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富士見ファンタジア文庫:魔術士オーフェン(はぐれ旅) 我が呼び声に応えよ獣/秋田禎信

魔術士オーフェン
(あらすじ)
俺の名はオーフェン。本業は魔術士だが、副業でモグリの金貸しなんぞやっている。罵声の主はボルカンという地人のガキだ。俺から金を借りているくせに、ちっとも返そうとはしやがらない。このガキがどうやら、金儲けの話を見つけてきたらしい。あまりアテには出来ないが、とりあえず奴に言われた通り盛装して、とある金持ちの屋敷にやって来たのだが……そこで、俺はアイツに出会ったのだ―――。

answer.――― 69 点

90年代のティーンエイジャーをライトノベル漬けにした富士見ファンタジア文庫の“TOXIC TWINS”とはリナ=インバースとキリランシェロ・フィンランディ、つまりは本作の主人公オーフェンに他ならない。もはやライトノベル界の熟語と評したい「黒髪黒目、黒づくめの服装」のフレーズに代表されるように、ライトノベラーに黒から連想するキャラクターを挙げさせれば、未だそこそこの支持を得るだろうこの稀代のライトノベル的主人公の物語は、商業都市トトカンタにて幕を開ける。しかし、この本編「はぐれ旅」そのものよりもシリーズの人気を確固たるものにしたのは外伝「無謀編」、何より<牙の塔>在住時のオーフェンを描いた「プレオーフェン」にあることはご存知の通りだ。本編の物語自体の魅力は無いに等しい。それというのも本編は結局、オーフェンというよりも彼の師であるチャイルドマン、そして憧憬抱く義姉アザリー、この二人の紹介を延々とするようなストーリーだからだ。故に、二人が同時に出てくる第一巻、本作で本編は事足りる。本作は強引ながらドンデン返しもあり、何より綴られた文章も作家としての質の高さがうかがえるのが良い。『魔術士オーフェン』を『スレイヤーズ』と肩を並べるキャラクター小説と思うなかれ。秋田禎信は何気に「巧い」のである。デビュー作にて驚異の禅問答を披露していた著者だが、本作ではその禅問答はファンタジーに求められるオリジナリティのひとつにアレンジされているのも特徴だ。それは、<自己否定>。折しも、バブル崩壊。訪れる空白の10年(ぶっちゃけそのまま続いて空白の20年になっている現在2012年)、漠たる不安を抱くこの時流に本作は見事に乗った。万能でない主人公、狼、人をドラゴンと呼ぶセンス・オブ・ワンダーなど、シリーズでは小出しに隙間をつくオリジナリティを挟み込む。『ロードス島戦記』でもなく、『スレイヤーズ』でもないファンタジーを当時に体現したことは刮目に値する。しかし繰り返すが、シリーズの魅力はあくまで外伝である「無謀編」、「プレオーフェン」にある。富士見ファンタジア文庫、懐かしき90年代の隆盛をもたらした黄金の方程式「本編+外伝=大儲け」の先鞭を担った大翼こそ本作なのである。そちらに手を出すために読むというのが本編の立ち位置となる。萌え蔓延る今では、女性キャラクターに魅力が無いのは厳しいかもしれない。それでも古今東西、己をライトノベラーと称するならば一度は目を通しておきたい一作。画像は、新装版より。

富士見ファンタジア文庫:魔術士オーフェン(はぐれ旅) 我が呼び声に応えよ獣/秋田禎信 (1994)

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 秋田禎信 三大ライトノベル

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