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第18回ファンタジア大賞 佳作:黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで/細音啓

黄昏色
1.虹と夜の交叉 ――始まりの、そのさらに前―― 
2.赤と夜の練習歌
3.集まる者の交声曲
4.風が呼ぶ、枯れ草色の思い出を
5.始まりと約束のオペラ
6.誓者が歌う、世界よ黄昏に染まれ
7.君の望みの喜びを ――イヴは夜明けに微笑んで――
8.夜明け色の詠使い

answer.――― 72 点

特定(の色)の触媒と詩を用い、任意の物体や生物を呼び出す<名詠式>と呼ばれる召喚魔法が存在する世界を舞台にしたハイ・ファンタジーな本作。時代の潮流もあり、ファンタジー小説が芽吹くことが難しい現状において、<名詠式>なる魔法体系を全面に押し出すスタイルは読者にちょっとしたタイムスリップ、時代錯誤な感覚に陥らせてくれる。それでも、本作がレトロと揶揄されないのは作者のセンスの賜物。特定(の色)の触媒と詩を用い、……という<名詠式>それ自体はオーソドックスな魔法体系ながら、それ故の普遍性がある。これは新しい!と鼻息荒くなる要素こそないが、ファンタジーとして色褪せない、普遍性の高い設定をチョイス出来ているのが素晴らしい。本作を読んでいて想起されるのは『ハリー・ポッター』シリーズ。魔法学校に通う卵たち、という点もさることながら、「展開」に類似点を見る。それはストーリー的な意味ではなく、日常パートで魅せてからの難敵大暴走といった序破急の構成。本作が型として現代ファンタジーの「王道」を歩んでいることが分かる。簡易な文章は電撃文庫の『七姫物語』を思わせる。読みやすさを追求した部分があるのだろうが、ところどころイメージが湧かない状態になることもあり、その辺はもう少し挿し絵でカバーして欲しかったかな、と。本作の最大の見せ場は、時を超えた約束が続いているシーン。主人公がその約束(ストーリー)のために存在する「脇役」なのが実験的で面白い。作者はコントロール・フリークだね。本作はまた、このライトノベルがすごい!(2010年度)にも第6位にランクイン。ここ数年見掛けられなかった、往年の富士見ファンタジア文庫「らしい」良心的ファンタジー作品。

第18回ファンタジア大賞 佳作:黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで/細音啓

category: さ行の作家

tag: ファンタジア大賞佳作 70点 OPEN 細音啓 このライトノベルがすごい!

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コメント

いやもう、思わずガッツポーズです。人に本気で薦めたくなる作品は数えるほどしかありませんが、その中でこれは「薦めたいけどやはり読み手次第」という中々気難しい作品だったので。


冒頭の約束のシーン。近年稀に見る名シーンじゃないかなと思うのです。巻を追うごとにこの約束が実をつけ、大きくなるところが、また手放しで褒めたくなるところなのです。
卓越した描写力もありませんが、どうしてかワクワクさせる。新鮮味がないと言うよりは、新鮮味をとことんまで除いた作品かなぁと。安心して読める、大好きな作品です。

ask #- | URL | 2011/08/13 10:26 | edit

Re: ask

コメント、有難うゴザイマス!

ちょうどaskさんのレヴューがあったので、積み本的にはファンタジーノベル大賞をひとつ消化してから取り掛かるつもりだったのですが、評価が高かったので早めてみました。askさん、……アンタ、ロマンチストですね!

> 冒頭の約束のシーン。近年稀に見る名シーンじゃないかなと思うのです。巻を追うごとにこの約束が実をつけ、大きくなるところが、また手放しで褒めたくなるところなのです。

これ、やっぱり続くんですか。確かに拘りのシーンになりそうですね。時間を掛けた約束はどんなものでもそうですけど、熟成されたときのカタルシスたるや凄まじいものになります。巻が進んでも護られる約束なんて浪漫満載ですね。富士見ももう少し推せばもっと弾けただろうに。勿体無い。

Medeski #- | URL | 2011/08/13 13:37 | edit
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