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電撃文庫:イリヤの空、UFOの夏/秋山瑞人

イリヤの空
1.その1
2.その2
3.その3
4.その4

answer.――― 92 点

ナマクラ!Reviewsを定期的に訪問して頂いている方はもうお察しのことでしょうが、……私はライトノベルが嫌いだ。それは主に読者の可能性を閉ざすことに起因する。本来なら文学、古典に流れるはずの層に、Showbizに根ざした「オモシロイ/ツマラナイ」のみの二元的価値基準を植え付け、<興味深い>という<面白い>の亜種とも云える感性の発芽を阻害する。つまらないけど、面白い―――転じて、興味深い。これがエンターテイメントの発達著しい現代における「文学」の正しい位置のハズだが、文学を読んで<興味深い>とならず「ツマラナイ」と切って捨てるのは、ライトノベルを含めた現代Showbizの汚染の結果である。しかし、年齢を重ねれば「オモシロイ/ツマラナイ」だけで世の中が廻らないことに気づくのも事実。それでも、そろそろ古典、文学に―――とならず、あくまでライトノベルに拘る理由は何なのか?それは、奈須きのこ乙一西尾維新……ライトノベル界の三大犯罪者。並びに本作の著者、ライトノベル界の“JOKER”こと秋山瑞人の存在故である。文学とは、文章の機微……程度に思う人にとって、彼らは各々の持つその尖鋭的な表現力、構成力、実験性を以って、神に弓引き、打ち勝ちさえする巨人だった。中でも、秋山瑞人―――文章力という観点において、彼が<ベスト>だ。ライトノベルというフォーマットで、本作以上の筆力で書かれた作品を私は読んだことがない。いや、大衆小説を含めても、だ。ファンのなかには前作『猫の地球儀』を著者の代表作に挙げる輩もいるが、馬鹿を言っちゃいけない。本作は著者自身が間違いなく「代表作」として仕上げに来ている。ROLLする言葉が絨毯爆撃のように頁を埋め、「This is the light novel! This is the new literature! ……Fuck? Hahaha!」と嘲笑うかのように読者を始めとした、関係者を屈服させる圧倒的筆力。頁を開けば、そこには夏があった。学園祭があった。―――ビビりの主人公が、掃射銃ぶっ放しながら告白していた!重箱の隅をつつけば、類を見ない、百花繚乱のフレーズが弾幕となって誤魔化されるが、本作、オリジナリティは無いかもしれない。それぞれの印象的な場面は(アレンジこそされているが)既視感がつきまとい、安易なオマージュにも映る。だが、誠に残念ながら、ここまでキャッチー且つ技巧的な文体で綴られると、「……面白ぇよ」としかつぶやけない。カッタ―を首に当てて、延々と躊躇する思考の描写になれば、当たり前のように書き口を変更。……何様のつもりだ、畜生め!!とワナビーはおろか、ライトノベルを低俗と蔑む文学至上主義者は頭を掻き毟るだろう。普遍性はないかもしれない、しかし仮に一過性のものだとしても、「現代」最高峰の文体がここにある。そんな文章、または、まぶしいくらいの夏を体験したい方はどうぞ。全4巻、合わせてのレヴューです。

電撃文庫:イリヤの空、UFOの夏/秋山瑞人 (2001~2003)

category: あ行の作家

tag: OPEN 90点 秋山瑞人

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コメント

ふふふ……はーっはっはー!!とでも言いたくなるような点数でした。いやはや、、嬉しいです。

夏が来る度に読み返し、扉絵の貼付が取れかかるほどになった愛読書なのですが、文章を的確に切り込む姿勢に感服しました。僕では到底語るるに恐ろしいものなのでw

僕が毎夏の呪縛から逃れられないのは、『緩急』『日常と非日常の壁』『起承転結』と呼ばれるような類のものが最もな原因なのかなと思うのです。
やはり、『何か違う』。本来戦場に据えられた主人公が感じるべきそんな違和感を、読者である僕らにもダイレクトに植え付けてくる。磨きのかかった文章と同じように、その違和感は読み返すたびに新たな発見を生み出す。
物語を静的な部分と動的な部分に分けるとしたら、この作品は常にどんなシーンでも、どちらも兼ね備えていそうな雰囲気があるように思われるのです。ページを捲ったら、いきなり撃鉄が下ろされそうな、不安定。

全く上手く言えないのですが、結局、何年かかっても言えないような気さえします。

ask #- | URL | 2011/11/08 23:32 | edit

Re: ask

お久しぶりです、相変わらず我が世を謳歌してらっしゃいますか?

