ナマクラ!Reviews

10/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30./12

2016年11月のレヴュー更新(まとめ)

小説すばる新人賞のレヴュー、今年中に全部済ませたいところなんだが、果たして間に合うのか!?というか、今年は例年にも増して投げっぱなし、放置しっぱなしの企画が多くて消化不良感が半端ない。正月の「自画自賛」レヴューでまた挙げきれない状態は避けたいところだが、果たして……。何にせよ、今年も残すところあと一ヶ月です。皆さまの充実した師走な日々をお祈りしております。しかし、小説すばる新人賞のレヴュー、今年中に全部済ませたい!とか上で言って早々、そろそろラノベをレヴューしたい気分になっているのが何ともな天邪鬼具合。このラノのランキングが発表されましたし、せめて一作はしたいね。

●小説すばる新人賞●
第18回小説すばる新人賞 受賞作:はるがいったら/飛鳥井千砂
第17回小説すばる新人賞 受賞作:となり町戦争/三崎亜記
第16回小説すばる新人賞 受賞作:笑う招き猫/山本幸久
第15回小説すばる新人賞 受賞作:プリズムの夏/関口尚
第14回小説すばる新人賞 受賞作:ジョッキー/松樹剛史
第13回小説すばる新人賞 受賞作:8年/堂場瞬一
第12回小説すばる新人賞 受賞作:粗忽拳銃/竹内真
第11回小説すばる新人賞 受賞作:パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

ライトノベルの点数一覧は⇒こちらへ!
大衆小説の点数一覧は⇒こちらへ!
アーティストの点数一覧は⇒こちらへ!

category: 更新情報

[edit]

page top

な行の作家一覧

 な行    

内藤渉
長岡弘樹
長岡マキ子
中里融司
中川圭士
中島望
永島裕士
中村恵里加
中村弦
中村文則
長物守
長森浩平
永森悠哉
中山可穂
中脇初枝
梨木香歩
奈須きのこ
夏川草介
夏海公司
夏緑
七尾あきら
七飯宏隆
成田良悟
縄手秀幸
南條竹則
仁木健
仁木英之
西尾維新
西加奈子
西川美和
西崎憲
耳目口司
貫井徳郎
沼田まほかる
野崎まど
野中ともそ
野村美月

category: な行の作家

tag: OPEN 作家一覧

[edit]

page top

第18回小説すばる新人賞 受賞作:はるがいったら/飛鳥井千砂

はるがいったら
(あらすじ)
両親の離婚で別々に暮らす園と行の姉弟。妥協知らずで完璧主義者の姉・園は、婚約者のいる幼なじみと不毛な恋愛関係を続けていた。一方、虚弱体質で冷めた性格の弟・行は、幼い頃に園と拾った愛犬・ハルの介護をしながら、進路に悩んでいた。

answer.――― 78 点
西加奈子の初のベストセラー作品『さくら』を《陰》とするならば、そのカウンターである《陽》的作品として個人的に挙げたくなるのが本作『はるがいったら』。両作の共通項は一家の一員としての「犬」が老いて弱り、その派生として飼い主周りが動き出す点。しかし犬はあくまでマスコット!的役割であり、物語は飼い主たちの現状に焦点を当てている形。もっとも、その飼い主たちは(家庭事情複雑ながらも)ごくごく普通の一般人で、どこにでもありそうな日常のなかであっても読み手の琴線触れる《機微》を施せるかが著者の手腕試されるところ。結論から言ってしまうと、―――これは、良作!と素直に称えられるクオリティーが本作にはある。病弱な弟、才色兼備な姉。二人が視点人物なわけだが、それぞれが読み手にそれとなく先入観を与え、覆していくカタルシスはデビュー作らしくない洗練されたもので、チョイ役の小川君に「じゃあ今日はみんなお隣さんですね」とまとめさせるトリッキーな演出も含め、著者の次作へ誘う魅力を備えている。作中のハイライトは、デパート勤める姉・園への嫌がらせの顛末。上述の通り、植え付けられた先入観を覆し、明かされ、解かれる感情はエンタメ的に仕上げられているが、《文学》的演出。サプライズ的に楽しめます。

