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この受賞作を読め! 【小説新潮長編小説新人賞:All Time Best!!】

すでに閉幕している小説新潮長編小説新人賞(その後継には新潮エンターテインメント大賞が設置されるも、こちらも閉幕の模様)。その全12作の受賞作のなかから、「これは読んでおこうや!この新人、期待出来るよ!」発表後10年以上過ぎているので、作家が今「現役」かどうかでその結果は解かってしまうが、何にせよ、この受賞作を読め!の始まり始まり~。

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

歓喜有り、悲哀有り、恋愛有り、喧嘩有り!の端的に言ってしまうと、関西版『池袋ウエストゲートパーク』しかし、どこか上からのお洒落さが鼻につく本家と違い、こちらは「マルショウ解体」という汗水垂らす現場が舞台のため、男性読者により共感を呼び込む豪快な抗争展開が魅力。喧嘩師カンの脇役からの実質の主人公交代劇は痛快極まりない。そんな汗臭い作中においても、女性キャラクターがしっかり存在感を放っているのも嬉しいところ。スロースタートな序盤に難があるものの、間違いなく小説新潮長編小説新人賞の受賞作においてNo.1のエンターテイメント作品。読むならまず本作からでしょう。千葉近辺の書店員と出版社営業が設けた販促賞「酒飲み書店員大賞」でも、見事ランクインしていた模様。青春小説としてもお薦め出来ます。

レヴューを読み返してみたら、《本屋大賞で紹介すべき「埋もれている」作家の一人、米村圭伍のデビュー作。》なんて書いていたが、実際、いぶし銀のポップを堪能出来る作家だと思う。本作でも、のほほんとした気の良い武士(童貞)を駆使して間抜けとも云える騒動を解決していく。下品ではないエロが散りばめられ、ストーリーが見えなかった展開にも「予告」通り、さらりとストーリーを持ち込んでくるのは、ちょっとした匠の技。良作、というレッテルを貼りたくなる作品。

女優/演出家が本職と云える前川麻子のデビュー作。主人公が著者と同名という仕掛けが最大のセールスポイント。これで本作は自伝ないし半自伝として読めるため、読み手は「文学」の領域に踏み込んでいる作品と錯覚出来る。実話、として捉えてしまえば、日常場面も退屈には映らない。鬱病に罹ってしまったユキとの電話のやり取りは創作(?)とは思えない迫力があり、本作のハイライトに挙げたくなる場面。ただ、終盤の〆め方は賛否分かれるところ。構造的な凝り方は要らなかったと思う。

おそらく小説新潮長編小説新人賞の受賞作において、選考委員たちにもっとも激賞されたのが本作『俺はどしゃぶり』だろう。何せ、「稀にみる快作」「ビールで乾杯したくなる」である。他の新人対象の公募賞でもなかなかお目に掛かれない激賞具合で、思わず手に取りたくなる。……ものの、いざ読んでみると肩透かしと言わないまでも、眉根を寄せてしまうのはもはや仕様か。弱小アメリカンフットボール同好会の顛末なわけだが、それをコンセプト通りに描き切ったところは確かに唸らせられるが、……。選考委員評と自分の読了後の感想の差を楽しむ作品として捉えるのが一興かと。

☆☆  総評  ★★

新たな娯楽小説の輩出を目的とした小説新潮長編小説新人賞。その全12作の受賞作からの1位から3位+次点の4作を選んでみたが、今回は物の見事にレヴューでの配点通りの順になったのが個人的に驚いた。がしかし、自分で言うのもなんだが、小説新潮長編小説新人賞の受賞作の中から4作選べ!というお題が出れば、順番はともかくとして、ほとんどの人も上記のランクイン作品を選ぶのじゃなかろうか。特に、第1位に選んだ『太陽がイッパイいっぱい』はもはや不動の印象。他の三作のランクイン作品も良作には違いなく、読んで損と云うことはない―――が、とりあえず読むなら、と同作はまず薦めたくなる。今現在における作品、著者自身の知名度の低さも信じられないくらいのギラギラした娯楽&青春小説だ。ランクイン作品以外だと、出版当時の流行りだったキャバクラ題材の『調子のいい女』は、ヒロインの男あしらいのテクニックが実践的で面白い。文章的な観点からならば、錦絵と称えられたり、駄文と貶されたり、と選考委員で評価の別れた『決闘ワルツ』も、書き手には反面教師的な意味合いで一読の価値はありそう。小説新潮長編小説新人賞における随一のゴシップ作品としては、『手紙 The Song is Over』も忘れてはいけない。17歳の女子高生がデビュー!と「最年少デビュー」ブームのある種の先駆け的作品である。選んだ責任を放り投げて、選考委員(主に井上ひさし御大)がボロカスに貶しているのが面白酷いとしか言いようがない。公募最初期は娯楽小説を募集していながら文学崩れの小説ばかりで、真っ当な娯楽小説が集まらなかったようだが、第5回のW受賞作(『風流冷飯伝』&『俺はどしゃぶり』)を境に好転。良作の輩出は新たな良作を呼び込むことを証明したように思う。終わってしまった公募賞の受賞作品というのは、なかなか再発掘される機会がないと思うが、ここでランクインしている作品はいぶし銀のクオリティを持った確かな作品なので、気になった方は手に取って読んでみてくださいな。ではでは!

以下に小説新潮長編小説新人賞の受賞作のみの【点数一覧】を付け足しておきます。相対評価なので、ちょいちょい点数は前後しますのでご了承下さい。

☆ 受賞作:点数一覧 ★



81  太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾  【第1位】

80

79

78  風流冷飯伝/米村圭伍  【第2位】

77

76  鞄屋の娘/前川麻子  【第3位】

75  俺はどしゃぶり/須藤靖貴  【次点】

☝  満足  ☟  普通


74  調子のいい女/宇佐美游

73

72

71  

70  石鹸オペラ/清野かほり

69  ノーティアーズ/渡辺由佳里

68  居酒屋野郎ナニワブシ/秋山鉄

67  

66  マイ・スウィート・ホーム/富谷千夏

65  

60  決闘ワルツ/秋月煌

☝  普通  ☟  不満


58  あなたへの贈り物/和泉ひろみ

☝  不満  ☟  アマチュア


30  手紙 The Song is Over/佐浦文香

現在、2015年12月27日/修正

小説新潮長編小説新人賞受賞作一覧は⇒こちらへ!

category: この受賞作を読め!

tag: OPEN 小説新潮長編小説新人賞

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