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2016年10月のレヴュー更新(まとめ)

気分が乗って月末に一気にレヴューをUP出来た10月、皆さまは如何お過ごしだったでしょうか?やはり書きやすいレヴューから書いていくのが一番効率が良いですね。順番通りなら小説すばる新人賞の第7回、第8回の受賞作の残りを書かなければならなかったはずですが、何とも筆が乗り切らなかったので飛ばしてみました。ところで、『雨にもまけず粗茶一服』という10年以上前の大衆小説を読んだのですが、これがまた、非常に面白い。何故、売れなかったんだ!?と思って調べたら、つい最近、NHKでラジオドラマ化していました。潜伏期間長い上に、ラジオかよ!と思わなくもないのですが、面白いので何を読もうか迷っている方、お薦めです。

●小説すばる新人賞●
第11回小説すばる新人賞 受賞作:走るジイサン/池永陽
第10回小説すばる新人賞 受賞作:ウエンカムイの爪/熊谷達也
第10回小説すばる新人賞 受賞作:オロロ畑でつかまえて/荻原浩
第9回小説すばる新人賞 受賞作:陋巷の狗/森村南
第8回小説すばる新人賞 受賞作:英文科AトゥZ/武谷牧子
第7回小説すばる新人賞 受賞作:恋人といっしょになるでしょう/上野歩
第6回小説すばる新人賞 受賞作:ジャガーになった男/佐藤賢一
第6回小説すばる新人賞 受賞作:天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

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category: 更新情報

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第11回小説すばる新人賞 受賞作:走るジイサン/池永陽

走るジイサン_0001 (194x290)
(あらすじ)
単調な毎日を送っていた作治。だが、同居する嫁に疼くような愛しさを覚えた頃から、頭上に猿があらわれて……。老いの哀しみと滑稽さを描く、第11回小説すばる新人賞受賞作。

answer.――― 66 点
ある日、突然、頭に猿が乗っていた―――というシュールな設定で描かれる枯れた人生、その周りの若人たちの悩み。詰まる/詰まらないという評価軸で判断してしまうと、決して詰まるほうの内容ではないのは、あらすじからも察せるところ。本作の読みどころは、本作出版時点で五十路に差し掛かろうとしていた著者の視点。それは息子の嫁に仄かな劣情を抱いたり、己の職業経験から相手の隠れた心情を察するなど、エンタメとして描かれること少ない「枯れた」視点である。鋳物職人であった主人公の、明ちゃんの絵に用いられた「赤」の変化を静かに見抜く場面は、「老人」設定を生かした象徴的な演出。この手の場面をもっと増やせれば、「枯れた」視点も捨てたものでもないのが解る……が、如何せん、その手の演出は少ないので、積極的に推せません。

第11回小説すばる新人賞 受賞作:走るジイサン/池永陽

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 池永陽 小説すばる新人賞

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第10回小説すばる新人賞 受賞作:ウエンカムイの爪/熊谷達也

ウェンカムイの爪 (200x290)
(あらすじ)
北海道でヒグマに襲われた動物写真家・吉本を救ったのは、クマを自在に操る能力を持つ謎の女だった。野生のヒグマと人間の壮絶な戦いを描く、第10回小説すばる新人賞受賞作。

answer.――― 74 点
週刊少年マガジンで連載され、「キムンカムイ!キムンカムイ!」と、こうちゃん@へなちょこ大作戦Zにネタにされていた漫画『キムンカムイ』は、果たして現在でも読み継がれているのだろうか?「熊」が出てきて、人を襲ってつまらないとか有り得ません。本作は熊谷達也のデビュー作であり、熊谷達也と云えば!な《マタギ三部作》にこそ数えられないが、例によって「熊」が出現、人が食い散らかるアニマル・パニックな一作。各所で言及されているように後続の作品に比べて薄味、序盤の大学生たちの惨劇を除けば平坦な展開なのは否定出来ないところ。もっとも平坦と言っても、「主人公を不可思議に救った大学助教授」「熊対熊」のような仕掛けもあるにはあるが、それらを「ハイライト!」と挙げられないのが著者の伸び代であり、まだまだ作家として拙い部分。とりあえず、上述の大学生たちの恐慌が本作のメインディッシュなのは間違いないので、そこをまず楽しみましょう。「ウエンカムイ」「キムンカムイ」と善悪の熊の存在、アイヌのその“知識”有り。それが作品のちょっとした箔付けになっている。