第18回小説すばる新人賞 受賞作:はるがいったら/飛鳥井千砂

category: あ行の作家

tag: OPEN 78点 飛鳥井千砂 小説すばる新人賞

[edit]

page top

第17回小説すばる新人賞 受賞作:となり町戦争/三崎亜記

となり町戦争 (196x290)
(あらすじ)
広報で突然知らされた、『となり町との戦争のお知らせ』。とりあえず私が心配したのは職場までの通勤手段だったが、町は今までどおり平穏な様相を呈していた。戦時中だという意識を強めたのは、広報紙に掲載された戦死者数。やはり戦争は始まっていたのか。

answer.――― 67 点
三崎亜紀のデビュー作であり、「町」シリーズの第一弾作品。その概要は、ある日、隣町との戦争状態であることが通知されるも日常は異常なまでに変わり切らず、しかし戦死者が現れ、そして、主人公はスパイへの転身が命じられ……というもの。ざっくりと云えば、シュールな作品。シュルレアリスムを日本語訳すると「超現実主義」となるらしいが、この作品をシュールとするならば、超現実の意味も分かるというもの。超現実(戦争)の中に放り込まれた主人公を通し、読み手はそこに普段は内に隠れている己のセンチメンタルを見い出す。その意味での本作の個人的ハイライトは、主人公のパートナーである香西さんへの質問、その返答を挙げたい。「弟は、誰かに殺されたわけではなくって、戦争で死んでいったのですから」とする返答は、本作が《キャラクター》要らずの作品であることを象徴する超現実な台詞だ。故に、キャラクター有りき、娯楽性を求める人にはいささか厳しい作品なのは否定し難いところ。「戦争」下とはいえ、実際には何が起こっているわけでもない。本作を愉しむにはセンスが要ります。

第17回小説すばる新人賞 受賞作:となり町戦争/三崎亜記

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 三崎亜記 小説すばる新人賞 「町」シリーズ

[edit]

page top

第16回小説すばる新人賞 受賞作:笑う招き猫/山本幸久

笑う招き猫 (199x290)
(あらすじ)
オトコより、お金より、あなたの笑いがほしい!新人女漫才コンビ、アカコとヒトミ。彼氏もいない、お金もない、だけど夢は忘れない2人に、テレビ出演のチャンスが……。

answer.――― 69 点
(第何次なのかは不明だが)お笑いブームの最中に投下された、女漫才師コンビを主人公にした第16回小説すばる新人賞受賞作。漫才師ということで、物語の焦点は芸が鈍っても売れるTVタレントとなるか、売れなくてもライブで沸かせる漫才師にこだわるのかという二択にコンビそれぞれが思い悩み、衝突するところに置かれている。王道と云えば聞こえはいいが、ありがちと云えばありがちな焦点なだけに、女漫才師を如何に才人に描けるかがキーポイントとなる。が、可もなく不可もなく……なために及第点に到らず。もっとも、文字に起こしての「漫才」披露は著者のチャレンジ精神を買いたいところ。笑いの本質は「間」なのだろうから、それを実質封じられる文章で「つまらなくはない」と思わせる仕上がりは好印象を抱いた次第。題材を変えた著者の「次」の作品に興味を持てる。作中で個人的に興味惹かれたのは、先輩芸人の妻である元アイドルのユキユメノを巡る痴情。結局、ゴシップ(そして、それに巻き込まれること)が一番面白いのは二次元でも、三次元でも変わらない。漫才師たちの「悩み」、選んだ「答え」なんて、現在進行形でTVで汗掻きながら映っているので、そのライブ感と比すれば、本作の内容では霞んでしまう。ユキユメノというゴシップをもっとクローズアップしても良かったと思う。なお、千葉近辺の書店員・出版社営業が催した酒飲み書店員大賞の第2回の受賞作でもあります。

第16回小説すばる新人賞 受賞作:笑う招き猫/山本幸久

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 山本幸久 小説すばる新人賞 酒飲み書店員大賞

[edit]

page top

第15回小説すばる新人賞 受賞作:プリズムの夏/関口尚

プリズムの夏 (204x290)
(あらすじ)
海辺の町。高校生のぼく・植野と親友の話題は、寂れた映画館の美しく無愛想な受付嬢・松下菜那のことだった。憧れと現実、情熱と挫折、そして……。

