ナマクラ!Reviews

03/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30./05

第14回小説すばる新人賞 受賞作:ジョッキー/松樹剛史

ジョッキー (199x290)
(あらすじ)
栄光に向かって疾走する、若き騎手の青春。女子アナとの淡い恋、横暴な馬主との確執、馬への愛情――様々な思いを抱え、心優しき騎手は天皇賞の大舞台に挑む。魅力的な登場人馬を描く。

answer.――― 86 点
何かと忌避されがちな「競馬」題材の本作について回るのは、《10万部突破》という眩しいまでの金看板な文句。最終的に辿り着いた部数なのか、経過途中での部数なのかは定かではないが、出版不況と叫ばれて幾星霜……皆様も《10万部》突破が示す意味を十二分にご承知のことでしょう。結論から言ってしまえば、本作には「全て」がある。腕はあれども騎乗依頼の少ない中堅のジョッキーを主人公に、成功と挫折、諦観と矜持を交錯させ、ほろ苦い失恋、時にハーレムまで用意する周到なエンターテイメントを展開。注目すべきは主人公に「負け」を徹底して負わせ、且つ、それを貫かせていることだろう。この主人公は《勝っても、負ける》のである。突き詰めれば、負けて前を向く―――己の負けを認めるために物語は進む。「競馬」題材であるにもかかわらず、肝心のレース描写を必要最低限に済ます《プロフェッショナル》な判断、代わりに単巻作品としては異例と云えるヒロイン格の女性を三人投じ、挙げ句に一部屋に集める離れ業には絶句する他ない。作中のハイライトは本作を読了した全ての人が挙げるだろう、終盤の大レース「天皇賞(秋)」―――そのゲートが開く間際につぶやかれる一言「ショウサン」は鳥肌立つ名演出。読み手の時を止めてくれること請け合いだ。節目の第30回も近い小説すばる新人賞、その受賞作において、一、二を争うエンターテイメント作品。【推薦】させて頂きます。余談になるが、上述で、本作には「全て」がある、と言及させてもらったが、これは内容&要素の他に、著者にとっての「全て」という意味も含んでいる。というのも、貴方の読書遍歴でこんな経験はないだろうか?作品は非常に面白かったのに、著者の他の作品に何故か手が伸びない、なんてことが。それはきっと本能で感じ取ったのだ、著者の全身全霊、作家としてのピークを目の当たりにしたことを。明らかに要素詰め込み過ぎなのに、その処理が神懸かり的なんだよね、この作品。

第14回小説すばる新人賞 受賞作:ジョッキー/松樹剛史  【推薦】

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 松樹剛史 小説すばる新人賞 推薦

[edit]

page top

« 第15回小説すばる新人賞 受賞作:プリズムの夏/関口尚  |  第13回小説すばる新人賞 受賞作:8年/堂場瞬一 »

コメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://medeski02.blog95.fc2.com/tb.php/1261-36c01cbc
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
page top