らしているのだろう? 冷めきったカップルをリアルに描き、恋愛の魔力と夫婦の危うさを鮮やかに抉り出す、全男女震撼の結婚小説、ついに誕生!

answer.――― 66 点
誰しもそうだと思うが、《自分》が大好きだ。自傷癖のある方には、特にそれを強く感じる。《自分》が大好きなことは自然の摂理のようなものなのでそれ自体はまったく構わないが、他人に血を、傷を見せてまでアピールすることではないので、「―――大人になれよ、三井」と。そんなわけで「格好良く」描くこと、「格好悪く」描くこと、どちらが難しいのかといえば、甲乙つけがたいものの、あえて選ぶなら個人的には後者―――「格好悪く」描くことだと思う。中でもクズをクズとして描くことは、とりわけ難しい。仮にそれを成立させてしまえば、然るべき《報い》を与えるだけで読み手にカタルシスが生まれるからだ。冷めきった夫婦の顛末を描いた本作。夫が、稀に見るクズである。弱者に対してしか強気に出れず、口から出る言葉は誇大妄想気味な自己主張、己の非をあくまで認めない自己弁護。女にだらしなく、金も浪費する。自分の子どもさえ省みない。著者のファインプレーは、夫を遊び人らしい遊び人ではなく、塾講師という一見「まとも」そうな職からイメージ付けたことだろう。そんな夫に不満を感じつつも、生活の不安から離婚に踏み切れない妻もまた、苛つかせてくれる。このように頁をめくれば読み手に何がしかの感情の波を起こすことに成功しているので、そこは「買える」ところではあるが、それ以上のものは残念ながらないので、読了して数日で十把一絡げの作品として忘れ去られてしまうでしょう。時間を置いて書いたのか、時折り、たどたどしい筆もマイナスな印象。

第9回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:マイ・スウィート・ホーム/富谷千夏

category: た行の作家

tag: OPEN 60点 富谷千夏 小説新潮長編小説新人賞

[edit]

page top

第9回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:石鹸オペラ/清野かほり

石鹸オペラ
(あらすじ)
「あたしは自分で自分を売り飛ばしたの」。そんな強気な言葉を吐きながら、自分に対する戸惑いは隠せない歌舞伎町のソープランドで働く利夏。彼女を目あてに訪れる客はオヤジ、ヤクザ、オタク、高校生。私生活で付きあう男はハーフの遊び人。その危い生活のツケは突然やってきた。

answer.――― 70 点
《風俗》を題材にした作品はそれだけで手堅いエンターテイメントになりうるが、ストーリーはもちろん、作中で披露される(豆)知識まで似通ってしまうのが扱う際の難しいところ。本作もまた、ヒロインである風俗嬢がHIVの感染が疑われる事態に見舞われ、自分と関係を持った客たちを追うストーリーライン。その展開は既視感漂い、実際、読み終えてみても結末に充足感、感銘の類は受けられない。ながらに、やはり《風俗》題材ならではというか、そこそこにスパイシーなのは否定出来ないところ。とりあえず、ヒロインの紹介も踏まえて用意された「客」たちが魅力的だ。常連客の一人であるヲタクのコミュ障具合は、著者のヲタクへの悪意さえ感じる迫真のコミュ障具合で、その射精の過程はある種のスペクタル。本作の個人的なハイライトに挙げさせて頂きたい。飛び込みの「客」である少年をキーパーソンに、起承転結を構成。書き手として実に丁寧な印象を受けたが、如何せん、読み手は己の想像を常に上回って欲しいもの。たとえばヒロインが口淫中毒といった設定をつけると、新しい場面、展開も生まれたと思う。主要登場人物たちが、「まとも」過ぎた。丁寧、しかし、それ以上の感想は出にくい作品。