answer.――― 66 点
高校生二人が恋した映画館の受付嬢は、《メンヘラ》だった!という雑な紹介ではコメディになってしまうが、概要としてはまったく間違っていない本作『プリズムの夏』。コメディでなければ何なのかといえば、このままでは自殺しかねない初恋の人を二人で一生懸命「助け」に向かう、真っ当にシリアスな青春譚。しかし今現在に目を通してしまうと、やはりコメディとして扱いたくなるのは、出版から十余年を経て、《メンヘラ》なるネットスラングが定着してしまったからだろう。そう、受付嬢は鬱屈とした日々、投げやりな日々をウェブで綴っているのである。それを偶然閲覧&観察し、二人は仲違いしつつも駆け出すのだ。私生活を公開することが当たり前になり始めた頃―――それを捉えた、ある種の先駆け的な作品としての価値が第15回小説すばる新人賞受賞という評価に繋がったのだと思う。そんなドキュメント性に《文学》を見い出してみても良いのではないでしょうか?なお、鬱な女子をお望みならば、王道で古井由吉の『杳子・妻隠』収録の「杳子」を未読の方は押さえておきましょう。杳子を鬱な女子の基準にすると、質の高低の精度が高くなると思います。

第15回小説すばる新人賞 受賞作:プリズムの夏/関口尚

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 関口尚 小説すばる新人賞

[edit]

page top

第14回小説すばる新人賞 受賞作:ジョッキー/松樹剛史

ジョッキー (199x290)
(あらすじ)
栄光に向かって疾走する、若き騎手の青春。女子アナとの淡い恋、横暴な馬主との確執、馬への愛情――様々な思いを抱え、心優しき騎手は天皇賞の大舞台に挑む。魅力的な登場人馬を描く。

answer.――― 86 点
何かと忌避されがちな「競馬」題材の本作について回るのは、《10万部突破》という眩しいまでの金看板な文句。最終的に辿り着いた部数なのか、経過途中での部数なのかは定かではないが、出版不況と叫ばれて幾星霜……皆様も《10万部》突破が示す意味を十二分にご承知のことでしょう。結論から言ってしまえば、本作には「全て」がある。腕はあれども騎乗依頼の少ない中堅のジョッキーを主人公に、成功と挫折、諦観と矜持を交錯させ、ほろ苦い失恋、時にハーレムまで用意する周到なエンターテイメントを展開。注目すべきは主人公に「負け」を徹底して負わせ、且つ、それを貫かせていることだろう。この主人公は《勝っても、負ける》のである。突き詰めれば、負けて前を向く―――己の負けを認めるために物語は進む。「競馬」題材であるにもかかわらず、肝心のレース描写を必要最低限に済ます《プロフェッショナル》な判断、代わりに単巻作品としては異例と云えるヒロイン格の女性を三人投じ、挙げ句に一部屋に集める離れ業には絶句する他ない。作中のハイライトは本作を読了した全ての人が挙げるだろう、終盤の大レース「天皇賞(秋)」―――そのゲートが開く間際につぶやかれる一言「ショウサン」は鳥肌立つ名演出。読み手の時を止めてくれること請け合いだ。節目の第30回も近い小説すばる新人賞、その受賞作において、一、二を争うエンターテイメント作品。【推薦】させて頂きます。余談になるが、上述で、本作には「全て」がある、と言及させてもらったが、これは内容&要素の他に、著者にとっての「全て」という意味も含んでいる。というのも、貴方の読書遍歴でこんな経験はないだろうか?作品は非常に面白かったのに、著者の他の作品に何故か手が伸びない、なんてことが。それはきっと本能で感じ取ったのだ、著者の全身全霊、作家としてのピークを目の当たりにしたことを。明らかに要素詰め込み過ぎなのに、その処理が神懸かり的なんだよね、この作品。

第14回小説すばる新人賞 受賞作:ジョッキー/松樹剛史  【推薦】

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 松樹剛史 小説すばる新人賞 推薦

[edit]

page top

第13回小説すばる新人賞 受賞作:8年/堂場瞬一

8年 (200x290)
(あらすじ)
30歳すぎの元オリンピック出場投手が大リーグへ挑戦! 自分の夢を実現するため、チャレンジする男の生き様を描くスポーツ小説の白眉。

answer.――― 64 点
第13回小説すばる新人賞受賞した「野球」題材のスポーツ小説。五輪での活躍からプロ入りを期待されながら結局はプロ入りせず、しかし33歳となって突然海を渡ってメジャーへと挑むピッチャーを軸に物語を展開する。もっとも一から十まで野球一辺倒なのかと云えばそうではなく、球団運営――マネーボール的視点が挿し込まれているのがセールスポイント。雑感として、やはり「旧い」印象。「マネーボール」という切り口は出版当時は鮮度があったのだろうことを察せるものの、今や「マネーボール」当事者がよりVividに現状を出版して語っているために(極)薄味にしか映らない。そのため、エンターテイメント観点だと「オールドルーキー」の要素に期待をするしかないが、野球部分の面白味よりも「何故、彼は突然、……」という背景明かしに傾斜、内容もまた暗いために頁をめくりたくならない。作品としてはラスト、単なる野球好きが「不正を正す!」様を楽しめるくらいなので、ある種の《先駆け》だった事実を確認したい奇特な方のみお読みください。

