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第7回山本周五郎賞 受賞作:一九三四年冬 - 乱歩/久世光彦

一九三四年冬 乱歩
(あらすじ)
1934年(昭和9年)、スランプに陥った江戸川乱歩は、環境を変えるために麻布の「張ホテル」(架空のホテル)に泊り込む。そこで探偵小説マニアの人妻や、謎めいた中国人青年に困惑しながらも、スランプを脱するために幻惑的な短編『梔子姫』を執筆する。

answer.――― 78 点
TVドラマのプロデューサー・久世光彦の「小説家」としての出世作。その概要は1934年(昭和9年)の冬、江戸川乱歩の空白―――ライターズ・ブロックの期間を描いたもの。実在の人物を主人公に採用することは珍しいことではないが、その人物の記録少ない空白、それもスランプの期間に着目するあたりは著者のお目が高いところ。《市井の人からの成り上がり》は誰しも惹かれるものだが、それとほぼ同等に関心を寄せてしまうのは《才人の苦悩、挫折》だと思う。自分以外の何者かへの「追体験」。才人という、まさしく自分以外の何者かが、自分が今後を含め体験することのない苦悩、挫折をする物珍しさは好奇心そそられるもの。架空のホテル「張ホテル」で出会う探偵小説マニアの人妻、中国人青年との幻想的な生活の上で、江戸川乱歩は大いに焦り、大いに愚痴る。史実を絡めた独白は、トリヴィアを含めて興味深く読めるだろう。終盤、官能極まった乱歩のご乱行はクスリと滑稽だ。そんな本作において評価の分水嶺となるのが作中作『梔子姫』の捉え方。この本格的な作中作からストーリーが展開されるわけだが、なまじ力作なだけに集中力を要する。耽美的な作風、という言及が諸所で見られるように、本作の楽しみ方は<物語を楽しむ>というよりも<作品世界を楽しむ>形で、これを履き違えると読み辛さを感じてしまうだろう。個人的に上述の乱歩のライターズ・ブロック……《才人の苦悩、挫折》を楽しんでいたので、作中作『梔子姫』に関してはもう少し手を抜いて頂きたかったな、と。文学少女がフェイバリットに挙げそうな幻想的な作品。また、乱歩による作中の文章の良し悪しへの言及は、実際、その通りだと思う。インテリだからと言って何でも理解出来るわけがない。

第7回山本周五郎賞 受賞作:一九三四年冬 - 乱歩/久世光彦

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 久世光彦 山本周五郎賞

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