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第23回山本周五郎賞 受賞作:光媒の花/道尾秀介

光媒の花
1.隠れ鬼
2.虫送り
3.冬の蝶
4.春の蝶
5.風媒花
6.遠い光

answer.――― 85 点
乙一がせっせと隙間を突き、手懐けたライトノベラーなファンたちへ、大胆不敵にも「乙一さん?知り合い!知り合い!」と咲かない向日葵を携えて営業を仕掛けてきた道尾秀介。本作は、ミステリー・ランキングを荒らし、着々とセールス実績を築いて、いよいよ本丸「直木十五賞」にロック・オン!そうして、前哨戦「山本周五郎賞」を受賞した連作短編集。6つの短編の各視点人物は前編の登場人物と繋がりを持たせ、その誰にも仄暗いエピソードを付けて、ラストで光を灯して浄化していく構図。先に個人的なハイライトを挙げさせてもらえば、1章「隠れ鬼」における竹林での口淫場面を推したい。《ジュブナイル》《ミステリー》《ファンタジー》といった要素を絡めた作風に共通点を持つ乙一と道尾秀介だが、その二人の違いを端的に挙げるなら《文章力》に尽きる。ライトノベルで培った乙一のシンプルを是とする文章はリーダビリティの観点からも若年層に歓迎されたと思うが、道尾秀介は乙一のフォロワー、そして、本家「乙一」と一線を画すべく、語彙、表現に力を注いでいる。上記の口淫場面は著者のキャリアにおいてもおそらく指折りの筆力を用いた幻想的な場面で、読み手の向こう、選考委員たちへのアピールさえ透けて見える。もっとも、文章力はあくまでオプションであり、氏の人気を支えているのは《ミステリー》を基本としたダークな人間模様だろう。本作は既存のファンの期待に十二分に応える出来で、殺人起こるバッドエンド風味の前半、そこから半(≠反)転、仄かに光が射してくる後半と、陰陽のバランスを感じさせる作品構成が素晴らしい。5章「風媒花」は“らしくない”ハッピーエンドで、作品に拡がりを与えている。1章の視点人物へ「返す」物語となる〆めの6章「遠い光」が前に配される5つの短編と比するとやや「格」落ちの感は否めないが、それでも、“裏・直木三十五賞”たる山本周五郎賞受賞も納得のクオリティーの連作短編。道尾秀介の作品のなかでも、特にミステリー読者を対象とせずに制作された印象もあり、その意味で著者にとって異色な一作と云えるかもしれない。

第23回山本周五郎賞 受賞作:光媒の花/道尾秀介

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 道尾秀介 山本周五郎賞

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