ナマクラ!Reviews

02/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31./03

第21回山本周五郎賞 受賞作:ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎

ゴールデンスランバー
1.事件の始まり
2.事件視聴者
3.事件から二十年後
4.事件
5.事件から三カ月後

answer.――― 75 点

長い地理描写、政治背景などを含めた歴史語り、または専門知識のひけらかしは、ともすると説明口調になり、読者の作品に対する興味を著しく損なうものだが、この作家は面白い!という信頼は、読者にそのまま頁をめくる我慢を許す。伊坂幸太郎の<集大成>的作品!と評される本作は、まさに読者に我慢を強いる一作。巷の評判通り、著者の作品を複数作読んだことのある人にとっては、平凡な主人公像、潜む愉快犯、カットバック形式などからも<集大成>という形容にも大いに頷けるのではないだろうか。もっとも、集大成だからと言って、本作が著者の最高傑作ではないだろう。それは上記の通り読者に我慢を強いる事実にある。一章から順に読んでいくならば、本作は<記憶力>を求められる。踏み込めば、本作のいわゆるオチは三章【事件から二十年後】にて語られる。故に読み飛ばして、その章については最後に読んでも構わない。だが、何故にそんな構成にしたかと言えば、本作は著者の作家としての挑戦―――あるいは、単なる自己満足に端を発する。マンネリの打破。多作の作家ほど自分と向き合うことは多くなり、読者以上に自作のストーリー展開を意識していくものだ。概してマンネリの打破を試み始めると、その過程で必ず本作のように今までの作品で披露してきた方法論を組み合わせる<集大成>が出来上がる。そして、一流の自負がある作家ほど読者に我慢を強いる仕上がりになると思う。それというのも、その著者は今まで読者に<我慢をさせたことがない>ためだ。本作の冒頭で、首相が暗殺される。そして、主人公は濡れ衣を着せられ、逃亡する。真犯人は誰なのか!?がオーソドックスな読者の関心事だが、本作はそこを端折る。三章【事件から二十年後】で実は明らかにされているのだが、読者は初見では読み流すだろう。なぜなら三章がオチだと思わないからだ。本作は読み終わって初めて三章の意味に気づく。物語が逃亡劇と暗殺の真相、ふたつあることに気づく。長く書いてしまったが、本作への結論はこうだ―――この構成、面白い!と思えるのは、伊坂幸太郎のファンだけであり、また、この構成を評価出来ないと、決して面白いと唸れる作品ではない。楽しく読みたいならば、読みづらくても三章の内容を記憶しておくのが良いだろう、そして、ラストに「大変よく出来ました」の判子を押して貰いましょう。ちなみに、第5回本屋大賞「1位」にランクイン。がしかし、伊坂幸太郎は書店員の固定ファンが多いみたいだから本屋大賞は殿堂入りってことで良いんじゃねえかな?「1位」の内容じゃないよ。

第21回山本周五郎賞 受賞作:ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 伊坂幸太郎 本屋大賞 山本周五郎賞

[edit]

page top

« 第21回山本周五郎賞 受賞作:果断 隠蔽捜査2/今野敏  |  第20回山本周五郎賞 受賞作:夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦 »

コメント

わたし結構好きですね~。
いろいろと張った伏線が最後にまとまって終わるという形が。
青柳さん的には納得がいかないのでしょうが、
彼ならあんな人生でも送ることが出来るんでしょうね。
ハラハラしながら読んだ思い出があります。

igaiga #jWiXvKEs | URL | 2011/12/19 09:19 | edit

Re: igaiga

コメント、有難うございます!

この作品を読んでいる途中、思い浮かんだのが、宮部みゆきの『理由』でした。私がこの作品をやや否定的に読んでしまったのは、求心力のある視点の登場が遅かったことですね。基本的にモタモタしている印象がありました。ただ、やはり試みとしては面白いですね。一つの作品にふたつの物語を(読者の先入観を逆手にとって)合法的に挿入してあるのはグッジョブでした。

青柳さんの20年後なんてどうでもいいのだ、という伊坂氏の結論はなかなか大したものです。

Medeski #- | URL | 2011/12/19 11:58 | edit

紹介されていました、袋小路の男、読むのが楽しみです。もう購入済ですので順番待ち状態です。

伊坂幸太郎も、本好きとしては一度読んでみたいと思っています。
まだ、どんどん積読増えているので、もっと減らしてからの購入となるとおもいますが。

情弱なので、素敵な本の紹介を楽しみにしてます。

こげぱん #- | URL | 2011/12/20 21:17 | edit

Re: こげぱん

コメント、有難うございます!

> 紹介されていました、袋小路の男、読むのが楽しみです。もう購入済ですので順番待ち状態です。
私の恋愛観と似ているための80点という配点のため、本当の意味でお薦め出来ませんが(ぶっちゃけ、私がレヴューした作品でお薦め出来るのって『家守綺譚』くらいです。他にもあるっちゃあるんですが、保証出来ないのが残念です)、私は楽しく読めました。

> 伊坂幸太郎も、本好きとしては一度読んでみたいと思っています。
肌に合うと、かなり良いのではないでしょうか。私はちょっと不満がつきまとう感じです。彼のデヴュー作が読みたいですね。今、三浦しをんの『風が強く吹いている』を読んでいるのですが、これはかなり面白いです。最後までこの気持ちが萎えないのを望んでいます。

Medeski #- | URL | 2011/12/20 21:51 | edit

Merry Christmas!

伊坂さんの中では、収まりの良さではこの辺りがピークですよね。
この後だんだんと崩してくるので、久々にこれを読むと、収まりが気持ち良く感じます。
この人ならではの作品ですねー。

ごろちゃん #- | URL | 2011/12/24 16:07 | edit

Re: ごろちゃん

Merry Last Christmas!

> 伊坂さんの中では、収まりの良さではこの辺りがピークですよね。
やはり、そうなのですか。私は以降の作品を新聞連載の作品以外、まともに読んでいないのですが、この手の集大成を出してしまうと、迷走するのが作家さんのパターンなんですよね。それで迷った後に辿り着くのが、初期作に近い作品……という道に戻るなら、本当の意味で<初心>=<投稿作>気分で書いて欲しいものなんですが、なかなかそうは本屋が卸さないんですよね。伊坂幸太郎、もっと乱暴なキャラクターを出して欲しいと常に思い続けている作家のひとりです。

Medeski #- | URL | 2011/12/25 13:38 | edit
page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://medeski02.blog95.fc2.com/tb.php/488-269aaef8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
page top