第10回小説すばる新人賞 受賞作:ウエンカムイの爪/熊谷達也

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 熊谷達也 小説すばる新人賞

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第10回小説すばる新人賞 受賞作:オロロ畑でつかまえて/荻原浩

オロロ畑 (200x290)
(あらすじ)
超過疎化にあえぐ日本の秘境・牛穴村が、村おこしのため、倒産寸前の広告代理店と手を組んだ。彼らが計画した「作戦」とは!?

answer.――― 74 点
先頃、4回のノミネート&落選の末、ついに『海の見える理髪店』で直木三十五賞を受賞した荻原浩のデビュー作が本作『オロロ畑でつかまえて』。その概要は、過疎/高齢化に悩む村人が広告代理店に勤める旧友(と思っている同級生)に村興しを頼み、UMA発見というイカサマなニュースを流す、というもの。広告代理店に就職していた自身の経歴を生かした題材で、序盤のコンドームのキャッチコピーへのプレゼン―――《我々の業界には『ラ』の音と濁音の入ったフレーズはヒットするという定説があります》は眉唾ながらに検証、そして、(……マジかよ)とのめり込ませる魅惑のリードとなっている。そこからいよいよ到着する過疎村、そのらしいカッペ演出は上々ながら、社の事情で渋々嫌々ながら村興しの依頼を受け、UMA発見!?とマスコミを巻き込む展開はあらすじに起こせばダイナミックに映るものの、実際は目を剥くような細かなアイディアは施されず、大味なのが残念なところ。本作は村興しではなく、中盤より投入される人生逆転賭けるアナウンサー(♀)の心境の変化が実質のメインと云える。結論としては「良」ではあるものの、他人に推すほどには弱い「優」ならずのデビュー作。それでもラスト、オロロ畑の真相はそれこそダイナミック(食うんかいっ!)で、著者のセンスを存分に感じられます。なお本作の後も、「ユニバーサル広告社」シリーズとして続編が刊行している模様。

第10回小説すばる新人賞 受賞作:オロロ畑でつかまえて/荻原浩

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 荻原浩 小説すばる新人賞

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第9回小説すばる新人賞 受賞作:陋巷の狗/森村南

陋巷の狗 (203x290)
(あらすじ)
幕末の京洛を、血に染め上げたアウトローたち。阿刀田高、五木寛之、井上ひさし、田辺聖子の選考委員が一致して評価した、弱冠20歳の、この熱気、このパワー!「人斬り以蔵」の異名で恐れられた土佐浪人・岡田以蔵!坂本竜馬の用人棒・朱楽万次!アウトローたちの凄絶な戦いを、ジャンプ世代の感覚で描ききった強烈弾!!

answer.――― 35 点
第9回小説すばる新人賞の受賞作。岡田以蔵、そして、坂本龍馬のボディーガードとしてオリジナルキャラクターの朱楽萬次をメインキャストに、脇に新選組の面々を採用した幕末モノ。本作の受賞時期を考えれば漫画『るろうに剣心』がちょうど脂が乗ってきた頃と合致するので、そこへ大衆小説らしからぬ装丁、そして、「ジャンプ世代の感覚で描き切った強烈弾」なる文句を合わせれば、普段小説を読まないだろう若年層の取り込みを画策したのが明け透けに分かる。それは大変意欲的で結構なのだが、肝心の中身が何を書いているのか―――何を描きたいのか分からないので、脱力。主人公は誰なんだよ?誰の物語? 以蔵だけで良かったんじゃないの、これ?と鼻白んでしまうこと必至の、著者の力量不足が単純に目立つ作品。

