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第1回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:宇宙のみなもとの滝/山口泉

宇宙のみなもとの滝
(あらすじ)
世界は、いつだって復讐する相手なんかじゃない。そうじゃなくて―――守りとおし、受け渡しつづけていかなければならない、かけがえのない場所だと、僕は思う。僕らが生まれ、いろんな人と出会い、そして死んでゆく、たった一つの世界―――。大人のための宇宙叙事詩。

answer.――― 64 点

日本ファンタジーノベル大賞の現在に至るまでの継続の要因は、第1回の大賞作『後宮小説』、第3回の大賞作『バルタザールの遍歴』の二作を輩出することに成功したことにある―――とは選考委員の誰それの弁だったと思うが、事実、その通りだろう。まだ全受賞作を読んだわけではないが、両作それぞれの著者である酒見賢一と佐藤亜紀は他の受賞者と比すれば、作家としての素養は頭一つと言わず、二つ、三つは抜けている。知識、筆力、構成の妙……いずれか一面で上回ることはあっても、トータルバランスを鑑みればどれも太刀打ち出来ていない。日本で初めての「ファンタジー」をテーマにした文学賞に品格をもたらしたのは賞金でも選考委員でもなく、他ならぬこの二人なのである。彼らがいて本当に良かった……特に、酒見賢一がいたからこそ第1回の大賞は本作ではなかったのだから。宮沢賢治―――日本のファンタジーのイメージを良くも悪くも固めた生涯童貞を貫いた日本を代表するシスコン。本作は、例によって彼の強烈な影響下で制作されたことが伺える作品。抽象的、実に抽象的だ。基本的に何を仰っているのかよく分からない。ホラ吹けば宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』を想起させる<言葉で魅せる>ファンタジーなのだが、そこまでの美しさはもちろんない。しかし優秀賞を与えられたように、構成には一工夫が施されている。表題は劇中劇のものであり、そして、それが本編(現実)と重なっていく。変則構成としては間々見る展開だが、成功の部類に属するのが珍しい。劇中劇にて発せられる「この世界をほんとうに救うことができるのは、ただ、この世界で辱められ、虐げられ、忘れ去られ……この世界を追放されようとしている者だけなのだから」なるキーワードは、実に良く出来ているのでここで取り上げておく。まあ、どんな話かというと『銀河鉄道の夜』と、……漫画『ベルセルク』の断罪篇、生誕祭の章がありますよね?卵のお話。あの章を読んで世界が生まれ変わるところを見れば事足ります。むしろ、お釣りが溢れ返るのでそちらを優先して読みましょう。

第1回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:宇宙のみなもとの滝/山口泉

category: や行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 60点 山口泉

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