ナマクラ!Reviews

05/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30./07

第1回本屋大賞 5位:重力ピエロ/伊坂幸太郎

重力ピエロ
(あらすじ)
半分しか血のつながりがない「私」と、弟の「春」。春は、私の母親がレイプされたときに身ごもった子である。ある日、出生前診断などの遺伝子技術を扱う私の勤め先が、何者かに放火される。町のあちこちに描かれた落書き消しを専門に請け負っている春は、現場近くに、スプレーによるグラフィティーアートが残されていることに気づく。連続放火事件と謎の落書き、レイプという憎むべき犯罪を肯定しなければ、自分が存在しない、という矛盾を抱えた春の危うさは、やがて交錯し……。

answer.――― 83 点
熱心な読者とは言えないが、伊坂幸太郎のピークはいつなのか?と訊かれれば、おそらくこの『重力ピエロ』ないし次作の『アヒルと鴨のコインロッカー』までだと答えると思う。日常にモノホンな「事件」を起こし起こさせる「優等生」伊坂幸太郎。本作は当時の彼の持ちうる《日常》を余すことなく出し尽くしただろう一冊。「日常」―――伊坂幸太郎にかぎらずだが、実のところ、すべての作家がすぐに尽きる「(世界)観」が《日常》である。それというのも、人生は「自分」一度しか体験出来ていないからだ。そして、《日常》とはその説明を省いてしまえば実質的にモラトリアム、思春期に培った感性(&記憶)の吐露に他ならない。社会人以降の《日常》は、多くは業界(社会)の説明、専門分野の知識の披露でしかなく、思春期の産物ではない、社会人の《日常》らしい《日常》を演出するためには「結婚」「転職」「介護」などの《責任》関わるイベントを用いなければならない。また、日常は本来的に面白いものではないために……云々、と。こう《日常》と連呼してもやはり抽象的になってしまうので切り上げるが、何にせよ、《日常》を武器とする故に伊坂幸太郎は作品を上梓する毎に摩耗&劣化し、ついにはストック尽きて、「この10年間で小説に対するモチベーションがかなり変わった。最初は読者の反応を気にして、執念をもって小説を執筆していたが、最近は小説を書くこと自体が楽しくてしょうがない」なる発言を残して10年代に到る。最近の作品が気抜けのサイダーのような出来なのは実際、気抜けで書いているからなのである。本作より後発の世界を終わらせてまで《日常》をひねり描いた『終末のフール』を読んでみればお察し出来るように、《日常》のストック気にせず存分に披露出来た初期作品こそ伊坂幸太郎の筆が躍動した跡だ。本作はそのとびきりの「跡」、マイケル・ジョーダンからDNAまで著者の世代が薫るネタを台詞に、地の文に仕込みに仕込んだ、レイプ有り!殺人有り!正義は……!と性悪説&性善説入り混じる快作。暇を持て余している大学生にピッタリの良質な大衆小説です。

第1回本屋大賞 5位:重力ピエロ/伊坂幸太郎

category: あ行の作家

tag: OPEN 80点 伊坂幸太郎 本屋大賞

[edit]

page top

« 第9回本屋大賞 10位:プリズム/百田尚樹  |  第10回本屋大賞 4位:きみはいい子/中脇初枝 »

コメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://medeski02.blog95.fc2.com/tb.php/1087-70a5d0bb
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
page top