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第1回ラノベ好き書店員大賞 2位:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている
1.とにかく比企谷八幡はくさっている。
2.いつでも雪ノ下雪乃はつらぬいている。
3.つねに由比ヶ浜結衣はきょろきょろしている。
4.つまり材木座義輝はズレている。
5.それでもクラスはうまくやっている。
6.けれど戸塚彩加はついている。
7.たまにラブコメの神様はいいことをする。
8.そして比企谷八幡はかんがえる。

answer.――― 79 点
Twitterにて《最近のライトノベル》を叩いてたり、それを叩いてたりするのを時たま見掛けるが、その度に《最近のライトノベル》が結局、何の作品を指すのか期待を込めて眺めていると、……残念ながら挙がることはない。《最近のライトノベル》とは何か?2015年(理想は2014年)現在、私の考える《最近のライトノベル》が本作『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』。中二病を罹患していた男子が高校進学を機に心機一転を図るものの、……というストーリーラインだが、内容についての言及はさて置いて、私が何を以って本作を《最近のライトノベル》と指定したのかと云えば、―――《文章》である。《リズムの踏襲》。様ざまな文章論において、「描写」「構成」「巧拙」が説かれるが、概して曖昧に、あるいは、読み手が首をひねる形で取り上げられるのが《リズム》についてである。小説における文章のリズム、それは俳句の「五七五」のような字数からの定型、語感揃えた韻踏み、お笑いにおける「天丼」のような繰り返し(and more!)を採用することで生ずるのかといえば、必ずしもそうとは言い切れない。何より、それらは書き手が《リズム》の生成を意図したならばもはや「技」であって、読み手が暗に求めている、本来的な《リズム》ではないのだ。では、本来的な《リズム》とは何なのか?

かの“世界の”村上春樹は『小澤征爾さんと、音楽について話をする』にてこんな指摘をしている。

新しい書き手が出てきて、この人は残るか、あるいは遠からず消えていくかというのは、その人の書く文章にリズム感があるかどうかで、大体見分けられます。でも、多くの文芸評論家は、ボクの見るところ、そういう部分にあまり目をやりません。文章の精緻さとか、言葉の新しさとか、物語の方向とか、テーマの質とか、手法の面白さなんかを主に取り上げます。でもリズムのない文章を書く人には、文章家としての資質はあまりないと思う。もちろん、ボクはそう思う、ということですが。

ここで指摘される《リズム》こそ《リズム》である。すなわち、今までの対人関係、そして、(主に思春期に)読書を通して培った語彙を駆使した文章、書き手にとってごく《自然》に浮かんでくる言葉故の「間」を持った文章である。考え、筆を「止めた」文章には理が宿ったとしても、《リズム》は自ずと狂い、果ては失われる。それが作品(中の文章)の色を褪せ、輪郭を消し、単なる文字の連なりとなって結局、退屈と成る。《リズム》とは、無形の文章の「型」なのである。そして、その「型」は書き手から書き手へ知らず《踏襲》され続けている。年を経ればノスタルジーを抱くようになる「お気に入り」の作品より、また、己の嗜好からでなく筆を執るときに「参考」に手を伸ばした作品より。私にとって、小説に関しての《最近》とは後者を汲み、そのジャンルにおいて知名度高く、それでいて技巧を称えられる―――読み手が書き手に回った際に最も「参考に手に取る」だろう作品のなかで、一番《新しい》作品が世に出た頃を指す。その観点から考えて《最近のライトノベル》と云えば、このマニアックなラノベ好き書店員大賞のランクインもさることながら、読み手が決める体の事実上の最高の販促賞「このライトノベルがすごい!」にて2013年度で6位、2014年度の1位、そして、直近の2015年度でも1位を獲り続けた本作になるかな、と。どこかの黒ヒゲではないが、「人の夢は!!!終わらねェ!!!!」と吠えるオジサン、どこかのキッドではないが、「始まるんだよォ!!!誰も見た事のねェ“新しい時代”が!!!」と猛る若人が、多かれ少なかれ《リズム》に影響を被りそうだな、と。具体的に言うと、「もちろん違うよね。知ってました。」などの「消しても通る」追尾な文章を中心にした、「そもそもお前の慎ましすぎる胸元なんか見てねえよ。……いや、ほんとだよ?ほんとほんと、マジで見てない」からの「ちょっと視界に入って一瞬気を取られただけ。」などの前振りを執拗に重箱にしての《吐露》である。この徹底した(《吐露》で斬る)「重箱」具合は圧巻で、故にその《リズムの踏襲》も図られてしまいそう。が、大前提で比企谷八幡という卑屈なキャラクターと合致して歓迎される文体なので、そこを咀嚼しないと、リズムを拗らせるだけの結果に終わるだろう。ナンヤカンヤと書いたが、要約すれば、ライトノベルというジャンルにおけるトレンドな《リズム》がここにある。そんな《流行りもの》な意味合いでも、本作に手を出して損と言うことはないでしょう。大衆小説に寄らず、「ライトノベル」を突き詰めたライトノベル。Very good!な快作です。

第1回ラノベ好き書店員大賞 2位:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 渡航 ラノベ好き書店員大賞 このライトノベルがすごい!

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