第13回小説すばる新人賞 受賞作:8年/堂場瞬一

category: た行の作家

tag: OPEN 60点 堂場瞬一 小説すばる新人賞

[edit]

page top

第12回小説すばる新人賞 受賞作:粗忽拳銃/竹内真

粗忽拳銃 (204x290)
(あらすじ)
前座噺家、自主映画監督、貧乏役者、見習いライター。夢を追う4人の若者たちが、本物の拳銃を拾ったことからすべては始まった!

answer.――― 73 点
「荒野の賢者」とは私のフェイバリット・ライトノベル『ロードス島伝説』の登場人物ウォートだが、この「荒野の〇×」というフレーズは思春期に根づいたためか、世間を見渡しているとよく当てはめてしまう。《荒野》とはすなわち誰も寄りつかない場所である。なので、売れてない(知名度低い)と「荒野にいるねえ」と、私はひっそりと思い、そして、時たまつぶやく。さて、ここに荒野の作家が一人―――本作の概要は、芽が出ない文化系の仲良し4人組が実弾入りの拳銃を拾い、事件に巻き込まれるのか!?と怯える、というもの。荒野の作家、万人にとって本作の著者がそれに該当するかはともかく、一読して著者が《職業作家》として数年は見通しがつく印象を受けた。というのも、単純に「巧い」のである。真打ちに上がれない噺家の主人公の《日常》を描いていくなかで、拾った拳銃が違和感となるも、何か起こるわけでもなく……。起伏の無い展開と切ってしまえるが、本作を拳銃を拾った話ではなくあくまで噺家としての成長譚として見ると、拳銃によって起こる終盤の「乱戦」は見事なサービスシーンとなる。本作は詰まるところ、(読み手の期待する)先読みした展開との乖離が欠陥となっている作品。ラストの「粗忽拳銃」の一席は上等の出来なのが、また勿体無い。需要さえ見誤らなければ、好きなものを好きなように書いても読み手に届くでしょう。

第12回小説すばる新人賞 受賞作:粗忽拳銃/竹内真

category: た行の作家

tag: OPEN 70点 竹内真 小説すばる新人賞

[edit]

page top

第11回小説すばる新人賞 受賞作:パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

パンの鳴る海、緋の舞う空
(あらすじ)
心に傷を抱えた男女の、切なく激情的な恋。恋人に失踪されたマヤは、愛することができなくなっていた。だが、友達募集の新聞広告でグレゴリーと出会って……熱情に揺れる南国の恋物語。

answer.――― 60 点
ブログ、そのプロフィールを開けば「作家」「イラストレーター」「翻訳家」と自らを紹介するように、多方面で活躍中の野中ともその《小説家》としてのデビュー作。その概要は、ニューヨークを舞台に、トリニダード・トバゴで再会を誓った男女の恋の行く末。一読してストーリーに必要な描写が少なく、本作が登場人物を含めた作品世界の《お洒落さ》に重点を置いているのが分かる。その点で先日の『恋人といっしょになるでしょう』とセールスポイントが近似と云えるが、同作が主人公「自身(趣味)」に《お洒落》を施していくのとは対照的に、本作は登場人物「自身」ではなく、その「周囲(環境)」に《お洒落》の焦点を当てていくのが特徴。舞台はニューヨーク、約束の地はトリニダード・トバゴ、黒人、日本人、クラブ、パーティー、スティール・パン―――そんな具合である。正味、(……都会の孤独は哀しいぜ、ベイベー)といった陶酔的な《お洒落さ》を求める心境でないと読み物としては退屈で、読み手を確実に選ぶ作品。個人的に、著者にはイラストレーターとしての才覚のほうが世間的な需要がある気がするが、その方面の方からすれば、著者は作家業のほうが向いているように見えるのか気になるところです。

第11回小説すばる新人賞 受賞作:パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

category: な行の作家

tag: OPEN 60点 野中ともそ 小説すばる新人賞

[edit]

page top