第9回小説すばる新人賞 受賞作:陋巷の狗/森村南

category: ま行の作家

tag: OPEN 30点 森村南 小説すばる新人賞

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第8回小説すばる新人賞 受賞作:英文科AトゥZ/武谷牧子

英文科AトゥZ
(あらすじ)
大学英文科を舞台に、若く美しい志村麻美と文芸評論家・蓬田健のロマンスを、教授会の戯画的世界に描く。英単語に秘められた意外なストーリーとは?

answer.――― 65 点
貴方は「論文」を読んだことがあるだろうか?そして、書いたことがあるだろうか?大学全入時代なんて揶揄されている御時世なので、多くの方がどちらも経験あるだろうが、―――先に、本作のハイライトをご紹介。作中中盤、英文科のヘミングウェイの講読場面である。ここで披露される『二つの心臓の大きな川(Big Two-Hearted River)』への考察は、その正否はともかく、「論文」なるもの(の輪郭)に触れる良質な機会を与えてくれる。何せ、「書かれていない部分」に言及するのだ。《文学》の素養のない人にとって、そのアプローチは清新で、目から鱗となるだろう。「論文」をよく理解しないまま見様見真似で筆を執っても、採点者に文字数を確認されるのがオチだ。その意味で、大学入学前に本作に目を通すのもそう悪い話ではない。が、エンターテイメント観点で判断すれば、見逃すのが賢明だろう。本作は、イギリス帰りのヒロイン講師がポスト争いから憂鬱に浸る大学教壇の内ゲバ物語。大学教壇という舞台自体は物珍しく、興味そそられるものの、イベントに飛躍無く、実質、それだけで終わってしまう。誰に読ませるのか考えていなかった印象。“知識”で攻めちゃったね。

第8回小説すばる新人賞 受賞作:英文科AトゥZ/武谷牧子

category: た行の作家

tag: OPEN 60点 武谷牧子 小説すばる新人賞

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第7回小説すばる新人賞 受賞作:恋人といっしょになるでしょう/上野歩

恋人といっしょになるでしょう (201x290)
(あらすじ)
浅草にある玩具月報社に勤める“僕”と儚げな“彼女”。揺れる心が愛に変わる時、僕たちは同じ月を見ていた。

answer.――― 70 点
友人に純文学の書き方を訊いたとき、人に読ませようと思って書かないこと、という答えが返ってきて半ば感心したことがあったが、その大前提の上で「読ませる」工夫が出来ていると、その他大勢から抜け出せるのだろう。さて、本作は、斜陽企業に就職した行き当たりばったりの主人公(♂)が既婚者(♀)に惹かれ、仕事に精を出し、―――というストーリーライン。主人公が学生時代に消化した小説、映画等の固有名詞を地の文にまぶした《お洒落》な作風で、そこを踏まえての特段の起伏見られない展開に、人によっては《文学》の薫りを嗅ぎ取ってしまうかもしれない。が、著者は固有名詞を《記号》的に配しているように、読み手の目を多分に意識しているので、本作が大衆小説なのは間違いないところ。仮に《文学》の薫りを嗅ぎ取ってしまったならば、きっと「文学=文章の機微」程度に文学を解釈してしまっているので認識を改めたほうがいいだろう。しかし、―――お洒落だ。著者の引き出しの豊富さは「買える」。テレホンショッキングのカラクリを流用しての営業は個人的な作中のハイライト。現実の営業でも実践的に使えるのが素晴らしい。隣人マリーを正ヒロインへ配役しなかった悪手が目に余るものの、読めば知らず己のセンスを磨ける一作。

