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第8回スーパーダッシュ小説新人賞 佳作:アンシーズ - 刀侠戦姫血風録/宮沢周

アンシ―ズ (201x290)
1.抜刀
2.七七七
3.岐路
4.アンシー
5.終局

answer.――― 61 点
とりあえず、本作の核となる設定に関する台詞を抜粋してみようと思う―――「カタナとは、己の男としての力の象徴」「すなわち、抜刀とは、己の男をカタナに変えて具現化させることである」「したがって、男が抜かれた状態の体は……」「女になっちまうんだよ!」―――と。さて、私がこの設定を理解したときの顔と言えば、(´◉◞౪◟◉)である。いわゆる「男の娘」を楽しみ、愛でる(?)活劇ライトノベルと解釈させて頂いたが、果たしてソレで正しいのかは定かではない。本作の刊行からシリーズとして全3巻の着地点が示すのは、やはり、需給の問題だろう。現在ならば『バカとテストと召喚獣』の木下秀吉、『僕は友達が少ない』の楠幸村のように、脇役にその地位をサブマリン投法のように確立している例もあるが、後者では結局、実は本物の女の子でした!という設定解体が起こったように、「男の娘」は扱いが難しい。まして、ライトノベラーが憑依する主人公となると……という話。「男の娘」を主人公に採用し、《結果》を出した金字塔作品は未だ「無い」と云える。その意味で、隙間を突こうとした著者の野心には拍手を送りたいところだが、同時に、他人の作品だったとき、自分で金を出してまで買おうと思えるのか?という根本的な問いも投げたくなる。

第8回スーパーダッシュ小説新人賞 佳作:アンシーズ - 刀侠戦姫血風録/宮沢周

category: ま行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞優秀賞(佳作) OPEN 60点 宮沢周

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第13回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:ファーレンハイト9999/朝倉勲

ファーレンハイト9999 (205x290)
(あらすじ)
アニメ、漫画、ゲーム、ラノベ、フィギュア―――すべてが規制の対象となった現代。警視庁に新設された“オタクを取り締まる機関”焚書課の高校生捜査官・維刀臥人は、中学生の先輩・奏手イリナとともに違反者を検挙し続けていた。だが、隠れオタクである臥人はその裏で規制に反逆する白亜の聖堂騎士・エルガットとして単身政府に抵抗していた!?

answer.――― 56 点
ヲタクが断罪される日本が舞台―――高校生の主人公(♂)はヲタクを取り締まる職に就きながら、ヲタク文化を愛好する背徳者であり、時にアンチヒーローとなってヲタクの取り締まりを妨害する構図。とりあえず、著者に提示したいのは『鏡』である。生まれついての書き手などいない。誰しも読み手からそのキャリアは始まる。しかし奇妙なことに読み手から書き手に回ったとき、自分が見えなくなってしまう―――自分がどんなものを書いているのか、自覚せず脱稿してしまうことが間々ある。そんな時のために、『鏡』が求められる。百の批評より一つの『鏡』―――「えー?俺の作品ってこんなのなの?……冗談でしょ?www」と、映るのは残酷なまでの現実である。注意事項として、『鏡』は貴方の身内に用意させてはいけない。貴方を無駄に傷つけまいと手心を加えられてしまうからだ。という訳で、関わりのない第三者である私が著者に『鏡』としてお薦めしたいのが、―――と続けたかったのだが、適当なのが思い浮かばなかった。ヲタクが迫害されるコミカルな世界に訪れる謎の美女、大規模なジェノサイドを予告されるミステリアスな進行、辿り着く俺TUEEEE!な大活劇!これが本作の展開だが、この《コミカルな世界》設定からすでに(……面白い)じゃなくて(……このまま読んで大丈夫か?)と齟齬が書き手と読み手の間に生まれている。「核兵器」という作中のスケールを考えると、トンデモな爆弾を導入しているところは買えるが、ラストのどんでん返しは『空色パンデミック1』のようなスマートなイメージならば、実際は『繰り世界のエトランジェ 第一幕 糸仕掛けのプロット』のような、結婚式に「努力は必ず報われる!」と刺繍された特攻服で列席する仕上がりなので、その辺はしっかりイメージを修正しておきましょう。地力はありそうなので、著者には変化球な作風でなく、もっとストレートな作品を作って頂きたい。

第13回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:ファーレンハイト9999/朝倉勲

category: あ行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞大賞 OPEN 50点 朝倉勲

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第12回本屋大賞 4位:本屋さんのダイアナ/柚木麻子

本屋さんのダイアナ (201x290)
(あらすじ)
私の呪いを解けるのは、私だけ。「大穴」という名前、金色に染められたパサパサの髪、行方知れずの父親。自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、本の世界と同級生の彩子だけが光を与えてくれた。正反対の二人は一瞬で親友になった。そう、“腹心の友”に……。

