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第17回山本周五郎賞 受賞作:邂逅の森/熊谷達也

邂逅の森
(あらすじ)
秋田の貧しい小作農に生まれた富治は、伝統のマタギを生業とし、獣を狩る喜びを知るが、地主の一人娘と恋に落ち、村を追われる。鉱山で働くものの山と狩猟への思いは断ち切れず、再びマタギとして生きる。

answer.――― 87 点
《マタギ三部作》の第二作にして、山本周五郎賞、直木三十五賞をW受賞するという快挙を成し遂げたことからも、熊谷達也の事実上の代表作と謳える本作『邂逅の森』。一読しての感想はそんな快挙も納得のマタギ男の紆余曲折の半生を描いたエンターテイメント大作で、そもそも、―――「熊」と対峙しないストーリー展開には多くの人が意表を突かれることだろう。本作は熊が大暴れするなか、マタギが静かに猛り、銃弾を放つような典型的なマタギ話ではない。若者が姦通し、炭鉱に落とされ、後輩に慕われ、いわくつきの嫁を娶り、己の過去と向き合い―――そうして、ようやく「宿敵」と対峙する。頁数がそのまま年輪となって一人のマタギを誕生させる構図は圧巻で、誰しも心のうちで営む読了Libraryにおいて、自分の趣味趣向を超えた《面白い》の、ある種のベンチマーク的作品となることは必至だ。作中のハイライトはそれこそ読み手によって違ってくるだろうが、個人的にはやはり終盤も終盤の「宿敵」との対峙、互いの命を賭した一戦を挙げたい。小説すばる新人賞を受賞した著者のデビュー作『ウエンカムイの爪』でも「熊」は投入されたわけだが、同作の「熊」とはまさしく《格》が違う。序盤、中盤とあっさりと「……Hunt!」していた過程もあり、次の頁には逝ってしまうかもしれない、出し惜しみのない死闘はスペクタル以外の何物でもない。三十作を超える山本周五郎賞の受賞作においても、まず五本の指に入るだろう「この受賞作を読め!」な傑作。「熊谷達也」の名を、直木賞作家が盗作……!というセンセーショナルな報道で知っただけで氏の作品を未読な方は是非、本作を手に取ってみましょう。「面白いやんけ!お前の作品忘れないから、もう引退してもええで!」と作家の本懐なエールを著者へためらいもなく贈れます。

第17回山本周五郎賞 受賞作:邂逅の森/熊谷達也

category: か行の作家

tag: OPEN 80点 熊谷達也 山本周五郎賞 マタギ三部作

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コメント

男女差?

確かにお互いのレビューを読み比べると面白いですね。
本作で私が一番面白いと感じたのが冒頭の3章だったのに対し、
Medeski さんはラストの死闘という...

いや確かにクライマックスはラストの山の主との死闘だと思うので、著者的にはMedeskiさんの意見が正解だと思うんですけどね(^-^;)
これは男女差なのか、それとも単なる個人的嗜好の違いなのか...
他の人のレビューを覗いてみたくなりました。

この作品、3部作の2作目にあたる作品なんですよね。
順番は逆になりますが、次は「相剋の森」を読んでみようと思います。
いつになるかは神のみぞ知る、ですけど。

ちゃき #mQop/nM. | URL | 2016/04/11 21:43 | edit

Re: ちゃき

コメント、有難うございます!返信した気になってしまいました、遅れて申し訳ございません!

> 確かにお互いのレビューを読み比べると面白いですね。
> 本作で私が一番面白いと感じたのが冒頭の3章だったのに対し、
> Medeski さんはラストの死闘という...

ちゃきさんのレヴューを読んで、本作の女性の登場人物、男にとって「都合が良い」ことに気づかされました。なかなか盲点になりがちな視点なので「確かに!」とうっかり独り言を言いかねない勢いで目から鱗でした。

> いや確かにクライマックスはラストの山の主との死闘だと思うので、著者的にはMedeskiさんの意見が正解だと思うんですけどね(^-^;)

著者的には、〆めはやっぱり、熊とのバトルだろう!というのは絶対にあったとは思うのですが、これはやはり「男」の視点での決めつけなんだと思うんですよね。ラストの家へ還ろうとしているところも、自分の「女」が待ってるってロマンチックなものなんですが、まさに都合が良いと思いましたわ。

> この作品、3部作の2作目にあたる作品なんですよね。
> 順番は逆になりますが、次は「相剋の森」を読んでみようと思います。
> いつになるかは神のみぞ知る、ですけど。

私は一作目を読んだことがあるんですが、実際、熊のレベルは三段くらい落ちてました(笑)せっかくなので私も三部作全部コンプリートしたいので読んでみるつもりですが、ちゃきさんと同じで神のみぞ知る、とまでは言いませんが、気分に多分に因る状態です。

Medeski #- | URL | 2016/04/16 17:36 | edit
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