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第9回本屋大賞 3位:ピエタ/大島真寿美

ピエタ
18世紀、爛熟の時を迎えた水の都ヴェネツィア。作曲家ヴィヴァルディは、孤児たちを養育するピエタ慈善院で“合奏・合唱の娘たち”を指導していた。ある日、教え子のエミーリアのもとに、恩師の訃報が届く。一枚の楽譜の謎に導かれ、物語の扉が開かれる。今最も注目すべき書き手が、史実を基に豊かに紡ぎだした傑作長編。

answer.――― 79 点
ヴィヴァルディ、アンナ・マリーア、ピエタ慈善院、“合奏・合唱の娘たち”など、18世紀のヴェネツィアを舞台に実在する人物、建造物、団体を基に制作された本作『ピエタ』。史実に基づいて……なる文句は、ともすると想像を縛る堅苦しさに敬遠されてしまう場合もあるとは思うが、上述の通り、18世紀のヴェネツィアとなると日常から縁遠く、また、主役がヴィヴァルディなのかと思えば、そのシスターな教え子たちなので、地図にない新世界に臨む気持ちで頁をめくれる。物語は慈善院の苦しい懐事情からの寄付金募り―――ヴィヴァルディの楽譜探しを中心に進む。なかなか魅力的なリードで幸先は良いのだが、そこからは特段の才気の無い女性ばかりの登場人物たちということもあり、何も解決せずの遅々とした温(ぬる)い展開が読み手には厳しいところ。状況が変わるのは中盤、諦観のヒロイン、気まぐれなパトロン嬢ヴェロニカ、そして、教養高い高級娼婦クラウディアの邂逅場面から。非公式な一期一会に相応しく過去のわだかまりを解き、後の散財な展開も納得出来る幻想的な一夜となっている。本作の文体は時折り、台詞が「」を通さず地の文に溶け込むのだが、ここではそれが見事にハマる「話を逸らす」という演出があり、その意味でも個人的に印象的な場面となった。以降は、楽譜探しを片手間にした、ヴェロニカ&クラウディアの「人」騒動。受けた恩は返すもの!と犠牲をいとわぬハートフルな滑走路を突き進み、ラストの「歌」でホロリと涙を流す仕掛けとなっている。牛歩な前半に難こそあれ、しっかりと胸を打ってくれる作品。女性の方は特に気に入るのではないでしょうか。

第9回本屋大賞 3位:ピエタ/大島真寿美

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 大島真寿美

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