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新潮文庫:ムーン・パレス/ポール・オースター(Paul Auster)

ムーンパレス
何ものもアメリカ人を驚かせることは出来ない。―――ジュール・ベルヌ

ノーマン・シフを偲んで

answer.――― 85 点

日本人にしか描けない青春があれば、その逆―――日本人では描けない青春も、もちろんある。本作はその典型的作品。青春と云えば、日本人が想像するのはおそらく《学校》など箱庭的空間、ある種の一区切りがつきまとうと思う。本作には、それが「無い」。これは自分たち日本人が体験、共感、想像することすらない青春譚。アメリカ人の描く青春、アメリカ人にしか描けない青春がここにある。主役はアメリカ人でなくてはならない物語は回顧する形で進む。主人公マーコ(しかし、この名で呼ばれることは無い)は、物語の一頁目ですべてを語るが、それは登場人物も、読了した読者も省き過ぎだ!と抗議したくなるくらいに事務的なものだった。……日本的青春に慣れている身としては正直、圧倒、完敗させられた。この本は日本地図に慣れた日本人が、初めて世界地図を見せられた感覚に近い。一読の価値アリ。

―――あるとき、目の前のムーン・パレスのネオンサインが見えたことも覚えている。ピンクとブルーのネオン文字は消え、Moonのooだけが残った。そして、一方のoからぶら下がっている僕自身の姿が見えた。危険な芸をしくじったアクロバットみたいに、何とか落ちまいと僕は必死にあがいていた。ちっぽけな毛虫のようにoの輪に身体を巻きつけてずるずる動いていたが、まもなくその姿も見えなくなってしまった。二つのoはいつしか目玉に変わっていった。二つの巨大な人の目が、蔑むように、苛立たしげに、僕を見下ろしていた。目は長い間、じっと僕を睨みつけていた。やがて僕は、あれは神の目なのだと確信するに至った。

新潮文庫:ムーン・パレス/ポール・オースター(Paul Auster)  (1989)

category: 海外作家(アルファベット順)

tag: OPEN \300 ポール・オースター

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コメント

Moon Palace

こんばんは。

この本、なんだか凄く興味が湧きました。
“日本人が体験、共感、想像することすらない青春譚”
たとえば恋愛モノ(あんまり読まないけど)なんかは、
割と大差なく、というのか容易に共通点を見つけれるのだけれど、
青春モノは、その国のカルチャーに密接してるのか
なかなか理解・共感できなかったりすることが多いかもしれないですね。

映画なんかでも、だからこそ外国への憧れもあって
カッコよく思えたりすることもあるのだろうけれど。

ちょっと久々に洋書を読んでみようかな、という気になりました。

ちゃき #Qi8cNrCA | URL | 2011/08/15 21:08 | edit

Re: ちゃき

コメント、有難うございます!

> この本、なんだか凄く興味が湧きました。
> “日本人が体験、共感、想像することすらない青春譚”
> 青春モノは、その国のカルチャーに密接してるのか
> なかなか理解・共感できなかったりすることが多いかもしれないですね。

個人的に、このレヴューはそこそこ気に入った出来だったので、そう言って頂けると本望です。実際、本作は視界を拡げる意味で読んで損は無いと思うんですよね。(書き手も含め)主役が日本人だと嘘臭いんですよ。これは外国人、特に「変化を恐れない」アメリカ人だと凄い腑に落ちる青春劇です。すげえな、とブッ飛ばされると思います。箱庭には箱庭の整合性があって心に留まるのですが、これは俺に出来るか?君に出来るか?と問い掛けられているような感じになります。日本の作品で「俺もこうしたいなぁ、したかったんぁ」はあっても、出来るか?的な自問は起こりません。

是非、機会があれば読んでみて下さいませ。

Medeski #- | URL | 2011/08/16 17:05 | edit
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