第7回小説すばる新人賞 受賞作:恋人といっしょになるでしょう/上野歩

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 上野歩 小説すばる新人賞

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第6回小説すばる新人賞 受賞作:ジャガーになった男/佐藤賢一

ジャガーになった男_0001 (202x290)
(あらすじ)
伊達藩士・斉藤小兵太寅吉は恋人を捨て、冒険を求めて支倉常長遣欧使節に加わった。着いたイスパニアはすでに全盛期の栄光を失っていたが、一人のイタルゴと意気投合し、共に戦場に赴くために、帰国する使節団と訣別する決心をする。

answer.――― 80 点
専門家も唸る“知識”をあくまでエンターテイメントの一要素として作中に溶け込ませる作家というと、史実の分野では「大蟻食」佐藤亜紀―――そして、この「ピエール」佐藤賢一が個人的にまず思い浮かぶ。両者ともに唸るどころか、のけ反らせられる“知識”をさらりと披露してくれるが、後者は後に『王妃の離婚』で直木三十五賞を受賞したように、バトル有りマス!な分かり易い大衆へのアピールも含んでいるのが特徴。本作もデビュー作ながら、今現在に続く魅せ方がしっかりと刻まれている。イスパニアに渡った凄腕の剣士・寅吉が現地の娘エレナと恋に落ちて帰国を拒み、しかし己の腕を振るう場を求めるうちに悲劇へ雪崩れ込むストーリーライン。とにかく、重厚である。寅吉はヒロインの兄にそそのかされるままに戦場を駆け巡り、エレナの心を壊していく。夢を追うのか、愛を取るのかの取捨選択は実に情動的で悲劇と呼ぶに相応しく、読み手に安易な感想を抱かせることを良しとしない。その意味で読者を選ぶ作品ではあるが、故に選民的満足感も得られるのが罪深いところ。遊び心溢れるハイライトは、寅吉とかの銃士隊隊長トレヴィルとの対決。三銃士の面々でなく、あえて隊長トレヴィルを採用してきたところが心憎い演出だ。また、表題『ジャガーになった男』も度肝を抜く仕掛けになっているので、悲劇であっても最後まで頁をめくって頂きたい次第。デビュー作ながら、大器を予感させる秀作です。

第6回小説すばる新人賞 受賞作:ジャガーになった男/佐藤賢一

category: さ行の作家

tag: OPEN 80点 佐藤賢一 小説すばる新人賞

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第6回小説すばる新人賞 受賞作:天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

天使の卵 (203x290)

answer.――― 70 点
第6回小説すばる新人賞を受賞した村山由佳、初期の恋愛小説。その概要は、美大志望の予備校生が恋人がいるにもかかわらず、心奪われた相手は恋人の姉だった!というもの。時機を得てミリオンセラーとなった本作だが、いざ目を通してみても、特段の感想は浮かばず―――が、それは私個人だけでなく、多くの人にとっても同じなのかもしれないのは、本作への五木寛之の選考評「よくこれだけ凡庸さに徹することができると感嘆させられるほどだが、ひょっとすると、そこがこの作家の或る才能かもしれないのだ」に象徴されるところ。そう、本作はストーリー、そして、その展開を含め、著者へおよそ才能を感じることの難しい、紛うことなき凡作なのである。そのため、文庫本での選考委員たちの歯切れの悪い解説(選考評)こそがもっとも読み応えのあるものとなっている。というのも、各人が上述のように「凡庸」と舌打ちしているにもかかわらず、受賞させざるを得ないのは村山由佳の《文章力》の高さに他ならない。個性的な書き口で(面白げに)魅せる「巧さ」ではなく、村山由佳は真っ当に「巧い」のである。悪文無き、特徴の無き「巧さ」は罪だ。書き手である以上、自分より「巧い」と貶せない。とどのつまり、村山由佳は選考委員たちよりも「巧かった」のである。

第6回小説すばる新人賞 受賞作:天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 村山由佳 小説すばる新人賞

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