> やはり、『何か違う』。本来戦場に据えられた主人公が感じるべきそんな違和感を、読者である僕らにもダイレクトに植え付けてくる。磨きのかかった文章と同じように、その違和感は読み返すたびに新たな発見を生み出す。物語を静的な部分と動的な部分に分けるとしたら、この作品は常にどんなシーンでも、どちらも兼ね備えていそうな雰囲気があるように思われるのです。ページを捲ったら、いきなり撃鉄が下ろされそうな、不安定。

終末モノとしては少々と言わず、凝ったアレンジが見受けられる作品ですよね。終末モノは元来、「終わっている」ことを前面に押し出して、その世界で生きる登場人物の心境その他の機微を読者は傍観者として楽しむ(追体験する)のが常道ですが、本作の場合は、終末モノとして機能するのが終盤のみ。秋山瑞人はオリジナリティに関しては凡庸だと思いますが(だから初期は原作付き、話作りは大本のモチーフ有り、場面は基本的にオマージュ。そして、寡作)、筆力とアレンジがズバ抜けているので、オリジナリティがあるようにさえ錯覚してしまいます。

内容それ自体なら、―――夏だ!&ライトノベル史上最強の学園祭、10代の初恋物語で80点オーバー程度なのですが、90点以上を点けたのは、暫定「1位」の文章力ゆえです。秋山瑞人より巧いライトノベル作家がいたらマジで読みたいので是非お知らせください。

Medeski #- | URL | 2011/11/09 07:38 | edit

読んでみるかどうか丁度迷ってた所なんだが、このレビューで買うの決めた。
90点とはなかなかに高いというか、いつもの評価を見る限り高すぎるくらいだな。
そういえば、最近は受賞作以外のものに触れてくのが多いが、やっぱりそういうのもあっていいというかどんどんあるべきだと思ってるから、増やしてってくれよ。

悪臭 #YqzQT8Bs | URL | 2011/11/13 01:34 | edit

Re: 悪臭

コメント、有難うございます!

ナ、ナンテコッタ……俺にはまったく得にならないのに、経済(他人の財布)を動かしてしまうとは!!作者になり代わって言っておくよ、……ありがトゥでえ~す!!

年末あたりにまとめようと思っていますが、90点以上はSomething重視です。本作の場合は、「文章」。真面目な話、本作よりも技巧的な文章はライトノベルじゃ見たことありませんから、その意味でも読む価値はあると思いますよ。文学も日和見的な文章しか見掛けない今、よほど本作のほうが挑戦的です。

> そういえば、最近は受賞作以外のものに触れてくのが多いが、やっぱりそういうのもあっていいというかどんどんあるべきだと思ってるから、増やしてってくれよ。

いやいや、あくまで受賞作に絞りたいんですけどね。最終的に体系化したいので、そのためにも受賞していない有名作をレヴューしている感じです。京極夏彦もそのうちする予定です。

Medeski #- | URL | 2011/11/13 11:27 | edit

久々に見てみたらまさかの高得点にビビりましたw
あのmedeskiさんが…!
受験終わったら読んでみますw

名鉄科さかな #- | URL | 2012/01/20 01:37 | edit

Re: 名鉄科さかな

お受験はハーマイオイニー?コメント、有難うございます!

> 久々に見てみたらまさかの高得点にビビりましたw
> あのmedeskiさんが…!

この本に関しては、オベッカは特にありません。現在、最強のライトノベルです。私が否定するにはまだ力量が足りておりません。一般文芸、文学方面の専門家でも少なくても「文章」に関しては不承不承認めてしまうでしょう。本作はライトノベラーのJOKER、切り札なのです。

Medeski #- | URL | 2012/01/20 04:20 | edit

検索の末辿り着いたへっぽこマンガ読みのボクですが、
この作品の魅力をびしばし伝えて来る文章に思わずコメントしちゃいます。
ライトノベルを敬遠する友人に叩き込む最終兵器として目下運用中の今作品、
この点数でも個人的には大納得なんですが……惜しむらくは圧倒的な文章力と
引き換えに(なったかもしれない)遅筆な作者をいつまでも待ち続ける苦悶が
もれなく読者の身に振りかかるというところで……

……ということで、秋山瑞人未完の大作(?)として有名な『E.G.コンバット』の
レビューなんかも見てみたい気がする平日の夜でございました。

作品に対する読み込みの深さと魅力を紹介する軽妙な文章、
読んでいてさくさくと頭に残る名文で、感服するばかりです……。

のし #- | URL | 2013/04/25 22:27 | edit

Re: のし

コメント、有難うございます!

> 検索の末辿り着いたへっぽこマンガ読みのボクですが、
> この作品の魅力をびしばし伝えて来る文章に思わずコメントしちゃいます。

秋山瑞人ファンの方には、なかなか好評なレヴューのようですワ。個人的に自信有り!のレヴューは「暗いところで待ち合わせ/乙一」、「多摩湖さんと黄鶏くん/入間人間」の最後の一行、「ひかりのまち nerim's note/長谷川昌史」ですので宜しかったらお読みください!

> ……ということで、秋山瑞人未完の大作(?)として有名な『E.G.コンバット』の
> レビューなんかも見てみたい気がする平日の夜でございました。

『E.G.コンバット』のレヴューは終わったら書こうと思いますが、代わりに他作品をレヴューする予定ですわ。

> 作品に対する読み込みの深さと魅力を紹介する軽妙な文章、
> 読んでいてさくさくと頭に残る名文で、感服するばかりです……。

今年は、目指せ訪問者毎日40人(本当は100人だったw)!に設定しているので、是非、お友達などにご紹介くださいませませ。

Medeski #- | URL | 2013/04/26 15:44 | edit
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