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第17回メフィスト賞 受賞作:火蛾/古泉迦十

火蛾
(あらすじ)
12世紀の中東。聖者たちの伝記録編纂を志す作家・ファリードは、取材のためアリーと名乗る男を訪ねる。男が語ったのは、姿を顕わさぬ導師と四人の修行者たちだけが住まう山で起きた殺人だった。未だかつて誰も目にしたことのない鮮麗な本格世界を展開する。

answer.――― 74 点
「Un」+「Touch」+「Able」―――《アンタッチャブル》。公募賞が続いていけば、そんな触ることの出来ない、触ってはいけない、つまりは、おいそれと批評することの出来ない作品が出てくる。ライトノベルで例を引くなら、電撃小説大賞における『ブラックロッド』、えんため大賞における『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』、文学も兼ねている(らしい)日本ファンタジーノベル大賞でいえば『世界の果ての庭 ショート・ストーリーズ』(もしかしたら、『バルタザールの遍歴』かもしれない)だ。これらの作品の共通項は「著者が凄い」―――転じて、「それが解る俺は凄い」である。また、「著者が凄い」ということは、そこに「読み手はいない」ということでもある。だから多くの場合、「売れない」。さて、本作はメフィスト賞におけるそんな《アンタッチャブル》な受賞作。その概要は、イスラム世界のスーフィーを題材にしたミステリ。姿を現さない導師と修行僧4人という極端に少ない「駒」、複数人が同じ場で出会うことのない異常な「空間」を用い、著者は沈香に火を灯すようにゆらゆら綴っていく。ただでさえ少ない登場人物たちが一人、また一人と消えていく。まさにトリップ感満載の展開なのだが、如何せん、―――「面白くはない」。物語無き物語、と言ってしまうと語弊があるが、多くの人が掴めるのが「物語」であるならば、本作の「物語」を掴める人は少ないだろう。《蝋燭を吹き消すがいい。夜はもう明けたのだ》とは、シーア宗祖アリー・イブン・アビー・ターリブの言葉とのことだが、例えば、本作はこのような言葉の宗教的解釈を描いている……が、ここで読み手が出来ることは頷くことだけだ。作品すべてが著者へ集約される―――だから、「凄い」。だが、著者が「凄い」→だから「面白い」ってのは違うと個人的に思っている。本作ならば、実際に蝋燭の火を消して「……旦那、夜が明けましたぜ!こんな気味の悪いところ、さっさと引き上げましょうよ!」なんて作品世界をブチ壊す(著者にとって不都合な)登場人物こそ誰よりも著者に寄り添ってくれる存在だったと思う。まあ、要らねえと思ったからこういう作品が出来上がったわけだが……。頁をめくることが、著者への巡礼となる奇書な一作。本作を気に入った人は、上述の『世界の果ての庭 ショート・ストーリーズ』にも挑戦して欲しいね。

第17回メフィスト賞 受賞作:火蛾/古泉迦十

category: メフィスト賞

tag: OPEN 70点 古泉迦十

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