ナマクラ!Reviews

02/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31./03

第3回山本周五郎賞 受賞作:エトロフ発緊急電/佐々木譲

エトロフ発緊急電 (204x290)
(あらすじ)
第二次世界大戦前夜、日本海軍の動向を探るため、憲兵に追われながらも単身日本に潜入した日系アメリカ人スパイと、それとは知らずに恋に落ちる薄幸な女。そして彼らを取り巻く、様々な思いを抱く人々。戦争に翻弄される人々の過酷な運命を描く。

answer.――― 71 点
佐々木譲の『ベルリン飛行指令』に続く第二次大戦三部作の第二作にして、第43回日本推理作家協会賞、第8回日本冒険小説協会大賞、そして、この第3回山本周五郎賞と複数の販促賞を掻っ攫った本作『エトロフ発緊急電』。その概要は、正義に冷めた日系人ケニー・サイトウが依頼された大日本帝国の動向―――《真珠湾攻撃》間際を下敷きにしたスパイ絵巻。舞台をアメリカから日本、そうして、表題である択捉まで移すダイナミックなスパイ活動は、その距離に比例したわけではないだろうが、読む前から思わず怯んでしまう文庫本で六〇〇頁を超える圧倒のボリューム。しかし上述の通りの「賞」が保証してくれる後押しもあり、意気軒昂に頁をめくってみれば……結論から言ってしまうと、「無駄」な登場人物、演出が目につく残念な出来となっている。スパイが題材、スパイが主役となれば、味方に、敵に、第三国に女!と騙し騙され、唆し唆された上の多方面の《知識》を絡めた諜報合戦を期待すると思うが、本作ではそれらは押さえてこそあるものの、ヒロイン・岡谷ゆきを始めとした「脇役」にまで華を持たせたい著者のエゴにより、遅々とした進行が読み手には厳しい。この手の重厚な作品がメインストリートから外れている昨今の潮流を考えてみても、出版当時だから評価された《過去の作品》として映ってしまうだろう。今やナイーブな問題と化している南京大虐殺を扱っているのも頂けない。そんな「重い」足枷を嵌めている本作ではあるが、個人的なハイライトとして米軍によるケニー・サイトウへのスパイとしてのスカウト場面を推したい。矢継ぎ早に繰り出される生い立ちへの質問に、無機的に答えるケニーの姿はまさしく―――This is the Outlaw Star!超級の主人公を体現している。ナンヤカンヤと文句を並べてはいるが、《第二次世界大戦が好き》などの補正が働けば絶賛も伊達ではないと感じられる大作には違いない。

第3回山本周五郎賞 受賞作:エトロフ発緊急電/佐々木譲

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 佐々木譲 山本周五郎賞

[edit]

page top

« 第4回山本周五郎賞 受賞作:ダック・コール/稲見一良  |  第2回山本周五郎賞 受賞作:TUGUMI/吉本ばなな »

コメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://medeski02.blog95.fc2.com/tb.php/1123-117f08ea
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
page top