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第7回スーパーダッシュ小説新人賞 佳作:反逆者 ウンメイノカエカタ/弥生翔太

反逆者 (204x290)
(あらすじ)
『進化薬』と呼ばれる薬物によって驚異的な力を手に入れた『先駆者』が存在する世界。立花浩平は、『先駆者』として特別治安維持局で任務にあたる高校生。他者の死を見る予知能力を持つ浩平はある日、一人の少女の死を予知する。その直後に護衛の任務を与えられるが、対象として現われたのはその少女、シア=ヴァレンタインだった。

answer.――― 63 点
自分が面白いと思うから、=面白い!という図式は、あるいはストレートに成立することもあるが、それはある種の幸運でしかなく、ひと度その幸運を手放してしまえば、(……あれ?)から始まる(……どうして!?)への際限のないドロ沼へと嵌まりこみ、そこから拗らせてしまうと他人への責任転嫁へ至ってしまう。絶対的な事実がある―――《面白い》は、他人を意識して初めて成立する。そのためには己を知り、その過程で感性の是正を行い、属するジャンルにおける《お約束》を知識として学んでおかねばならない。その当然の準備を無視して、あくまで無頼の『自分』を通すならば、―――俺は芸術家なんだ!という必「死」の覚悟を持って臨まなければならない。が、エンターテイメントで《面白い》に挑む場合、―――俺は芸術家なんだ!は自殺行為以外の何物でもないので止めておきなはれ。さて、本作の著者は弥生翔太……なのだが、このペンネームはもはや闇へと葬られ、今や誰しも『小説家になろう』!にて『Re:ゼロからはじめる異世界生活』を上梓し、鼠色猫/長月達平として転生完了!弥生翔太なんていなかった!とばかりに目下、著者はライトノベル作家人生を全力でやり直している。この事実からも察する通り、本作は著者の、自分の《面白い》を詰め込んだ “無自覚”なデビュー作。本作を乱暴にまとめれば、グローバルな組織に属する超人な高校生が自らの能力で死を予知してしまった可愛い子を守る、という形。一読の印象は、「死」という着地点を予告して進める構造、達者な戦闘描写など素養を感じさせる筆から“次作”を手に取りたくなったものの、如何せん、あくまで『自分』の《面白い》で勝負しているため、十把一絡げから抜け出せていない。少なくとも著者はこの時点では、本作を「つまらない」と言ってしまう人の感性を理解出来なかっただろう。本作は、たとえば新宿でスーツ着た中年のサラリーマンたち(格闘技経験あり)の殴り合いを見掛けることと変わらない。見所満載でも、人生枯れた素人たちによる高度な殴り合いなのである。つまりは、人を寄せる「華」が無い。というわけで、本作で辛酸を舐めた経験からの“次作”、『Re:ゼロからはじめる異世界生活』の仕上がり具合は気になるところ。本作と対照して読むべき一冊になってるかもしれないのでチェックしたい。

第7回スーパーダッシュ小説新人賞 佳作:反逆者 ウンメイノカエカタ/弥生翔太

category: や行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞優秀賞(佳作) OPEN 60点 弥生翔太 鼠色猫/長月達平

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コメント

「感性の赴くままに書いた児童の絵には誰も金を払わない」。こうした言葉をふと思いつきました。やはり作家は一つの技術職だと思っていますので、単に「これは面白い作品!」ではなく、「これが面白い作品かどうか」を分かってないといけない。要は読書量と先行作品の分析の問題だと思うのですが、巷にあふれるライトノベル(ライト文芸も)ではそれがまったくなされていない。文章の作り方、プロットの組み立て方など、どれをとっても満足のいく出来ではなく、読者を「もう一度読もう」という気にはさせてくれない。つまりは面白くない。ラノベというコンテンツが、「一過性の何となく面白いもの」として一部の若者たちにウケ続けるのはいったいいつまででしょうか。そろそろ新しい変化が起こり、広く長く享受され続け、世界に向けて発信しても恥ずかしくないような作品を期待しているのですが。

カゲフミ #0sUulrwY | URL | 2015/11/28 11:24 | edit

Re: カゲフミ

少し遅れましたが、―――コメント、有難うございます!


>やはり作家は一つの技術職だと思っていますので、

私もそのように捉えています。ただ、同時に感情の発露も必要な職業とも思うので、技術を身につけたなら最後はそれを捨てて縦横無尽に「描いて」欲しいと思っちゃいますね。

>ラノベというコンテンツが、「一過性の何となく面白いもの」として一部の若者たちにウケ続けるのはいったいいつまででしょうか。

個人的に、ライトノベルはティーンのためのジャンルだと思っています。それだから、一部の、その時代に思春期を迎えている人たちの「思い出」として残れば良いんじゃないかなと。少年から成人まで楽しめてしまうライトノベルというのは、おそらく極めて大衆小説に近い、誰が読んでもそつなく面白い程度の産物に陥ってしまうと思うんですよね。

Medeski #- | URL | 2015/11/30 02:08 | edit
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