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第13回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:クロニカ 太陽と死者の記録/粕谷知世

クロニカ
1.巡察前日
2.文字の神
3.語り部
4.征服者
5.沈黙
6.巡察使

answer.――― 74 点

日本ファンタジーノベル大賞を受賞したいのならば、不足のない文章がある前提の上で、異国の歴史を取り扱ってみると良い。異国と言ってもイギリスやフランス、アメリカといった目垢耳垢のついた国は当然ダメだ(それでも望むなら大学の歴史など隙間をつくしかない)。狙い目は東南アジア―――それも、ヴェトナムが良いだろう。あるいは中南米、中でもメキシコが良いと思う。この二つの国がどうして挙げられたかはその辺の経済学者を掴まえて訊いてくれれば分かる……なんて余談を交えた前振りを置いたのは、本作が上記の要素を満たす典型的な作品だからだ。インカ帝国の滅亡から数十年、キリスト教が支配するその地では未だひっそりと地元民の信仰が続けられていた。インカ文明を題材にした点、「木乃伊が語る」という視点の工夫、文字と口伝の差異による宗教の優劣論など、選考委員が評価しやすい要素が散見される本作。第13回は『しゃばけ』があったにもかかわらず、それを差し置いて、本作に大賞を授与したのは選考委員の趣味、引いてはプライドに他ならない。我こそインテリゲンチャなり―――この辺のエリート意識がファンタジーの敷居を高くしようと躍起になっている。本作はソレに見事に応えた形だ。実際、あとがきに代わる謝辞にて著者がブ厚そうな参考文献を並べる様は選考委員も自分の判断の正しさにウンウンと悦に入ったことだろう。個人的に評価したいのは、木乃伊の「インカ文明、バッドエンド!」とのほほんと達観した方言(三河弁らしい)語りが終わった後に続く、キリスト教に染まり始めた子孫に伸びるビラコチャ(白人)の鬼畜の手。……あれ、美人のお母さん、明確に描かれてないけどレイプされちまったか!?と勘繰りたくなる、まさか、こっちもバッドエンド!?の怒涛の展開には目を瞠った。一応は少年主人公が全村人に非難を浴びせられつつも、ご先祖様たちを売って事無きを得るが、何にしても怒涛だった。時を飛ばして、この少年主人公も村長として出戻りハッピーエンドへと導かれるので読後感は悪くない。知識欲を満たしたい方にお薦め出来るファンタジーと云える。あ、ちなみにインカ帝国の最後の皇帝はマンコって名前です。真面目な話、マンコって公然と書きたいがために本作を書いたんじゃないか?とさえ私は勘繰っています。

第13回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:クロニカ 太陽と死者の記録/粕谷知世

category: か行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 70点 粕谷知世

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