第9回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:石鹸オペラ/清野かほり

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 清野かほり 小説新潮長編小説新人賞

[edit]

page top

第8回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾

太陽がイッパイいっぱい
(あらすじ)
バイト先の解体現場に人生のリアリティを見出した大学生のイズミ。巨漢マッチョ坊主カンや、左官職人崩れで女性に対し赤面症の美青年クドウ、リストラサラリーマンのハカセなどと働く「マルショウ解体」の財政は逼迫し、深刻な問題が……。

answer.――― 81 点
投稿時の『ハナづらにキツいのを一発』から出版に際して『太陽がイッパイいっぱい』と爽やかに改題された本作。その概要は、生温い大学生活から解体現場のアルバイトに身を投じれば、「労働って素晴らしい!」と汗水垂らして底辺の同僚たちと帰りにビールを煽る、刹那のイッパイいっぱいな青春模様を描くもの。基本的には連作短編の章構成で、主人公イズミの働き先であるマルショウ解体の面々を紹介しながら、草野球、デート、給料泥棒、経営危機など、泥臭くもハートフル、ソーシャル・ブルーなストーリーを展開していく。が、中盤からは実質の主人公交代、本作の主役は無敵の喧嘩師カンとなる。半グレ集団“シックス・クール”との抗争はまさしく怒涛のサプライズで、「カン!カン!!カン、カモ―ン!!!!」と血湧き肉躍る大活劇に読み手の頁をめくる手は止まらなくなる。喧嘩真っただ中の描写も頭一つ、二つ抜けている匠を見せつけてくれるが、個人的には喧嘩前、カンとハラケンの探り合いは珠玉の描写として挙げたい。不良の不良らしい、怜悧かつアドレナリン滾る分析&思考放棄は、書こうと思っても書けるものではない。そんな脇役カンに「ほんで?ややこしいハナシはえぇから、はよ用件ゆうてや」と主役の座を完全に奪われた主人公だが、終盤に垣間見せるナンダカンダで鍛えられているサービスな事実は実に心地良い。作品としての〆めも抜かりなく、社会の「形」を教えてくれる。何の変哲もない若者譚が続く序盤は若干のストレスも感じるが、終わって見れば視界良好!快作と呼ぶ相応しい青春譚、青春小説でした。地味なところで、この汗臭い設定で女性キャラクターの存在感をしっかり出せているのも素晴らしい。出版時期から考えて、版元は関西版『池袋ウェストゲートパーク』として売り出したかったんだと思うが、本家よりも気に入りました。【推薦】させて頂きます。

第8回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾  【推薦】

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 三羽省吾 小説新潮長編小説新人賞 酒飲み書店員大賞 推薦

[edit]

page top

第12回スーパーダッシュ小説新人賞 優秀賞:代償のギルタオン/神高槍矢

代償のギルタオン (202x290)
(あらすじ)
『代償』を支払うことで、特殊な力を発揮する巨大人型兵器ギルタオン。世界は、この呪われた兵器によって、戦争への扉を開くことになった。主人公ライクたちは豊かで安全な生活を求め、汽車で首都ランフェルドへと向かうことにしたが、……。

answer.――― 75 点
スーパーダッシュ文庫改めダッシュエックス文庫の“ファンタジスタ”として君臨する山形石雄より「新人とは思えない完成度の高い作品」とテンプレートな高評価を授かり、実際、発売されて間もなく界隈で評判となった本作『代償のギルダオン』。その題材は、表題に採用されている巨大人型兵器「ギルタオン」なるロボットもの。ドラマを生む核となる設定は、ギルタオンの操縦には代償を求められること。その《代償》がまた、……エグい!ある者は視覚を、ある者は味覚を、ある者は四肢を失う。中二病罹患者垂涎なサディズムに満ちており、ロボットとの掛け合わせでオリジナリティーを薫らせる。ストーリーとしても終わりの見えない戦争下、弱者も弱者な姉弟たちの決死の逃亡劇となる冒頭から常時「悲しいけどこれ戦争なのよね」が軍人中心の登場人物たちより押しつけられ、バッドエンドの予感がどこまで頁をめくっても拭えない。こうなってくると、読み手の関心は(……コイツ、マジでやり切る気か?)と著者へのある種の期待と不安に包まれてくるが、本作、―――やってくれます。終盤の際(きわ)、夢を見つけたばかりのミコの「決意」の行動を目の当りにすれば、完成度の高い作品、というテンプレな言及も納得することでしょう。ボリュームたっぷりの頁数ながら、多数の登場人物を書き分けるキャラクターメイク、襲撃に次ぐ襲撃の展開で飽きさせない工夫を施す。視点人物が何度も変わるのは賛否の分かれるところだろうが、ギルタオンに載るまで、というシンプル過ぎるストーリーラインを考えると、そうでもしないと間が持たない事情は汲めなくもない。何にせよ、バッドエンド好きを標榜するライトノベラーにはオススメの一作。すでにリニューアルされて久しいが、スーパーダッシュ小説新人賞の受賞作では久々の拾い物でした。