answer.――― 85 点
作家の文章力を量るとするならば、解かり易いところで「とりあえず」語彙の多寡だろう。言葉を知らなければ、そもそも「文章」を綴れない。しかし語彙が豊富であっても、文章力の高低が定まるわけではないのは御存知の通り。起承転結に始まる構成、内面/外面の描写、完成された(色褪せない)ユーモア、今を楽しむ時事ネタなど、総合的な観点で《文章力》の有無は判定される。そして、人によって各項目の配点が変わるのも《文章力》なるものが曖昧となる理由だろう(個人的に、構成が出来ていると「巧い」と見做される傾向にあると思う。同時に、詩的な散文は駄文と見做される傾向にある。これは《文章力》に、エンターテイメント的な観点が設けられている証左でもある)。そんな中、あまり論点にならない、書き手のセンス問われる項目を一つ紹介したい。作中の時間経過をどうやって表すか?である。一例を引く。司馬遼太郎の代表作『竜馬がゆく』の主人公・坂本龍馬は全国を行脚したことでも知られている。当然、ただ移動しているだけの経過が幾度もあるわけだが、そこは省略するのが常道で、実際、司馬遼太郎も多くを省略している。が、敢えて書いているページがある。そこを目にしたとき、読み手は書き手の遊び心を感じざるを得ないはずだ。その描き方とは、渋谷、原宿、代々木、……といった地名をいちいち改行しての羅列である。地名を並べることで、移動時間を表現しているのである―――たっぷりの余白をユーモアと添えて。時間経過は、それが唐突で大胆であるほど、読み手を作中世界へと巻き込む―――あるいは、作中世界から突き放す。ただ時間を飛ばすだけでもセンスが要る。そこに遊び心を加えられるか否かは、まさしく作家としての《余裕》が無ければ出来ないのである。さて、本作必見のハイライトを挙げる―――Wヒロイン(大穴&彩子)の外見が変わる。それは劇的なもので、幼少期の互いへの憧憬をそのまま己へ転写。時間経過を作品のエンターテイメントの核として採用しているのが解かる。そこに絡ませてくるのが著者である柚木麻子の十八番“イタさ”で、後半の主役である彩子の迷走はまさしく《悲劇のヒロイン》。幼さ故に思考を停止する人間の弱さを堪能出来る。全ての登場人物を関係者にしてしまうご都合はいかがなものか……と眉をひそめてしまうものの、“イタさ”にしっかりと向き合うエンディングは実に清々しい。大衆を楽しませる視覚要素溢れる一作。上流から下流までの家庭の書き分けも面白かったです。

第12回本屋大賞 4位:本屋さんのダイアナ/柚木麻子

category: や行の作家

tag: OPEN 80点 柚木麻子 本屋大賞

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スーパーダッシュ小説新人賞受賞作一覧


▼ 第13回 (2013年) ▼
ファーレンハイト9999 (205x290)

大賞:ファーレンハイト9999/朝倉勲
優秀賞:アプリコット・レッド/北國ばらっど
優秀賞:モノノケグラデーション/持崎湯葉
特別賞:0.000000001%デレない白い猫/延野正行

▼ 第12回 (2012年) ▼

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優秀賞:代償のギルタオン/神高槍矢
優秀賞:つくも神は青春をもてなさんと欲す/慶野由志

▼ 第11回 (2011年) ▼

暗号少女

大賞:暗号少女が解読できない/新保静波
優秀賞:エンド・アステリズム なぜその機械と少年は彼女が不動で宇宙の中心であると考えたか/下村智恵理
特別賞:伊月の戦争 ~終わる世界の物語~/涼野遊平
特別賞:God Bravers 君の勇者に俺はなる!/永原十茂

▼ 第10回 (2010年) ▼

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大賞:覇道鋼鉄テッカイオー/八針来夏
大賞:くずばこに箒星/石原宙
優秀賞:サカサマホウショウジョ/大澤誠
特別賞:嘘つき天使は死にました! /葉巡明治

▼ 第9回 (2009年) ▼

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大賞:ニーナとうさぎと魔法の戦車/兎月竜之介
大賞:オワ・ランデ! ヤレない貴族のオトシ方/神秋昌史
佳作:二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない/朝田雅康
佳作:ライトノベルの神さま/佐々之青々

▼ 第8回 (2008年) ▼

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佳作:逆理の魔女/雪野静
佳作:アンシーズ/宮沢周

▼ 第7回 (2007年) ▼

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佳作:超人間・岩村/滝川廉治
佳作:反逆者 ~ウンメイノカエカタ~/弥生翔太
佳作:スイーツ!/しなな泰之

▼ 第6回 (2006年) ▼

鉄球姫エミリー

大賞:鉄球姫エミリー/八薙玉造
佳作:ガン×スクール=パラダイス!/穂邑正裕
佳作:警極魔道課チルビィ先生の迷子なひび/横山忠

▼ 第5回 (2005年) ▼

>黄色い花の紅

大賞:黄色い花の紅/アサウラ
佳作:ブール・ノアゼット 世界一孤独なボクとキミ/藍上陸

▼ 第4回 (2004年) ▼

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大賞:戦う司書と恋する爆弾/山形石雄
大賞:滅びのマヤウェル/岡崎裕信
佳作:影≒光 シャドウ・ライト/影名浅海

▼ 第3回 (2003年) ▼

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佳作:電波的な彼女/片山憲太郎
佳作:殿がくる!/福田政雄

▼ 第2回 (2002年) ▼

銀盤カレイドスコープ

大賞:銀盤カレイドスコープ vol.1&vol.2/海原零
佳作:ネザーワールド ‐カナリア‐/東佐紀

▼ 第1回 (2001年) ▼

世界征服物語

大賞:世界征服物語 ~ユマの大冒険~/神代明
佳作:D.I.Speed!!/狭山京輔

category: スーパーダッシュ小説新人賞

tag: OPEN 受賞作List スーパーダッシュ小説新人賞優秀賞(佳作) スーパーダッシュ小説新人賞大賞

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