第12回スーパーダッシュ小説新人賞 優秀賞:代償のギルタオン/神高槍矢

category: か行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞優秀賞(佳作) OPEN 70点 神高槍矢

[edit]

page top

第12回スーパーダッシュ小説新人賞 優秀賞:つくも神は青春をもてなさんと欲す/慶野由志

付喪神は青春をもてなさんと欲す (193x290)
プロローグ いつもの
1.ふこうもの
2.つくもの
3.あばれもの
4.あらゆるもの
エピローグ しあわせもの

answer.――― 65 点
スーパーダッシュ小説新人賞の受賞作は、概して頁数が多い。おそらく応募規定の枚数(文字数)が他の公募賞より幅広く採られているからだと思うが、それが書き手にとっては都合が良くとも、読み手にとっては必ずしも歓迎されることに繋がるとはかぎらない。頁数が多いということは、それだけ集中力を強いるからだ。ついでに言ってしまえば、値段も上がる。ライトノベルはティーンのためのジャンルと考えれば、少ないお小遣いから面白いかも定かでない無名の作品へ《無駄》に投資したくはないもの。大人になってしまうと忘れがちになる50円、100円の差は、いつの時代でも確実に反映される。と置いて、近年で指折りに目を引くゴールドな表紙の本作『つくも神は青春をもてなさんと欲す』。その概要は、幼女な付喪神とともに、「他人に不幸を撒く力」を持つクラスメイト(♀)を救う奮闘劇。一読の印象は、とにかく勿体無いに尽きる。巻き込まれ属性の真面目系主人公、ノリの良い女友達、奇天烈変態な男友達というラブコメ配置の日常に骨董(の妖精)という風流なオリジナリティを挿してくるセンスなど実に期待させてくれるが、如何せん、「長い」。文字が多過ぎる。なかなかに「読ませる」一人称だが、場面内容の割に冗長で読み疲れてしまう。付喪神「つくも」の投入によって話が動かずとも楽しめる、いわゆる「雰囲気」を楽しめる「非」日常を整えたのだから、そこに重点を置くシンプルな文章、演出を心掛けるべきだったと思う。メインヒロインの問題解決に力を注ぎ過ぎちゃったね。本作の《正解》は、マスコット「つくも」の問題を提示して、そのついでにメインヒロインの問題を解決する玉突きな展開だったと思う。当然、戦闘場面も要らない。頁をめくれば期待せざるを得ない、しかし口惜しさが何よりも残ってしまう一作。

第12回スーパーダッシュ小説新人賞 優秀賞:つくも神は青春をもてなさんと欲す/慶野由志

category: か行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞優秀賞(佳作) OPEN 60点 慶野由志

[edit]

page top

第11回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:暗号少女が解読できない/新保静波

暗号少女が解読できない (202x290)
1.最初で最後のラブレター
2.ひとりぼっちのカイブン様
3.逆立ち歩きのガールズハート
4.三ツ竹山メモワール

answer.――― 56 点
本作の概要は、転校初日、自己紹介に失敗し、孤独を満喫していた主人公に話し掛けてきた暗号好きの美少女との不可思議な暗号解読の日々といったもの。《暗号を解く》というのがセールスポイントなわけだが、その暗号はそこそこに易しいもので(……ほう)と前のめる求心力に乏しいのが難点。また、「Q.どんな話?」「A.ヒロインの出す暗号を解く、……話かな?」とショートショートにも似た内容の割に一編の頁数も多く、《暗号を解く》という着眼点こそ買えるものの、そこに悪い意味でこだわってしまった印象。受賞時期に焦点を当てると、本作の《大賞》受賞は桜庭一樹の『GOSICK ―ゴシック―』シリーズ、米澤穂信の『<古典部>』シリーズの便乗といったところなのだろうが、このクオリティーで《大賞》の冠をかぶせてトレンドにぶつけてしまうのはレーベルのブランドを落としてしまうし、何より、要推敲作品でのデビューは著者のためにならない。主人公のテンションの波、たとえば「暗号の匂いがします」などの章区切りにセンスを感じるので、著者には本作での失敗を糧にして再デビューを目論んで欲しい。

第11回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:暗号少女が解読できない/新保静波

category: さ行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞大賞 OPEN 50点 新保静波

[edit]

page top